私的図書館

本好き人の365日

『フルダー・フラムとまことのたてごと』

2012-04-22 05:09:33 | プリデイン物語

新しい町にもようやく慣れて来ました。

野菜の安いスーパー。

ドラッグストアのポイント3倍日。

喫茶店のモーニングの内容。

ホームセンターの品揃え。

ゴミの出し方。

朝夕聞こえる子供たちの声。

地元の図書館の利用者カードもさっそく作りました。

その図書館で見つけたのが、アメリカの作家、ロイド・アレグザンダーの絵本。

 

『フルダー・フラムとまことのたてごと』(評論社)

『コルと白ぶた』(評論社)

 

 

ケルト神話をモチーフに、ロイド・アレグザンダーが作り出した架空の世界「プリデイン」

この2冊の絵本は、本編「プリデイン物語」の別巻として、昭和55年に出版されたものです。

「プリデイン物語」が大好きなので、ずっと読みたい読みたいと思っていました!

神託を下す白い豚ヘン・ウェン。

死の国の王アローン。

ドン一族の王子ギディオンに吟遊詩人の長タリエシン。

そしてとってもおしゃべり好きな王女さまエイロヌイ♪

妖精や地霊たちが身近に存在し、魔法使い達がかっ歩する、まだ人間が、自然と共に生きていた時代の物語、「プリデイン物語」

全5巻からなる本編は、豚飼育補佐の少年タランを主人公に、プリデインに魔の手を伸ばす死の国の王アローンとの熾烈な戦いを描きながら、冒険と友情、勇気と愛の物語が展開していきます。

2冊の絵本は、それぞれ「プリデイン物語」の重要な登場人物、放浪好きな王様フルダー・フラムと彼の持つ不思議な竪琴、タランと共に暮らす老戦士コルと白ぶたヘン・ウェンを主人公にしたもの。

時代的には2人がタランと出会う前のお話です。

ウソをつくとビィィィィン! と糸が切れてしまうフルダー・フラムの持つ不思議な竪琴。

普段はやさ男で口が軽いのに、友情に厚く親切を惜しまないフルダー・フラムは大好きなキャラクター!

ちょっと大げさに事実を脚色するのがたまにきずですが、そのたびに竪琴の糸がビィィン!ビィィン!と切れて、しょんぼり張り直す彼の姿がとってもよかった♪

コルは預言者ダルベンと共に、タランを育てたいわば師匠。

英雄に憧れ、冒険の旅を夢見るタランに、「やれやれ」という感じで豚飼育補佐という”立派な”肩書きをくれたのも彼。

そんな彼の若き日の武勇伝として本編でもふれられている「ヘン・ウェン救出劇」が絵本では語られます♪

 

この絵本を読むのがずっと夢だったのでとっても嬉しい☆

図書館でも倉庫みたいな所にしまわれていたため、司書さんが持って来てくれた時は、思わず「おぉ!」と感嘆の叫びを上げてしまいました(苦笑)

この土日で引越しの後片付けをするつもりだったけど、ま、いいか♪

 

引越しで映るテレビ局も増えたので(山の中にいたので電波が届かなかった…)、ヒガアロハさんのマンガを原作にしたアニメ「しろくまカフェ」も見られるようになりました! (マンガは『月刊flowers』連載)

しろくまくんが、見た目はカワイイのに、けっこう人をくったような性格なのがイイ☆

動物園で週2回のバイトをしているパンダくんとか、人間の飼育員さんとのやりとりとか、しろくまカフェで働くバイトの笹子さんだとか、つっこみ役のペンギンくんとか、動物と人間が普通に日常生活を送っています♪

楽しみが増えて幸せ~♪♪

図書館もこれからせっせと活用したいと思います!

 


五月の本棚 2 『タラン・新しき王者』

2005-05-15 11:18:00 | プリデイン物語
物語を読むのは楽しいけれど、読み終わった時は少し寂しい。

そう思わせてくれる本に出会えるって、本当はそれだけで幸運なんですけどね♪

今回ご紹介する本も、そんな読み終わった後もずっと心に残る物語。
ロイド・アリグザンダーの

『タラン・新しき王者』

です☆

ファンタジー小説は数々あります。
「指輪物語」「ナルニア国物語」「ゲド戦記」「はてしない物語」「空色勾玉」「ハリー・ポッター」などなど☆

魔法使いに戦士。モンスターに妖精に偉大なドラゴン。現実には存在しない世界なはずなのに、それらの物語を通して読者に語られるのは、どれも現実に直面しそうな人生の障害だったり、生きる上での苦悩だったり、友情だったり、愛だったり。どれも大好きな作品です☆

