松竹座の初春大歌舞伎の夜の部でございます。国立文楽劇場で文楽昼の部→松竹座で歌舞伎夜の部という変則的な通し観劇となりました。どちらかに寄せて通しで見ればいいんですが、文楽は休憩が少なくその時間も短いので、通しはできれば避けたいと思っており、こんな中途半端な通し観劇となりました。
夜の部の演目と配役です。
一、桂川連理柵(かつらがわれんりのしがらみ)
帯屋
帯屋長右衛門 坂田 藤十郎
丁稚長吉/信濃屋娘お半 中村 壱太郎
義母おとせ 坂東 竹三郎
隠居繁斎 中村 寿治郎
弟儀兵衛 片岡 愛之助
長右衛門女房お絹 中村 扇 雀
二、研辰の討たれ(とぎたつのうたれ)
守山辰次 片岡 愛之助
平井九市郎 市川 中 車
平井才次郎 中村 壱太郎
吾妻屋亭主清兵衛 片岡 松之助
平井市郎右衛門 嵐 橘三郎
粟津の奥方 市川 笑 也
僧良観 坂東 秀 調
三、芝浜革財布(しばはまのかわざいふ)
魚屋政五郎 市川 中 車
大工勘太郎 中村 亀 鶴
左官梅吉 嵐 橘三郎
金貸おかね 中村 歌女之丞
大家長兵衛 片岡 松之助
姪お君 市川 笑 也
政五郎女房おたつ 中村 扇 雀
↑こうやって見ると、少ない役者さんで、がんばっていらっしやいますね。東京の歌舞伎座とはエライ違いです。幹部さんがいらっしゃらない分、名題さん、名題下さんも出番が増え、それはそれで楽しみが増えます。オペラグラスであちこちキョロキョロしておりました。
一つ目の「帯屋」は一昨年の永楽館歌舞伎で上演されました。壱太郎さんが長らく上演が途絶えていたこの演目をぜひ演りたいと切望されてかかった作品です(そのあたりのことは歌舞伎美人のコチラでインタビューに答えていらっしゃいます)。個人的には落語の「胴乱の幸助」のイメージのほうが強いんですが。あの小さい芝居小屋永楽館から大きな松竹座の舞台に移ってどうなるのかしらと思っていたけれど、大丈夫でした。永楽館のときは愛之助さんが主役の長右衛門でしたが、今回は義弟の儀兵衛にまわり、長右衛門は藤十郎さんがお勤めになりました。
藤十郎さん、さすがの存在感でした。存在そのものが上方歌舞伎です。とにかくお若い!14歳の娘から惚れられるのも納得できる若さです。義母と義弟からの苛めに耐える姿も風情があり、愛之助さんも永楽館でがんばって演じたはりましたが、やはり全然格が違います。って、人間国宝・芸術院会員・文化勲章受章者の藤十郎さんと比べるのが失礼ですよね。愛之助さんは黙っているお役よりもペラペラしゃべるお役のほうがお似合いですね。この儀兵衛も次の「研辰の討たれ」の守山辰次もとにかくよくしゃべるしゃべる、全然重厚感がなく薄っぺらい人物です。愛之助さんが軽薄と言ってるのではなく、まだ年齢的に寡黙でどんと構えたようなお役は無理なのかもしれません。大阪弁が自由自在なので、よろしいですね。ストレスを感じずに見ることができます。「封印切」の八右衛門なんていいかもしれません。がんじろはんの忠さんでお願いします。
そして義母おとせの竹三郎さん。いやぁ、はまり役です。ネチネチと苛める因業婆をお勤めです。竹三郎さんの当たり役のひとつだそうです。
壱太郎さんが永楽館の時と同様、丁稚長吉とお半を演じられました。永楽館の時よりはずいぶんとバージョンアップされたように思います。お半が本当に可愛らしくて、長右衛門が誘惑されるのもわかります。
二つ目が「研辰の討たれ」です。野田版ではなくオリジナルのほうです。上にも書いたように愛之助さんがとにかくヘラヘラ、ペチャペチャよくしゃべります。どことなく勘三郎さんのしゃべり方に似せてるような気がしました。気のせいかもしれませんが。仇討ちの場面で見物人が大勢登場するんですが、上方のお家のお弟子さんたち総出演って感じで、楽しかったです。
