今週火曜日、市議会本会議で、子ども・子育て新制度に係る条例の制定についての質疑を行いました。
新制度は保育の量的拡充と質の向上などを掲げています。東京都内などでは、認可保育所に入れない待機児童の受け皿として、民間事業者などが民家やビルの一室で無認可・認可外の家庭的保育(保育ママ)や小規模保育などを行っています。新制度ではそれらが公的な保育サービスと位置付けられて、施設型給付の対象となります。
今回の条例では、家庭的保育や小規模保育の施設の設備や運営基準を定めます。ところが、認可保育所と比較すると、職員の資格要件や配置基準、施設の面積が緩くなっています。特に、職員の資格要件については、保育士や看護師の資格がなくても、保育業務に携われる「補助者」(一定の研修を修了している者)を置いてよいとしていることを懸念しています。
保育士が全く足らないというのであれば仕方ありませんが、実は保育士はたくさんいます。資格を持っていながら働いていない「潜在保育士」は全国で約70万人もいます。保育士の賃金が仕事の大変さに見合ったものではないところに、大きな問題があります。
無資格者が多く配置されると、保育士全体の待遇が低下することになりかねません。保育士資格のある人々が職場復帰できるように待遇改善に取り組むべきです。その点も新制度にもきちんと明記されていますし、そのために消費税の税率が引き上げられていることを忘れてもらっては困ります。
※以下、質疑の原稿をアップしますので、ご一読ください。ご意見をお待ちしています。
議案質疑
議案第39号 江南市家庭的保育事業等の設備及び運営に関する基準を定める条例の制定について
質問1
地域型保育事業は、待機児童が多く、保育施設を新設する場所がない都市部や、子どもが減っている地方などにおいて身近な保育の場を確保するものです。
江南市内で、家庭的保育(保育ママ)や小規模保育などの事業を立ち上げる動きがあるのか、うがいます。
質問2
全国には約2万数千人の待機児童がおり、そのうち約9割が3歳未満児(0~2歳)で占められています。さらに、「潜在的待機児童」は85万人程度に上るという推測があります。
江南市は待機児童がゼロとなっていますが、最近、3歳未満児の入所が増えています。申込状況や園児数はどうなっていますか。また、潜在的待機児童がいるのかどうか、認識をうかがいます。
質問3
近い将来、公共施設の再配置の一環として保育園が統廃合されると、保育園が大規模化し、総定員も減少します。
一般的に、未満児保育に係る経費は、公立保育所で実施するよりも、私立保育所や小規模保育で実施した方が安く抑えることができます。
児童福祉法第24条が改正され、やむを得ない場合でなくても、小規模保育によって必要な保育を確保するための措置を講ずればよしとされました。今後、経費削減を目的に、未満児保育を公立保育所から小規模保育へ代替えしていくこと(民営化)にならないか懸念していますが、見解を求めます。
質問4
「産業競争力会議雇用・人材分科会」の民間委員の提言を受け、政府は6月24日に閣議決定された「成長戦略」で、新制度の施行に併せて、育児経験豊富な主婦などを「子育て支援員(仮称)」として認定する仕組みを全国で導入することにしました。
8月4日、厚生労働省は「子育て支援員(仮称)研修制度に関する検討会」をスタートさせました。国の示すガイドラインによる全国共通の研修課程が作られます。
職員の資格要件については、保育士、保健師、看護師の国家資格を持つ人に限定されていません。市長が行う研修を修了した「家庭的保育補助者」「保育従事者」も認められることになりますが、いったいどのような研修が行われるのか、説明を求めます。
質問5
小規模保育は3歳未満児だけを小規模で保育する施設であり、落ち着いた環境を作りやすいというメリットがあります。
一方で、江南市の基準は国よりも厳しいものの、保育士資格を持たない人(B型の保育事業者、C型の家庭的保育補助者)の配置を認めた点には不安があります。
小規模保育とはいえ、わずかな研修によって保育所に勤務できるようになります。国家資格を有する専門職である保育士などを専門職でない人で補おうとすることは、保育の質の改善に逆行し、質の低下が心配されます。実際、無資格者が多い認可外保育施設で死亡事故が多いこと(認可施設の40倍)などが問題視されています。
また、賃金が安い無資格者、子育て支援員(仮称)が保育労働市場へ流入すると、保育に従事する人々全体の処遇が悪化し、人材確保がさらに困難になりかねません。
これらの点を踏まえ、職員の資格要件はもっと厳格であるべきと考えますが、見解を求めます。
質問5に対する再質問
厚生労働省の資料によると、2017年末には保育士が74,000人も不足するとされています。
2011年10月時点で、保育所に勤務する保育士は約37.8万人であるのに対し、2012年4月時点の保育士資格登録者数は約112.6万人に上ります。実に70万人以上の「潜在保育士」が存在しています。
保育士の処遇改善と潜在保育士の職場復帰を進めることが優先課題です。子ども・子育て新制度には、保育士の処遇改善策と保育の質の向上策も盛り込まれており、無資格者を登用することは本来の趣旨に反します。条例の資格要件について再考すべきですが、見解を求めます。
メモ
※ 小規模保育
国基準 A型で有資格者100%、B型で50%、C型ではゼロでもよい。
江南市基準 A型で有資格者100%、B型で50%。C型では必ず有資格者(保育士、保健師、看護師)を置く。
※ 潜在的保育士が保育現場で働くことを希望しない理由(厚労省調査)
・ 1位 賃金が希望に合わない 47.5%
・ 2位 責任の重さ・事故への不安 40.0%
・ 3位 自身の健康・体力への不安 39.1%
※ 保育士の人材養成と確保
・ 現在でも保育士が不足している。新制度によってさらに人材が必要となる。
・ 施設は増えたが人材が足りなければ、職員配置基準の引き下げにつながりかねない。
・ 保育士の平均賃金 月22.03万円(全職種平均32.38万円)、勤続年数8.4年(全職種平均11.9年)⇒保育士の待遇改善は必須
・ 非正規化の歯止めが必要(非正規の割合、公立53.5%、私立38.9%)
※ 保育所事業への企業参入
・ すでに保育所事業への企業参入が認められており、新制度によってさらに参入が進む。
・ 新制度の施設型給付は、事業体(公立、法人、会社)を問わず同額となる。
・ 投入される公費がどのように使われるか、チェックが必要となる。事業者が利潤を追求すれば、詰め込み保育、施設の安全性の低下、職員の賃金引下げにつながりかねない。