おとらのブログ

観たもの、見たもの、読んだもの、食べたものについて、ウダウダ、ツラツラ、ヘラヘラ書き綴っています。

四月大歌舞伎

2024-04-29 23:44:38 | 観たもの
 四月の歌舞伎座でございます。「春のにざたま祭」の歌舞伎座でございます。半年ぶりの孝玉コンビのご共演でございます。

 夜の部は連日大盛況で、千穐楽前は「空席なし」の文字が続いていました。まぁね、そりゃそうでしょうよ。国宝の孝玉コンビでございますからね。初日からTwitterは賑々しくご両人の様子で盛り上がっておりました。ワタシの観劇日は中日過ぎだったので、それを見ながら「あーかな、こーかな」といろいろ妄想しながら上京する日を指折り数えて待っておりました。

 「於染久松色読販」と「神田祭」を組み合わせての上演は平成30年3月、令和3年2月、そして今回で3回目です。平成の方は見ました。三連荘でした。令和の方は最前列のかぶりつきを取っていたのですが、コロナの感染状況が酷い時で、泣く泣く諦めました。その時は「憎っきコロナめ」と思ったけれど、最近はどこもかしこも超密状態でイラっとすることも多く、「コロナの頃が懐かしい」なんて思う時もあります。あの時は新幹線も空いてたし、ホテルも安かったし、劇場も両隣は空席だったし、コロナの感染のことを考えなければ、本当に良き状況でした。人間って勝手なものです。

 話が逸れました。今回も三連荘にしました。「定額制」を利用するかどうかずいぶんと迷ったのですが、至近距離で見なければ!と思い、一階席2回、三階席1回と昼の部三階席1回でした。

 一階席は2列7番と10列14番です。2列は花道下、「神田祭」の引っ込みの時は、ちょうど真横で孝夫さんと玉ちゃんがいちゃいちゃしてました。お芝居なんですが、お芝居には見えないんですよね。「ん~」「あ~ん」って頷きあって、二人の世界に没入して見つめ合って、嬉しそうに微笑みあって、それを見ているワタシはマスクの下でニタニタが止まらず、ふにゃぁっと骨抜きにされ、トロトロに完全に溶けてました。おそらく、歌舞伎座のお客さん全員がそんな状態だったように思います。劇場の空気がとても柔らかくなってましたもの…。おそるべし、孝玉コンビの破壊力です。尊いお二人です。拝みそうになりました。
 
 「神田祭」の振り付けはもちろんあるのですが、お二人はほとんど打ち合わせすることなく踊られるそうです(「お話と素踊りの会」で聞いた)。孝夫さんも「自然に」っておっしゃっていましたよね。こういうことを聞くと、ますます尊くなります。後にも先にもお二人のようなコンビは現れることはないんでしょうね。同時代に生きていることに感謝です。

 「於染久松色読販」のほうは、腐れ縁でつながってる夫婦感がたまらなくステキです。南北がお好きな孝夫さん、ゴロツキの悪い喜兵衛さんをノリノリでお勤めでした。玉ちゃんのサバサバしたお六さん、男前でした。でも、決してガサツではないんですよね。丁寧に暮らしてる“出来た”奧サンでした。なのに、強請りたかりをするって、ギャップすごすぎです。

 周りの役者さんもステキで、ちょっと好きな橘太郎さんもご出演でちょっと嬉しかったです。千次郎さんの番頭さん、抜擢ですね。これで4度目だそうです。玉ちゃんも「歌舞伎役者も数が減っていて、どんどんできる人がやればいい」とおっしゃってて、来月の「阿古屋」にも大きなお役でご出演ですね。ガンバレ!です。

 夜の部の最後は「四季」という舞踊です。文字通り春・夏・秋・冬をいろいろな趣向で踊られます。これの前の孝玉コンビオンステージをこちらも“全力”で見ているので、申し訳ないけれど付け足し感でいっぱいでして…。その中でも「春・紙雛」にわれらが吉太朗クン、「冬・木枯」にこっそり贔屓の鷹之資さんがご出演なので、そこだけはちゃんと見ました。吉太朗クンも鷹之資さんも群舞の中で際立っていました。やっぱり上手いです。おばちゃん、嬉しかったです。「木枯」はなかなか面白い舞踊でしたね。最初は名題下さんたちのトンボ大会?みたいで、舞台狭しと飛んだり跳ねたり見応えがありました。左近ちゃんが美少女で結構でした。玉ちゃんブートキャンプで鍛えられただけのことはあります。みみずくの松緑さん、お化粧が日替わりだったそうで、そう言われれば1日目と2日目で少し顔が違っていたような?嘴がついてた時もあったとか、写真で残してほしかったです。

