私的図書館

本好き人の365日

ありがとう

2006-05-30 22:41:00 | 本と日常
ロシア語通訳として活躍され、テレビのコメンテーターとしても知られる作家の米原万里さんが、5月25日、卵巣ガンのため亡くなったとの訃報を知りました。
56歳だったそうです。

米原さんの書くエッセイを私は好きでした☆

自分の経験を交えながらユーモアたっぷりに書かれた内容は、どれも興味深くて、世界には様々な価値観があること、色んな物の見方があることを教えてもらいました。

下ネタ好きなところも可笑しかった♪

もうあの楽しいエッセイが読めないと思うと、すごく寂しい気持です。

……………。

葬儀・告別式は27、28日に、親族の方のみで営まれたそうです。

心より、ご冥福をお祈り致します。





五月の名言集

2006-05-28 00:18:00 | 本と日常
我々に取捨の自由が許されているものではなくて、

我々は実際に、孤独なのである。

我々は我々自身をごまかして、

それがそうではないように振舞うことはできる。

しかしそれだけであって、

それよりも我々が孤独であることを自覚し、

自覚しないまでも、そうであると仮定することから始めるほうがどんなにいいだろうか。

勿論、

我々はそう思うだけで眩いがしてくる。






               ―リルケ―




五月の本棚 2 『からくりからくさ』

2006-05-27 09:52:00 | 梨木香歩

小さい頃、近所に養蚕をしている家が一軒だけ残っていました。

蛾の幼虫を育てて、そのまゆから生糸をとるんです。

幼虫が入ったままのまゆをグツグツと煮て、糸口を取り出し、丁寧に巻き取っていく。

工場の窓や出入り口は、蒸気とその熱気を逃がすためにいつも開けっ放しで、小学生の私たちは、通学途中によくその中をのぞき込んでいました。

そうしてまゆからとった糸が、私たちが絹、シルクと呼んでいるものになるわけです。

広がる桑畑。
工場から少し離れたところにある大きな屋敷の離れには、たくさんの蚕(かいこ)が飼われている部屋があって、戦争中は近衛兵だったという気さくなおじいさんの案内で、その様子をのぞいたこともあります。

このおじいさんがちょっと変わった人でした。

屋根裏部屋を改造して、昔の古い道具類を集め、自前で資料館を開いていたんです。

普通の民家なのに、ちゃんと入館料の案内板まであるんですよ☆
ま、払っている人なんて一度も見たことないんですけどね。

子供たちに見せるのが好きで、小学生の私たちも変わったもの(ひょうたんへちまとか♪)がもらえるので、仕方なく付き合ってあげていました(笑)

私が高校生になる頃には息子さんの代に替わって、自分の家では養蚕をしなくなってしまい、とうとう近所から桑畑は消えてしまいましたが。

さて、今回ご紹介する本、梨木香歩さんの『からくさからくり』には、糸や織物、草木染めやキリム(遊牧民が羊やヤギの毛を染めて作る織物)などが登場します。

もちろん「りかさん」も♪

小学生の時、祖母から譲られた黒髪の市松人形「りかさん」。

祖母が残してくれた古い家を女学生に貸すことになった時、誰よりもその家に愛着を持つ孫娘の蓉子(ようこ)は、両親に一つの条件を出します。

自分も下宿人としてあの家に置いてくれること。

草木染めの勉強をしている蓉子。
美大で織物の図案を研究したり、作品を作っている佐伯与希子と内山紀久。
そして、蓉子の知り合いで、アメリカから鍼灸の勉強に来ているマーガレット。

この4人が古い民家に下宿することになり、「りかさん」を加えた、ちょっとおかしな共同生活が始まります。

「りかさん」の存在に最初はとまどう同居人たち。

特に物事をハッキリさせたいマーガレットは困惑気味。

お互いの違いを違いとして受け止めながら、共に寝起きし、食事を作る。

時に相手の感情の嵐が静まるのを息をひそめて待ったり、網戸を買うお金を貯めるために庭の雑草を食べてみたり、大きな蜘蛛の巣の美しさにみんなで驚嘆したりと、古い家での生活はしだいに4人の心をつなぎ合わせていきます。

