私的図書館

本好き人の365日

三月の本棚 『赤毛のアン』

2009-03-29 22:26:00 | 本と日常
にんじんみたいな赤い髪をした痩せっぽっちの女の子が、美しいカナダのプリンスエドワード島に住む老兄妹のもとに引き取られ、家族を得て成長していく物語。

今では日本でも有名な、カナダの作家、ルーシー・モード・モンゴメリが書いたこの小説が翻訳され、日本に初めて紹介されたのは1952年。
終戦から7年が経とうとする昭和27年のことでした。(三笠書房刊)

当初、翻訳者の村岡花子さんは『窓辺に倚る少女』という題名を考えていたそうです。

その題名に決まり、明日は印刷所に回すという夜、出版社の社長から電話が入り、一人の編集者から『赤毛のアン』という案が出ているがどうだろう、と訊かれます。

しかし村岡花子さんは『赤毛のアン』なんて全然ロマンティックではない、という理由ではっきり「嫌です」と断ってしまいます。

ところが、その話を夕食の後で家族にしたところ、村岡花子さんのお嬢さん(当時20才)が『窓辺に倚る少女』なんかより『赤毛のアン』のほうが素敵じゃない、と母親に強くすすめたことで、村岡花子さんは考え直し、急きょ題名を『赤毛のアン』に変更することが決まりました。

危なかった~

村岡花子さんのお嬢さんに感謝です♪

『赤毛のアン』だからこそ、学校でギルバート・ブライスに”にんじん”とからかわれたアンが、彼の頭に石盤をたたきつけるシーンが面白いのだし、髪を染めようと大騒動を巻き起こすエピソードが生きてくるんですよね。

そんなこともないかな?

ともかく、今となっては『赤毛のアン』という題名以外の『赤毛のアン』は想像できません。

というわけで、今回はルーシー・モード・モンゴメリの

*(キラキラ)*『赤毛のアン』*(キラキラ)*をご紹介しましょう☆

主人公アン・シャーリーは11才の女の子です。

早くに両親を亡くしたアンは、子供を欲しがる人がいるということで、スペンサー夫人に連れられて、カナダの大西洋岸にあるプリンスエドワード島にやって来ます。

目の前に広がる赤い土の道。
白い花が咲き乱れるリンゴ並木。
輝く湖水を過ぎると見えてくる緑の切妻屋根の家、グリンゲイブルズ。

家につくまで、アンは馬車の上でしゃべり続けます。

普段見慣れた住民にとっては何でもない景色も、彼女の目を通すと特別なものに映ります。

アンにとって、プリンスエドワード島の自然はとても美しいものでした。

それまでの孤独だった生活にようやく別れを告げ、これから始まる新しい生活に、胸をときめかすアン。

しかし、その家に住むマシュウ・クスバートとマリラ・クスバートが必要としていたのは、農場を手伝うことのできる男の子で、女の子ではありませんでした…

アンのおしゃべり。
そしてその突飛な(周りの大人たちにとっては)発想と想像力には不思議で強力な魅力があります!

大人って、この世界に慣れすぎだと思うんですよね。

大人にとっては何でもないことでも、子供にとっては世界の終わりを意味することだってあると思うんです。

例えば、楽しみにしていたピクニックに行くこととか☆

ある日、マリラの大切にしていた紫水晶のブローチが行方不明になります。

最後に触っていたのがアンだったため、マリラはてっきりアンが失くしたものだと思い込み、アンを問い詰めますが、アンは決して自分がやったのではないと言い張ります。

ついには、白状するまで部屋から出てはいけないと宣言するマリラ。

明日は友達とピクニックに行く日。
アンは一度も食べたことのないアイスクリームをとても楽しみにしていました。

このままではピクニックにいけない。
マリラやマシュウに対して、一度もウソをついたことのなかったアンでしたが、思い詰めたアンはついに自分がブローチをとったのだと告白し、ブローチが湖の底に沈んでしまうまでの顛末を語ります。

これでピクニックに行けると思ったアンでしたが、しかしマリラはその罰として、ピクニックに行くことを禁止してしまいます。

ところが、湖に沈んだはずのブローチが思わぬところから見つかり、アンの無実が証明され…

アンと接するうちに、古風で堅実でどちらかというと面白みのなかったマリラが、しだいに心を許していく様子に心打たれます。

そして何といってもマシュウ!!

