私的図書館

本好き人の365日

三月の本棚 『ラムラム王』

2008-03-28 23:59:00 | 本と日常
「ラムラム王」をご存知ですか?

本当の名前はとっても長いのですが、これから何度も登場するので、ここでは単に「ラムラム王」と呼ぶことにします。

「王」といっても王様ではありません。

エッペ国という国の、貧乏な珊瑚削り職人の子どもです。

「王」というのは名前の一部で、だから、ラムラム王を呼ぶ時は、必ず「王」までつけて、ラムラム王ちゃん、ラムラム王くん、ラムラム王さま、などと呼ばなくてはなりません。

もっとも、みんなはただ「ラムラム王」と呼んでいるので、やっぱりここでも「ラムラム王」と呼ぶこことにしましょう。

ラムラム王が七歳の時、珊瑚削り職人のお父さんは、珊瑚を削るために使っている、”ろくろ”の隣に、同じような、だけど少し小さな”ろくろ”が、置いてあるのをみつけます。

突然あわられたこの小さな”ろくろ”に驚くお父さん。
しかも、ふと見ると、それまですぐそばで絵本を見ていたラムラム王の姿がありません、

そう、この小さな”ろくろ”は、ラムラム王が変身した姿だったのです!

それからが大変。

お母さんが干葡萄を食べようとしたら、その干葡萄がいきなり「痛い、痛い」としゃべり出したり、居眠りをしているお父さんの耳の中で、だしぬけに耳くそが「ヨオヨオ」と大きな声を出したり、どんなものにでも姿を変えられるラムラム王の不思議な力に、みんなは不気味がります。

そしてついには、悪魔がラムラム王の姿をしているに違いない、ということになり、まだ小さなラムラム王は、なつかしい削られた珊瑚でいっぱいの自分の住みかを追い出されることになってしまうのです。

しかし、ラムラム王はそんなことちっとも気にせず、夜になると小鳥の姿で眠り、昼間はラムラム王の姿になって、どんどん旅を続けていきます。

そして、巨人の国に行き着いたラムラム王は、その国の力自慢が何人かかっても開けられない不思議な鉄の箱を、珊瑚を削る”ろくろ”に変身して、見事に開けてしまいます。

ところが中から出てきたのは、ラムラム王にそっくりのもう一人のラムラム王で、箱を開けたラムラム王と溶け合うように一緒になると、みるみるうちに一人になった二人のラムラム王の体は、巨人みたいに大きくなってしまうのでした。

こんなお話し、信じられませんか?

これはラムラム王の長い一生のお話しの中でも、ほんのさわりにすぎません。

本当のラムラム王のお話しは、これから始まるのです。

ラムラム王は、その長い人生で、五たび王さまになり、一たび奴隷となりました。

美しい王妃さまと共に過ごしたり、魔法使いや、お星様と出会ったり、羊になって動物たちと暮らし、魚になって海に住んだこともありました。

多くの人に会い、多くの人が去っていきました。

そして、1894年六月二十五日、日本の国の小さな湖のほとりに生まれ変わる、と書き残して姿を消したラムラム王。

1894年の六月二十五日というのは、このお話しを書いた武井武雄さんの誕生日です。

彼は長野県の諏訪湖のほとりで生まれました。

この『ラムラム王』というお話しが、最初に本に載ったのは大正十三年のことです。

挿絵もご本人が描いています。

まるで、紙芝居のように、一枚一枚、本のページをめくる楽しさ♪

何が飛び出すのかわからない驚き!

どんな歴史の本にも載っていない、ラムラム王の不思議な一生☆

予測不能なところがとっても魅力的なお話しです。

ラムラム王の開けた箱の中からは、もう一人のラムラム王が出てきました。

…人間には、絶対に開けられない箱というものがあります。

あなたが生まれた時から、あなたと共にある、あなただけの、絶対に開かない箱。

毎日毎日、その中を想像したり、思い描いたり、そしてちょっぴり不安になったり。

そういう”想像の余地”のある、あなただけの絶対に開かない箱。

それなのに、箱の中身がつまらなくてガッカリ、もう想像することもやめてしまった、なんて人がけっこういたりして…

本物は、絶対に開けられないのに。

では、絶対に開けられない箱の中身。

ここにいる皆さんにだけお教えしましょう。
といっても、誰もがみんな、持っているものなんですけどね。



そう、それは「未来」☆



箱が開けられるのは想像の中でだけ。
だからラムラム王は面白い♪










武井 武雄  著
銀貨社



春のよそおい

2008-03-27 23:58:00 | 本と日常
春休みに入って、子ども達が何だか町にあふれています。

スーパーへ買い物に行ったら、私の腰より背の低いちっちゃな女の子が、向こうから勢いよく走って来て、まるで電信柱か何かをよけるみたいに私をよけて走り過ぎて行きました。

自分が障害物リレーの障害物になったような気分でした。

子どもの視線から見た世界ってどんな世界なんだろう?