機織り機を持ち込み、ギッタンバッタンとリズミカルな音の響く中、桜や柏、桂の枝を煮出して、糸を染める色を紡ぎ出していく…

草木染めって今回初めて詳しくその方法を知ったんですが、意外と家庭でも出来そうな感じでした。

なにより、草木の生きた証を色として結実されていく工程が魅力的で、媒染液(ばいせんえき)によっても色が変わるし、同じ木でも季節によって出る色が違うと知って、本当に木って生きているんだなぁと実感しました。

作者は草木染めを人間のそれぞれの人生に照らし合わせ、その時々の色によって染められていく一生という織物を読者に見せようとしたのかも知れません。

からくさ模様は永遠に連続する生命の流れ。
様々な思いをからめとり、東と西、男と女、生と死を紡ぎながら一枚の布、一つの世界を織り成していく…

迫害され、国を奪われたクルドの人々。
古い家に縛り付けられ、しかし、その家と共に生きる女たち。
能面に込められた思いと、二つの人形。
妊娠騒ぎに、燃える炎の中で嬉しそうに飛び立っていく「りかさん」の姿。

前回紹介した『りかさん』の中の主人公、ようこが成長した姿で登場するこの物語。

「りかさん」の出生の秘密や、その生い立ちが明かされるだけでなく、それ以上に人間について、人と人のつながりについて、強く考えさせられる内容です。

決して押し付けるのではなく、たんたんと語られる、自分の中に悲しみも苦しみも抱えた人々の物語が、読書後、自然と胸の中に清々しさを与えてくれます。

たくさん素敵な要素が織り込められているので、ちょっと贅沢すぎるかなと思う程。

いい本読んだなぁ~と正直思いました♪

最近、自分の周りの自然をゆっくり見たことありますか?

大切なのは、その”気配”を感じることです。

この本を読むと、そんな感覚にもっと敏感になりたい、そんな気持にさせてくれますよ☆









梨木 果歩  著
新潮文庫




タイの娘達

2006-05-24 07:18:00 | 本と日常
職場にタイから働きに来ている女の子たちがいるのですが、今回初めて一緒に働く機会がありました。

彼女たちに片言の日本語で教えてもらいながら、新しい仕事に挑戦。
身振り手振りを交えながら、熱心に教えてくれるので、割とすぐに覚えることが出来ました。

コミニュケーションもなんとか成立☆

とにかくよく笑う娘達です(^^)

手は動かしながら、たまに歌を歌ったり♪
これがどうやら故郷の歌らしく、すごく和むメロディーなんです!

日本の田植え歌とどこか似ているかな?

工場で歌を歌うなんて考えたこともなかったので、新鮮な驚きでした。

いやぁ、いいものです♪

単純な作業が楽しくなる☆

なんだか働くってことに対する態度を、考えさせられた体験でした。



五月の本棚 『りかさん』

2006-05-18 23:53:00 | 本と日常
生きていると、いろんなことがあって、悲しいこと、嬉しいこと、とても信じられないようなことにも直面しなくちゃならなくて、苦しくて、辛いことばかりだけれど、ちゃんとそれを受け止めて、自分の心の湖の深いところにそっと沈めて、生きていくこともできるんだと、この小説を読んで思いました。

今回は、梨木香歩さんの『りかさん』のご紹介です☆

この小説にはいくつかの人形たちが登場します。

まずは、主人公、小学生のようこが、おばあちゃんからもらう「りかさん」♪

本当は「リカちゃん人形」が欲しかったのに、この「りかさん」は黒髪の市松人形。

悲しい気持でベットに入ったようこを見つめて、「りかさん」は思います。

―ようこちゃん、つらいね。

「人形の本当の使命は生きている人間の、強すぎる気持をとんとんと整理してあげること…」

そう、この「りかさん」は立派な登場人物。
ようことおばあちゃんにしかその声は聞こえないみたいだけれど、しだいに様々なことをようこに教えてくれるようになります☆

自分ちの雛人形たちがすごくもめている…

「りかさん」と一緒に過ごすうちに、他の人形の声も聞こえるようになってきたようこ。

女雛は隣の男雛そっちのけで、「うるわしの、せのきみ」と言ってはネズミにかじられ取り替えられた昔の男雛をなつかしみ、三人官女も五人囃子(ばやし)もそれぞれに怒鳴りあっている。

