私的図書館

本好き人の365日

日常への反抗…

2010-05-30 23:20:00 | 本と日常
ある晴れた日曜日。

いつもよりゆっくりと起きて、遅めの朝食をとる。

シャワーを浴び、丁寧にヒゲを剃り、時間をかけて歯を磨く。

テレビでは今日も評論家が政治やら経済のことでしきりに視聴者の不安を煽っている。

その声を聞き流しながら、朝食の食器を洗い、脱いだ服を洗濯機に放り込み、「スタート」と書かれたスイッチを押す。

全自動洗濯機が洗い終わりをブザーで知らせてくれるまでの間、雑誌をパラパラめくってみたり、読みかけの本を開いたり、有名女優が素敵な新商品を買うように笑いかけているCMをながめて過ごす。

洗い終わった洗濯物をベランダに干し、車で買い物に出かけ、マクドナルドでハンバーガーとポテトを買うために並び、夕食の食材を買い込んでアパートに帰る。

部屋の掃除をし、テレビを見て、録画しておいた映画を鑑賞する。

いつもと変わらない日曜日。

しかし、いつもとはちょっと違う。

誰も知らないけれど、会社にある僕のロッカーを開けると、その中には一冊の本が置いてある。

会社のロッカーなんてほとんど使っていないので、その他にはたいした物は入っていない。

その本はポツンと、しかしただ一つの存在として目に飛び込んでくるようになっている。

休憩時間のヒマつぶしに読んでいた村上春樹の短編…

『螢・納屋を焼く・その他の短編』(新潮文庫)という本だ。

誰かが僕のロッカーを開けるなんてことは無いだろうけれど、開けるはずもないその瞬間に、その本を見た開けるはずもないその人が「おや?」と思ってくれることを期待して、僕はその本は置いた。

何も無いロッカーの中に置かれた、たった一冊の村上春樹の文庫本。

それは、僕の日常に対するささやかな反抗の証。







         2010.05.30.



『もいちどあなたにあいたいな』

2010-05-27 17:54:00 | 本と日常
新井素子さんの七年ぶりの長編小説。

*(キラキラ)*『もいちどあなたにあいたいな』*(キラキラ)*(新潮社)

を読み終わりました。

登場人物が入れ替りで一人称で語っていく物語。

最初は「あれ? 新井素子腕落ちた?」と失礼な感想を抱いてしまったのですが、オタク青年”木塚くん”が登場してから俄然面白く読めました♪

そうそう、新井素子はSF作家だった!
忘れてた!

イヤ、実際には決して忘れていたわけではないのですが、「小説なんだから普通はこう書くだろう…」という”一般常識”でつい読んでしまっていて、「新井素子に普通の常識を期待する方がおかしい」という読み方を体が思い出すまでに時間がかかってしまったのです☆

新井素子初心者の方。
出だしはちょっと重めですが、途中から本来の文章になりますからね。
少し我慢して読み進めて下さい。

さて、肝心の物語の方ですが…

たった一つのことを除いて何も解決していません!

そして多分、普通の作家さんなら(失礼な言い方かな…)、そのたった一つのことは確かに重要なんだけれど、それは大前提で、そこから展開して物語が始まっていくはずなんです!

でもそれが新井素子♪
だからこそ新井素子♪

例えば恋人が実は未来から送られて来たロボットだったとしましょう。

この場合、常識的に「未来からきた」ということと「実はロボットだった」ということが大事件で、そこから物語は発展し、歴史を変えてしまったり、それを逆に防いだり、その間に愛が芽生えたり、作家は物語世界そのものを破壊することすら可能なはずです。

ところが、新井素子の場合は、”そんなことより”

「何で男には家事能力が信じられないくらいないの!?」

という事実の方が大事件になる!

いや、その設定でそんなこと言われても…(笑)

(強引すぎたらゴメンナサイ。でも本当にだいたいこんな感じなんです☆)

隕石が地球に衝突するという小説、『ひとめあなたに』という作品でも、主人公は隕石を阻止するでもなく、地球を救うでもなく、”そんなことより”ただただ好きな人に会いに行こうとします。

もちろん地球は救われません。

面白いです♪

ただ今回はファンとしては物足りないものも感じました。

物語の重要な鍵となるSF的な設定が、ある意味「常識的」で、いま一つワクワクできなかった…

『絶句…』という、作家の書いている小説の中の登場人物が次々と現実世界に現れるという新井素子さんの作品があるのですが、それくらいブッ飛んだ発想を読んでみたかった。

ま、ファンというものは勝手なものですし、今回はその設定がメインというお話ではないので(と思います)こういう作品になったのでしょうね。

でも、きっとこれが新人作家の作品だったら出版はされていないだろうなぁ(苦笑)

