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ウクライナ俳人の句集

2023-12-20 15:53:00 | 読書




ウクライナの俳人ウラジスラバ・シモノバさんが俳句に興味を持つようになったのは、
14歳の時入院先の病院に置いてあった詩歌集に掲載されていた日本の俳句が目に留まったからです。
俳句が短い言葉の中に多くの意味を込めることができることに感動し、
印象を留めることができる素晴らしい方法だと気づいたのです。

入院中で意気消沈していたシモノバさんは特に芭蕉の次の句に希望の光を見出したということです。

まづ祝へ梅をこころの冬籠り
(厳しい冬の寒さに堪える時にも、間も無く梅の花と共に訪れる春をこころに持ち、まずは祝うが良い)

馬渕睦夫氏(元ウクライナ大使)が著書の中で「ウクライナの学校で芭蕉、奥の細道を取り上げ勉強していると知り感激した」お書きになっていると友人から聞きました。
シモノバさんも日本の俳句や芭蕉についてどこかで耳にしたことがあるのかもしれません。
14歳で俳句に出会ってからすぐに作句を始め、黛まどかさんと知り合うまでの10年間に700句も詠まれたということです。

黛さんは知り合いの女性俳人十数名と句の背景を知るウクライナ人、ロシア語を母語とするロシア人と翻訳作業チームを作り、
7ヶ月間かけて50句を選句、翻訳推敲を重ねて今年の夏に句集が出版されました。

シモノバさんの句はロシア語で詠まれています。
彼女はウクライナ語はもちろん使えるのですが、1世紀以上にわたるロシア・ソ連の植民地政策の結果、
ロシア語が第一言語になったからです。
今回のロシアによる軍事侵攻後、彼女はロシア語を使うことは辞め、ウクライナ語での作句を始めたので、
第二番目の句集が出版されるまではまだ時間がかかるでしょう。

巻末に掲載されている黛まどかさんと駐日ウクライナ大使との対談も心に響きました。
数学専攻の博士でもある大使は黛さんと日本文化の美と数学の美についても話しています。
その中で黛さんが日本の数学者の岡潔さんは「多変数複素関数論」という分野で長年未解決だった三大問題を解く前に、
一年間数学をやめて芭蕉の俳句をずっと読み続けたという興味深いエピソードを紹介してくれました。

ウクライナ軍は厳しい冬を迎えて前線で苦戦をしているようですが、挫けることなく頑張って欲しいものです。
そして爆撃を受けながらも作句を続けているシモノバさんのように文化を愛する気持ちは失わないで欲しいです。
ウクライナ大使も「戦時下に文化、心、教育の発展がなければ、何のための勝利か」と語っています。

最後に書道の先生にお願いした芭蕉の句の書を載せます。
長い投稿を最後までお読みくださりありがとうございます。






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