その他にも、フランス生まれのビスクドール。
アメリカから親善大使としてやって来たブロンドの髪をした人形アビゲイル。

人形には昔の持ち主たちの思いや、様々な過去が蔦のようにしばりついていて、ようこと「りかさん」に訴えてきます。

「気持は、あんまり激しいと、濁(にご)って行く…」

「りかさん」は、特別な力があるわけでもなく、(ある意味特別だけど☆)ただ人形たちの声を聞いてあげて、その思いを受け止めてあげるだけ。

放っておく時もあるし、どこかに流れつくまでそっとしておく時もある。

その物事の捉え方には、どこか現実の人間関係に通じるものがあって、こういう考え方って素敵だなぁ~と思ってしまいました♪

梨木果歩さんの作品を読むと、いつも思うのですが、普通私たちが負の感情だと思ってしまいがちな、怒り、妬み、憎しみといった感情さえも、登場人物は自分の一部としてきちんと受け止めている。

確かにその瞬間は、泥のように濁ったものが感情を揺さぶるけれど、その体験により深みを増すというか、しだいに心の底に落ち着いて、自分の中に受け入れていく様子は、波がおさまり、澄んだ水が戻っていくみたい☆

人間って、嬉しいことも悲しいこともちゃんと受け止めて生きていけるんだ、それはとっても自然なことなんだ。

この小説の中には、残酷なシーンもあります。
太平洋戦争。
日米親善のために贈られて来た人形たちのたどった運命…

時に厳しく、辛いことにも目を背けない。

そうでありながら、最後には温かい気持にさせてくれる。
だから彼女の作品は好きです☆

この本には、成長したようこと、その後の「りかさん」の物語、『からくりからくさ』のさらに後日談になる、『ミケルの庭』も併録されています。

オススメとしては、『りかさん』『からくりからくさ』『ミケルの庭』と読むのがわかり易いと思いますけど、どの物語から読んでも、きっと楽しめると思います♪

幼い日、人形に話しかけた経験はありませんか?

そんなあなたに、この物語を読んでもらいたいです☆





梨木 果歩  著
新潮文庫




英国戀物語 エマ

2006-05-14 16:12:00 | 本と日常
休日は本屋さん巡り。

注文しておいた本を受け取りに行って来ました☆

題名は*(キラキラ)*『マリゴールドの魔法』*(キラキラ)*
作者はルーシー・モード・モンゴメリ。

前から読みたかったんですよね、これ♪

それと、上橋菜穂子さんの*(キラキラ)*『狐笛のかなた』*(キラキラ)*

これはcafe友だち、モモさんのご紹介♪

あとついでに買ったのが、森薫さんのマンガ。
*(キラキラ)*『エマ』*(キラキラ)*

19世紀末のイギリスを舞台に、メイドとして働く女性と、貴族の青年との身分を越えた恋の物語♪

月刊「MOE」で紹介されていて、気になっていたんですよね!
当時のイギリスの風景や、伝統と格式の残る上級社会の内情が魅力的に描かれています☆

ついでに言うと、文化庁芸術祭、平成17年度優秀賞を受賞したそうです。
おめでとう*(音符)*

もう一冊は西原理恵子の*(キラキラ)*『はれた日は学校をやすんで』*(キラキラ)*

西原さんのマンガは友達にすごくファンの子がいて、その影響で読むようになりました♪

これは文庫化でお安かったのでついつい購入。

おまけでゲームの攻略本も一冊。
これは今日買って来た『ファイナルファンタジーⅦ ダージュ オブ ケルベロス』のコンプリートガイド。

ゲームを買うのは久しぶり。
ようやくちょっと安くなっていたので買ってしまいました♪

昼食は中華のお店で”冷やしトマト”と”中華飯”、987円。
それと”アップルタルト”もついついホールでドーンと購入☆

好きなんですよね、アップルタルト*(ハート3つ)*

ちょっと贅沢してしまったかな?




