主冶医の先生に呼ばれ、妻の余命について知らされてから半月が経った。
先生には「今月いっぱいでしょう」と言われているので毎日がビクビク。
夜も昼も携帯電話を傍に置いて、もしもの時の連絡に備えている。
妻が告知を受けたのは今回で2度目。1度目は昨年の春先の事。
「よくもって年内いっぱい」と、言われてから1年以上が経っている。
余命告知を受けてからも、ずっと長生きした人の話はよく聞く。
妻の場合もそうなのだろうか?身体の根幹が丈夫なのだろう。
寝た切りで意識が混濁していても、人を生かすのが現代医学なのか。
会話もできず車椅子にも乗れず、全てを介護士さんのお世話になっている。
あの日先生の特別の計らいで会えた妻は、すっかり小さくなっていた。
鼻からの栄養補給と点滴に、命を委ねている妻は幸せなのだろうか。
通常の面会が出来ないだけに、その心の内は推し量るすべもない。
今日も頬杖をついて彼女の写真と話す。毎日の習慣になってしまった。
「家の工事終わったぞ」「今朝は寒かった!」「味噌汁作ったんだぞ」
掃除が苦手な事。久し振りに歩いたら身体の節々が痛くなったこと。
何でも話す。写真の彼女は何時も笑って聞いてくれている。
男のくせに意気地が無いだろ? 顔を近づけて聞いてみる。ん?
クッソ! この頃涙もろくなっちゃったよ。誰も見てねぇからいいけどな。
テレビ見ててもいきなり泣き出すんだぜ、まったく始末に負えないよ。