アメリカの作家、レイ・ブラッドベリさんが亡くなりました。
91歳。
私は主にSF作家としてのブラッドベリしか知らないのですが、『華氏451度』、『火星年代記』、『ウは宇宙船のウ』、『歌おう! 感電するほどの喜びを!』、『たんぽぽのお酒』など、多くの作品を残してみえます。
日本にもファンは多く、マンガ家の萩尾望都さんなどもブラッドベリの作品を原作にしたマンガを描いていましたね。
『華氏451度』は”本”を見つけて焼き払う消防士ならぬ「焚書官」が主人公。
なんとこの小説の世界では、有害な禁制品として”本”を持つこと、読むことが禁止されているんです!
小説や歴史、詩もすべて発禁。
人々は耳にはめこむ小型ラジオをつけて生活し、大画面テレビが四方を囲む「テレビ室」で過ごします。
自分で考えることをしなくなった彼らは、垂れ流される情報や企業の広告を始終頭に流し込まれ、しだいに心が荒廃していく…
「華氏451度」というのは、本のページに火がつき、燃え上がる温度。
密告により本を所持している人物の情報がもたらされると、消防車のような物に消防士さながらに「焚書官」たちが乗り込み、ホースから水ではなく石油を撒き散らして、家ごと本を焼き尽くす。それはもう灰さえ残らないくらいに。
そんな「焚書官」の一人、モンターグはある日、となりに越して来たという少女と道でばったり出会います。
夜中に散歩し、木や空を見上げ、雨の日には顔を上げて雨にあたるのが好きだというちょっと変わった少女。
彼女はモンターグをじっと見つめ、そしてこう訊くのです。
「あんた、幸福なの?」
この小説は1953年、まだデジタルTVも携帯電話もない時代に書かれました。
本を読むことを禁止され、与えられた情報を鵜呑みにする世界で、人々は睡眠薬に頼り、ラジオとテレビに脳みそを占領され、自分のやっていることに疑問を持つ思考力さえ失いながら、毎日の生活を送っています。
職場の同僚。
情緒不安定な妻。
染み付いた石油のにおい。
炎のついた蔵書の中に立ち尽くす老女。
画面に映し出されるフイルムの教師。
破壊衝動に走る子供たち。
抽象画ばかりの美術館。
燃やされる本。
本を愛し、それを書くことを職業にしちゃう人が書く「本のない未来」
SF小説でありながら、どこか叙情的な雰囲気のあるブラッドベリらしい作品。
短編集『ウは宇宙船のウ』では、ロケットに憧れる少年たちの姿を描いています。
私は男なので自分の体験しかわかりませんが、自分たちが「なりきって」道路を滑走路にみたてたり、山を怪獣にしてみたり、両手を広げて大空を飛ぶ飛行機になったつもりで走り回るというのは、たわいもないようで、実はとっても楽しいことなんですよね♪
そんな大人になっても子供心を持ち続けた一人が、レイ・ブラッドベリという作家だったと思います。
ふとしたきっかけで禁制品の本を手にしたことから、『華氏451度』の主人公、モンターグの人生も変わり始めます…
私は本が禁止されたらきっと反乱を起こすだろうな(苦笑)
レジスタンスになって地下活動で抵抗しつづける。
自分たちで本を刷ったりして☆
萩尾望都さんのマンガも探しているのですが、古本屋にもなかなか置いてなくて、出会いのチャンスを待っています。
というか、近所の本屋さんのSF小説の棚が縮小されててショックを受けました。
金環日食とか部分月食で盛り上がったら、ついでにSF小説でも盛り上がって欲しいなぁ。
レイ・ブラッドベリ様。
たくさんの作品をありがとうございました。
心よりご冥福をお祈り致します。
『華氏451度』(ハヤカワ文庫)
『ウは宇宙船のウ』(小学館文庫)
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