検証「コロナの時代を生きる」(3)
―ウイッズ・コロナ(コロナと共に)とは「経済を回す」こと?―
日本の新型コロナウイルスの新規の感染者の数は、東京をもっとも深刻な震源地として、大阪府、
愛知県、福岡県などの大都市圏とその周辺地域に確実に広がりつつあります。
東京都の感染者が8月1に472人に達し、7月29日には、それまでゼロだった岩手県で初めて
2人の感染者がでました。
これで全国、全ての都道府県で陽性患者が出たことになります。日本は名実ともに「コロナ列島」
となってしまったわけです。
このような事態に対して、医師や感染症の研究者は、政府に対する強い警告が発せられました。
たとえば東京大学先端科学研究センター名誉教務の児玉龍彦氏は、7月16日の参院予算員医会
(閉会中審査)で参考人として発言し、新宿区に新型コロナウイルスのエピセンター(感染の震
源地、集積地)が形成されつつある、と指摘しました。
そして、感染拡大防止に「国の総力を挙げないと、ニューヨークの二の舞」になる、「来週になっ
たら大変なことになる。来月になったら目を覆うようなことになる」と警告し、したがって、「大
規模なPCR検査の実施を通じて抑え込むことが急務だ」、と声を震わせて訴えました。
さらに、現在「極めて深刻な事態となっている事」ので、外出自粛を呼びかけるステイホームでな
く「遺伝子工学・計測科学を使った(感染者の)制圧が重要。致死率は時間とともに上昇する」と
提言しました(注1)。
児玉氏のこの発言は、テレビのニュースで何度も放送されたので、見た人も多いと思います。私は
児玉氏の発言を聞いていて、科学者として、また一人の人間としての真剣さ誠実さ、そしてこの危
機をなんとか乗り越えようという熱意と真摯な姿勢に、心が震えました。
また、児玉氏は21日には衆議院第二議員会館で講演し、「感染者が減った段階で検査を徹底して
無症状の感染者をあぶり出し、感染の芽を摘むべきだった。そうならなかった結果、無症状の感染
者が繁華街に集まり次々に感染を広げるエピセンターができてしまった」とも話しています。
つまり、打つべき時に打つべき手を打たなかった失政が今日の感染拡大をもたらしている、と言っ
ているのです。
そして7月28日には、感染の拡大状況について、「今、日本は(検査数が)世界で、人口あたり
158位から159位、バングラデシュとかカメルーンに抜かれて、世界の最貧国のグループに入
ってますからめちゃくちゃ少ない」。
したがって「政府は思い切って方向を変えるときが来ている」として、PCR検査の体制拡充や接
触確認アプリのさらなる普及など、国を挙げての取り組みを促しました(注2)。
この発言は、政府はやるべきことをやってこなかったから現在このような状況が生まれたのだ、と
政府の真剣で迅速な取り組みを要請しました。
児玉氏の発言とならんで、現状の厳しさを訴えたのは東京都医師会の尾崎治夫会長が7月30日に
行った記者会見での発言です(注2)。
尾崎氏は、医師として実際に患者と向き合っており、その治療に責任を負う立場から、「国の無策で
感染が拡大した。もう我慢できない」という国の無策に対する怒りを、ストレートにぶつけました。
尾崎氏は、具体的な方策として、(1)無症状者を含めた感染者の徹底的な隔離、(2)コロナ対策の
特別措置法を改正して法的拘束力を持ち補償を伴った休業要請、(3)エピセンター(震源地)化して
いる地域での一斉PCR検査の実施、の3本柱が必要だと提言しました。
東京だけでなく、愛知や大阪、福岡や沖縄でもエピセンター化が進んでいることを考えるならば、「こ
のまま強制力のない休業要請を続けたら、日本中が感染の火だるまに陥ってしまう。今が第2波だとし
たら、これが感染を抑える最後のチャンスだ。新型インフルエンザ等対策特別措置法改正のために、政
府は今すぐに国会を召集して議論を始めてほしい」と強く訴えました。
つまり、そのためには「国が動く」ことが必要で、「各都道府県にお任せして、『休業お願いします』、
『できれば検査もしてください』ではもう無理だ。 肝はここである「いますぐに国会を召集して、特
措法の法改正の検討していただきたい。私は今が感染拡大の最後のチャンスだと思っている」と語気を
強めて訴えました(注3)。
ここにも私は尾崎氏の「魂の叫び」を感じました。
尾崎氏はまた、政府の Go To キャンペーンに対して公然と「Not Go To キャンペーン」を
訴えてもいました。これが、常識ある日本人の感覚でしょう。
ちなみにこの会見を見た医師の多くは尾崎氏の発言に賛同していたようです。
では、このような「国難」ともいえる状況に対して、政府、とりわけ国家のリーダーである安倍首相は、
どのように対応してきたのか、そして、これからどのように対応しようとしているのでしょうか?
