作家の多和田葉子さんは1993年に「犬婿入り」で芥川賞を受賞されました。
1982年にドイツにいらっしゃってから2006年まではハンブルクに、その後はベルリンに住んでいます。
現在までに日本語、ドイツ語、それぞれ20冊以上の著作が出版されています。
昨年11月には日本人としては初めて「クライスト賞」を受賞されました。

劇作家、ハインリッヒ・フォン・クライスト(1777-1811)の名にちなむこの文学賞はクライストの没後101年の1912年に誕生しました。
この賞の特徴は複数の審査員により受賞者が決められるのではなく、年度毎に異なる一人の審査員が受賞者を決定するという点です。
多和田さんの著作の中では私は日本語の「犬婿入り」しか読んだことがありませんでしたが、
今回はドイツ語で記された本を始めて読みました。

タイトルの"Überseezungen"は
Übersee (海外)と Seezunge (舌平目)を組み合わせたものですが、
Übersetzung (翻訳)と Zunge (舌→喋ること)
という意味も含まれています。
ドイツ語と日本語の「言葉遊び」のエッセーが綴られています。
例えば日本語で HANA は 「花」と「鼻」の意味があるので、単に「ハナを贈りました」といっても「花か鼻」か発音からはわからない・・・
などというエピソードです。
以前、放送局に勤めていた頃、多和田さんとのインタヴューが放送され聴いたことがあります。
その中で印象的だったのが「ドイツ語で文章を綴る時と日本語で綴る時の違い」についてのお答えです。
「日本語は母国語というためか安易にとらえ、事前に考えをまとめずに思いつくまま綴ることがあるが、ドイツ語は外国語ということで少し気構えて準備してから書き始める」
特に「母国語ということで安易に考えてしまう」という点は耳が痛かったです。
外国語だと教室に通ったりして磨くことを考えますが、日本語は母国語ということでおろそかになりがちです。
母国語といえど、やはり日々大切にしないといけないと痛感しています。
それで以下の本も時折、開いています。

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