このロイド・アレグザンダーの作品、「プリデイン物語」もそんな逸品!
武勇と冒険に憧れる”豚飼育補佐”の少年タランが、英雄ギディオン王子や、老預言者ダルベン、よき理解者コルなどの助けを借り、旅の仲間と共に様々な苦難に打ち勝ち、成長する物語。

神託を下す豚ヘン・ウェンや、死者を甦らせる黒い釜、人の一生の織物を織る運命の三人の女神といった神秘的な要素から、少年の旅立ち、出会い、別れと悲しみ、裏切りに友情といった、人間が成長する上で困難だけれど通らなければならない大切な問題が、「プリデイン」という神話や伝説に登場しそうな、それでいてまったく新しい世界を舞台に語られていきます♪

第一巻「タランと角の王」
第二巻「タランと黒い魔法の釜」
第三巻「タランとリールの城」
第四巻「旅人タラン」

これまでご紹介してきた四冊で、タランやドンの一族の活躍もあって、しだいに力を奪われてきた死の国の王アローン。

この第五巻、最終巻で、ついに彼は炎の剣、王者にしか抜くことのできないディルンウィンを奪い去ることに成功してしまいます。

迫り来る死の国の不死身の軍隊。
仲間が殺されるごとにその力が強くなる不気味な狩人。
人々に死の訪れを告げるというグウィンの角笛が響く中、プリデインに滅亡の危機が迫ります!

もう読んでいてハラハラ。

ずっと共に旅をしてきたような気持ちになっていたので、仲間たちが次々と戦いに身を投じるたびに、なんて戦争は大切なものをこんなにも簡単に奪ってしまうのかと、怒りさえ感じました。

王様のくせに放浪くせのあるフルダー・フラムや、頑固な妖精族ドーリ、いつもタランのそばを離れなかった毛むくじゃらの忠義者ガーギといった仲間たちに襲いかかる危険と苦渋の決断。タランがずっと世話をしてきた白い牝豚ヘン・ウェンや、いたずら好きが玉にきずな優秀な斥候カラスのカア。人を乗せて疾走する巨大な山猫リーアンに、タランの愛馬メリンラスや巨大な怪鳥ギセントまでが、過酷な試練にさらされます。

そして、タランの思い人、リール王家の末娘、エイロヌイ王女までが、混乱する戦場の中で…

あぁ、この物語がこれで最後だなんてもったいなさすぎる~

夢物語や、どこか抒情詩的な物語と違って、アメリカの作家の描く世界はどこか現実的。そこがいつものファンタジーと違ってまた魅力。

タランたちの暮らすカー・ダルベンなんて、ほんと貧乏くさくて、まるで西部の開拓小屋みたいだし(笑)
フルダー・フラムの持つ、おおげさな話をすると弦がひとりでに切れる竪琴も好きだった。

いっそ、スタジオジブリでアニメ化してくれないかな?
ブタも出てくるし、猫のリーアンなんて、まるで猫バスみたいだし、怪鳥ギセントと名前の似た巨大空中戦艦もどっかで飛ばしてたような気がする…

実をいうと、「プリデイン物語」には、別巻として、「コルと白ぶた」「正直な竪琴」という二冊の絵物語と、タランの出生の秘密を描いた「すてご」という短編集があるそうです。

欲しい!
読みたい!

でもネットで探しても品切れで手に入らない~
根気よく探すっきゃないかな?

できれば、中高生の方に読んでいただきたい。

もちろん、ファンタジー初心者から、かなりの読書家にも、納得していただける作品だとは思います。

まあ、多少のアラは大目に見て下さい(苦笑)
もっとも、物語を愛する想像力のある方で、まだこの物語を知らない方に「こんないいもの見つけたよ~」と自慢したくなる作品であることは確かです♪

五月の爽やかな日差しの中。
あなたもどうぞ、豚飼育補佐の少年タランたちと共に、プリデインの大地を旅してみませんか?

