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本好き人の365日

八月の本棚

2003-08-03 10:23:00 | SF
ネコが宇宙に行ってなぜ悪い!

呼ぶと来ない、探すといない。自分がしたくないことはしない。普段エサをもらってさんざん世話してもらっているくせに、人間のことなんかおかまいなし。だけど私達の心をつかんではなさない、とっても魅力的な生き物。

今回ご紹介する本は、そんな猫好きにはたまらない。
ヴォンダ・N・マッキンタイアのSF小説。

『星の海のミッキー』

です☆

SF小説は数あるけれど、こんなに猫が活躍する小説は珍しい。

主人公はバーバリという12歳の女の子。
孤児である彼女は、自分を引き取ってくれる家族の待つ、宇宙ステーション行きのシャトルを待っている。だけど、彼女のジャケットのポケットの中には、ひとには言えない秘密が…

ネコを密航させることがどれ程困難か、まして、密閉された宇宙ステーションに連れ込むなんて!

物語の舞台は、はるかなる星の海。
ご主人様がはじめての無重力に苦労している隣を、まるで昔から空を飛ぶことができたみたいに、優雅に滑空する子猫のミッキー。犬なら絶対こうはならない。あわてふためき、ジタバタして吠えまくるはず。
そんな犬コロを見つめながら、冷たくつぶやくミッキーのこんな言葉が聞こえてきそう。

「…バカ犬」

『スター・トレック』物の作品も手がけるマッキンタイアだけあり、無重力や宇宙ステーションの描写もわかりやすく、面白い。

人類初のエイリアンとの接触という、壮大なストーリー展開もあるんだけれど、それは300ページ中、後半も後半、最後の50ページくらい。あとはひたすらミッキーを隠したり、追いかけたり、探しまわるバーバリの苦労話(笑)

その健闘ぶりには、思わず涙が出るほど(…笑いすぎて♪)

ちなみにミッキーはマンクス猫。
英国マン島原産で、しっぽのないことで有名です。
なんでも、ノアの箱舟が出発しようとした直前に跳び乗って、ノアが扉を閉めた拍子にしっぽをはさまれ、ちょんぎれてしまったとか。
なんとなく、その性格がうかがえる逸話じゃないですか。

猫特有のワガママさ爆発。

違う意味でハラハラドキドキさせてくれる物語。

夏の夜空を見上げながら、未知なる宇宙に思いを馳せる時、その傍らには丸くなった相棒がいる。それってとってもイイ風景だとは思いませんか?

元気いっぱい、夢いっぱいの冒険小説。

…なんか「猫ってかわいい☆」がメインのような気もするけど。

ともかく、猫好きな方はもちろん、それ以外の方でも、楽しめることは請け合いですよ。














ヴォンダ・ニール・マッキンタイア  著
森 のぞみ  訳
ハヤカワ文庫


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