私的図書館

本好き人の365日

森見登美彦 『聖なる怠け者の冒険』

2013-08-28 01:11:21 | 日本人作家

こんなにも活躍しない主人公がかつていただろうか?(笑)

森見登美彦さんの久しぶりの長編小説、

 

『聖なる怠け者の冒険』(朝日新聞出版)

 

を読みました。

森見さんといえば京都!

今回も祇園祭本祭の前日に行われる宵山で賑わう京都の町を舞台に、アホだけど憎めない奇妙な面々が駆け回ります!

ん? いや、中には全然駆け回らない人もいるか(苦笑)

 

主に週末の京都に現れ、困っている人を助けて回る謎の怪人「ぽんぽこ仮面」

ひょんなことから「ぽんぽこ仮面」の後継者に指名されてしまった社会人2年目の主人公、小和田君は、休日をただただのんびり過ごしたいがために、あとやっかい事に巻き込まれたくないために、この頼みを断り続けるのですが・・・・・・

何のことかわからない?

いいんです、もう「ぽんぽこ仮面」については深く考えないで下さい。

とにかく、世間から見たら怠け者としか思えない主人公小和田君が、作者森見登美彦さんの分身に見えてしょうがない(笑)

とにかく何もしたくない。
のんびりしたい。
仕事も締め切りも忘れてただただ退屈にひたっていたい・・・・・・

気持ちはわからなくはないけれど、やっぱりファンとしては作品を書いて欲しい(苦笑)

 

眠る主人公。

京都の町を迷い続ける週末探偵。

休日をめいいっぱい楽しむことに情熱を燃やすおかしなカップル。

そして、食べて食べて食べつくし、それでも食べきれずに店内が死屍累々で埋まるという「無間蕎麦」!!

達磨が。

狸が。

アルパカが。

祭囃子に誘われて京の町へ!

北白川ラジウム温泉で湯につかり、電飾またたくレストラン菊水のビアガーデンで土下座をし、幻のお酒「テングブラン」に舌鼓を打つ。

「ぽんぽこ仮面」はステキにカワイイ狸のお面をかぶった怪人です。

旧制高校のマントを身につけ、八兵衛明神の使いと名乗り、人々を助けてまわります。

 

「困っているならば、我が輩の手を掴むがいい」

 

主人公が活躍すると誰が決めた?(笑)

馬鹿馬鹿しくもなぜか愛しさいっぱいのキャラクターに、やわらかでキッチュのきいた言葉の数々。それは京都の町にとても合っていて、まさに森見ワールド!

私にお金があったらエキストラを雇って、赤い浴衣の女の子や狸のお面をかぶった人々を仕立て上げ、宵山で賑わう夜の京都に意味もなく出没させるとかしたい!

意味のないところがとっても面白そう♪

この本を読んでいると、そんなイタズラ心がムクムクとわきあがってくるんです!

いやぁ、ゆかいゆかい。

面白い小説でした☆

聖なる怠け者の冒険 聖なる怠け者の冒険
価格:¥ 1,680(税込)
発売日:2013-05-21

 


『日本人の知らない日本語4 海外編』

2013-08-08 23:43:57 | 日本人作家

「親切」という漢字はなぜ「親」を「切」るのか?(笑)

日本語学校を舞台に、日本人でさえ知らない日本語の不思議と魅力、日本語を学ぶ海外の学生の疑問などを取り上げ、シリーズ累計200万部を突破したベストセラーの最新刊。

蛇蔵&海野凪子の

『日本人の知らない日本語4 海外編』(メディアファクトリー)

を読みました!

 

日本人の知らない日本語4  海外編 日本人の知らない日本語4 海外編
価格:¥ 998(税込)
発売日:2013-08-02



そう、今回は「海外編」
日本を飛び出し、世界各国(今回は主にヨーロッパ)での日本語学習の現状を紹介、そしていつも以上の切り口の面白さで、日本人でもビックリの海外での日本語事情をマンガで紹介しています♪

もう、全部紹介したいぐらい、海外の学生さんも先生も面白い!!



「津軽海峡冬景色」を口ずさむパリの学生(笑)

貝原益軒の『養生訓』をテキストに使っているベルギーの大学(!)

洗った食器についた洗剤の泡をふき取らないイギリス人!(もう日本語学習関係ない!)

ちなみに「イギリス」って呼び方は日本でしか通用しません。

英国の正式名称は「グレートブリテン及び北アイルランド連合王国」

「U.K.」という表記が一般的でしょう。

車に「GB」(Great Britain)という国籍を表すシールを貼ったりもするそうです。

これと同じで「オランダ」も日本独特な呼び方。

正式には「ネーデルランド」です。

 

ヨーロッパで見かける日本文化。
マンガ、アイドル、寿司、ファッション。

意外に人気なのが「漢字」

現代に残る数少ない象形文字(物の形が文字になっている)である漢字は、見ただけで何となく意味がわかるものの、カタカナやひらがなは学生さんにとっては難しいらしく、フランスの学生さんが発音より綴りを優先するあまり、カタカナにカタカナでふり仮名をふっていたのには、驚くやら可笑しいやら☆(綴り的な読み方に発音的な読み方をふり仮名ふってる!)

イギリスの先生が初級クラスで日本語の数の数え方をジェスチャーで教えるシーンが好き♪

 

朝起きて、かゆい!(イッチー)、ひざが!(ニー)、窓には太陽!(サン)、あくび!(ヨーン)

 

って語呂合わせかい!!(笑)

 

本当に、世界って、言葉って面白いですね!

 

最初にあげた「親切」という漢字。

「親」は「近しい人」という意味で、「切」は「ぴたりと合う(「適切」の「切」もこの意味)」という意味からきているので、決して「親を切る」なんて由来ではありません(苦笑)

海外の学生さんが思いつく疑問もとってもユニーク。

 

海外では国境が決して言葉の境目ではなくて、たくさんの言葉が使われていることも島国の日本人にとっては新鮮。

スイスの公用語はドイツ語、フランス語、イタリア語、ロマンシュ語の4つ。

ベルギーの公用語はオランダ語、フランス語、ドイツ語の3つです。

水戸光圀の「圀」って漢字が、中国の女帝則天武后が作った「則天文字」だなんてこともこの本で初めて知りました!

この漢字は則天武后の時代に作られた漢字で、結局定着しなかったのですが、博識だった光圀が使用し、今に残っているんだとか(苦笑)

どうりで他に使い道がないわけだ!

 

こんな例もあります。

世界的に有名な川端康成の小説『雪国』の冒頭シーン。

 

「国境の長いトンネルを抜けると雪国であった」

 

この文を英訳する時困るのが、英語には欠かせない「主語」はどれかという問題。

トンネル? 雪国? 誰?

英語と日本語の関係を取り上げる際によく出てくる例題のようなので、答えは本を読んでのお楽しみということで♪

 

日本語なのに日本人の知らないことってたくさんありますね。

 

言葉だけじゃなくて、文化や習慣の違いがわかるのもこの本の魅力。

ショートケーキが日本生まれで海外では見かけないとか(スポンジにクリームってやつね!)、時計で有名なスイスは15分置きに教会の時計が鳴るので腕時計にはあまりこだわらないとか(日本人はお金持ちのステータスみたいに思っているけど)、東欧の国であるチェコと日本の意外なつながりとか(原爆ドームとして有名な建物はチェコの建築家ヤン・レッツェルの設計)、興味はつきません。

 

あぁ、面白かった。