エイロヌイ王女のおしゃべりや、フルダー・フラムの奏でる竪琴の音色が、きっとあなたを待っていてくれますよ☆


「あなたくらいすばらしい豚飼育補佐はプリデインじゅうさがしてもいないと、わたしはかたく信じてるは。 ほかに何人いるか、わたしは全然知らないけれど、それは今問題じゃないでしょ」









ロイド・アリグザンダー  著
神宮 輝夫  訳
評論社

五月の本棚 『旅人タラン』

2005-05-10 00:51:00 | プリデイン物語
わたしは、だれだろう?

そんな疑問に誰でも一度はぶつかるんじゃないですか。

私は何者で、何が出来て、何のために生きているのか?

もしかして、私には大きな使命があるんじぁないのか?

本当は、とっても大切な存在で、誰にでも愛される日が訪れるのではないのか?

私がこの世界に生きている答えが、きっとどこかに…

そんな思いに駆られて、思い切ってその答えを見つけに旅立てたら、どんなに「生きてる」って思えるだろう。

でも、現実は、そんな余裕を私達に許してはくれない。

―――いえ、諦めるのはまだ早い!!

そういう時のために、私達人間には、秘められた能力があるじゃないですか♪

想像力と、古の経験を伝える「文字」を頼りに、冒険と探求の旅に出る。物語の主人公の姿を借りて、自分の心の奥底に眠る光を求め、”現実”の体験をするために本のページをめくる。そう、本の中で起こることは空想だけれど、それを読んで感じたことはあなた自身の本物の感情。そこからもらうことの出来る経験は、確実に私達の中で、何かを変えていく。

今回は、そんな驚きと感動をあたえてくれる物語の中から、一冊の本を紹介してみたいと思います。

先月から読み続けている、アメリカの作家。
ロイド・アリグザンダーが豚飼育補佐の少年を主人公に作り上げた新たな世界「プリデイン物語」。

その第四巻にあたる

『旅人タラン』

です☆

死の国の王アローンの魔の手を撃退し、思いを寄せるリール王家の王女様、おしゃべり好きな金髪の乙女、エイロヌイの危機をなんとか救った主人公のタラン。
モーナ島にエイロヌイを置いて、故郷のカー・ダルベンに戻ってきたタランでしたが、考えるのは、エイロヌイと自分のことばかり。

かたや古き血に連なる王家の王女様と、かたや生まれも定かではない豚飼育補佐の今の自分。

あまりに違いすぎる二人の立場に、自分はもしや高貴な血の生まれなのでは…と、かすかな希望にすがるタラン。
我慢できなくなった彼は、老予言者ダルベンに頼みこみ、自分の両親を探す旅に出る許しをもらうのでした。

最初は、自分の氏素性を明らかにして、晴れてエイロヌイに結婚を申し込むつもりのタランでしたが、この旅は、そんな単純な探索行にはなりません!

荒れた土地を守り、耕す農民の夫婦。
多くの富と兵士を持ち、つまらないことで互いに争う領主達。
人間を軽蔑して、不死を願うあまり、死そのもののようになってしまった魔法使い。
他人を利用し、良心のかけらも持たない野武士。
必要な物はすべていつか流れてくると信じて、川に網をしかけ続ける家族。
鍛冶屋に機織り、技を磨くことにすべてをそそぐ陶工。

たくさんの人との出会いの中で、タランは悩み、苦しみ、学びながら、自分は何者なのかと問い続けていきます。

「ほんとうに、それを、おまえはのぞむかの?」

高貴な血の生まれ。
見も知らぬ両親とのつながり。
田畑を耕し、家畜の世話をし、鍛冶場で鉄を打ち、羊の毛をすいて機を織る。

自ら鍛えた剣を持ち、自ら織ったマントを身につけ、さすらい人となったタランは、やがて、自分の真の姿をうつすといわれる、フルーネットの鏡にたどり着きます。

その鏡にうつる、タランの真の姿とは?

読み終わってビックリ!!
まるで自分自身が、タランと同じように試されているような気になってしまいました☆

「お前は何者なのか?」と。

自分の生まれた過去には、確かに血縁や、家、祖先たちの恩恵が働いています。でも、今、自分が自分であるのは、自分がこれまで生きて、出会って、体験して、人々と作ってきた関係があるからではないのでしょうか。過去を土台に、しっかりとその上に立ち、積み上げて来た自分という”今”。それはひとりひとり違っていて、だからこそ、自分が生きてきたことの証。

