うさぎの耳

大学卒業→社会人→看護学校→6年目ナース
読書の記録と日々の出来事。

『八日目の蝉』角田光代

2011年04月01日 23時59分52秒 | book
映画公開を間近にひかえ文庫がバーンと展開してあったので手を伸ばしました。『対岸の彼女』で角田さんの小説が好きになったので作者で選んだ本。




なかなかヘビーな事件を扱っていると思うけど、思っていたより深刻ではなかった。



子どもを産み育てたことがないからあまり分かってないのかもしれないけど、血のつながりだけが親子ではないし、たとえ血のつながりがなくても本当に愛し愛され親子関係を築くことはできるって思った。
誘拐は犯罪である。それは理解できてるんだけど、2人の日々が1日でも長く続いていけばいいのにと願わずにはいられなかった。2人が親子じゃないなんてそれは違うって思った。




誘拐された子ども恵理菜が元の家庭へ戻ってからの日々は、はっきり言って辛いことの方が多くて家族にも馴染めない。だけど、大人になって自分が赤ちゃんを産むって決めてからはやっとその辛さから一歩抜け出して新しい景色を見れるようになる。お腹の子にきれいな景色を、海や空を見せてあげたいって思う心はきっと自然とわきあがった感情で、心に響いた。




誘拐が終わりを迎えてからの日々の方が長いし、事件のせいで辛いこともたくさんあったけどそれだけじゃない。






結婚願望とか子どもほしいとかあんまり思ったことないけど、自分の子どもが欲しいなって少し思った。育児は楽しいんじゃないかなっておぼろげながらにイメージできた。きっと可愛くてたまらないんだろうなーと。なんとなくだけど、子どもほしいって言う人の気持ちが理解できた気がする。



赤ちゃんを目の前にして思わず抱き上げて連れ去ってしまう場面が、印象に残った。理性で考えれば他人の子を連れ去ってしまうなんていけないことだけど、それを越えた本能とか母性とかいろいろあったんだろうなと思う。それだけの吸引力というか人をひきつける力を赤ちゃんは持ってるんだろうなと思う。人を狂わせてしまうような力を。この子さえいれば他に何もいらないって言わせてしまう力。



そして子どもを育てるって大変だとばかり思っていたけど、そうじゃないんだなと気付かされた。確かに大変だけど、それ以上の喜びや楽しみで溢れているんだなと思った。




ぜひ、子どもがいる人の感想を聞きたい。私のような若輩者じゃなくて優しくそしてたくましく子どもを育てているお母さんたちの感想を聞きたい。