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阿久津和生著「お城のできるまで」は親が下調べをし小学校上級~の子に読み聞かせるといい

2020年06月19日 | 斜読

book511 お城のできるまで 阿久津和夫 集英社 1980  斜読・日本の作家一覧
 1980年代、子ども向けの図解本が流行した。本書「大人と子供の絵本シリーズ1 お城のできるまで」も、小学校上級以上を対象に、築城の様子や方法を大判の図と分かりやすい文で解説している。著者阿久津氏は、大人にも十分楽しめると紹介している。
 さっそく購入したが、私自身が城郭に詳しくなかったこともあって説明に身が入らず、低学年だった子どもたちにも城のイメージがわきにくかったようで、一度目を通しただけで本棚行きになった。

 たまたま本棚の終活・断捨離をしていて、埃のたまった本書を見つけ、読み直した。著者阿久津氏は、国宝犬山城、「国宝犬山城天守修理工事報告書」、伊藤ていじ著「城 築城の技法と歴史」などを参考にして本書をまとめたそうだ。
 P4戦国時代では山の上に城を築いたが、戦国時代が終わると・・P7敵が攻めにくく、水に恵まれ、交通の中心となり、城下町のつくりやすい場所が城づくりに選ばれるようになる。
 P9城には、領主が指揮をとる天守閣、見張り+攻撃のための櫓、領主の住む御殿、重臣の住む屋敷などがつくられる。
 P11秋の刈り入れが終わるころ、農民たちが城の予定地の丘に集められ、P13丘への道づくり、本丸の地ならし、測量がすすめられ、P15~P16堀を堀り、盛り土をし、P18石垣の石が切り出され、P19じょうぶなヒノキが切り出される。
 P21石は船をつかい、木はいかだを組んで川を下り、重い石はろくろで運ばれた。p23木枯らしの季節、石工により天守閣の石積みが始まる・・P25に天守閣の石垣=天守台の断面・・。P27梅の花のころ、天守台の工事が終わり、農民は農作業のため村に戻り、大工の仕事が始まる。
 P29天守台の工事中に大工は材木の加工を進める・・P30大工道具と大工仕事・・。P33天守閣の入口の骨組みをつくり、p34湿気に強い松と栗の木で天守閣の土台を組む・・P35土台の組手・継手・・。p36土台に柱を立て、柱と柱のあいだに梁を入れ、P38小屋根の垂木を打ち、P41鍛冶屋が釘づくりをすすめる・・農民も手伝う。
 P43骨組みが出来上がり、床板が張られ、P44屋根に垂木が打たれ、天守閣の姿が浮かびあがり、p45窯場で瓦やしゃちほこ、鬼瓦が焼かれ舟で運ばれる。
 P47屋根は野地板の上に荒土を盛り瓦を葺き、外壁は板小舞にする。p48城にはご殿、重臣の屋敷の工事がすすみ、城下に商人、職人の家が建ち始める。
 p51本丸を囲む土塀、櫓、門がつくられ、本丸への道は敵の攻撃を防ぐように階段にし、土塀はがんじょうにつくられ、p52石落としや弓や鉄砲のための狭間が設けられ、p53大手門には敵に反撃するための升形を設ける。
 P55天守閣の4階には城下町の暮らしぶりや敵の様子を見るための見晴台が巡らされる。P57冬が近づいてきたので室内壁の竹小舞を急ぎ、P58荒土を塗り、仕上げの漆喰を塗る。
 P60天守閣完成、P64城内の建物も完成し、P66石工、大工、瓦師、建具師、左官、その他の職人、農民が城を後にし、P69領主、重臣たちが新しい城に引っ越してきて、P71春の城下町はにぎわいを見せ、城づくりの話が終わる。

 いまから40年前だから城の情報は限られていた。遠出の旅行もしにくかったから、子どもも大人も城を見学する機会は少なかった。大判の図と簡潔な文の「お城のできるまで」は、子どもにも大人にも築城の過程を分かりやすく紹介している、と思う。城の独特の構造や専門用語に著者阿久津氏も苦労したのではないだろうか。
 
 私は旅好きだが年を重ねるたびに旅の趣向が変化し、最近は城を組み込んだ旅が増えた。2016年~2019年の旅では、長浜城、彦根城、熊本城、姫路城、名古屋城、岐阜城、犬山城、金沢城、松本城、高松城、丸亀城、大洲城、宇和島城、松山城、浜松城、掛川城、小山城、駿府城、仙台城、小田原城ほかを訪ねた。
 現存する国宝もあれば、復元、再現や城跡だけになった城もある。あわせ資料や武将たちをテーマにした本も読んだから、城に詳しくなった。
 近年の城ブームで、テレビでも城をテーマにした番組が増え、CGを駆使して微に入り細に入り解説してくれるので、ますます城の理解が深まった。

 そうした経験を踏まえると、城の本来の役割だった敵の攻撃をいかに防ぐか、逆に敵から見ればいかに城の防衛を突破するかについて書き加えると、城づくりがもっとダイナミックに感じられると思う。

 絵本はテレビ、映画、CG画像にはかなわないが、親子が絵本を開き、一ページずつ読み解くことで城づくりを共有できる。話が、戦国時代や鉄砲の伝来に広がり、あるいはヨーロッパの城と日本の城の違いに飛び、さらには神社建築と寺院建築に発展し、新しい旅の計画につながるかも知れない。
 ・・もちろん、親は事前に目を通し、気になることは下調べをしておく・・オンラインが普及しているいまなら親子で調べるのもいい・・。
 (2020.2)

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