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今にも泣きだしそうなボクジュを見て、ジュニョンは控室に急ぎました。
誰もいません。
でも、柱の向こうに声を殺して泣くボクジュがいたのに気がついたのです。
声をかけるなんて出来ません。でも、何とかしようと思ったジュニョン。
その時、ドアの外に、ジェイが来たのが見えたのです。
ジェイは花束を渡そうと思ってやってきたのです。
ジュニョン、もう感情を抑える事は出来ませんでした。
ジェイを外に押し出し、激怒しました。なんで兄さんが応援する・・・と。
ジェイには、ジュニョンの怒る理由が分かりません。
「ボクジュの好きな人は兄さんだだからこそ肥満クリニックにも通ったし、嘘をついたと話した後も苦しんでた。あいつも女だ。不格好な姿を好きな人には見せたくない。だから帰れ。ボクジュはもう充分に傷ついてる。」
この日、部始まって以来の好成績を収める事ができたことで、ユン監督とチェコーチをはじめ、部員全員が大盛り上がりでした。
ボクジュの父は、店で打ち上げを開きました。
皆が大騒ぎしている中、ボクジュだけは自分の部屋に閉じこもっていました。泣けました。涙が止まりませんでした。
ジュニョンは、こっそりと店を覗きに来ました。でも、そこにボクジュの姿が無いのを見て、余計に心配になったのです。
この反響は大きく、部に、スポンサーが付く事になりました。
ボクジュは優勝したと言う事で、注目度は半端ありません。
でも、気が抜けたようなボクジュは、元気がありません。食欲もなく、ぼんやりとしています。
ジュニョンは有り金はたいてお菓子やソーセージを買って、ボクジュに食べさせようとしますが、全然効果はありません。
疲れたから寝る・・と寮に戻ったボクジュ。
そこに、ジェイから電話が入りました。今から会える?・・・とジェイ。
ジェイは、ジュニョンにボクジュが好きな人が自分だと言われ、これまでの事を思い起こしていました。
それで、自分が悪かった・・・と思ったのです。
ボクジュに謝りました。
「僕の所為で傷ついてほしくないんです。振り返ってみたら、僕は何も考えずに行動してて、軽率だったかと・・・。すまない。」
そんな事言われたら、ボクジュはますます恥ずかしくなりました。
ジェイに、これ以上気を遣わせたくないと、ボクジュは必死に言いました。
先生は悪くありません、自分が勝手に好きになっただけなんだから・・・。自分は大丈夫、気が変わりやすいタイプだから、すぐに忘れる・・・なんてね。
一生懸命でした。
よく泣かないで最後まで頑張れたよね、ボクジュ。
ジェイに背を向けて歩き出した時、ボクジュの目には涙がたまっていました。唇を噛んで、我慢していました。
ボクジュはジュニョンがジェイに自分が好きだと言う事を話したとすぐに分かりました。怒りが湧いてきました。
で、練習中のジュニョンを呼び出しました。
「先生にばらしたでしょ。」
私がどれほどみじめだったか分かる?私が好きになると、相手は困るんだ。気持ちに応えられなくて。
「出過ぎたまねをしないで」
涙をためてボクジュは怒りをぶつけました。
「私が片思いに悩んでいるのがそんなに面白い」
まさか・・・ですよ、ジュニョンは。
ただただ心配だったからです。
でも、ボクジュになじられ、つい、ジュニョンも口調をキツクしてしまいました。
「最近のお前は何だ。重量挙げがそんなに恥ずかしいのか?同じスポーツをする者としてお前をカッコ良いと思っていたけど、最近は全然カッコ良く無い。自分を恥じてるんだからな。」
ボクジュ、涙をぽろぽろこぼしながらジュニョンを睨みました。
ジュニョンも、言い捨てておいて、そのまま行ってしまいました。
ジュニョンは、ジェイに対して腹が立ちました。
「兄さんは自分の心の荷が降ろしたくて、謝ったんだろ」
突然のジュニョンの怒りに、ジェイは説明しました。自分が大人としてもっと慎重に振る舞うべきだったと伝えたかったからだ・・・と。
「間違ったか?」
