私的図書館

本好き人の365日

『日日是好日』

2009-06-29 22:46:00 | 本と日常
「日日」と書いて「にちにち」と読みます。

森下典子さんのエッセイ、

*(キラキラ)*『日日是好日 「お茶」が教えてくれた15のしあわせ』*(キラキラ)*(新潮文庫)

を読みました。

「天気の日も雨の日も、すべていい日」

そんなふうに人生を受けとめる…

そんなヒントが書かれているような気がしました。

「お茶」いわゆる「茶道」について書かれていますが、それだけじゃない!

解説を書いてみえる柳家小三治さんが、本屋さんでこの本が《茶道・華道》のコーナーに置かれているのを見て、

「…ここじゃないんだよ。いや、ここにも一冊ぐらい置いてもいいけれど、とに角ここじゃないんだよ…」

と思わずつぶやきたくなったという気持ちがよくわかります!!

時間つぶしに立ち寄った本屋さんでこんな本に出会うなんて。

だから本読みはやめられないんですよね~

二十歳の頃から「お茶」を習い始めた著者が、就職で迷ったり、恋愛で傷ついたり、自分の居場所が見つからなくて不安にさいなまれながら、30代、40代というそれぞれの時の中で、「お茶」を通して気づかされた様々なことを書いています。

「世の中には、すぐにわかるものと、すぐにはわからないものがある」

時間をかけないと見えてこないもの。

ただの繰り返しのような毎日。
だけど、それはコップに水が一滴一滴たまっていくようなもので、ある日、ゆっくりといっぱいになったその水面に、均衡をやぶる一滴が落ちてコップの水があふれだす…

ある日突然理解できる。

玄関のたたきに水をまく。
花を飾り、床の間に掛け軸をかける。

足の運び、手の指の形。

「形」と「作法」ばかりの「茶道」に、こんなの何の意味があるの? と反発する著者。

15のお話が載っていますが、気に入ったタイトルを五つほど♪



 頭で考えようとしないこと

 「今」に気持ちを集中すること

 別れは必ずやってくること

 自分の内側に耳をすますこと

 長い目で今を生きること



「お茶」ってただの風流人の趣味の世界じゃなくて、もっと人間の生き方に密着したものだったんですね。

水の音。
花の香り。
お湯の湯気。
甘い和菓子に、苦味のあるお茶。

よけいなものをそぎ落とし、ただ、目の前の「お茶」に集中する。

八十歳を越えているだろう老婦人が、お茶会で
「さっ、私もこれから、もう一度、お勉強してきましょ」
「お勉強って、本当に楽しいわね」
というところが印象的です。

自分の中に立ち込めるモヤモヤしたものがちょっと晴れたような気がしました。

「お茶」ってスゴイ!

一瞬一瞬を大切に生きること。
晴れの日でも雨の日でも、「日日是好日」

とても勉強になる本でした。


『光車よ、まわれ!』

2009-06-23 18:21:00 | 本と日常
「光車」=「ひかりぐるま」と読みます。

あぁ、ようやく読めました~

天沢退二郎さんの小説*(キラキラ)*『光車よ、まわれ!』*(キラキラ)*(ピュアフル文庫)

水たまりの中から侵略してくるもうひとつの世界…

神月摩由璃さんの『SF&ファンタジー・ガイド』に紹介されているのを読んで以来、ずっと読みたい読みたいと思い続けて10数年。

絶版という壁に阻まれて叶わなかった願いを、復刊を願う人々の声を集める某サイトのおかげで、こうして叶えることができました。

某サイトに投票してくれたみなさんありがとう!

作家の三浦しをんさんが、文庫本の解説を書いてみえるのですが、その文章からもこの物語に寄せる想いが伝わって来て、すごく共感してしまいました。

うんうん、わかる。わかるよ~

雨の降るある日、小学校6年生の教室のドアを開けて入って来たのは、まっ黒なぬるぬるしたものに身をくるんだ、バケモノにしか見えない三人の大男だった。

驚いて口もきけない一郎の目の前で、その三人は見慣れた同級生の姿に変わる。

あれは目の錯覚?

しかし、思わず立ち上がってしまった一郎を、学級委員の吉川がさっきから見ている。

例の三人も、席についてからずっと一郎をにらみ続けている。

見てはいけないものを見てしまった?

