大木昌の雑記帳

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パンドラの箱を開けた安倍氏襲撃(3) ―ますます深まる自民党の闇―

2022-08-22 15:13:36 | 政治
パンドラの箱を開けた安倍氏襲撃(3)
―ますます深まる自民党の闇―

安倍氏襲撃事件の直後、一部のメディアは、これは大物政治家を暗殺する“政治テロだ”、
さらには“民主主義の危機だ”と書きたてました。

ところが警察からのリークで、容疑者は山上徹也という男性で、旧統一教会(以下、統一
教会と略す)に恨みを抱く一人の男性である、との事実が明らかにされると、事件の意味
合いが突然、思わぬ方向に向かいました。

容疑者の母親が統一教会の信者で、家族のお金1億円以上を献金したため、容疑者を含む
家族の生活が破壊されてしまったことが主要動機だったことが明かされました。

この時から、今回の襲撃は「政治テロ」から統一教会にたいする個人的な“私怨”へと論調が
変わりました。

さらに、山上容疑者は犯行の直前に知人に宛てた手紙で「安倍は本来の敵ではない」と書い
ている。本当の敵は、統一教会の最高幹部だったのです。

実際、2019年10月には愛知県内であった団体の集会で来日した最高幹部、韓鶴子(ハンハク
チャ)総裁を火炎瓶で襲撃しようとしたとも説明している。この時は会場に団体関係者しか
入場できず、計画を断念したと語っています(注1)。

標的が安倍元首相に変わったのは、安倍氏が統一教会の集会に向けて送ったビデオ・メッセ
ージ動画を見て、安倍氏が統一教会と繋がりがあることを知ったからだ、と語っている。

ここまでが安倍元首相襲撃の第一幕で、そこでの中心は容疑者と襲撃の動機でした。ところ
が、この後事態は第二幕へと、図らずも自民党の深い闇を暴く方向へと進んでいます。

安倍元首相が殺害された事件をきっかけに、統一教会と自民党との関係が俄然、注目される
ようになったのです。

関係の濃淡はありますが、現在名前が分かっているだけでも50人以上、無回答の議員も含
めると少なくとも100人ほどの自民党の国会議員が統一教会と何らかの関係をもっている
と考えられます。

ここで注目されるのは、統一教会との接点を持つ議員の中でも、とりわけ右派の安倍派が多
かったことです。

これには、統一教会の日本における普及に、自民党の最右翼の安倍晋三元首相の祖父に当た
る岸信介氏が関係していた、という事情が関係していたのです。

ただし、自民党の政界だけでなく、それを支える日本最大の右派改憲団体である「日本会議」
(1997年設立)なども、統一教会と「蜜月」関係を築いていました。

しかし、日本の右派と統一教会とは戦前の日本のアジア侵略を巡る歴史認識において全く相容
れない立場でした。

統一教会は、戦前の日本アジア侵略に対して「日本は罪深い国家で悔い改めなければならない」
と信者に教えています(『東京新聞』2022年8月10日、18日)。

また、前回も引用しましたが、文鮮明氏は、日本が文氏の入国を認めなかったころ、「日本は今
私を入国させないようにしていますね。いいでしょう。天皇がやってきて ひざまずいてひれ伏
して慟哭するのを見るまでは私は(日本に)行ってなんかあげませんよ」と、天皇が文氏に「ひ
ざまずいて」、「ひれ伏して」、(許しを請うために)「慟哭する」まで日本にいってあげない」、
とまで言っています。

ところで、反日的・日本を侮辱する文氏の統一教会と、天皇を中心とした”伝統的日本“の再興を思
想の核とした日本の右派が結びついたのは、「反共」というただ一点でした。

それが具体的な形で現れたのは、1967年に文鮮明氏と、日本側からは右翼の実力者、笹川良一
氏、白井為雄氏(児玉誉士夫氏の代理)、畑時夫氏らと本栖湖畔で会合を開いたことでした。

翌68年1月には文鮮明氏は統一教会の政治団体として「国際勝共連合」を設立し、日本でも同年
4月にその支部が設立されました。

当時は東西冷戦の真っ只中で、日本の一部に共産主義にたいする対抗意識が強かったものと思われ
ます。

しかし、1991年にソヴィエト連邦が崩壊し、旧ソ連が民主化の道を歩み始めると、本来の「反
共」という旗印の意味は失われました(注2)。

それでも、統一教会―国際勝共連合―自民党(特に右派)―「日本会議」などの超保守団体とのつ
ながりが形成され、現在まで続いています。

元統一教会信者で、現金沢大学の仲正昌教授によると、韓国側は日本の保守的な政治家や団体に合
わせてやってきた、というのが実情のようです(『東京新聞』2022年8月10日)。

こうして「反共」「天皇中心」「日の丸掲揚」を旗印とする日本の右派勢力と、その根っこに反日
的思想を持つ統一教会との間に奇妙な連携が成立しています。

これまで統一教会とその「友好団体」と関係をもってきた政治家には、関係の濃淡のほかに二つの
動機がありました。

一つは、統一教会の会員が、選挙の時に無償で働いてくれる“選挙マシーン”を提供してくれたこと
でした。政治家はおそらくそれを利用する、という意識で受け入れるのだと思われます。(まとも
な政治家なら、無償の応援の申し出があれば、その背景を調べます)