どこの国を見ても、大統領や首相が前面に出て、議会や記者会見の場で政府の基本的な考え方や方策につい
て説明しています。
しかし日本では、6月17日の通常国会閉会後、国会を閉じてしまっているので、尾崎会長が言うように、
法律改正の審議も決議もできません。
さらに安倍首相はこの1か月間、一度も記者会見を開いていません。おそらく、記者会見で厳しい質問を受
けるのを怖がっているのでしょうが、そんなことならリーダーの座を降りていただき、新たな体制の下でこ
の難局に立ち向かう方が国民のためです。
最初の感染の波が起こって以降、政府がやったことと言えば、使い物にならないアベノマスク(ちなみに、
最近はさすがに、正常な大きさのマスクに変えていますが)に500億円以上も使ったこと、全国民に1人
10万円の定額給付金をばらまいたこと、そして、突如の「GoTo キャンにペーン」の前倒しくらいです。
政府を代表して、西村康稔経済再生担当相は、口を開けば「感染症対策を徹底しつつ、経済を回す」ことを
強調します。すなわち、これが “With Corona”というわけです。
しかし、Go To キャンペーンを前倒しして7月22日からの四連休から始めるように急遽変更したこ
とに、さまざまなアンケート調査の結果をみると、6割から7割の人は、感染が急速にまん延しつつある今、
始めることには反対でした。
私も同感です。というのも、キャンペーンを積極的に進め、どんどん旅行に行ってくださいと、政府が人の移
動にアクセルを踏めば必ず感染は拡大し、結局は旅行者が減り、観光業界も干上がってしまうことが十分予想
されるからです。
しかも、旅行に出かける人も、地方に行って、どことなく後ろめたさを感じているようで、多少、国からの補
助がでたとしても、思い切り、楽しむ気分にはならないでしょう。
私が見過ごすことができないのは、この事業に関して国交省のある幹部が、国交省幹部は「正直、多少の感染
者が出ることは想定内」だと語ったことです。
彼の本音がついで出てしまったのでしょう。官僚は国民をこのように見ているのだ、ということが良く分かりま
した。
政府は「経済を回す」ことには熱心ですが、それでは他方の感染症の制圧にたいしては何ら手を打っていません。
今年の春にこのキャンペーンの実施を閣議決定した時には、コロナ感染が収束し、国民が安心して旅行に出かけ
られるようになったら、という条件つきで、しかもその開始は8月1日でした。
しかも今回、7月の4連休に間に合わせてGoToトラベル事業を前倒し(但し東京発着の旅は除外)した結果、
事業開始後の連休中に人の移動と感染者は確実に増えました。しかし菅官房長官は、「重症者は少ない」とした
うえで、事業の除外地域を広げる考えはない、と明言しています。
ここまでみてくると、With Corona という耳障りの良い言葉の本体は「経済を回す」ことだったということが分か
ります。
この事業で、一時旅行者が増えても、もともと設定されていた、8月以降の需要を「先食い」しているだけで、純
粋に旅行者が増えることになるのか大いに疑問です。
西村氏は旅行と「Go To イート」という飲食店支援など、「経済を回す」アクセルを思い切り踏む一方で、感染の
拡大に警戒感をあらわにしながら、企業に、在宅勤務率を7割目いっぱいに増やすこと、時差出勤の維持、大人数
での会食や飲食の自粛など企業に対策の一層の強化を求めます。その一方で、政権幹部の麻生氏は都内のホテルで
16日に、派閥のパーティーを開いています(『東京新聞』2020年7月28日)。
在宅勤務についていえば、現在、いわゆる「テレワーク」(在宅勤務)が認められる人は働く人の何割くらいいる
と考えているのでしょうか。
恐らく大企業の事務部門やIT企業などは、ある程度在宅勤務が可能かもしれません。しかし、中小企業、物品販
売業、飲食・宿泊を中心とするサービス業の大部分、営業関係の仕事、製造業、交通・運輸や清掃に携わる人たち
は、在宅勤務はできません。
いずれにしても、アクセルを吹かすことには積極的ですが、ブレーキとして国はお金を出すことなく、企業と個人へ
の「要請」だけです。これでコロナの感染が抑止できたら奇蹟です。
ところで、国としてどのように感染を抑止するかを検討する機関として、政府の有識者分科会があります。
7月31日に開かれた会合で尾身茂会長は感染状況を四段階に分け、レベルに応じて必要な対策を講じるという大枠
を示すにとどまり、具体的な指標も方策も示しませんでした。
児玉名誉教授や尾崎東京医師会会長のような専門家が現実を直視するように訴えているのに、なぜ政権の面々は危機
的な状況を認めようとしないのでしょうか。
政治ジャーナリストの鈴木哲夫氏は、「頭にあるのは経済対策だけ。第二波の到来を認めてしまうと経済の話をストッ
プさせ、外出自粛や休業補償などを考えなければいけなくなる。それを避けたいから現実を直視しない」とコメントし
ています(『東京新聞』2020年7月22日)。これでは全く本末転倒です。
リーダーが国会を開かず逃げ回っている現在の日本は、国家の体を成していません。
今のところ、感染が収束にむかう要素はなにもない状態ですから、感染は長期にわたって拡大してゆくでしょう。
コロナ対応は私たち国民一人一人に丸投げされ、その結果は自己責任という状況で、感染に脅えつつ、しばらくは現政権
の下で「コロナの時代」を生きてゆかなければならないことを思うと暗澹たる思いです。
(注1)FNNニュース(2020年7月16日午後8:43)。映像はhttps://www.fnn.jp/articles/-/63758
(注2)TBS Nステ (2020年7月28日 15:48)https://news.tbs.co.jp/newseye/tbs_newseye4039348.htm
(注3)尾崎会長の怒りの会見は、ノーカットで見ることができます。https://www.youtube.com/watch?v=uisuAyrY67g&feature=youtu.be
また記事としては『医療維新』(2020年7月30日) https://www.m3.com/open/iryoIshin/article/804643/?category=report
を参照。」
(注4)https://news.livedoor.com/article/detail/18574145/
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地下生活者たちの痕跡1 セミが這い出た後の穴。どれほどの年月、地下で暮らしていたのか? 地下生活者たちの痕跡2 アリの出入り口。この中でどんな生活をしているのか?