そこが新井素子の余人に変えがたき魅力であり、作品の特徴でもあるわけですが♪

というわけで、私の中では「大当たり」というほどではなかったにしろ、途中からは楽しく読むことができました。

もっと突っ走ってくれても良かったけど☆

今回の本で嬉しい発見は巻末に出版社の垣根を越えて「新井素子著作リスト」がついていたこと♪

小説33作品(自選作品集を除く)は全部読んでた♪♪

エッセイはさすがに2、3点読み残しが。

さて次の作品は何年後かな?(笑)

ここで提案。

新井素子のとあるファンサイトにも書き込まれていたけれど、どうか出版社の方、時系列順に並べた『新井素子全作品あとがき全集』を出版してくれませんか?

新井素子といえば「あとがき」、「あとがき」といえば新井素子ということで、ファンは絶対買うと思います!

出版社の垣根を越えて、ぜひ☆


『マーチ家の父 もうひとつの若草物語』

2010-05-23 23:59:00 | 本と日常
レタス一玉98円がとってもお得に思える日曜日。

皆さまいかがお過ごしでしょうか?

私は久しぶりにレタスとキュウリでサラダを作り、ついでにレタスチャーハンも作って頂きました♪

野菜の値段は下がってきたのに、相変わらずガソリンの値段は高いですね。

今日入れたガソリンスタンドでは1ℓ=137円でした。

岐阜の山の中だから仕方がないのかな?

野菜やガソリンの値段は1円単位で気にするくせに、今日は本屋さんで新刊を2冊も買ってしまいました…

ジェラルディン・ブルックス著
*(キラキラ)*『マーチ家の父 もうひとつの若草物語』*(キラキラ)*(武田ランダムハウスジャパン)

アメリカの作家オルコットの書いた『若草物語』の登場人物、四姉妹の父と母を主人公にアメリカ南北戦争時代を描いた新しい物語。

過去の名作の登場人物をまったく違う作家が描くというのは、作品のファンにとってはちょっと複雑な思いがしますが、若かりし頃の四姉妹の両親というのにも興味がわいて読んでみたくなりました。

もちろん、メグにジョーにベスとエミリーという『若草物語』の小さなご婦人たちも登場します☆

物語自身は戦争や奴隷制度といった人間の本質に迫る内容で、その時代の流れの中で愛する家族を支えに苦悩しながら生きる若きマーチ夫妻が描かれています。

従軍牧師として戦争の只中を生き延びるマーチ氏。
子供たちとその帰りを待つマーチ夫人。

そしてそんな二人の出会いから子供たちが生まれ、家族が増えていく様子。
原作である『若草物語』のイメージを大切に、しかし生の人間として二人の男女を描くことで新しい物語としても成立している…

まだ途中までしか読んでいませんが、けっこう夢中になって読んでいます♪

もう一冊は、

ドリーン・バーチュー著
*(キラキラ)*『ソロモン王と聖なる天使たち』*(キラキラ)*(武田ランダムハウスジャパン)

こちらは旧約聖書などで有名なシバの女王が主人公。

十七歳ですでに父の跡を継ぎ、シバの国の女王となったマケダは、キャラバン隊の隊長から聞いたイスラエル王国の若き王、ソロモン王に興味を持ちます。

女王としての何不自由のない暮らし。
しかし神と共にあることを誓った彼女には、誰かを好きになることも、自由に国を出ることも許されてはいません。

そんな彼女が、賢者と名高いソロモン王に会いに行くために、アラビア半島縦断の旅に出る…

史実と伝説を織り交ぜて作り上げたかなりオリジナルな作品だとは思いますが、個人的に旧約聖書の中でもシバの女王の記述だけがどうしても浮いて見えてしまって、そのことが前からずっと気になっていたのでついつい買ってしまいました☆

でも2冊で3,000円以上ってちょっとお高いかな?

いやいや、これが正しいお金の使い方ってもんでしょう!

大袈裟に言えば、一冊の本との出会いで人生が変わっちゃうことだってあるんだから。

きっとね。

多分ね。




ポパイの恋人はオリーブ・オイル

2010-05-16 23:09:00 | 本と日常
家々の間をツバメが飛び交う季節になりましたね。

天候のせいで高騰していた野菜がようやく安くなってきたので、久しぶりにピーマンやら何やら買ってきて、夕食は野菜づくし♪

適当に切った野菜をフライパンでそのまま焼いて、ビネガーとオリーブオイルに塩コショウ、にんにく、パセリを入れて混ぜたものに、焼きたて野菜をアツアツのまま漬け込んで即席「焼き野菜のマリネ」の出来上がり!

