うさぎの耳

大学卒業→社会人→看護学校→6年目ナース
読書の記録と日々の出来事。

『無菌室ふたりぽっち』今田俊

2010年12月26日 18時14分40秒 | book
何度かこの本の紹介記事に出くわし、1回目でひっかかりを覚えていたので読むことにしました。

読む前に私が得ていた情報は、白血病にかかった同じ会社の二人の話で、一人は亡くなられているということ。著者が新聞記者だということ。


タイトルも人をひきつけるし、闘病記の部類に入るけど、書き手が新聞記者さんなので読みやすいのではないかと考えました。



読む前に私は、闘病中に二人は交流があったのだとばかり思っていましたが、読み進めていくとそうではなかったことが分かりました。二人はメールのやりとりを1回しただけで、対面したのはこの本のもう一人の白血病と闘っていた方・遠藤さんのお葬式でした。そして、もう一つはっとしたことが目次を見ると著者自身が再発したということが読む前に分かって動揺した。


遠藤さんはブログで闘病について綴られていて、その記事が引用されていました。時系列に沿って二人が白血病と診断されてからどのような治療を受けたのか、その時の辛さ、心の動きなどについて書かれています。日記のように日付ごとに書かれていて、それが今田さんと遠藤さんのどちらのものであるかはっきり分かるように今田さんのものは上の3分の2くらいのスペースで、遠藤さんのものは逆に下に寄せて書いてあり、読み手に配慮されていて読みやすかったです。



白血病について私はおそらく世間一般レベルの知識しか持ち合わせていなかったけど、読みにくいということはちっともありませんでした。治療で髪の毛がなくなったり、無菌室で治療、骨髄移植、臍帯血移植、ドナー・・・死ぬかもしれないそんなイメージしか持ち合わせていませんでした。


今生きてるってことと、白血病の治療の過酷さを感じさせられました。断片的な知識とイメージでしかなかった白血病についていろんな種類があることや、治療が過酷で長期に渡ることなど初めて知ることも多かった。その中で、生きたいっていう強い意志や今生きてることについて考えさせられた。
著者は、あまり生に必死にしがみついている、生きたいってことを前面には出していない。もっと生きたいって思いが書いてあると思っていたけど、そういう印象は受けなかった。本当はそのような思いで一杯だったのかもしれないが抑えてあるのかもしれない。でも、生きることや生きたいってことに関して全然書いてないわけではないので、全体を通して見れば、やはり生きることや生きたいってことに関しての記述もある。量としては少ないかもしれないが、印象にはすごく残った。
退院に向けての医師とのやりとりを描いたところが一番印象的でした。「自分の命は自分で選択しているんだ」という言葉が心に残りました。




今も再発するかもしれないという思いを抱えながら生活されている。そういう人がいるってことを知ることができたこともこの本を読んだ価値があったと思う。知識として知っていても実感として理解できていることはまだまだ少ない。「病気になって人生観が変わったか。」と聞かれて、変わったと思ったこともあったけど、そんなものは日常に吹き飛ばされたというところに親しみを覚えました。


遠藤さんは亡くなったけど、決してそれを過剰に悲劇的に書いていなくて、それも良い印象を受けました。



闘病記としても読めるけど客観的に白血病というものの一面を知ることができる良書だと思う。
また、日々の生きてる時間を振り返って大切にしなくてはと気づかされた本でした。