私的図書館

本好き人の365日

「大学教師が新入生に薦める100冊」

2014-06-29 11:51:09 | 本と日常

6月もあまりレビューが書けなかったので、購入、立ち読みした書籍のタイトルだけ、忘れないように書いておきます。

古本屋で購入した物が多いです。

マンガ、雑誌は除外。



大森 望 『SFマガジン700【国内篇】』 (早川書房)

ガース・ニクス 『王国の鍵』シリーズ (主婦の友社)

アーサー・ガイサート 『ノアの箱舟 』 (こぐま社)

須賀 敦子 『霧のむこうに住みたい』 (河出書房新社)

谷川 俊太郎 『みんなやわらかい』 (大日本図書)

本上 まなみ 『芽つきのどんぐり』 (小学館)

宇野 亜喜良 『悪魔のりんご』 (小学館)

村上 春樹 『バースデイ・ストーリーズ』 (中央公論新社)

エンマ・ユング 『内なる異性―アニムスとアニマ』 (海鳴社)

堀尾 真紀子 『フリーダ・カーロ―引き裂かれた自画像』 (中公文庫)

穂村 弘 『絶叫委員会』 (筑摩書房)

高柳 佐知子 『ケルトの国へ妖精を探しに』 (河出書房新社)

丸木 俊 『おきなわ 島のこえ―ヌチドゥタカラ』 (小峰書店)

 

新刊少ない(苦笑)

感想が書けたのは、

ジョー・ウォルトン 『図書室の魔法』(上・下) (創元SF文庫)

佐々涼子さんの 『紙つなげ! 彼らが本の紙を造っている』(早川書房)

だけ。

 

その他に、ネットで気になった話題に「大学教師が新入生に薦める100冊: わたしが知らないスゴ本は、きっとあなたが読んでいる」というのがありました。http://gunosy.com/g/gHWhs 

本屋さんでも『東大教師が新入生にすすめる本』(文藝春秋)とか、『大学新入生に薦める101冊の本 』(広島大学101冊の本委員会)というのがありますね。

いや、東大教授こそファンタジーやSF読めって思うけど(苦笑)

大学生向けということで、物事の感じ方や思考の整理法に役立つ本が多い印象。

理系の本も多いですね。

『モモ』とか『幼年期の終わり』が入っているのは評価する!

ゴーゴリや泉鏡花も入っているので、文系の私も20冊くらいは読んだことがありました。

とりあえずドストエフスキーと太宰治とゲーテだけ読んどけばいいんじゃないのかな?

もちろん、モンゴメリやオルコット、シェイクスピアと司馬遼太郎は高校生までに読んでいる前提で♪

中学生なら最低限、宮沢賢治とマーク・トウェインと手塚治虫は読んでおいて欲しい。

私は司馬遼太郎じゃなくて新井素子やアシモフを読んでいたから、こんなことになっちゃったんだけど(苦笑)

 

昔は「デカンショ」といえば「デカルト」「カント」「ショウペンハウエル」だということぐらい、大学生はわかったらしいのですが、今の大学生はどうなのかな?

知識や情報という面では、ネットが普及しSNSを使いこなす今どきの大学生の方が、圧倒的に有利だと思うんですけどね。

2014年の2月に公表された大学生協が行っている「学生生活実態調査」の報告によると、調査に協力した学生の1日の平均読書時間は26.9分。そのうち読書時間が0という学生は40.5%だったそうです。 

大学生、本読めよ。

 

私が今探しているのは、乙骨淑子さんの『ピラミッド帽子よ、さようなら』(理論社)と、高見順の『いやな感じ』(文藝春秋新社)

二冊ともネットで買えるのですが、なんか高いので、とりあえず図書館で借りて、そのうち古本屋で安く買えないかさがそうと思っています(苦笑)

 


『紙つなげ! 彼らが本の紙を造っている』再生・日本製紙石巻工場

2014-06-26 22:10:45 | 日本人作家

思わずページをなでて、そのさわり心地を確かめてしまいました。

 

私たちが当たり前のように手に取っている本、雑誌、広告などの出版物。

その紙がどこで作られているのか、正直、意識したことはありませんでした。

 