テレビの料理番組を見て作ってみたのですが、ほどよく酸っぱくて暑い季節にはピッタリでした。

やっぱり野菜は食べなきゃね。

ポパイだってホウレン草の缶詰を食べてパワーアップするんだし☆

でもあのホウレン草の缶詰って生なのかな?

実際にホウレン草の缶詰なんて見たことないけど…



連休あれこれ

2010-05-07 22:28:00 | 本と日常
連休中に友人夫婦と食事をして来ました。

ちょっと贅沢して個室のあるお店でゆったり!!

やっぱりそれなりのお値段のお肉はちゃんとそれなりのお味がしますね!

すっごくやわらかくておいしかったです♪♪

美味しい物を食べている時って幸せ☆

その友人夫婦には5歳になる女の子がいるのですが、食事の後に立ち寄ったカラオケで、かわいいダンスと歌声を披露してくれました♪

それを見ながら(家族っていいなぁ~)なんて柄にもなく思ってしまったりして☆

きっと独身の私にはわからない苦労もたくさんあるとは思うんです。
でもきっと、こういうのを本当の幸せって言うのだろうなぁ、としみじみ。

幸せのおすそわけを頂いて来ました♪

ついでに寄った本屋さんでも収穫がありました。

ボンゼルス作*(キラキラ)*『蜜蜂マアヤ』*(キラキラ)*(岩波文庫)

アニメで有名な「みつばちマーヤ」の原作となった作品。

岩波文庫から復刊されたみたいなんです♪

アニメも見ていたのでこれは読むのが楽しみ☆

帰りにはTVで紹介されたこともある有名なパン屋さんで、クロワッサンなど美味しそうなパンをいくつかおみやげに買って来ました。

…なんだか食べ物ばっかし(苦笑)

例の5歳の女の子は、カラオケで、いきものがかりの「YELL」を歌ってくれました。

NHKの「みんなのうた」で覚えたそうです♪

子供の吸収力ってスゴイですね☆



『春のオルガン』

2010-05-04 22:32:00 | 本と日常
天気が良かったので車を洗車に持って行って来ました。

以前は自分で洗っていたのですが、歳を重ねるごとにぐうたらになってきたのか、最近はもっぱらガソリンスタンドでお願いしています。

その待ち時間に読んでいたのは、湯本香樹実さんの、

*(キラキラ)*『春のオルガン』*(キラキラ)*(新潮文庫)

小学校を卒業した春休み。

主人公の少女トモミは体が弱くて家族の心配を一身に集める弟と、忙しく働く母親、無口な祖父と暮らしています。

隣人とのトラブルでギクシャクする家族。
家に寄りつかない父親。

すべての元凶は隣の住人だと思い込む弟は、猫の死体を隣家の庭に置いて来ます。

全体にただよう不安と暗闇。

無邪気に夢を描くことに困難を感じるようになったトモミの、子供から大人に成長する不安が描かれます。

私はどんな大人になるのだろう…

お母さんは私のことをちっともわかってくれない…

ある日、通りすがりの男に胸をつかまれ、ショックで声も出せないトモミ。

母親にも言えず、自分が悪いかのような姿の見えない罪悪感にさいなまれる…

思春期といえばそれまでですが、こうした心の葛藤をどう受け止め、どうやって前に進んでいくか。
作者の描く子供たちや大人の姿に引き込まれて、ガソリンスタンドで夢中になって読んでしまいました☆

これが古本屋で100円なんて安すぎるなぁ。

物置の片隅から壊れて音の出なくなったオルガルを引っ張り出し、もくもくと修理する祖父の背中。

現実は物語のように美しくもキラびやかでもないけれど…

弟はウンチをもらすし、猫は汚く死体は冷たいし、大人たちは子供を傷つけるばかりだけれど…

トモミは自分が怪物になってみんなに追いかけられている夢を見ます。

バラバラに崩れていく世界。

それでも人って生きて行くんですよね。

この世界で、いろんな人に囲まれて。

それぞれの人生を抱え、大人だけれど答えなんて持っていない人々と共に。

車を洗車してもらって、ワックスもかけてもらって、お金を払って家に帰ってみると、車の洗い残しを二ヶ所発見しました。

…アルバイトくんもいろいろあるよね。

と一瞬、他人を許す心の広さをみせようかとも思ったのですが、次からは別のお店にしよう、ともう心に決めている自分がいました(苦笑)