タランの周りには、多くの仲間がいます。
老預言者ダルベン。良き指導者コル。放浪クセのある王様、吟遊詩人のフルダー・フラム。妖精族の頑固者ドーリ。かた時もそばを離れない毛むくじゃらのガーギ。スモイト王に、ドン一族の王子ギディオン。そして、いつも明るく、けっしておしゃべりの途切れない元気な王女さま、エイロヌイ。

彼らはタランが高貴な血筋だから、彼が好きなのではありません。

彼が彼だから、みんなタランが大好きなのです☆

本の魅力は、自分が知っているのに思い出せない秘密を明らかにしてくれること。自分の中に、こんな感情や思いがあったと気付かされることもしばしば。その度に、自分の経験値が上がっていくようです☆

そうそう、今回忘れてならないのは、フルダー・フラムを乗せて活躍する見事な愛馬。
…いや、愛猫かな(笑)

巨大猫、リーアンの活躍にも、期待して下さい☆









ロイド・アリグザンダー  著
神宮 輝夫  訳
評論社

四月の本棚 3 『タランとリールの城』

2005-04-24 22:35:00 | プリデイン物語
今月は、ロイド・アリグザンダーの「プリデイン物語」を紹介しています☆

物語自体は、ロイド・アリグザンダーのオリジナルなのですが、名称やモチーフの多くを、ケルトの神話、特にウェールズ地方に伝わる古い伝説からとっています。

死の国アヌーブンの王アローン。
実りの女神ドン。
海神リール。
ギディオン王子に吟遊詩人の長タリエシン。

妖精や地霊たちが身近に存在し、魔法使い達がかっ歩する、まだ人間が、自然と共に生きていた時代の物語♪

それらをベースして、作者が想像力と、若い人たちへのメッセージを込めて新たに作り出した世界「プリデイン物語」

今回は、その第三回。主人公タランが思いを寄せる、エイロヌイ王女に重大な危険が迫る、スリルと驚き、そしてほんのちょっぴりのロマンスを含んだ冒険譚♪

『タランとリールの城』

を、ご紹介します☆

「わたし、王女になんか、ちっともなりたかありません!」

リール王家の血を引く金髪の乙女エイロヌイが、タラン達と共にカー・ダルベンで暮らすようになってから、どれぐらいの歳月が流れたのか。裸足で駆け回り、服を引っかけ、いつもどこかしら擦り剥いている王女様に、保護者である、老預言者ダルベンは、モーナ島のルーズルム王とテレリア王妃のところでしばらく暮らし、王女にふさわしい立居振る舞いを学ぶようにと言い渡します。

不満げなエイロヌイ同様、彼女との別れを納得しようとしながらも、どこかヘンな気分に悩まされるタラン。

いまだ豚飼育補佐であるタランは、王女さまとの身分の差を意識してしまい、屈託なく、カー・ダルベンでおしゃべりしまくる彼女に、自分の気持ちを伝えられずにいるのです。

無事にエイロヌイをモーナ島まで送り届けるために、毛むくじゃらのガーギと、カラスのカーを伴って、彼女に同行することになったタラン。

そんな彼らを、港で待っていたのは、遠くモーナから迎えに来た、ルーン王子でした。

そして、やがてタランは知るのです。ルーズルム王とテレリア王妃が、エイロヌイを、この息子のルーン王子の妃にしようと考えていることに!

ネタばらしするなって?

いえいえご安心を。
今回、こんなことは序の口。
かえって王子に遠慮して、エイロヌイを譲ろうと(「私は誰のものでもなくってよ!」)するタランがいたりして、そういう”美味しいところ”も宣伝しておきたいんです☆

しかもこのルーン王子。
お坊ちゃんというか、ボンボンというか、どうみても数々の冒険を乗り越えてきたタランとは比べ物にならない。エイロヌイのことを思いながらも、ルームズ王との誓いで、この恋敵のルーン王子を補佐しなくちゃいけないタランの板挟み状態がなんとも心が押される!

しかも、このルーン王子には、どんでんがえしの展開が待っていたりして☆

今回も、もちろん、春だからという理由でフラフラ旅に出てしまう困った王様、吟遊詩人のフルダー・フラムも登場!
いつも散々な目に会う彼は、今回も猫にまつわるちょっとしたトラブルに見舞われます(笑)←この意味は読んでのお楽しみ♪

なかなか凝った腹芸を披露してくれる、ドン一族のギディオン王子。
ほんと、この人のあらわれる所、もめごとアリって感じで、密かに私は「プリデインの水戸のご隠居」って呼んでいます☆

エイロヌイが、いつも服の隠しに入れて「安ぴかおもちゃ」と呼んでいる、リール王家の黄金のたまの秘密も今回ついに明らかに!