油断大敵

2006-05-11 00:00:00 | 本と日常
たまに信じられないことが起こりますね、この世界って。

大きな機械がズラ~と並んだ工場で働いているのですが、今日はちょっと疲れ気味で、早く帰ってお風呂に入りたいなぁ~、なんて考えていたんです。

終業五分前。

その時、それは起きました。

なんと、天井に固定されていた機械が落っこちて来たんです*(びっくり2)*

幅2メートルくらいの鉄製の機械の一部が、派手な音をたてて。

あぁ、下に人がいなくて良かった~

そんなものが落ちてくるなんて誰も想像していませんでした。
まさに青天の霹靂(へきれき)。

しかし、なんであと五分って時に落ちてくるかな?

もちろん、ちょっとした騒ぎになりました。
穴は開いてるし、機械は動かないし。
そんな状態なので、当然帰るに帰れなくなって、帰宅時間はのびのびに。

こんなことがあるんですね。

ま、誰もケガをしなかったということで、笑い話になりそうです。
「うちの会社、ボロだから」って☆




のんびり連休

2006-05-06 14:09:00 | 本と日常
もう連休もおわっちゃうんですね。
今年は近場にちょっと出かけただけで、アパートでのんびりしていました。

連休前に買い込んだ本は、

ラルフ・イーザウの*(キラキラ)*『ファンタージエン秘密の図書館』*(キラキラ)*

ターニヤ・キルケルの*(キラキラ)*『ファンタージエン愚者の王』*(キラキラ)*

ダイアナ・ウィン・ジョーンズの*(キラキラ)*『ウィルキンズの歯と呪いの魔法』*(キラキラ)*

松下幸之助の*(キラキラ)*『素直な心になるために』*(キラキラ)*

荒俣宏の*(キラキラ)*『レックス・ムンディ』*(キラキラ)*

などなど♪

『秘密の図書館』は昨日読み終わりました☆
ドイツの作家数人がエンデの『はてしない物語』に捧げた新たなファンタージエンの物語。

その第一弾、ラルフ・イーザウの『秘密の図書館』の主人公は、『はてしない物語』で主人公バスチアンが逃げ込んだ古本屋の主人、カール・コンラート・コレアンダー氏*(びっくり2)*

彼の若き日の冒険と、バスチアンが手にすることになる表紙にアウリンの刻まれたあかがね色の本、「はてしない物語」がどうやってコレアンダー氏の手に渡ったかが語られています☆

エンデの『はてしない物語』が大好きなので、この作品も楽しく読めました♪

あと荒俣宏の『レックス・ムンディ』はダン・ブラウンの『ダ・ヴィンチ・コード』の解説で、荒俣宏氏自身が書いていたイエス・キリストの謎に挑んだアドベンチャー・ホラー(?)小説。

こちらでは十七世紀の画家ニコラ・プッサンの「アルカディアの羊飼いたち」という絵画が重要な鍵になっていて、南仏の小さな村、レンヌ=ル=シャトーで発見されたといわれるキリスト教の聖遺物の謎について、大胆な仮説が展開されています♪

『ダ・ヴィンチ・コード』とも深く関係していて、とっても興味深いです☆

ダイアナ・ウィン・ジョーンズの『ウィルキンズの歯と呪いの魔法』は、彼女の初期の子ども向けファンタジー*(びっくり2)*

ジェスとフランクの姉弟が、おこずかい稼ぎのために始めた「仕返し有限会社」。
でも、二人のもとに舞い込む依頼はお金にならないへんてこで変わったものばかり。
ある日魔女に仕返しして欲しいという二人の女の子がやってきて…

彼女の作品は奇想天外な展開が好きです☆

あと、登場する子ども達がけっして”いい子”ばかりじゃないってところが他のファンタジー物と違っていて面白い♪

お父さんが寄宿学校のようなことをやっていたとかで、彼女自身がたくさんの子どもを見てきただけに、すっごく子どもたちがリアルなんです!

弱さとか誘惑を克服して成長するっていうお決まりの子ども向け作品と違って(それはそれで面白いけど☆)、自分勝手で、わがままいっぱいの小悪魔たちがところ狭しと駆け回ってる♪

連休中は他に梨木香歩さんの作品をいくつか読んでいます。

こちらはじんわりと涙し、温かさがふんわりと包み込む物語が多いです☆

連休もあと少し。
洗濯物も干したし、今日ものんびり過ごします♪