2011年3月11日、東日本大震災発生。

宮城県石巻市にある日本製紙石巻工場も津波に呑み込まれました。

日本製紙は日本の出版用紙の約4割を担っています。

石巻工場は、その基幹工場であり、文庫本、単行本、コミック、雑誌、その他それぞれに特徴のある紙を年間100万トン生産していました。

その工場が被災。

次々と伝えられる震災のニュースの中、「紙不足」が深刻になります。

そして多くの人が知るのです、普段私たちが手に取っている出版物の多くが、この石巻で作られた紙を使っていたことを。

 

佐々涼子さんのノンフィクション『紙つなげ! 彼らが本の紙を造っている』(早川書房)を読みました。

 

著者 : 佐々涼子
早川書房
発売日 : 2014-06-20

 

冒頭、2013年4月に発売された、村上春樹さんの『色彩を持たない多崎つくると、彼の巡礼の年』を買うために並ぶ人々が描写されます。

その本には、2年前、壊滅的な被害を受けた日本製紙石巻工場の、8号抄紙機(しょうしき)と呼ばれる機械で作られた紙が使用されていました。

そう、日本製紙石巻工場は今も紙を作り続けているのです!

 

「うちのはクセがあるからね。本屋に並んでいても見りゃわかりますよ」

 

その言葉には技術者の、職人のほこりが感じられます。

子供が手に取っても軽く、しかし厚みがあり指を切らないように工夫されたコミック雑誌の紙。

限りなく薄くしながら破れにくく、ページが重ならないようにめくり感を考えられた辞書用の紙。

大人気のコミック『ONE PIECE(ワンピース)』や『NARUTO(ナルト)』、文庫本でいえば『永遠の0』や『天地明察』、単行本では池井戸潤さんの『ロスジェネの逆襲』などは、この石巻工場8号抄紙機の製品で作られています。

 

震災当日から避難の様子。

工場の惨状に、東京本社とのやり取り。

誰もが「もうダメだ・・・」と思った中での、工場再建と、再生までを追ったドキュメンタリー。

 

もう、何回も涙があふれそうになり困りました。

震災関係の本は何冊か読み、TVで伝えられない過酷な現状を知ったり、直に聞いたりもしましたが、やっぱりまだダメです。

いち営利企業の震災復興というお話ではありません。

それ以上の物を感じました。

この本のために取材した佐々涼子さんも、出版に携わる者として、自分たちが使っている紙が東北で作られていることも知らなかった震災前の自分を恥ながら、出版人でなければ書けない視点で、この日本製紙石巻工場の再生を描いています。

 

車や家屋が水に流されて入り込み、汚泥が機械をうめた工場。

一階にあった電気系統、モーター類は海水に浸かり、通常はチリひとつ混入させられない紙を作る機械に泥がへばりつく。

電気も水も復旧していない中で始まった工場再建。

ひどいにおいの中、いつ終るとも知れないガレキ撤去に汚泥の除去が続く。

せまいパイプの間に入りこんだ泥をスプーンでかき出す。

家が流された者、近親者を亡くした者。

このままでは石巻工場は、いや、会社がどうなるかもわからない。

当時、現場ではどのように指示が出され、それをどのように聞いたのか。

ギリギリの選択を迫られた時、人々はどう考え、どう行動したのか。

震災後半年、そして一年後と、克明にその時の人々の心の動き、感情を丁寧に取材しています。

 

実話だけに迫力があり、夢中になって読みすすめてしまいました。

 

本編ともいうべき工場再建の様子を描くのに、まず震災当日から描くのはわかるとして、ただ一章だけ、本来なら工場に焦点をあてるべきところに、商店街の居酒屋店主の証言と題した章があります。

バットやゴルフクラブを持ってうろつく不審者。

悪化する治安。

震災後入り込んできたエセNPO団体。

飛び交う不穏なウワサ。

そうした人間の暗の部分をあえて挿入したところに、著者の思いを感じずにはいられませんでした。

 

この本には震災当時の様子が「証言」として書き込まれているので、読む人によってはショックなシーンがあるかも知れません。

遺体の描写もあります。

また震災による心の傷に悩んでいる人には当時を思い出させてしまうかも知れません。 

不快に思う方、不謹慎だと思う方、著者とは違う受け止め方をする方もいると思います。

誰も、正解なんか持ってやしません。

その場で、最善と思える行動をするしかない。

人間は神様じゃありません。

 

電車の中で読んだりもしていたので、感極まってうるうるしてしまいアセりました。

紙の手触りや質感に、作り手がこんなにこだわって作っているということも知りませんでしたし、その技術の多くが、工場の持つ個性ともいえる職人の腕や機械との相性にかかっているということも知りませんでした。

最近辞書の編纂を描いた映画『舟を編む』で「ぬめり感」という言葉を知ったり、朝ドラ「花子とアン」で印刷屋が登場したりして、偶然にも本作りの知識が増えたところだったので、なおさら興味深く読めました。

文庫本に使われている紙の色も、出版社によって赤っぽかったり白だったり、こだわって作っているんですね!!