肩書きや身分に対するコンプレックス。
それを克服するものとは何か?
人は、何によってその人たるのか?

タランの恋の悩みは、人生における様々な場面での悩みに共通していて、彼の苦悩と決断が、一つの指針を与えてくれているような気がします。

ロイド・アリグザンダーの筆は、余分な装飾をはぶいて、どんどん核心だけでストーリーが進んで行くようで、想像力の余地がたくさんあります。そこが、新鮮で、この物語の魅力の一つでしょう。

春の陽気に誘われて、自分の王国を飛び出してしまう困った王様、吟遊詩人のフルダー・フラムと共に、タランの冒険の仲間に参加してみませんか?

でもこれだけはご用心。

自分をみかけ以上に大きくみせたり、立派にみせようなんて思ったら、フルダー・フラムの竪琴の弦はびぃぃん! とたちどころに切れてしまうのです。

人間、身の丈に合った自分が一番♪

そんな自分でも、認めてくれる大切な人を、失わないようにしなくちゃね☆











ロイド・アリグザンダー  著
神宮 輝夫  訳
評論社

四月の本棚 2 『タランと黒い魔法の釜』

2005-04-17 23:52:00 | プリデイン物語
たまの休日だというのに、ダラ~として一日が終わってしまいました。

たまの休日だから、ダラダラしちゃうのかな?

掃除に洗濯、買い物と、やらなきゃいけないことはたくさんあるのに、つい「明日でいいか」と、なまけ心が甘くささやく。
こんなことじゃいけない。自分の心を励ますためにも、自分の義務と使命に果敢に挑む、少年のお話を紹介しましょう☆

ロイド・アリグザンダーの「プリデイン物語」第二弾!

今回は、魔法の釜を求めてタランと仲間たちが探索の旅に赴く、

『タランと黒い魔法の釜』

を、ご紹介します☆

あなたが、親から自立できたと思ったのはいつごろですか?

一人暮らしを始めた時?
就職して自活できるようになった時?
それとも、結婚して自分の家庭を持った時でしょうか?

人も動物も、いつか親の庇護のもとを離れ、一人で生きていくことを学ばなければならない時がやってきます。生き物は、そうして初めて自分を見つめ、世界の中の自分に気が付いていくのです。

少年だったタランも、相変わらず「豚飼育補佐」の身分ではあるものの、老預言者ダルベンから、自分の剣を与えられるほどになりました。ただし、成長したから剣を渡されたのか、成長するために剣を渡されたのかは、微妙なところ☆

まだまだ、名誉や栄光を夢見る危なっかしい少年に変わりなく、女心にも鈍いタランは、今日もエイロヌイに怒られてばかり。

物語は、プリデインを守るドン一族の王子、前のお話でタランを助けてくれた、ギディオンが現れて、タランの住むカー・ダルベンで会議を開くところから始まります。

角の王の脅威は退けたものの、死の国の王、アローンの作り出す、不死の戦士に苦しむ人々。この現状を打破すべく、ギディオン王子が考え出した作戦は、果敢にもアローン自身の王国、アヌーブンを攻撃し、死者を戦士に蘇らせるという、黒い魔法の釜を奪って、打ち壊してしまおうというものでした!

アローンの本国に攻撃をかけることになるその戦いは、プリデインの各諸侯が参加する、大掛かりなものになると予想され、タランの師匠、老戦士コルを始め、吟遊詩人で一応王様のフルダー・フラム、妖精族のドーリなど、かつてのタランの仲間たちも参加します。

その戦いに加えてもらえることを知り、単純に喜ぶタラン。
しかし、それは、辛く苦しい自分との戦いが待っている、過酷な旅の始まりでもありました…

今回は、タランの精神的な成長、とくに、多くの決断と選択をせまられるシーンが見どころです♪

タランに大きな影響を与える、吟遊詩人の長、タリシエンの息子アダオン。
自分に正直に、律儀なまでに正しき道に従おうとし、彼の帰りを待つ婚約者を心から愛するアダオン。
また、功名心に取り付かれ、なんとか名を上げようとタランにライバル心を燃やす、北の国のペン・ラルカウ王の末子、エリディルもタランの成長に一役買います。

そして、モルヴァの沼地に住む、すべてを見通す力を持つ三人の魔女。オルデュ、オルウェン、オルゴクがタランに与える過酷な試練。

魔法の釜を打ち壊すために要求される、その代償。

大切な仲間を守り。大切な想い出を守り。名誉と誇りを守り切ることがはたしてできるのか?