『ライラの冒険』と『ナルニア国物語』

2008-03-24 19:08:00 | 本と日常
この週末、フライフィッシングをやりに川へ出かけて来ました☆

フライフィッシングというのは、昆虫に模したフライと呼ばれる針で、魚をだまして釣り上げる釣りの一種です。

フライはとても軽いので、ラインと呼ばれる専用の糸を使って、そのラインの重みで魚のいそうなところにフライを投げるのですが、それがとっても難しい。

岩魚(イワナ)や山女(ヤマメ)といった川魚を狙って、水の透き通った渓流をさかのぼって行きます。

まだまだ初心者なので、なかなか魚は姿を見せてくれませんが、森に囲まれ、流れる水の音を聞いていると、時間がゆっくり流れるみたいで、いい気分転換になりました♪

あぁ、早く自分の釣った魚をたき火で塩焼きにして食べたい!

最近読んだ本は、

映画「死神の精度」が楽しみな、伊坂幸太郎さんの*(キラキラ)*『砂漠』*(キラキラ)*

ミヒャエル・エンデの『はてしない物語』の舞台「ファンタージエン」の新たな物語。
ヴォルフラム・フライシュハウアーさんの*(キラキラ)*『ファンタージエン 反逆の天使』*(キラキラ)*

アインシュタインとの往復書簡である、ジークムント・フロイトの*(キラキラ)*『人はなぜ戦争をするのか』*(キラキラ)*

SF作家グレッグ・イーガンの短編集*(キラキラ)*『しあわせの理由』*(キラキラ)*

フィリップ・プルマン原作の映画、*(キラキラ)*『ライラの冒険 黄金の羅針盤』*(キラキラ)*も映画館で観て来ました♪

原作の小説、好きなんですよね☆

こちらは3部作の第1作目ということで、いろいろ詰め込みすぎな感はありましたが、ダイモン(人間の魂の一部が動物などの姿をして共存している)の表現がとってもよくて楽しませてくれます!

物語はアダムとイブの楽園追放の物語をモチーフに、人間の神からの独立、自由の獲得をテーマにしていますが、ヨロイを着たくまとか、空を飛ぶ魔女とか、真実を指し示す黄金の羅針盤とか、魅力的な要素がめいいっぱい♪

主人公の少女ライラも元気いっぱいです☆

映画館では、5月公開の映画、『ナルニア国物語第2章 カスピアン王子の角笛』の予告編も流れて、こちらもすごく観たくなりました☆

第1章はDVDも買っちゃったんですよね♪

『ナルニア国物語』大好きだから☆

ナルニアのしゃべる動物たちの王、ライオンのアスランは、イエス・キリストの役回りで、こちらは魔法に代表されえる信じることの力、困難に立ち向かう少年少女たちの成長と冒険が語られます。

天国もないし、神様もいない。そんなことを考えるのは簡単。
でも、人間が頭で想像したこと、信じたことは、その人にとっては真実よりも重要なことがある。

『ライラの冒険』が天国よりも、今、自分達が生きている世界が大切と、神からの独立を目指すのに対して、対極のような感じもしますが、この『ナルニア国物語』でも、実は魂の独立、人間の尊厳という意味では、同じことを言っているように私には思えます。

どちらもおしゃべりする動物が出て来ますしね♪

それに今回、カスピアン王子役に抜擢されたベン・バーンズ君のカッコイイこと!

絶対観に行きたいです!!



ありがとう

2008-03-21 07:17:00 | 本と日常
作家のアーサー・C・クラークさんが3月19日の未明(スリランカ現地時間)、自宅のあるスリランカの病院で亡くなられたとの訃報を知りました。

アイザック・アシモフ、ロバート・A・ハインラインと並ぶ、SF小説界の大御所で、多くのでファンを魅了してきたアーサー・C・クラークさん。

英国生まれで、後年はスリランカに移住、そこで執筆活動をされていました。

『2001年宇宙の旅』を始め、『楽園の泉』など、私もずいぶん楽しませていただきました。

同じ時代を生きられたことを幸運に思います。

90歳だったそうです。

一人のファンとして、「ありがとう」と言わせて下さい。

心より、ご冥福をお祈り致します。






電気を大切に!

