アプリの「聴くNews」を時折、視聴しています。
日本のニュースの他に「解説」、「学習」などの項目があり、「学習」では小澤俊夫先生(指揮者の小澤征爾のお兄さんです)の昔話や
「青春あるでひど」で科学ニュースなどを聴いています。
この「青春あるでひど」の第498話は「2015年科学重大ニュース」でした。
トップはてっきり日本人科学者の「ノーベル賞受賞」かと思ったのですが、「新元素の命名権が理研に」というのが「日本の科学の快挙」として
挙げられていました。
原子番号113の新元素には現在の所、正式の名称はなくラテン語で113を表す「ウンウントリウム」という名が暫定的に付けられています。
新元素の命名権を巡っては日本の理化学研究所の他に米国やロシアの研究所も名乗りを挙げていたのですが、昨年12月に理研に命名権が与えられたということです。
ノーベル賞受賞も素晴らしいことですが、ノーベル賞の業績は後年、他の科学者によって新しい理論や技術が開発される場合があります。
それに対して新元素の名前は人類が存続する限り永久に残るわけで、やはり日本の科学者の快挙といえます。
今回、私も初めて学んだのですが、原子番号92のウランより重い元素は自然界には存在せず、原子番号92以後は全て人工合成により
生み出されたものです。
余談ですが、拙ブログを読んでいただいている皆様も学校の化学の授業で試験用に元素の周期表を暗記したことがおありでしょう。
あの「水平、リーベ、ボクの船、ナマアケ・・・」で暗記しましたね。
ちなみに化学者の夫に聞いたらドイツでは暗記するのにそんな「アンチョコ?」はなかったとのことでした。
原子番号92のウラン以後の人工合成した元素には関連する化学者とか研究所の名前がついています。
例として挙げると
原子番号99はアインシュタイン博士の「アインスタイニウム」ですし、
原子番号107はやはり化学者のニールス・ボーアにちなんで「ボーリウム」です。
理研に命名権が与えられた今回の新元素ですが、現在のところ「ジャポニウム」が有力候補だそうです。
ただ後年、日本の科学者がさらに新元素を人工合成する可能性もあるので「日本(ジャパン)」の文字が入っているのは使用しない方が良いのではないかという意見もあります。
理研というと「ふえるワカメちゃん」で有名なので、新元素は「フエルワカメリウム」などの「お笑い提案」もあるようです
。
数ある元素のうち、女性物理学者の名前にちなむものは2つしかありません(昔は「リケジョ」の数自体少なかったですしね
)。
原子番号96のマリー・キュリーにちなむ「キュリウム」と
原子番号109のリーゼ・マイトナーにちなむ「マイトネリウム」です。
リーゼ・マイトナー(1878-1968)はウィーンのユダヤ系の家に生まれました。
とても優秀な女性物理学者でベルリンのカイザー・ウィルヘルム研究所で化学者のオットー・ハーンと共に放射線の研究で成果を挙げました。
「核分裂」の理論は彼女の物理的計算により初めて成し遂げられたといわれていますが、ユダヤ系であったためヒトラーの時代に北欧に逃亡しなくてはならなかったこととか、オットー・ハーンとの間で意見の食い違いなどもあり、後年、ノーベル賞候補には挙がりましたが、受賞したのは
オットー・ハーンのみでした。
ハーンはノーベル賞の賞金の一部をマイトナーに渡し、マイトナーはそれをアインシュタインが運営していた原子物理学者のための支援委員会に
寄付したそうです。
マイトナーの没後、1997年に109番元素の命名をマイトナーの名から「マイトネリウム」にすることが決まりました。
ノーベル賞は生存中の人物にのみ授与されますが、新元素の名前を個人の名前にするときは故人に限られているのだそうです。
ノーベル賞は逃したマイトナーですが、後年それ以上の名誉が授けられたというわけです。
日本では理研の小保方さんの手記が話題になっているようですが、優秀な科学者であればいつかかならず評価を受ける日が訪れると思います。