 

電気もそうですが、普段当たり前に身近にあふれている紙の本が、どういった人たちによって、どんな所で作られているのか。

紙や電気に限らず、食料品も、衣服も、ゴムや金属も、そして毎日飲んでいる水だって、もっと興味を持って知らなきゃいけないと思い知りました。

便利というのは、お金を払えば手に入る万能のものではないんですよね。

はぁ、感情がゆさぶられすぎて疲れてしまった(苦笑)

 

ちなみにこの本自体も、石巻工場8号抄紙機(しょうしき)で生産された紙で作られています。

本の売り上げの一部は、石巻市の小学校の図書購入費として関係団体を通して寄付されるそうです。

これから本屋さんで本を手に取る時、ちょっとなでてしまうかも知れません(苦笑)

紙の本が読めることに感謝!

 


2014年上半期ベストセラー

2014-06-20 21:34:25 | 本と日常

2014年も半分が過ぎ、先日書籍の取次ぎなどを行う会社トーハンが、2014年上半期のベストセラーを発表しました。


1位 『長生きしたけりゃふくらはぎをもみなさい』 鬼木豊 監修、槙孝子 (アスコム)

2位 『人生はニャンとかなる! 明日に幸福をまねく68の方法』 水野敬也、長沼直樹 (文響社

3位 『村上海賊の娘(上・ 下)』 和田竜 (新潮社)

 

文芸部門の1位は『村上海賊の娘(上・ 下)』で、2位に村上春樹さんの『女のいない男たち』(文藝春秋)がはいっています。

『村上海賊の娘』は私も読みました。

和田竜さんは、映画化もされた「のぼうの城」が面白かったんですよね。

この『村上海賊の娘』では、戦国時代に瀬戸内海を支配し活躍した村上海賊(村上水軍)と織田信長の戦いを取り上げています。

NHKの大河ドラマ「軍師官兵衛」でもこの戦いはチラっと出てきています♪

 

他に文芸部門で頑張ってみえるのが、ドラマ化でますます注目が集まった池井戸潤さんや、映画も好調な百田尚樹さん。あと宮部みゆきさんなど。

文芸部門第3位の西尾維新さんは、作品が次々とアニメ化されて人気の作家さんですね。

意外なことに常連の東野圭吾さんはおしくも10位圏内に入りませんでした。お隣の韓国では、村上春樹さんに次いで人気だという話もありますが、やはり日本の場合は賞をとったり、ドラマ化や映画化された作品に人気が出がちなので、その影響もあるのかも知れませんね。

トーハンのベストセラーなので、本当に読者の好みが反映されているのかは怪しいところですが(苦笑)


総合部門2位の水野敬也さんは『夢をかなえるゾウ』で一躍ベストセラー作家になられた方。

この「文響社」という出版社は、初めて知ったのですが、水野敬也さんとそのお仲間が立ち上げた出版社のようですね。ビジネス書とかが強そうですが、他の分野も出版するのかな?

この不況といわれる出版業界で、ぜひ頑張って欲しい。

でも、小説好きとしては、ビジネス書や健康、美容書ばかりじゃなく、文芸作品に頑張って欲しいです!

 

先日、第151回芥川賞と直木賞の候補作も発表されました。

残念ながら、私の知っている作家さんは選ばれませんでしたが、新しい作家さんがどんどん出てきてくれるのは嬉しいです。

下半期は、どんな本が売れるんでしょうね~

 

 


桜桃忌に太宰を読む

2014-06-19 19:54:57 | 本と日常

6月19日は文豪、太宰治を偲ぶ「桜桃忌」です。

 

太宰が山崎富栄とともに玉川上水にて入水自殺をはかったのが、昭和23年6月13日。

その6日後、奇しくも太宰の誕生日である6月19日に遺体が見つかりました。

お墓は東京三鷹の禅林寺にあります。

 

この昭和23年という年は、太平洋戦争が終って3年、日本はまだGHQの占領下でした。12月には、巣鴨拘置所で東条英機の死刑が執行されています。

 