この優しい人物は、いつでもどんな時でもアンの味方で、果てしなく続くアンのおしゃべりにいつまでも耳を傾けてくれるのです♪

「そうさな…」

で始まる彼の言葉が大好き☆

この他にも、他人のウワサ話が大好きなリンド夫人や、アンの腹心の友となるダイアナ。

このダイアナとアンの友情は生涯続きます。

アンが巻き起こす可笑しな事件♪

それは、世界にとっては何でもないことなのか知れません。
でも、アンと、その家族、友人にとっては何度も思い出しては笑い合うことのできる大事件。

マリラとマシュウというかけがえのない家族を得たアンの物語は、世界中の読者を魅了し、次々と続編が書かれました。

成長したアン。

大学生となり、恋をして、結婚するアン。

そしてアンの子供たち☆

アンの末娘は、マリラと同じ名前を与えられ、愛称でリラと呼ばれます。

 リラ・マイ・リラ(リラ、私のリラ)

アンにとって、マリラとマシュウから受け取った愛情は、終生忘れることのできない、大切なものとなります。

翻訳者の村岡花子さんは、戦時下で連日空襲の続く中、翻訳した『赤毛のアン』の原稿を包んだ風呂敷をかかえて、焼夷弾をやりすごしたそうです。

当時、敵性文学だったカナダの小説が出版される見込みはありませんでしたが、村岡花子さんにとって、それはすでに仕事ではなく、生きた証のようなものだったと、村岡花子さんのお孫さんが書いた本で読みました。

モンゴメリもまた、二度に渡る世界大戦の中を生きました。
『赤毛のアン』の最終巻、『アンの娘リラ』では、第一次世界大戦に出兵していくアンの子供たちの姿が描かれます。

どこかの国の遠いお話しではなく、喜び、悲しみ、心配したり、人を愛したり、アンは私たちのすぐ隣にいる友人。

『赤毛のアン』の魅力は、そんなところにあるのかも知れません。

にんじんみたいな赤い髪をした痩せっぽっちの女の子の物語。

あなたもアンの腹心の友になってみたいと思いませんか?

条件は簡単です。

それは、どこにいても、どんな時でも、「想像の余地」を見つけるってこと♪

どうぞ、アンのおしゃべりをお楽しみ下さい☆












ルーシー・モード・モンゴメリ  著
村岡 花子  訳
新潮文庫


『百億の星と千億の生命』

2009-03-22 13:43:00 | 本と日常
住んでいるところのすぐ隣が墓地なので、お彼岸のこの季節はお墓参りの人々でけっこうにぎわいます。

御先祖様は大切にしないとね☆

私は普段から心の中で感謝しているのでお墓掃除は両親におまかせです。

…今のところバチはあたっていません。

それでもスーパーで売っていた牡丹餅は食べました。

あんこが好きです♪

最近買った本は…

*(キラキラ)*『百億の星と千億の生命』 カール・セーガン

*(キラキラ)*『ザーヒル』 パウロ・コエーリョ

*(キラキラ)*「ウェストマーク戦記」3部作 ロイド・アリグサンダー
 『王国の独裁者』
 『ケストレルの戦争』
 『マリアンシュタットの嵐』

カール・セーガンは1996年に亡くなった世界的な宇宙物理学者。
『百億の星と千億の生命』は大きな数の数え方から、環境問題にも言及しているエッセイで、科学の楽しさや重要性を教えてくれます。

『ザーヒル』は、『アルケミスト』などの作品で有名な作者の半自伝的な夫婦の愛の物語。

「ウェストマーク戦記」は1986年度全米図書賞他、アメリカ図書館協会年間最優秀図書賞などに輝いた、18世紀頃のヨーロッパの架空の国「ウェストマーク」を舞台にした3部作。