決断を迫られ、悩むタラン。

いくたの戦に参加してきたアダオンは言います。

「血に染まった野よりも、よくたがやされた野のほうが名誉だ…」

今回も前作にまして、タランはもちろん、毛むくじゃらのガーギに、姿を消す小人のドーリ。放浪クセのある困った王様フルダー・フラムに、おしゃべりな王女エイロヌイなどの、個性的で魅力的ないつもの面々が大活躍!!

はたして、大袈裟なことを口にするたびに切れる、フルダー・フラムの竪琴はいったい何回切れるのか?

彼女を捕まえた敵将は、エイロヌイのおしゃべりを止めることができるのか(笑)

そして、老預言者ダルベンの幼少時代も明らかに?

個人的には、手柄にこだわるエリディル王子に感情移入しちゃって、何度もそのプライドに支えられた、弱い心に同情してしまいました。
きっと、今回は一番人気がなさそうなのも、かわいそう。

キディオンやダルベンの助けもなく、必死で仲間を引き連れ、危険な道にあえて飛び込むタランの苦悩。

楽な道はいくらでもあるのに、信じた道を進む決断。
後悔と迷い。
本当にこれでいいのか?
自分は間違ってやしないかという疑問がつねにつきまとい、葛藤する。

物語の中の出来事なのに、とっても身につまされてしまい、タランと一緒になって考えている自分がそこにいました♪

大人の世界でタランが見ることになる、裏切りや欲望。しかし、それでも彼は大人の世界に入っていくしかありません。

そして彼は知るのです。
確かに人間の心には邪悪なものや、弱さにつけいる誘惑が潜んでいる。
でも、それと同じくらい、いや、もっと多くの愛や喜びも、また、同じ人間の中で輝いていることを☆

そう、今日は一日、ダラ~と背骨の抜けている私ですが、きっとやる気と根性はどこかにあるはず。

明日からは頑張ります!

変われるからこそ、人間には希望がある♪

…これを希望的観測とひとは呼ぶそうですが(笑)

タランと仲間たちの物語。
きっと、あなたにも、何か大切な物を伝えてくれるはず。

ぜひ、本屋さんでみかけらた、手に取ってみて下さい☆









ロイド・アリグザンダー  著
神宮 輝夫  訳
評論社

四月の本棚 『タランと角の王』

2005-04-10 23:45:00 | プリデイン物語
さあ、今回は、アメリカの誇るファンタジー作家。
ロイド・アリグザンダーの

「プリデイン物語」

の登場です☆

最初に訳されたのが一九七二年。本屋さんでは最近見かけませんが、これがどうして、忘れてしまうにはあまりにも、もったいない名作なんです!

今回は五部からなる「プリデイン物語」の第一部、

『タランと角の王』

をご紹介します☆

舞台となるのは古代ウエールズ(イギリスを長靴に例えると、その靴先の上にあたる部分)を彷彿とさせる、空想の国プリデイン。
人里離れたカー・ダルベンで暮らすタランは、詩や物語に出てくる英雄に憧れ、いつか自分も、そんな冒険の旅に出かけたいと夢見ている普通の少年です。鍛冶場で馬の蹄鉄をうったり、家畜の世話をする毎日には、少々刺激が足りないと思いはじめたタランに、ある日、タランにとっては師匠のような存在の老戦士コルが、やれやれという感じで「豚飼育補佐」という”立派な”肩書きを与えてくれます。

この「豚飼育補佐」。
タランは不満かもしれないけれど、なかなかどうして、けっこう重要なお役目だったりします。

タランが世話をしている白い豚、ヘン・ウェンは、実は神託の力を持つ不思議な豚。カー・ダルベンのあるじで、タランの親代わりでもある三七九歳になる予言者、ダルベンにとっても、そしてプリデインすべての生き物にとっても、とても大切な豚なのです。