昭和21年に発表された、太宰治の作品に『冬の花火』という戯曲があります。

「桜桃忌」にちなんで、今夜はこれを読みました。

津軽地方のあるという設定で、冒頭、主人公の数枝がこんな台詞をつぶやきます。

 

 

 (両手の爪を見ながら、ひとりごとのように)負けた、負けたと言うけれども、あたしは、そうじゃないと思うわ。ほろんだのよ。滅亡しちゃったのよ。日本の国のから隅まで占領されて、あたしたちは、ひとり残らず捕虜なのに、それをまあ、恥かしいとも思わずに、田舎の人たちったら、馬鹿だわねえ、いままでどおりの生活がいつまでも続くとでも思っているのかしら、相変らず、よそのひとの悪口ばかり言いながら、寝て起きて食べて、ひとを見たら泥棒と思って、(また低く異様に笑う)まあいったい何のために生きているのでしょう。まったく、不思議だわ。 

 

 

軍人の夫は生死もわからず、幼い娘を抱え、今は別の男の影もチラつく数枝は、生きることのつらさと哀しみに翻弄され、どこかやけっぱち気味。

父親に「真人間になれ」と怒鳴られても、キッと歯を食いしばり、世間や時代の風にさらされながら、虚勢を張って生きている感じの女性です。

太宰治の作品って、あまり戦争を扱わないので新鮮でした。

 

今ドラマが話題で、太宰より16歳年上の村岡花子さんの訳した『赤毛のアン』とか、『パレアナ』のほうが私は好きかな?(笑)

ドラマは花子がマーク・トウェインの『王子と乞食』の翻訳に取りかかるところまできていますね。

これからいよいよ翻訳家としての村岡花子が描かれることになるんでしょう。

楽しみです♪

 

太宰治の『冬の花火』は、現在「青空文庫」で無料で公開されています。

私が気に入ったのは数枝の(つまりは太宰の)こんな台詞です。

 

 

 あたしは今の日本の、政治家にも思想家にも芸術家にも誰にもたよる気が致しません。いまは誰でも自分たちの一日一日の暮しの事で一ぱいなのでしょう? そんならそうと正直に言えばいいのに、まあ、厚かましく国民を指導するのなんのと言って、明るく生きよだの、希望を持てだの、なんの意味も無いからまわりのお説教ばかり並べて、そうしてそれが文化だってさ。呆れるじゃないの。


 どうして日本のひとたちは、こんなに誰もかれも指導者になるのが好きなのでしょう。大戦中もへんな指導者ばかり多くて閉口だったけれど、こんどはまた日本再建とやらの指導者のインフレーションのようですね。おそろしい事だわ。日本はこれからきっと、もっともっと駄目になると思うわ


 

 


ジョー・ウォルトン 『図書室の魔法』(創元SF文庫)

2014-06-07 23:57:16 | SF

最近私の中で何度目かの英国ブームが来ています。

NHKで放送の海外ドラマ「SHERLOCK(シャーロック)3」と「ダウントン・アビー」

前者はスマホやメールを使いこなし事件の真相に迫る現在版シャーロック・ホームズ。

後者は20世紀初頭の英国貴族のお屋敷を舞台にしたメイドや執事など貴族階級の生活をリアルに描いたドラマ。

これが面白くてたまらない!

そしてもう一つがこの小説。


『図書室の魔法』(上・下) (創元SF文庫)


東京創元社
発売日 : 2014-04-28

 

 

 

東京創元社
発売日 : 2014-04-28

 

 

 

作者のジョー・ウォルトンはこのブログでも紹介した『ドラゴンがいっぱい!―アゴールニン家の遺産相続奮闘記』などが邦訳されている、英国ウェールズ出身のSF作家。

日本人にはピンとこないかも知れませんが、ジョー(JO)は女性です。 

 

この小説、厳密にはSF小説ではないのかも知れませんが、SFファンにはたまらない作品!!

15歳の女の子の日記(本人いわく「鏡文字」で書いている秘密の日記)という体裁なので、どこまで真実が書かれているのか判断するのは読者しだい。

ほら、だって日記って本当のことばかり書くとは限らないでしょ? 