独裁者や王侯貴族や外国の支配を受けない、民衆が主人公の国に生まれ変わるまでの激動を描いたお話で、第2次世界大戦で若きアメリカ兵として戦った作者の経験が生かされているそうですが、悩む主人公とそれを支える元気でおしゃべりなヒロインが魅力的☆

同じ作者の「プリデイン物語」が大好きなので、このお話も楽しみです♪


三月の名言集

2009-03-14 19:08:00 | 心に残った言葉

思い起せ、

君はどれほど前からこれらのことを延期しているか、

またいくたび神々から機会を与えて頂いておきながらこれを利用しなかったか。

しかし今こそ自覚しなくてはならない、

君がいかなる宇宙の一部分であるか、その宇宙のいかなる支配者の放射物であるかということを。

そして君には一定の時の制限が加えられており、

その時を用いて心に光明をとり入れないなら、

時は過ぎ去り、君も過ぎ去り、

機会は二度と再び君のものとならないであろうことを。








 ―マルクス・アウレーリウス「自省録」―



三月の本棚 「休館のお知らせ」

2009-03-12 23:12:00 | 本と日常
お知らせ。

この日記を始めてもうすぐ丸6年。
6年間、日々の出来事の記録の合間に、「私的図書館」と銘打って、オススメ本と気に入った言葉を紹介して来ましたが、今月を持ちましてひとまずお休みにしたいと思います。

飽きっぽい性格なので、これほど長く続くとは思っていませんでしたが、コメントを寄せて下さったみなさんとのやりとりが楽しくて、ここまで続けてくることが出来ました。

本当にありがとうございました☆

日記としてはこれからも続けていくので、その中で時々に読んだ本については書いていきたいと思っていますが、ひと月に何冊っていう紹介の仕方は今月でお終いです。

本の紹介は書いていて楽しかったのですが、読書の楽しみは自分でその本の魅力を発見し、引き込まれていくことでもあるので、紹介することでそのチャンスを邪魔してしまっているのではと、常にジレンマは感じていました。

自分で本屋さんで気になって、読んでみたら面白かったってのが一番ですからね♪

でも、そのまま通りすぎてしまうにはもったいない本があまりにたくさんあるので、余計なお世話と知りつつも、こうして紹介文を書いて来ました。

ここでちょっとネタばらし☆

実はここでの本の紹介は、私が人生で最大の出会いだったと実感する、ある「読書案内本」を参考にさせていただいております。

文章中の☆印の多様や、「~月の本棚」といったタイトルも、そしてもちろん多くの本も、その読書案内本で知りました。

それは、教養文庫から出ている神月摩由璃さんの

『SF&ファンタジー・ガイド~摩由璃の本棚~』*(キラキラ)*

手元にある本はいまやもうボロボロですが、「タラン」も「ナルニア」もアシモフ博士もハインラインも、この本で知りました♪

私の本好きをここまでひどくしたのはこの本のせいです(笑)

それこそ、SFとファンタジーを紹介している本ですが、その紹介の仕方がとってもユニークで、自分の体験や感想を織り交ぜて語るその文章からは、本当に読書の楽しさが伝わってくるんです♪

もちろんその足元には遠くおよびませんが、自分がこの本から受けた喜びの何十分の一かでも、ほんのエッセンスだけでもいい、この6年間で少しでも表現できていたらいいなぁ~と思っています☆