「ああ。ミスだ。兄さんに謝られたら、ボクジュはすっきりすると思うか?兄さんの思いやりが相手を傷つけることもある。」
そして、ジュニョンはこれまで心に秘めていた思いをぶちまけました。
「小さい頃から兄さんは過剰なほど優しかった。ボクが何をしても怒ったことがない。友達は羨ましがったが、俺は何だか悲しかった。本当の弟じゃないからか、この家で俺は客なんだと思った。悪気が無いのも、優しくしようと頑張ったのも分かる。だけど本当は怒られたかったし、よその兄貴のように殴られたかった。」
ジェイは初めて自分の行動の影響を知りました。
ジュニョン・・・重荷が少し降ろせたかな。
後日、兄弟は和解しました。
ジェイが、ジュニョンに本気で怒ったのです。・・・と言うか、怒ったと見せかけたのです。
その剣幕に驚いたジュニョンの顔が、幼かったねぇ。
「優しくしたら距離を感じるなんて思ってもみなかった。」
と、ジェイは言いました。そして、他人に関心を持たないジュニョンが一生懸命になるんだから、ボクジュは特別な友達か?・・・と聞きました。
ジュニョンもおそらく特別な友達だと思っているのでしょう。
でも、ボクジュに散々、関わるなと言われた後ですからね。もう、今後一切ボクジュには関わらないでおこうと心に決めました。
・・・無理だと思うけど
シホは、ストレスで体調を崩していました。
それを誤魔化しながら、練習を続けているのですが、ギソクとの交際も始めたようです。
おそらく、ジュニョンに突き放され、家族はばらばらという最悪の環境で、自分を真っ直ぐに愛してくれるギソクに頼りたかったのでしょう。
最初は、利用しようとしただけかもしれませんが、少しずつギソクの想いが沁みとおって来ているようです。
そんな時、ウェイトリフティング部で事件が起りました。
チェコーチが部の運営費を私的に流用したのです。
それが大学側にばれ、進退問題に発展したのです。
部員たちは皆ショックを受けました。ボクジュは特に・・・。
常日頃、母親のように姉のように自分を支えて来てくれたコーチです。人柄は良く分かっているつもりでした。心から信用していました。
なのに・・・です。
でもね、これには裏がありました。
流用したお金は、実はキャプテンのウンギが起こした事件の示談金だったのです。
ウンギは、結婚して子供が生まれたばかりでした。誰にもこの事は言わないでいたのですが、ある日、妻がタクシー運転手に散々暴言を吐かれ、脅すような事まで言われたのに激怒し、運転手を殴ってしまったのです。
ウンギに示談金を払う余裕はありませんでした。
警察から身元引受人としてチェコーチに連絡してきましてね。それで発覚したのです。
穏便に済ませないと、有望な選手であるウンギが逮捕となってしまいます。仕方なく・・・でした。
ウンギは、黙っていられず、ユン監督に事情を話しました。
ユン監督も悩みました。
有望選手ウンギの将来を潰すか、チェコーチを放り出すか・・・です。
チェコーチは、事情を公にはしませんでした。ウンギを守ったのです。
チェコーチは、大学から解雇されてしまいました。
この事が、ボクジュの心を完璧に折ってしまいました。
突然、姿を消したのです。
スポンサーとの約束も反故にしました。
ナニやソノクから事情を聞いたジュニョン。
関わらないで置こうと決めたんだから・・・と思いました。
でもね、やっぱり無理でした。必死に探したのです。
やっとやっとボクジュを見つけたジュニョン。
皆、どれほど心配したか分かってるのか・・・と怒鳴りました。
ボクジュが変です。
涙をためて言いました。
「ジュニョン・・・。私変なの。どこか壊れてる。何の意欲も湧かない。重量挙げもしたくないし、何だか眠い。全然気力が無い。胸が押し潰されそう。息が詰まりそうだし、ただ悲しいの。どうしよう。」
そんなボクジュ初めてです。
ジュニョン、何も言えませんでした。ただボクジュを見つめ、そっと抱きしめました。
ボクジュは、ジュニョンの胸の中で声をあげて泣きました。子供のように・・・。
ジュニョンの胸も不安で押し潰されそうな、そんな表情でした。