2008-03-20 01:32:00 | 本と日常
日本にも昔「休電日」というのがあったんですね。

知りませんでした。

いえね、ちょっと髪を切ろうと思って電話をしたら、床屋さんが月曜日で休みだったんです。

その日が月曜日だってことをすっかり忘れていた私も私なんですが、電話に出た床屋さんが、すごく眠そうな声で、「月曜日だから休みです」と、さも月曜日が休みなのがあたり前、火曜日の次の日は雨が降っても水曜日ですよ、みたいな言い方をしたので、バツの悪さもあってカチンときたんです。

そこで何でそれがあたり前なのか、床屋さんの定休日について調べてみると、出てきたのが「休電日」。

もちろん、日曜日にお客さんが多いので、休めないということもあったのでしょうが、昭和の初めで電力が不足していた日本では、電気の使えない「休電日」というものがあって、それが月曜日だったため(地域によっては火曜日)、その日を休みとした理髪店の定休日として、現代に定着してしまっているんだとか。

電気が使えない日があったなんて、日本にもそんな時代があったんだぁ。

考えてみたら、そういう過渡期があって当たり前なんですが、あまりにも今の生活で電気がそれこそ”ある”とか”ない”なんて言葉では意識しないほど、あるのがあたり前になってしまっているので考えたことがありませんでした。

ダメだなぁ、反省反省。

気付かせてくれた不機嫌な床屋さんありがとう♪

そういえば、友達で電力会社に就職した子がいて、若いうちはダム勤務で遊びに行けないって嘆いていたのを思い出しました。

あの頃はたんなる就職先としか考えてなかった。

電力会社の方、毎日ご苦労様です☆



でも…

次の休みまで髪が切れないのか…





『アイドロン 秘密の国の入口』

2008-03-14 12:43:00 | 本と日常
「暑さ寒さも彼岸まで」といわれる通り、ずいぶん暖かくなってきました。

セーターを着ていると汗ばむほど。

この時期に買い物に行くと、美味しそうな桜餅と牡丹餅が店頭に並べられていて、ついつい足を止めてしまいます☆

アンコ好きなんですよね♪

最近読んだ本は、

ジェーン・ジョンソンさんの*(キラキラ)*『アイドロン 秘密の国の入口』*(キラキラ)*☆

青い表紙と佐野月美さんの、かわいい絵に惹かれて購入しました。

しゃべる猫と、ドラゴンなんかが出てくるファンタジー♪

この猫がとってもいいんです☆

ちょっと怖い店長のいるペットショップで、モンゴルケンカウオという魚を見た十二歳の少年ベンは、その魚が欲しくて欲しくてたまらなくなります。

この魚は名前の通りケンカするの?

でもいったいどうやって?

そのモンゴルケンカウオを買うために、お父さんの車を洗い、となりの芝刈りをし、とんでもなく嫌だったけれど、妹で赤ちゃんのアリスのおしめもかえ、せっせとおこずかいをためるベン。

姉さんのエリーに見つかったらとられてしまうので、お金はいつもポケットの中。

そしてようやくお金がたまり、親戚のおじさんから(ベンはこのおじさん一家が大嫌い!)お古の水槽もゆずってもらえることになって(そのかわりお父さんがおじさん家の庭仕事をしなくっちゃならない!)、あのちょっと怖い店長のいるペットショップにやってきたベン。

ドキドキしながらモンゴルケンカウオの入った水槽の前に行こうとすると、何かがベンのジャケットを引っ張ります。

そこにいたのはケージに入れられた一匹の黒と茶色のまざった小さな猫。

そして、あろうことか、その猫はベンにこう言うのです。

「おれをつれて帰ってくれ、ジムぼうや」

人間たちの知らないもうひとつの世界「アイドロン」

自称探検家のくせに、方向音痴の猫。
庭の焼却炉のかわりにと売られてきたドラゴン。
水に濡れていないと人間の少女の姿になってしまうアザラシ。
クリケットの試合会場に乱入してきたひたいに角のある馬、ユニコーン。

もうひとつの世界「アイドロン」はある危機に直面しています。

それを救うことができるのは、予言にいわれる三人の子ども達…

『指輪物語』で有名なトールキンに大学時代感銘を受け、自身でも古代語の研究をし(トールキンは古英語、中世英語を専門とする言語学者)、卒業後はトールキン作品の出版社で編集にたずさわったという作者。