放課後、一郎を捕まえて詰問しようとする学級委員の吉川から助けてくれたのは、同じクラスの龍子たちのグループだった…

バケモノに見える三人の同級生。

何かを知っているふうな学級委員の吉川。

そして一郎を助けてくれた龍子たちのグループ。

この世界をかけた三つ巴の争奪戦がいま始まろうとしていた。

《水の悪魔》と戦うことのできる唯一の存在。

”光車”を探し出すのだ!

水がなくては生きていけない。
でも、時には水が人の命を奪う。

子どもにとって身近で不思議な存在。
時に遊び仲間であり、危険なものでもある「水」をモチーフに、子供達の冒険が始まります!

水たまりの向こうにある逆さまな世界。

道路の水たまりに引きずり込まれたり、やっぱり水たまりの中からザザッと釣り針が何本も襲い掛かってきて、宙につりあげようとしたり。

水たまりの中からこちらを見つめるいくつもの目。

この冒険は決してお気楽なものではなく、子供たちは命がけです。

「死」もあります。

だからこそ伝わってくる現実。

作者の天沢退二郎さんは、宮沢賢治と中島みゆきとアンリ・ボスコ(仏の作家)がお好きな、作家、詩人、仏文学者、翻訳家、宮沢賢治研究者というたくさんの才能を持っていらっしゃる方。

読み終わって、思わず「フー」と張り詰めていた緊張の糸がゆるんだみたいに息を吐き出してしまいました。

固定電話とか近所付き合いとか、設定は少し古めの日本ですが(初版が1973年)、その内容にはドキドキワクワクしました。

いろいろよかった~

感慨無量です☆



夢中になる瞬間

2009-06-20 23:28:00 | 本と日常
とあるファーストフード店でのこと。

注文の品が出来上がるまでカウンターの前で待っている青年。

まだ学生のようなその男の子は、浴衣を着て下駄履き、耳には携帯型音楽プレイヤーのイヤフォンをして、分厚い文庫本を立ったまま読んでいました。

アレ? 今日って花火大会か何かあったかな…

と一瞬思いましたが、そんな予定はありません。

その格好にちょっとビックリしたものの、本好きの人にはめったに出会えないので珍しくてしばらくながめていました。

しだいにお客さんで混雑してくるカウンター。

その中で傍に人が居ないかのごとく、場所を譲ることもなく読書に熱中する彼の姿はとても浮いて見えて…

こんな本読みだけにはなるまい…

と私は固く決心しました。

夢中になるのはわかるけれど、時と場所を考えないと。

今日、本屋さんに行ったら児童書のコーナーで小学生くらいの女の子が本を読んでいました。

その子にとっては大きすぎる本を両手で抱え込み、開いたページの中に顔を突っ込むようにして夢中で読んでいます。

本当はその子の読んでいる棚もひと通り目を通したかったのですが、邪魔をしてはいけないとそっと通り過ぎました。

ああいう貴重な時間は大切にしてあげたいです。


桜桃忌

2009-06-19 23:57:00 | 本と日常
今日6月19日は小説家、太宰治の誕生日であり、亡くなった太宰治を偲ぶ「桜桃忌」でもあります。

桜桃とはサクランボのこと。

太宰治のお墓のある三鷹の禅林寺には毎年たくさんの人が訪れるそうですが、今年2009年は太宰治が生まれてちょうど100年目にあたるということで、太宰治の変わらぬ人気についてテレビで特集が組まれていました。

若い人(特に女性)に人気があるようですね。

私の周りでは一人も見かけませんが…本当かな?

先日、喫茶店でコーヒーとケーキを注文して2時間ほど居座って来ました。

ロイド・アリグザンダーの『ウェストマーク戦記』を読むためです。

架空の国、ウェストマークを舞台に、馬車が駆け回り、マスケット銃が火を吹く!

浮浪児の王女様と、見習い印刷工の少年。

独裁者に君主制打倒を掲げる革命軍!!

