一般質問 子どもの貧困と基礎学力の定着について
質問1
直近5年間の中学卒業生の進路状況によると、毎年、進学も就職もしない「無業者」いわゆるニートが10数人から20数人います。無業者が生まれる要因はどこにあるのか、また、15歳にして社会に放り出される子どもがいることを、教育者としてどのように受け止めますか。教育長に見解を求めます。
質問2
子どもの貧困は社会全体の問題です。2009年の政権交代後、国は初めて子どもの貧困率を明らかにしました。子どもの相対的貧困率は14.2%、実に子どもの7人に1人が貧困状態にあり、特にひとり親世帯に限った貧困率は50%を超えていました。
家庭の経済的問題が子どもの低学力、低学歴を招き、将来の所得や就労状況にマイナスの影響を与えます。これを「貧困の世代間連鎖(スパイラル)」といいますが、子どもの努力だけでは貧困から抜け出すことはできません。
それを如実に示すのが中学校卒業後の進路です。厚生労働省によると、2010年春に卒業した中学生の高校などへの進学率は全体で98%でしたが、生活保護受給世帯は87.4%にとどまっています。
子どもの貧困の連鎖を食い止めて、希望の連鎖を生み出す必要があります。
今、全国各地で生活保護受給世帯やひとり親世帯などの子どもを対象にした学習支援が広がっています。基礎学力定着を図り、高校進学の手助けをしています。
国は、学習支援に取り組む自治体に補助金を出して支援しています。申請件数は2009年度9件でしたが、2010年度は30件を超え、現在、70以上の自治体が実施しています(実際の運営はNPOなどに委託するケースが増えている)。特に、埼玉県は全県挙げて学習支援に取り組んでいます。その他、NPO法人、学生ボランティア団体、退職教員など多様な担い手がボランティアで無料・低額塾を開いています。
さらに、対象者を限定せず、学力水準の底上げのための場を設けている例も少数ながらあります。
子どもの基礎学力の定着を図るため、いわゆる「寺小屋」のような補習教室の実施を提案しますが、いかがですか。
【メモ】
○ 児童扶養手当受給者(江南市)
・ 2011年度 中学生がいる母子家庭世帯278世帯、父子家庭世帯13世帯
○ 卒業生の進路(江南市)
・ 2011年度進学率97.5%であるものの、定時制・通信制進学者が8.7%あり、実質的な進学率は88.8%。
・ 進学以外の進路の割合(各年5月1日)現在
2007年度 |
2.2% |
2008年度 |
3.0% |
2009年度 |
2.8% |
2010年度 |
2.6% |
2011年度 |
2.5% |
○ 生活保護
・ 全国では、19歳以下の受給者は2009年が25万4700人で、10年前よりも9万人以上増加している。
・ 最近3年間(各年4月1日現在)、江南市の19歳以下の受給者は55人、41人、46人。
・ 2009年、学習支援費を生活保護制度に新設した。
・ 自立支援プログラム策定実施推進事業社会的な居場所づくり支援事業
⇒学習会など学習支援に取り組む自治体に補助金を出している。申請件数は2009年度9件だったが、2010年度は30件を超えた。現在、71自治体が実施している。
○ 埼玉県「生活保護受給者チャレンジ支援事業」
・ 2010年度から、都道府県で初めて生活保護受給世帯の中学生を対象に学習教室を開いている。大学生がマンツーマンで教えている。
・ 7月現在、県内17か所で約460人が学んでいる。そのうち約7割が母子家庭。
・ 学習教室に通った子どもの進学率は、全体の進学率とほとんど変わらなかった。
○ 広島県福山市「土曜チャレンジ教室」 2011年5月から実施
・ 主催:市教育委員会
・ 講師:地域在住の退職教員(ボランティア)
・ 対象:小学5年生から中学1年生まで
・ 参加費:無料
・ 自学自習方式で習熟度に合わせて指導する。
・ 行政が主催者となり、授業や補習以外で学力対策専門の場を設けることは難しい。
・ 広島県教育委員会が県内の小学5年生と中学2年生を対象に実施した基礎・基本定着状況調査で、福山市の成績は小中学生ともに全教科で県平均を下回ったことが背景にある。