この作品の中にも、『ホビットの冒険』とか、「ゴクリ」の人形とかが登場します♪

NHK教育で放送されていたBBC製作のSFドラマ、『ドクター・フー』に出てくる「ダーレク」のおもちゃなんかもベンの部屋にあったりして思わずニンマリ☆(ファンです)

しゃべる動物が登場するということで、映画第二弾が今話題の『ナルニア国物語』を連想される方がいるかも知れませんが、こちらはもっとコミカルで現代風♪

何とか困難を切り抜けて、家族が再会する感動の場面で、手を取り合って喜ぶ両親に対して、「おえっ」「ふたりとも、いちゃいちゃしちゃって…」と子どもたちはいたって普通に子どもらしい反応しますしね♪♪

そして何より、登場する猫たちの描写が楽しいったらありません☆

「本当の名前」も重要な意味を持っていて、このあたりは『ゲド戦記』を彷彿とさせます。

この『アイドロン』シリーズは、全3部作になる予定で、この『秘密の国の入口』はその一作目。

気楽に読むにはピッタリな本なので、続きが楽しみ♪






トップランナー

2008-03-08 23:58:00 | 本と日常
NHKの「日本のこれから」という番組を見ていました。

作家のあさのあつこさんが出ていたので☆

今回のテーマは「学力」。

日本の教育について、様々な人たちが意見を言っていました。

大人たちが自分の意見を言うのに必死で、他人の意見を聞いて、そこから新しい発想を思いつく、という発展型のディベートじゃなかったのが残念。

「何のために勉強するのか教えて欲しい」という子どもたちの意見もありました。

すごく勉強がしたい、と社会人になってからは思うんだけどな~

年齢と共に教えることを決めるんじゃなくて、教えている内容でクラスを選べたらいいのに。

大学もそろそろ、入試を廃止して、卒業資格試験みたいなものだけにできないのかな?

うちの職場では、中学を出ただけの人と、大学を出た人が同じ仕事を同等にやっています。

あさのさんの出番はちょっぴり。
声ちょっとハスキーでした☆

NHK教育の「トップランナー」という番組には、直木賞を受賞した桜庭一樹さんが出演。

本人が自分の作品を朗読するという、余計なコーナーもありましたが、桜庭さんの家の本棚が見られて、とっても興味深かったです♪

桜庭さん、空手道場に通っているとかで、別の番組で、空手着を着て、ポーズをつけている姿でグラビア(!)撮影しているところを見たことあります…

仕事、断れないのかなぁ~



『解体新書』

2008-03-06 19:02:00 | 本と日常
気を張っていると、人間風邪も引かないのかも知れません。

どうにかその仕組みを解明して、医療に役立てられないものか?

仕事のレポート提出が5日までだったので、このところずっと残業してドタバタしていたのですが、締め切りにどうやら間に合いそうだとわかったとたん、風邪でダウンしてしまいました。

自分が発案者だったので、最後まで見届けたかったのに~

泣く泣くチームの他のメンバーに後を託し、戦線離脱。

それでも気になって、真っ赤な顔にマスクという格好で今日なんとか出社すると、どうやら無事に上司のOKはもらえたみたい。

うぅ~、でもやっぱり不完全燃焼だぁ!

レポートが出来上がったあの瞬間、張り詰めたものが途切れて、風船の空気が抜けるみたいに気が抜けちゃったんですよね。

ていうか、「気」って何だ!?

人間の体って不思議です。

寝ている間は集中力が続かなくて、それでも何もしないと落ち着かないので、ボーとした頭でつまみ食いした本は、

ロバート・A・ハインラインの*(キラキラ)*『月は無慈悲な夜の女王』*(キラキラ)*

H・P・ラグクラフトの*(キラキラ)*『ラグクラフト全集1』*(キラキラ)*

ダイアナ・ウィン・ジョーンズの*(キラキラ)*『魔法! 魔法! 魔法!』*(キラキラ)*

ダイアナのこの本は彼女の書いた短編を集めたもので、頼りない魔法使いを”飼っている”ちび猫姫トゥーランドットとか、もうすぐ十五歳になる息子に頭の上がらない機械音痴のSF作家とか、次々に友達から妹や弟の子守を押し付けてられてしまう、三人姉妹の長女とか、楽しいキャラクターがたくさん出てくる、魔法がいっぱいのお話☆

前の2冊が、ハードSFにホラーものだったから、こういうクスクス笑える本を読むと元気がもらえます♪

というか、夢中になっていて風邪を引いていることを忘れていただけかも…

お気軽?

そんな薬は発明されないだろうなぁ…