王女様が戦い倒れる兵士たちを見て思わず叫ぶ言葉にジーンときて、喫茶店の店内で思わず涙ぐみそうになり困りました。

架空の国とはいえ、戦争や死については残酷なまでに描写されていて、正義とは、悪とは、人間の良心とは、といった様々な選択と決断を読者に迫ってきます。

続きが気になって、どんどん読んでしまいました。

さすがロイド・アリグザンダー☆

今日はせっかくなので、太宰治の作品を読んでいます。

日本語の文章もいいものですね。

私は太宰治の作品の中では『女生徒』という作品がお気に入りです。




『1Q84』

2009-06-04 17:17:00 | 本と日常
作家、村上春樹さんの5年ぶりの新作『1Q84』(新潮社)が話題になっていますね。

予約が殺到して5月29日の発売日までにすでに4刷68万部が増刷され、それでも品不足のお店が相次いだとか。

村上春樹さんの作品は好きですが、流行りに乗るのが嫌なので、文庫本になったら読もうかと思っています。

実は先日立ち読みしようと本屋さんに行ったのですが、そのお店でも売り切れだったのです。

おかしいな~
出版業界は不況じゃなかったの?

活字離れと騒がれて長いのに、どこにこれだけの読者が隠れていたんだろう?

なじみのお店が雑誌に載って混雑するようになり常連客が締め出されてしまった、そんな気分です。

チラッとでも読めればそれで満足して文庫本化まで待てるのに…

ちょっと屈折しています。




『マイナークラブハウスの森林生活』

2009-06-03 18:10:00 | 本と日常
ピュアフル文庫から出ている木地雅映子(きじ かえこ)さんの

*(キラキラ)*『マイナークラブハウスの森林生活』*(キラキラ)*

を読みました。

どうやらシリーズ物で、これは第2巻にあたるみたいです。

舞台は、とある学園の高等部にある弱小文化部の集う洋館、「マイナークラブハウス」

そこにたむろする、文化系高校生たちの青春(?)が、明るく暗く描かれています。

面白いですよ。
着ぐるみのカエルを着たヒロインとか(笑)

登場人物たちの行動は表面上はとってもコミカルで会話も面白い。

ですが、その反面、内面は現実の生身の人間そのままで、シリアスでけっこう深刻。

そのチグハグさにクラクラして文章に酔ってしまいました。

思春期なんて遠の昔に通り過ぎてしまった者にしたら、昔の傷をエグられているようで痛いよ…

でも、残酷だなぁ~、なんて感想をもらしたとたん、作者に引っ叩かれてしまいそうな迫力があります。

親や教師や友達の残酷さ卑怯さに、幸運にもあまり触れる機会がなく、のほほ~んと生きてこられた方には刺激が強いかも知れません。

あるいは見たくないものは無視して、考えたくないことは考えないようにしている人は怒り出すかも。

たまにこういう直線的な小説をみかけますが、私はニガ手です。

もう少し、やんわりとお願いしたいです。

でも、きっとこういう小説に共感する子供たちはたくさんいるんだろうなぁ…

親を殺したいとか…
ここから抜け出したいとか…

ただ、解説で千野帽子さんが書かれていますが、「同調せずにいられる者」「ひとりで立つ覚悟がある者」こそが美しい、という作者の姿勢には共感できました。

自分より輝いている人(や物)に群がって、個としての価値観を放棄してしまっている人や、愛情という仮面の下で子供の個人としての存在を食い殺し続ける親を一刀両断!

まるで武士です。

ストリーキングの武士。(ほめてます☆)

この本の出ている「ピュアフル文庫」というのはあまりなじみがなかったのですが、この本の後ろのページに、天沢退二郎さんの『光車よ、まわれ!』が好評概刊と載っていたのでビックリしました!

復刊されていたなんて知らなかった!!

前から読みたくて、ずっと探していたんですよね。

木地雅映子さんも推薦らしいです。

さっそくネットで注文しました♪

届くのが楽しみです。


ロマンス・グレー

2009-06-02 23:57:00 | 本と日常
ちょっと雰囲気を変えたくて、先月からヒゲを伸ばしています。

いつも自分に足りないものはワイルドさじゃないかと思っていたので。

ま、半分は冗談ですが、見た目が変わるとけっこう気分も変わって面白いです。

でも、ヒゲにも白髪ってあるんですね。

あたり前ですが、ちょっとショックでした。

いっそロマンス・グレーのしぶいおじさん路線を狙ってみるかな…

経済力と包容力がないから無理か。