かなりの有名人(?)らしく、ヘン・ウェンの神託を聞くために、遠く都から高貴な人がわざわざ訪ねて来るぐらい。

実は物語の結末にまつわる大きな鍵を、このヘン・ウェンがにぎっています♪

さて、そんなカー・ダルベンで、ある日突然、事件が起こります。こともあろうに、タランの目の前で、ヘン・ウェンが何かにおびえたように柵をくぐり抜け、逃げ出してしまうのです!
「豚飼育補佐」としては、なんとしてもヘン・ウェンを捕まえなくてはならない!
彼女を追って単身森の中に分け入るタラン。
そこで少年が目にすることになるのは、白い豚ではなくて、馬に戦士、角の王に偉大な英雄。

こうして、タランにとって、夢に描いていたものとはずいぶん違うかたちで、突然、憧れていたはずの冒険の旅が始まってしまうのです☆

この物語。下敷きになっているのは、古代ウエールズの神話や伝説なのですが、それだけではなくて、オリジナリティがふんだんに散りばめられています。

特にキャラクターが最高!

死者の国の王アローンや、実りの女神ドンの一族である、ギディオン王子などが登場する、いわゆる善と悪の戦いが霞んでしまうほど、その魅力は物語いっぱいを埋め尽くしています!!

まずはなんといっても、ヒロインの少女エイロヌイ♪

海神リールの一族で、魔法使いになるために、親戚の魔女のところで修行をしているらしいのですが、ひょんなことからタランの旅の仲間に加わります。
これがまた、やることが豪快で、さっぱりした性格で、とにかくよくしゃべる!

あいにく豚飼育補佐殿は、彼女のおしゃべりには興味がないみたいだけれど、もちろんそんなことにはかまわず、しゃべり続けるエイロヌイ☆

彼女が登場するだけで、場面がとたんに明るくなるみたい♪

エイロヌイが服のかくしに持っている、金色の玉は、リール王家の秘密の魔力を伝えるアイテムらしいのですが、それを彼女は、いつも懐中電灯代わりに使って、「わたしの安ぴかおもちゃ」と呼び、無造作にタランに投げてよこしたりする。そんな、こだわらないところも性格を表していて、とってもとってもイイ感じ♪

多少口が悪いけれど、悪意はないのでタランじゃないけど許せちゃいます☆

次は放浪の吟遊詩人、フルダー・フラム。

実は一国の王様だったのに、自分の国があまりに地味だというので、吟遊詩人になろうとしたんだとか(笑)
ところが、吟遊詩人の試験に落ちてしまい(笑)、かわいそうに思ったのかそんな彼に吟遊詩人の長タリエシンは、ある竪琴を送ります。

これがまた憎めない竪琴なんです!

誇張クセのあるフルダーが、一人の敵を十人なんて言おうものなら、そのとたんに、びぃぃん! といって弦が切れる(笑)

それだけなら一本くらいで済むけれど、十人の敵を百人、二百人なんていった日には、びぃぃん! びぃぃん! と全部の弦が切れてしまう♪

その度に、しょんぼりと弦を張り替えるフルダー・フラムの姿は、哀愁が漂っていて、か、かわいいゾ~☆

さすがは吟遊詩人の長タリエシン。
同情したわけでもかわいそうに思ったわけでもなくて、修行だったんだ♪

この他、姿を消すことが出来ると信じて、いつも息を止めている妖精族の小人ドーリ。

いつも、むしゃむしゃもぐもぐのことばかり考えていながらも、純真で忠義に厚い毛むくじゃらの生き物、ガーギ。

渦巻き城に、黒い剣ディルンウィン。
魔法の釜に、不死身の戦士。

聞いただけで、ワクワクするような要素を詰め込みながら、ファンタジーを読み慣れた方には、案外あっさりとしたストーリーに思えるかもしれないほど、すべてがすっきり凝縮されていて、余分な物はいっさい無し!
それでいて、一度読んだら、登場人物たちが心に住み着いてしまうこと間違いなしの魅力にあふれた筋立てになっています☆

一冊づつが、独立したお話としても十分楽しめるプリデイン物語。

でもやっぱり成長していく主人公たちの活躍が読みたいですよね♪

引き続き、タラン達の活躍する、第二部、第三部と紹介していきたいと思います。
ちょっと長くなりますが、よろしかったらしばらくお付き合い下さいませ☆


「人はみな、成長し、変わらねばならぬ時がくるものじゃ」


一人の少年、タランの成長物語。

さあ、魅力的な仲間と共に、あなたもプリデインの大地を一緒に旅してみませんか?










ロイド・アリグザンダー  著
神宮 輝夫  訳
評論社