風の記憶

≪記憶の葉っぱをそよがせる、風の言葉を見つけたい……小さな試みのブログです≫

秋の山

2014年11月01日 | 「詩集2014」



赤土をこねて
祖父は小さな山をつくった
がりりと土壁を引っかく
鎌の刃先の
あの放物線が消せない


秋へ秋へと
ゆらゆらと山をのぼる
黄蝶のような麦のシャッポ(帽子)
蔓に蔓を接ぎ木して
みどりの空をかさねてゆく
あかい実がしたたる秋
それが
祖父の山だった


親指と人さし指をコンパスにして
いっきに放物線の山を越えた
その日も
がりりと果汁のいたみが
赤くて消せない


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