その他に影響を受けた本としては、角川文庫から出ている氷室冴子さんの

『マイ・ディア~親愛なる物語~』*(キラキラ)*

この本を読んで「アン」や「若草物語」などの家庭小説の魅力を改めて知ることが出来ました。

同じく角川文庫の寺山修司さんの

『ポケットに名言を』*(キラキラ)*

この本からは、短い言葉の中に秘められた力のすごさを教えてもらいました。

岩波文庫のマルクス・アウレーリウスの『自省録』*(キラキラ)*
新潮文庫から出ている高橋健二さん訳の『ゲーテ格言集』*(キラキラ)*

この2冊は、いつも読み返している個人的なお気に入りで、一番よく名言として紹介させてもらいました。

この私的図書館で「~月の本棚」として紹介してきた本は先月までで、のべ196冊。

まだまだ紹介したい本はたくさんあって、さらに毎月増えているのですが、とりあえずひと区切りです。

これから人生の中で、ちょっと忙しくなる時期を迎えそうなので♪

なかなか更新できないとは思いますが、見捨てないでたまにのぞいてくれると嬉しいです☆


「赤毛のアン」に学ぶ幸福になる方法

2009-03-07 23:59:00 | 本と日常
このところ、脳科学者でテレビなどにも出演されている、茂木健一郎さんの著書、

『「赤毛のアン」に学ぶ幸福になる方法』*(キラキラ)*

を読んでいます。

「赤毛のアン」出版100周年で昨年放送されたNHK教育の特別番組で、茂木さんが「赤毛のアン」について語っていたので興味がありました。

44歳まで「赤毛のアン」の愛読者だとは公言できなかったという茂木さんに共感!

私もよっぽど親しい友人にしか公言していません(笑)

日本の社会ってなかなか男性で「赤毛のアン」が好きだとは言いづらい雰囲気があるんですよ。

男らしさ女らしさってやつ?

読んでもらえば、その魅力は男とか女とか年齢とかを飛び越えて伝わるものだとは思うんですけどね。

「赤毛のアン」を知らずに人生を送る人がいるなんて…もったいない。
何でみんな読まないのかな?

「赤毛のアン」とは少し離れますが、茂木さんのその本の中で、共感できた言葉…


 読んだ本の高さだけ、人は成長できる


本当ですか! 茂木先生?

それじゃもっと読まなくちゃ!

…ますます本を買う言い訳に使えそう☆



祝『青い城』文庫化♪

2009-03-02 23:34:00 | 本と日常
本屋さんで私は感動しました。

”ルーシー・モード・モンゴメリ 著 『青い城』”文庫版!!

おぉ~~~!!

角川文庫さんありがとう♪

『赤毛のアン』で有名な、モンゴメリの作品『青い城』がこの程文庫化されました!

この間から角川文庫の表装が新しくなって、本屋さんにオルコットの『若草物語』が珍しく全4巻『第四若草物語』まで並んでいたので、期待はしていたんですよね。

家庭小説復活か!?

角川文庫には「マイディアストーリー」といって、『そばかすの少年』*(キラキラ)*とか、『リンバロストの乙女』*(キラキラ)*とか、『十七歳の夏』*(キラキラ)*とか、魅力的な作品が目白押しの、今から考えると、とっても贅沢なシリーズがあったんです☆

残念ながら、今では本屋さんで見かけることはありませんが、まだ読んでいない作品もあるので、ずっと再版を願っていました!

角川文庫…オルコット、モンゴメリときたら、これは他の作品も出してくれるのでは?

『青い城』は、主人公の女性ヴァランシーが、あと一年の命と宣告されて、思い切って自分の思いのまま生きてみようと日常を変えていく物語。

モンゴメリの書いた大人向けの小説の中では一番好きな作品なので、手軽に手に入るようになって、読者が増えてくれたらとっても嬉しい♪

モンゴメリの別の作品も、これから文庫化の予定とか。

角川文庫さんお願いします。

どうか『果樹園のセレナーデ』や『花ざかりのローズ』や『ケレー家の人々』や『少女レベッカ』の再版もお願いします。

絶対買いますから!


『魔女の宅急便』 最終巻!

2009-03-01 12:22:00 | 本と日常
たまにのぞいている角野栄子さんのHP。

角野栄子さんは『魔女の宅急便』などで知られる作家さんです☆

そこに、「魔女の宅急便 その6」を書き上げましたとの記事がアップされました♪

待っていたんですよね!

前作『魔女の宅急便 その5』では十九歳になった主人公のキキ。

「このお話のつづきは十五年後から…」なんて終り方だったので、すごく気になっていたんです。

どうやら「キキの物語」はこれで最終巻みたい。

昨年末には書き上げたって話なので、本になるまではあとどのくらいかかるのかな?

とっても待ち遠しいです!