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本好き人の365日

劉慈欣 著『三体』

2019-11-24 09:28:47 | SF

『三体』読みました!

あぁ、面白かった〜

久しぶりのハードカバーSF。

三部作の第一作目なのですが、中国のみならず世界的に評価も高く、アジア人作家として初のヒューゴー賞を受賞しています。

 

最初は文化大革命の描写から始まるので、ちょっと取っ付きにくいです。

登場人物も中国名なので漢字が難しい(葉文潔/イエ・ウェンジエ、とか汪淼/ワン・ミャオ、とか)

でもそこを通り過ぎると、もう早く次が読みたくって日が暮れるのも忘れて読みふけってしまいました。

物語は文化大革命による科学者たちの受難から始まり、国家規模の極秘プロジェクトに関わる事件へと繋がっていきます。

次々と自殺する科学者。

科学的にありえない怪現象。

そして人類に予想される危機。

その事件に巻き込まれたナノテク素材の研究者、汪淼/ワン・ミャオは三つの太陽を持つ星系を舞台にしたVRゲーム「三体」をプレイし、そのゲームに隠された真実に迫ります。

 

この「三体」というVRゲームの描写がもう面白い。

「三体」世界でプレイヤーはその世界の秘密を解明し、人類(異星人)の文明の進化を競います。

汪淼/ワン・ミャオは最初、古代中国の周の文王とその従者に出会います。

三人は朝歌の都で殷の紂王に正確な暦を献上するために旅をするのですが、太陽が三つあることを知らない古代の人々は激しい気候変動や長く続く夜と昼について何とか規則性を見つけようとしています。

三体世界の住民は生き延びるため、体内の水分を「脱水」して干物状態になることができます。

でなければ激しい暑さや寒さの続く「乱紀」を生き延びることはできません。

占いの得意な文王は、その占いの力によりこの「乱紀」がいつまで続き、人々が脱水体から「再水化」する「恒紀」の到来を予想しようとします。

もちろん科学的な裏付けのない占いは外れ、激しい寒さにより中国の戦国時代まで進歩していた文明は滅び、プレイヤーは再チャレンジすることになります。

 

三つの太陽を回る惑星。

そこで生きる三体世界の住民は、どうやって生き延びるのか?

どのようにしたら三つの太陽の規則性を見つけることができるのか? いや、そもそも規則性はあるのか?

そして、この「三体」というゲームを作ったのは誰で、何の目的があるのか?

なぜ科学者は自殺するのか?

自分の目にだけ映る科学的にありえないこの数字のカウントダウンは何を意味するのか?

 

アメリカのオバマ大統領も読者だったという本書。

スケールはどんどん大きくなって、まさにSFの醍醐味。

早く第二部が読んでみたい!

 

ゲームの「三体」世界では孔子や墨子、アリストテレスやガリレオ、ダヴィンチやアインシュタインなんかも登場し「三体」世界の惑星の運行について議論を重ねます。

何度も崩壊と再生を繰り返す「三体」世界。

彼らが最終的にたどりつく生き延びるための方策とは?

それが現実の地球におよぼす影響とは?

極秘プロジェクトとの関係は?

 

個人的にはニュートンとフォン・ノイマンが始皇帝の元で三千万人の人間(三体人)を使って人列コンピューターを作るところが興味深かったです。

プログラムを人間で代用し計算する!

兵士に旗を持たせて0と1の代わりにし、軽騎兵を走らせて情報伝達し、ハードディスクとして三百万人の教養のある人間に計算結果を書きとらせる。

原子力を利用し、さらに恒星間航行の技術を持つまでに文明が進歩した「三体」世界。

 

あぁ、早く翻訳してくれないかなぁ。