『アンネの日記』にも架空の友達「キティー」が登場するし、つらい現実を少し脚色して自分をヒーローにしたり、逆に自分が被害者のように思い込むのは思春期にはよくあること。たまに大人になっても治っていない人もいますけどね(笑)

この作品にも、たくさんの妄想と主観的な友達の美醜に性格、大人たちへの感想が書き込まれています。


母親の家を飛び出し、顔も覚えていないような家を出ていった父親に引き取られることになった主人公。

事故の影響で片足が不自由な主人公は、足の痛みに悩まされながら、中流階級である父親と父親の姉である三人の伯母たちと対面します。

ウェールズで生まれ育ち、森や山を愛する彼女にとって、イングランドの人々は言葉も習慣もまるで外国人。

伯母たちに押し込められた(と彼女は思っている)、お金持ちの子女が学ぶ立派な寄宿学校でも、周りの娘たちになじめず、足のこともあって学校の図書室ですごすことが多くなります。

ウェールズにいた頃から無類の本好きで、特にSFに関してはかなりの量を読んでいた彼女。

トールキンやル・グィンを愛し、同年代の友達よりハインラインやゼラズニイ、ディレイニーやアシモフに親しみをおぼえる彼女は、学校での派閥争いや友達付き合いを機転と本の知識で何とかこなし、問題の多い現実にも、自分の知る”真の世界”の手助けで何とか立ち向かって行きます。

本屋さんを巡ったり(足が痛いのに!)、好きな作家の新刊を見つけて喜んだり、それを本好きの知り合いにすぐ報告したり(笑)、思いがけず書籍のコーナーを見つけて幸せを感じるのは、同じ本好きとしてとっても共感できる♪

時代が1979年から80年ということで、「銀河ヒッチハイクガイド」がラジオで放送されていたり、ハインラインの『獣の数字』が新刊だったりと、時代背景を活かした演出も楽しい!

町の図書館で行われている「読書クラブ」に参加したことで、自分と同じ趣味の仲間を見つけ、学校とは違う友達との出会いが彼女を大きく変えていきます。

読書が趣味というと、内気でおとなしいイメージを持たれる方がいるかも知れませんが、彼らが交わすSF談義や熱い議論、愛する作品をめぐっての喧々諤々の騒ぎは、これぞ本好き! という読者にとってもとっても楽しい時間です。

「スター・ウォーズ」を英国人がケチョンケチョンにけなすところなんて、可笑しくて可笑しくて(笑)

英国らしく、エルフやフェアリー、『指輪物語』などが多くの場面で登場します。

『ナルニア国物語』とキリスト教の関係を知って怒りを覚える主人公にはちょっと驚きでした。

ふとした場面で、お茶や服装、階級社会の見えない壁が顔をのぞかせるのもいかにも英国という感じ。

寄宿舎での生活もテーンエイジャーらしく、宿題を写したりだとか、親との関係の悩みだとか、男の子のことだとか、ブラジャーやピルなんて話題も出てきます。

中流階級と労働者階級の違いだとか、Aレベル試験と呼ばれる統一試験のことだとか、ユダヤ人の生活でのきまり事の多さとか、ウェールズとイングランドの違いだとか、日本人にはあまりなじみのない事柄も登場しますが、雰囲気で読みました(笑)

 

本を読むことが救いだった主人公。

自分の内面と向き合い、新しい物の見方を発見し、主人公の人生に積極的に影響していくのがとっても素晴らしい!

主人公が時に辛辣に、時に偏愛的に、時に絶賛する実在のSF作品の数々を探して読んでみたくなります。

自分も読んだことのある作品が登場すると、それだけで嬉しかったり。

本を読むこと、新しいことを発見すること、興味をもったり想像すること、それは現実を生きる力になるってメッセージが、本好きには心強い!

 

この物語には様々な読み方があると思います。

SF小説というよりは、少女の成長の物語とも読めますし、書かれていることのどこまでが妄想で、どこからが現実なのか考えてみるのも面白いかも。

『ナルニア国物語』にこんな一節がありますね。

 

    ーうちがわは、そとがわよりも大きいものですよ。

             ~ナルニア国物語「さいごの戦い」より~


たった数センチの厚みしかない紙とインクの複合物の中に、世界を閉じ込めることのできる想像力。

そういう意味では、たしかにSF作品なのかも知れません(笑)

 

あー、久しぶりにル・グィンが読みたくなった。

この本で紹介されたル・グィンの作品のいくつかは、私の本棚にもあります。

こういう時、無駄に買いためていたのが報われますね♪

読書熱が再燃させられるという点では、実はとっても迷惑な作品なのかも(笑)

 

とりあえず、今年読んだ本の中では(今のところ)最高に面白かったです☆