それはそれ、これはこれ。
商売は商売だからね。

現実は厳しいんです。

いい読書ができました☆




『今日の早川さん 3』

2010-05-02 23:44:00 | 本と日常
GW(ゴールデン・ウィーク)真っ最中ですが、私はいたって普通の日曜日を過ごしています。

洗濯して買い物して料理を作って「龍馬伝」を観る。

ツーリングのバイクや車に乗った家族連れ、指をからめた恋人たちを横目で見ながら、買い物のついでに立ち寄った本屋さんで注文してあった本を受け取り、ホクホクしながら帰って来ました。

…いいのかな、こんな連休の使い方で?

受け取って来たのは本マニアな女の子たちが登場するCOCOさんのブログ発信のコミック、

*(キラキラ)*『今日の早川さん3(限定版)』*(キラキラ)*(早川書房)

本好きならではの笑える日常を描いたこのコミックも早くも第3弾。

限定版には「イラストいろはかるた」なる付録が付いていますが、作者がかなり苦労してでっちあげた(失礼な)あとがうかがえます♪

毎週本屋さんを入念にチェックする早川さん。

毎回大量に本を買い込むため店員さんに影でニックネームを付けられている、という話は自分にも覚えがあるのでちょっと笑えませんでした(苦笑)

SF好きの早川さんにも早く彼氏ができることをお祈りします☆

その他、先月も含めて最近買った本は、

村上春樹
*(キラキラ)*『螢・納屋を焼く・その他の短編』*(キラキラ)*(新潮文庫)

新井素子
*(キラキラ)*『もいちどあなたにあいたいな』*(キラキラ)*(新潮社)

山本弘
*(キラキラ)*『アイの物語』*(キラキラ)*(角川文庫)

門井慶喜
*(キラキラ)*『おさがしの本は』*(キラキラ)*(光文社)

マーク・トウェイン
*(キラキラ)*『アーサー王宮廷のヤンキー』*(キラキラ)*(角川文庫)

パトリシア・A・マキリップ
*(キラキラ)*『バジリスクの魔法の歌』*(キラキラ)*(創元推理文庫)

新井素子さんの本は実に七年ぶりの書下ろし長編!

もう、どれだけファンを待たせたら気が済むんだ!?

でもファンだから許す!

手に入ってよかった~

発売されたのは知っていたのですが、ネットでもなかなか在庫がなくて、他の本を探しに入った本屋さんで偶然見つけたのです!

ファンやっててよかった☆

マーク・トウェインの『アーサー王宮廷のヤンキー』は古典としては有名ですが、これまで読む機会がなかった作品。

それがこのほど角川文庫さんから改訂版が出たんです!

コネチカット生まれのヤンキー男が、中世の英国にタイムスリップ?
ボイラーやエンジンの知識を持った鍛冶屋の息子が、科学技術を使ってアーサー王や魔術師マーリンと共に活躍する…らしいです♪

これとは逆にランスロットが現代まで生き延びていてその謎を探る物語。
ロジャー・ゼラズニイの『キャメロット最後の守護者』も復刊してくれないかな?

アーサー王と円卓の騎士の物語好きなんですよね~

「聖杯探索」に主君の妃グゥイネヴィアとの愛に悩む騎士ランスロット!

アーサーが抜いたといわれる「聖剣エクスカリバー」も有名ですよね♪

門井慶喜さんの『おさがしの本は』は図書館員さんのお話。

図書館行政に失望し、「馬鹿丁寧な口調」「もっと簡単にしゃべってよ」「役人!」という今どきの女子学生の言葉に反論できない自分…

司書の資格を取り、希望通り図書館勤務になったのに、自分のしていることといったらまるで倉庫番。

図書館を舞台に、市役所をはじめとする行政機構の問題が垣間見れます。

これだけあればGW(ゴールデン・ウィーク)は乗り切れるかな?

『今日の早川さん 3』で本好きの早川さんが年下の延流(のべる)ちゃんに「よくこんなに沢山読めますね」と感心されるのですが、それに対して早川さんはこう答えます。

「読めるわけないじゃん」

「………。」

そうです、いつか読むかも知れない本、ふと読みたくなった時にすぐ手元にその本があるように、本好きさんは本を買い続けるのです!

読んでいて、早川さんにものすごく共感し後、ものすごく落ち込みました。

あぁ、これでいいのかな?
人生の使い方っていうか、いろいろなもの、間違っていないかな?