 昼の部は1回だけ、3階A席です。「引窓」からです。義太夫狂言って気持ちよくなってしまうので役者さんには申し訳ないなぁと思いつつ、遠いところから台詞が聞こえてくるような、そんな感じでした。そのわりに、お話には入り込むことができて、梅玉さん、東蔵さん、扇雀さん、松緑さんがとても良くて、最後はしみじみと「エエお芝居やね」って思っておりました。「引窓」って孝夫さんで見ることが多くて、孝夫さんがご出演になるとどうしても孝夫さんばかり見てしまうのか、あまりストーリーを気にしてないというか…。今回は純粋にお芝居として見たので、まっすぐにお話が入ってきたんでしょうね。梅玉さんと東蔵さん、こちらも人間国宝コンビですね。生さぬ仲の親子感が悲しくて切なくてよろしゅうございました。

 次は「七福神」という舞踊、若手ばかり7人でわちゃわちゃと踊っていました。これにもこっそり贔屓の鷹之資さんがご出演で、「7人の中でもピカイチよね」と思いながら拝見しておりました。

 昼の部の最後は愛之助さんの「夏祭」です。大阪や博多で上演されてて、そのたびに高評価で、ようやく歌舞伎座で上演です。上方歌舞伎の「夏祭」です。初日より各方面から大絶賛で、上方歌舞伎贔屓としては見る前から何だかウルウルしてました。上方の役者さんが歌舞伎座で団七を演るって、今回が初めてだったそうです。十三代目仁左衛門さんも坂田藤十郎さんも歌舞伎座では団七をされていません。孝夫さんが手掛けられていたら、ひょっとしたら歌舞伎座でもかかったかもしれませんが、孝夫さん「太腿出すのイヤ」っておっしゃって団七はなさいませんでした。

 愛之助さんが大阪nativeってこともあって、もちろん上方言葉は全然問題なく、そしてチンピラ感がニンに合ってて(←褒めてます)、perfectな団七でした。「ほんまの団七ってこれよ。お江戸の皆さん、よう見といてね」ってふれて回りたかったです。やっぱり「大阪の匂い」っていうヤツなんでしょうね。秀太郎さんがよくおっしゃっていました。歌舞伎座の真ん中で愛之助さんが上方歌舞伎をかけてる、秀太郎さんもさぞ喜んでいらっしゃるだろうなぁと思うと、またウルウルしてきます。

 今回はお辰と二役でしたが、こちらも違和感なくちゃんと女形でした。ちょっと秀太郎さん風味があるかなぁと思っていました。三婦は歌六さん、徳兵衛は菊ちゃん、義平次は橘三郎さんでした。菊ちゃんちょっと違う?って思わなくもなかったけれど、破綻することなくきちっとお勤めでした。橘三郎さんって孝夫さんと同い年だそうで、それであの泥場は「スゴイ!」って思いました。ほんと、憎たらしい義平次なんですよね。この配役も今回の大絶賛になってるんでしょうね。ただ、ぜいたくを言えば、周りも上方歌舞伎の役者さんで固めてほしかったなぁって、ちょっと思いました。上方の役者さんの絶対数が足りないので、なかなか難しいかもしれませんが、愛之助さんがもっと出世?して、自分で配役を決められるようななったら、名題さんからもどんどん抜擢できるようないなるのかなぁ…。

 次はぜひ愛之助さんの「女殺油地獄」を歌舞伎座で!。タカタロさんと進之介さんもごいっしょで、従兄弟トリオでかけてほしいです。南座の三人の「女殺」、とても良かったので、こちらもお江戸の皆さんに見ていただきたいです。松竹株式会社さま、どうぞよろしくお願いいたします。

 
 2列7番からの景色

 
 とても良いお天気でした。
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