最後の「芝浜革財布」はお江戸の落語を脚色した人情話です。中車さん、昼の部の「らくだ」とは打って変わって江戸っ子のお役です。ちゃんと江戸っ子でした。扇雀さんもこっちのほうが安心して見られます。扇雀さんって自分は上方のお家っていう意識は高く、ことあるごとに「上方歌舞伎の継承」とおっしゃっているんですが、そのわりに関西でのご出演が少ないような気がするんですが。上方言葉もあやしい時があるし…。まあ、孝太郎さんのように東京の歌舞伎座を「ホームグランド」ってブログに堂々と書いてしまうよりはましかもしれませんが。千ちゃんに「あなたは松嶋屋の御曹司、上方歌舞伎のお家の人なんですよ」ってきちんと漏れなく伝わっているのかどうか不安です。
すみません、話が横にそれました。松之助さんがここではお江戸の長屋の大家さんで、慣れない江戸弁をお使いでした。私でも違和感持ったくらいなので、お江戸の人が聞いたらおいどがこそばくなったかもしれません。笑也さんの驚異の若さにびっくりでした。中車さんよりも扇雀さんよりも年上なのにちゃんと二人の“姪”でした。
今月の松竹座、本当に面白かったです。演目もバラエティに富んでいたし、少ない人数でもできるってところを見せていただきました。ガンバレ、上方歌舞伎! ALL上方歌舞伎の役者さんによるお芝居はストレスがなく、“上方歌舞伎”を堪能しました。時間が許せば昼夜もう1回見たいところですが、今週末は東京です。残念です。
文楽劇場から松竹座への移動の途中、道頓堀のがんこ寿司で買った細巻です。鉄火巻がちゃんとまぐろの味がして美味しかったです。
夜の部の演目と配役です。
一、桂川連理柵(かつらがわれんりのしがらみ)
帯屋
帯屋長右衛門 坂田 藤十郎
丁稚長吉/信濃屋娘お半 中村 壱太郎
義母おとせ 坂東 竹三郎
隠居繁斎 中村 寿治郎
弟儀兵衛 片岡 愛之助
長右衛門女房お絹 中村 扇 雀
二、研辰の討たれ(とぎたつのうたれ)
守山辰次 片岡 愛之助
平井九市郎 市川 中 車
平井才次郎 中村 壱太郎
吾妻屋亭主清兵衛 片岡 松之助
平井市郎右衛門 嵐 橘三郎
粟津の奥方 市川 笑 也
僧良観 坂東 秀 調
三、芝浜革財布(しばはまのかわざいふ)
魚屋政五郎 市川 中 車
大工勘太郎 中村 亀 鶴
左官梅吉 嵐 橘三郎
金貸おかね 中村 歌女之丞
大家長兵衛 片岡 松之助
姪お君 市川 笑 也
政五郎女房おたつ 中村 扇 雀
↑こうやって見ると、少ない役者さんで、がんばっていらっしやいますね。東京の歌舞伎座とはエライ違いです。幹部さんがいらっしゃらない分、名題さん、名題下さんも出番が増え、それはそれで楽しみが増えます。オペラグラスであちこちキョロキョロしておりました。
一つ目の「帯屋」は一昨年の永楽館歌舞伎で上演されました。壱太郎さんが長らく上演が途絶えていたこの演目をぜひ演りたいと切望されてかかった作品です(そのあたりのことは歌舞伎美人のコチラでインタビューに答えていらっしゃいます)。個人的には落語の「胴乱の幸助」のイメージのほうが強いんですが。あの小さい芝居小屋永楽館から大きな松竹座の舞台に移ってどうなるのかしらと思っていたけれど、大丈夫でした。永楽館のときは愛之助さんが主役の長右衛門でしたが、今回は義弟の儀兵衛にまわり、長右衛門は藤十郎さんがお勤めになりました。
藤十郎さん、さすがの存在感でした。存在そのものが上方歌舞伎です。とにかくお若い!14歳の娘から惚れられるのも納得できる若さです。義母と義弟からの苛めに耐える姿も風情があり、愛之助さんも永楽館でがんばって演じたはりましたが、やはり全然格が違います。って、人間国宝・芸術院会員・文化勲章受章者の藤十郎さんと比べるのが失礼ですよね。愛之助さんは黙っているお役よりもペラペラしゃべるお役のほうがお似合いですね。この儀兵衛も次の「研辰の討たれ」の守山辰次もとにかくよくしゃべるしゃべる、全然重厚感がなく薄っぺらい人物です。愛之助さんが軽薄と言ってるのではなく、まだ年齢的に寡黙でどんと構えたようなお役は無理なのかもしれません。大阪弁が自由自在なので、よろしいですね。ストレスを感じずに見ることができます。「封印切」の八右衛門なんていいかもしれません。がんじろはんの忠さんでお願いします。
