気にしない技術
香山リカ著
PHP新書
にあった話である。
非常時に下した決断は失敗する可能性が高い
非常時には、 人間はいつもとは違った心理状態になりま
す。今回の大震災は非常に大きな規模だったので、表面上
は復興に向かいつつあるように見える現在でも、非常時は
続いていると考えるべきです。
では、非常時の人間心理とはどのようなものでしょうか。
その例として、もっともよく知られているのが「吊り橋
効果」です。これは、ゆらゆらと揺れる危険な吊り橋で出会
った二人は、お互いが相手に期待し合うために、現実以上に
魅力や能力を評価し合うというもの。
震災のあと、「あの人って、けっこう頼りになるかも?」
と、これまで気にもならなかった人に急に関心をもつように
なったというのは、この吊り橋効果によるものが少なくない
のかもしれません。
もちろん、先入観を捨てて、その人の意外な一面に気づく
こと自体はよいことです。場合によっては、そこからほんと
うの愛が生まれることもあるでしょう。ですが、たいていは
吊り橋を渡り終えたら魔法が解けて、熱も冷めてしまうもの。
吊り橋効果による感情は錯覚なのです。
ほかにも、非常時の心理状態に関係する言葉として「閉店時
刻効果」が挙げられます。
これは「もうすぐ閉店だよ」「あと二個で売り切れます」など
と限界を示されると、とたんに「買います! 」と声をあげてし
まうというものです。
今回の震災で、「この国もこれでおしまいでは」と恐怖心を
覚えた人もいると思います。
震災後に急に結婚したくなった心理は、もしかしたら。〝日本
の期限〟を意識することによって生じた閉店時刻効果なのかも
しれません。
これらはちょっと極端な説明かもしれませんが、人の心理は
周囲の状況から大きく影響を受けるものだ、ということは心に
とめておいたほうがいいと思います。
〝震災結婚〟したくなった人と同じように、〝震災離婚〟を
決意する人たちも、自分が過ごしてきた日常とは違う状況に
神経質になっている可能性があります。
「この際、条件には目をつぶって結婚する!」「もうこんな
人とはいられない! 離婚する!」と早急に結論を出さずに、
もう少し様子を見て、冷静に判断したほうがいいのではない
でしょうか。
以上。
〝震災結婚〟ということがニュースになった。そのうち、
〝震災離婚〟いうのを知って驚いたのだが、〝震災離婚〟の
説明を聞くとなるほど、と。思わなくもなかった。
それしても、〝震災結婚〟について、「吊り橋効果」で説明
したのは、さすがプロである。
「吊り橋効果」という言葉、初耳であるが、そのような心理
状態があることについては、昔なんかの本に書いてあった。
それを思いだしたのだ。
しかし、「吊り橋効果」で思いだすことがあった。
退職した職場は、わたしが若い頃、一度赴任していた職場で
ある。その頃の同じ職場の同僚の女性と再会した。
当時から、彼女は既婚者であったが、再会して自分の亭主へ
の愚痴を時々、こぼしていた。
若いころ魅力的な人ではあったが、若干気が強かった。そこ
が、彼女の魅力でもあったが、彼女の彼氏との出会いのエピ
ソードなんか聞かされたが、時折、そのことを思いだした。
魅力的な女性ではあったが、彼女としては、魅力的でも女房
として、残念ながら、枠にはまる人ではなかった。
旦那としては、結婚はしたものの、往生したかも知れない。
で、今回の「吊り橋効果」という話を聞いて、結局、彼女
の結婚も「吊り橋効果」なるものであったのだと、今更な
がら、妙に納得してしまった。
人妻ながらも若いころの彼女は、女性離れした?気さくな
話のできる人で、魅力的であったが、このような女性と
一緒になったりすると、それは、それで、大変だっだろう
なと、一緒になる運命でなくて良かった。と感じいって
しまった。
おそらく、彼女たち夫婦も、もしかして、どうして結婚
することになったのか、実は、よく分かっていなかった
かも知れない。
たまたま、非常時を共有してしまったのだ。
でも、思うのだ。結局、わたしに、今まで、好意をもった
女性たちもある意味で、「吊り橋効果」ではなかったかと
思えたりしてきて、なんとも、微妙な気分になっている。
もしかして、程度の問題はあれ、人は、「吊り橋効果」
で結びつくカップルも多いのではと、思ってしまった。
この本では、「吊り橋効果」について、好意的な評価は
していない。
非常時でなく、日常の穏当な気分で、結婚しても艱難辛苦
の非常時に見舞われた時に、「逆吊り橋効果」あると、思
われるので、その賛否については、難しいのがあるだろう、
なんて、勝手に思っている。
〝震災結婚〟という物珍しい現象に、このような知見を披露
されると、ニュースが多面的に理解できていいものだと思っ
た。