私的図書館

本好き人の365日

川上弘美 東京日記4 『不良になりました』

2014-03-26 05:30:25 | 日本人作家

消費税増税前になんとか買えました。

川上弘美さんのエッセイ、東京日記4『不良になりました』(平凡社)

著者 : 川上弘美
平凡社
発売日 : 2014-02-14



話は少し飛びますが、先日、芥川賞と直木賞の創設150回を記念して行われた「芥川賞直木賞フェスティバル」の様子を見たのですが、作家の皆さんが思い思いに着飾った衣装を身に付ける中(特に桜庭一樹さんは目立っていました♪)、川上弘美さんと宮部みゆきさんのお二方が、とても自然な服装をされていて、(やっぱり作家はこうでなくちゃ!)と、とても好感を持ちました。

いや、ただそれだけなんですけどね(苦笑)



東京日記は川上さんがエッセイ風に書いている文章で、その奇妙な味と文章のリズムが好きで読んでいるシリーズ。
本当のことも少しは含まれていると思います(苦笑)

あ、でも今回川上さんがMRI 検査を受けてくれたおかげで、検査の時にヒートテックを着ていかない方がいいということと(鉄分が含まれるため電子レンジの原理で火傷する危険性がある)、刺青や眉いれずみをしている場合も注意が必要だということは初めて知りました。

こうしたタメになる知識は本当にまれです。
この本のウリは、そういう所じゃなくて、どうでもいいようなところ(笑)

日に干されたイグアナだとか(笑)

送られてきたウナギイヌのハガキだとか(笑)

前髪にふりまわされたり、ゲームのソリティアに熱を上げたり、病院で、電車で、お店で、ひっかかったり、気になったり、後悔したり、気持ちの整理がつかなかったりするところ(笑)

2010年から2013年にかけて書かれているので、震災当時の文章も載っています。

私が好きなのはトンボを捕まえては放してやる少女についてのところ♪


「トンボ獲って放つのが好きな女の子」

句会でその句を見て「いい句でしたね」と作者にいうと、女の子というのは作者の姪っ子のことだという。

その女の子は虫かごいっぱいぎゅうぎゅうにトンボを捕まえてきては、「さあ放してやるわよっ」、と女王様のような口調で数十匹のトンボを放すのが好きで、一日に何回も捕まえてきては・・・(笑)

ロシアで日本語学科の学生達と話す回では、日本のポストモダン文学についての発表で、日本の主人公は暗くてカワイソウ、一人で悩んでいてサミシイ、というので、どんな作品を読んだのかと聞くと、イサカコウタロウにミヤベミユキ・・・伊坂幸太郎と宮部みゆき。
ノルウェー産のスモークサーモンをロシア名物と思い込んでいた川上さんは、二人の名前が出てきて、虚をつかれた、と書いています(笑)

蕎麦屋で、(けっっっっ)とお腹の中で叫び、こんな店二度と来るか! と誓うところも好き♪



独特の観察眼に物の捉え方は、川上作品の特徴でもありますが、作家さんみたいな個性的な才能が無くても、ちょっと視点を変えて見ると、物事の意外な一面が見えたりすることってありますよね。

実は、自分が見ている世界を、他の人も同じように見ているかどうかなんて、誰にもわからない。

やわらかくというか、こわばった体をほぐすように、硬くなった心や感性をほぐすにはピッタリの本だと思います。

あぁ、面白かった☆





東日本大震災 『会いにいくよ』

2014-03-10 00:42:33 | 伝えたいこと

東日本大震災から3年を迎えるのを前に、この日曜日、TV各局で震災を特集した番組が放送されていました。

その中で、私も訪れたことのある町、宮城県の七ヶ浜町も映りました。

いまだ多くの人が暮らす仮設住宅。

町並みが消え広がる大地。

見覚えのある道路、見覚えのある田んぼ。

あれから3年が経つというのに、なかなか進まない復興。

 

講談社
発売日 : 2014-03-07

 

週刊少年マガジンで連載された、東日本大震災でボランティアとして活動した人々を描く、森川ジョージさんのマンガ、『会いにいくよ』(講談社)を買いました。

ゲストとして、有名マンガ家さんが何人も作画協力しています。

どのコマを誰が描いたのか当てるのも楽しい♪

原作は絵本作家の”のぶみ”さん。(『上を向いて歩こう!』講談社刊)

ボランティア活動の実体験を綴ったドキュメントです。

この原作も読みました。

 

TVから流れてくる信じられない光景。

混乱する情報に、追い討ちをかける原発の爆発。

現地の情報が不足する中、気持ちだけがあせり、自分にも何かできないかと行動を起こすと、とたんに「自己満足」「偽善」と非難の言葉が投げつけられる。

何かしなくていいのか?

自分に何ができるのか?

 

このマンガではボランティアが取り上げられていますが、決してそれを「正しい行動」だと賞賛しているのではありません。

それは作者もあとがきで語っています。

未曾有の大災害です。

何をしたらいいのか、何が必要なのか、余震は、放射能は、その情報すら手に入らない中、ここに登場する人々は、当時いてもたってもいられず、現地での労働という行動を選んだだけです。

 

「また何かが起こった時、私ならどう考え、どう行動をするのか」それを考えるきっかけになれば嬉しい、と作者は語っています。

 

ボランティアなんて偽善だと考える人もいます。

私もそれがベストな行動だとは思いません。

他の形で貢献したいと考える人もいます。

人はみんなそれぞれの考え方、それぞれの生活を抱えています。

震災を風化させるな! と思う人もいるでしょう。

もう忘れたい、と思う人がいても当然です。

人間なんです。

いろんな人がいます。

ただ、作者も、原作者も、この作品に参加したたくさんのマンガ家さんも、「まだ終わっていない」と思っていることだけは、メッセージとして伝わってきました。

まだ終わっていない。だから、また会いにいくよ・・・

これは、今、まさに起こっている現実だから。

 

東日本大震災を取り上げた物はいろいろありますが、マンガ家さんたちの情熱を知ることができる一冊です。

震災後、様々な取り組み、被災地での支援が行われていますが、マンガ家さんもサイン会などを何回も開いています。

この本も、初版の売上は義援金にするそうです。

マンガですが、すごくリアルです。

大げさでも誇張でもなく、私自身、ボランティアの現場で同じように感じたり、同じように悩んだりしました。

つらい描写もあります。

もちろん描かれていない所もあります。

でも、よく伝えている作品だと思いました。

すごく伝わってきました。

マンガって、すごいですね。