そして義母おとせの竹三郎さん。いやぁ、はまり役です。ネチネチと苛める因業婆をお勤めです。竹三郎さんの当たり役のひとつだそうです。
壱太郎さんが永楽館の時と同様、丁稚長吉とお半を演じられました。永楽館の時よりはずいぶんとバージョンアップされたように思います。お半が本当に可愛らしくて、長右衛門が誘惑されるのもわかります。
二つ目が「研辰の討たれ」です。野田版ではなくオリジナルのほうです。上にも書いたように愛之助さんがとにかくヘラヘラ、ペチャペチャよくしゃべります。どことなく勘三郎さんのしゃべり方に似せてるような気がしました。気のせいかもしれませんが。仇討ちの場面で見物人が大勢登場するんですが、上方のお家のお弟子さんたち総出演って感じで、楽しかったです。
最後の「芝浜革財布」はお江戸の落語を脚色した人情話です。中車さん、昼の部の「らくだ」とは打って変わって江戸っ子のお役です。ちゃんと江戸っ子でした。扇雀さんもこっちのほうが安心して見られます。扇雀さんって自分は上方のお家っていう意識は高く、ことあるごとに「上方歌舞伎の継承」とおっしゃっているんですが、そのわりに関西でのご出演が少ないような気がするんですが。上方言葉もあやしい時があるし…。まあ、孝太郎さんのように東京の歌舞伎座を「ホームグランド」ってブログに堂々と書いてしまうよりはましかもしれませんが。千ちゃんに「あなたは松嶋屋の御曹司、上方歌舞伎のお家の人なんですよ」ってきちんと漏れなく伝わっているのかどうか不安です。
すみません、話が横にそれました。松之助さんがここではお江戸の長屋の大家さんで、慣れない江戸弁をお使いでした。私でも違和感持ったくらいなので、お江戸の人が聞いたらおいどがこそばくなったかもしれません。笑也さんの驚異の若さにびっくりでした。中車さんよりも扇雀さんよりも年上なのにちゃんと二人の“姪”でした。
今月の松竹座、本当に面白かったです。演目もバラエティに富んでいたし、少ない人数でもできるってところを見せていただきました。ガンバレ、上方歌舞伎! ALL上方歌舞伎の役者さんによるお芝居はストレスがなく、“上方歌舞伎”を堪能しました。時間が許せば昼夜もう1回見たいところですが、今週末は東京です。残念です。
文楽劇場から松竹座への移動の途中、道頓堀のがんこ寿司で買った細巻です。鉄火巻がちゃんとまぐろの味がして美味しかったです。
今日でなくてよかったです。今朝は京都も大雪。
おもしろかったです、昼も夜も。
「帯屋」での愛之助さんの儀兵衛、文楽人形のようでしたね。いや、語りも含めて、一人二役。見事でした。
儀兵衛に限らず、様式化されていて文楽っぽいと思いました。壱太郎くんのお半とかも。
藤十郎さん、声量は厳しいものがありましたが、さすがの舞台でした。
中車さん、馴染んでおられますね。お御足がまっすぐで、きれい、と思っております。
「らくだ」の亀鶴さん、中車さんとの、文字通りの「からみ」、傑作でした。ぜひお江戸の方々にも見ていただきたいものです。
松竹座は歌舞伎座や演舞場のような華やかさはありませんが、演目も役者さんも充実していたように思います(贔屓目あるかもしれませんが)。
「らくだ」は予想通りの面白さでした。亀鶴さん、最高です。本当に歌舞伎座でもかけていただきたいものです。もちろん、家主夫婦は寿治郎さんと松之助さんで。