しかし、一旦、統一教会への“借り”ができてしまうと、その後、教会員からさまざまな要求が議員
にもちこまれます。

代表的な要求は、統一教会のイベントや集会に電報その他の祝辞やメッセージを送る、集会に参加
する、講演をするなどです。

政治家からのメッセージは「世間は理解してくれないが、立派な政治家が認めてくれた」という自
信になる。それは教団のさまざまな活動の活発化につながる。これだけでも利害関係で結ばれてい
るといえる。祝電だけでも教団には大きなメリットがあるのです。講演を行ったりすれば、さらに
大きな自信を信者に与えます(注3)。

たとえば、神奈川県内のある市会議員が1990年代に初出馬した時、当選ラインは2500票だ
と言われていました。

この時、統一教会は500票まとめたから、と持ち掛けられました。投票結果は3000票で教会
の500票が無くても当選していました。

選挙後、彼は教会側から、支援した皆にお礼のあいさつに行こうと言われたが統一教会にたいする
不信から拒否しました。

すると、「お前何やってんだ。生意気だな。当選したらいきなり天狗になったのか。ばか野郎みな
たいな・・」と、すごまれたと言います。

テレビ局のインタビューで、彼はもし統一教会のおかげで当選したら、「統一教会の意向を配慮せ
ざるを得ないでしょうね」「統一教会の言いなりだったかもしれない」、と正直に述べています。

統一教会は、将来自分たちに有利に働いてくれそうな地方議員を取り込み、それらの議員が国会議
員になることを期待して、“先行投資”として地方議員を応援する、とも語っています(TBS『報
道特集』2022年8月20日)。

つまり、政治家は統一教会を利用しているつもりが、気がついてみると逆に利用され、その時には
もう抜けることができなくなっている危険性が常にあります。

これは市会議員の例ですが、これは県会議員や国会議員においても同様の構造が見られるでしょう。

二つは、設立の経緯から分かるように統一教会は「反共産主義」、性や結婚の多様性(LGPTや
同性婚)に反対する復古的・保守的なイデオロギーをもっており、それに共感して統一教会との接
点をもつ場合です。

ある元信者はテレビ局のインタビューに答えて、あの人は「勝共議員」だから応援しなくては、と
いう気持ちで応援した答えていました。ここには、はっきりと反共イデオロオギーが末端の会員に
まで浸透していることが分かります。

また、現在の教会の正式名称に「家族」がついていますが、教会は異性間の伝統的家庭を復活させ
るための運動を展開しています。これはれ「家庭強化国民運動」と呼ばれ、統一教会は接点を持つ
議員を使って条例化を推進しています。

こうした運動に統一教会と接点を持つ議員が協力し、現在までに15を超える市町村で実際に条例
化されています。

地方自治体だけでなく、国政においても、自民党の改憲案のたたき台案は、その前年に勝共連合が
公開した改憲案と内容がほぼ一致しています。これは、自民党と勝共連合―統一教会とが非常に密
接に結びついていることを示唆しています。

ちなみに、政治家(特に自民党)とのつながりを口外することは絶対タブーとなっているそうです。
こうした事情もあって、中には自分から言わない限り、統一教会との関係を隠蔽することができる
と高をくくっている議員もいます。

宗教団体が政治活動をすることは何の法的問題はありません。しかし、かつて人をマインドコント
ロールして「霊感商法」で高額な品を買わせたこと(これは、今でも部分的に続いています)、個
人の「家庭」を崩壊させるほどの巨額献金を要求してお金を巻き上げている団体が、そもそも優遇
と保護の対象となる「宗教法人」なのか、見当する必要があります。

統一教会は、地方から中央政界まで深く静かに浸透しており、これまでの霊感商法にしても高額献
金の問題にしても、本来は政治が介入して被害を防止する義務がありますが、自民党政権は、全く
そのような動きがありません。

それどころか、本来このような事案を摘発すべき警察・公安当局の二之湯智国家公安委員長自信が
統一教会との深い関係をもっていることが判明しています。

もし、このことが統一教会に対する監視や規制に手心を加えて守るようなことがあれば、これは信
教の自由とは全く別の問題で、政治が統一教会によって歪められることになります。

これこそ、自民党が抱える深い闇で、本当に民主主義の危機です。

(注1)『毎日新聞』(2022年7/20 12:00(最終更新 7/20 21:40)https://mainichi.jp/articles/20220720/k00/00m/040/099000c
(注2)『毎日新聞』デジタル(2022/8/2 11:30 最終更新 8/4 21:17)
     https://mainichi.jp/articles/20220730/k00/00m/040/074000c
(注3)『毎日新聞』プレミア (デジタル版 2022年8月22日)
     https://mainichi.jp/premier/politics/articles/20220819/pol/00m/010/017000c?cx_fm=mailasa&cx_ml=article&cx_mdate=20220823
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         これら2枚の風刺漫画は説明が要らないでしょう
                                                   

(『東京新聞』2022年8月10日)                                      (『東京新聞』2022年8月17日)


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