―ウイッズ・コロナ(コロナと共に)とは「経済を回す」こと?―
日本の新型コロナウイルスの新規の感染者の数は、東京をもっとも深刻な震源地として、大阪府、
愛知県、福岡県などの大都市圏とその周辺地域に確実に広がりつつあります。
東京都の感染者が8月1に472人に達し、7月29日には、それまでゼロだった岩手県で初めて
2人の感染者がでました。
これで全国、全ての都道府県で陽性患者が出たことになります。日本は名実ともに「コロナ列島」
となってしまったわけです。
このような事態に対して、医師や感染症の研究者は、政府に対する強い警告が発せられました。
たとえば東京大学先端科学研究センター名誉教務の児玉龍彦氏は、7月16日の参院予算員医会
(閉会中審査)で参考人として発言し、新宿区に新型コロナウイルスのエピセンター(感染の震
源地、集積地)が形成されつつある、と指摘しました。
そして、感染拡大防止に「国の総力を挙げないと、ニューヨークの二の舞」になる、「来週になっ
たら大変なことになる。来月になったら目を覆うようなことになる」と警告し、したがって、「大
規模なPCR検査の実施を通じて抑え込むことが急務だ」、と声を震わせて訴えました。
さらに、現在「極めて深刻な事態となっている事」ので、外出自粛を呼びかけるステイホームでな
く「遺伝子工学・計測科学を使った(感染者の)制圧が重要。致死率は時間とともに上昇する」と
提言しました(注1)。
児玉氏のこの発言は、テレビのニュースで何度も放送されたので、見た人も多いと思います。私は
児玉氏の発言を聞いていて、科学者として、また一人の人間としての真剣さ誠実さ、そしてこの危
機をなんとか乗り越えようという熱意と真摯な姿勢に、心が震えました。
また、児玉氏は21日には衆議院第二議員会館で講演し、「感染者が減った段階で検査を徹底して
無症状の感染者をあぶり出し、感染の芽を摘むべきだった。そうならなかった結果、無症状の感染
者が繁華街に集まり次々に感染を広げるエピセンターができてしまった」とも話しています。
つまり、打つべき時に打つべき手を打たなかった失政が今日の感染拡大をもたらしている、と言っ
ているのです。
そして7月28日には、感染の拡大状況について、「今、日本は(検査数が)世界で、人口あたり
158位から159位、バングラデシュとかカメルーンに抜かれて、世界の最貧国のグループに入
ってますからめちゃくちゃ少ない」。
したがって「政府は思い切って方向を変えるときが来ている」として、PCR検査の体制拡充や接
触確認アプリのさらなる普及など、国を挙げての取り組みを促しました(注2)。
この発言は、政府はやるべきことをやってこなかったから現在このような状況が生まれたのだ、と
政府の真剣で迅速な取り組みを要請しました。
児玉氏の発言とならんで、現状の厳しさを訴えたのは東京都医師会の尾崎治夫会長が7月30日に
行った記者会見での発言です(注2)。
尾崎氏は、医師として実際に患者と向き合っており、その治療に責任を負う立場から、「国の無策で
感染が拡大した。もう我慢できない」という国の無策に対する怒りを、ストレートにぶつけました。
尾崎氏は、具体的な方策として、(1)無症状者を含めた感染者の徹底的な隔離、(2)コロナ対策の
特別措置法を改正して法的拘束力を持ち補償を伴った休業要請、(3)エピセンター(震源地)化して
いる地域での一斉PCR検査の実施、の3本柱が必要だと提言しました。
東京だけでなく、愛知や大阪、福岡や沖縄でもエピセンター化が進んでいることを考えるならば、「こ
のまま強制力のない休業要請を続けたら、日本中が感染の火だるまに陥ってしまう。今が第2波だとし
たら、これが感染を抑える最後のチャンスだ。新型インフルエンザ等対策特別措置法改正のために、政
府は今すぐに国会を召集して議論を始めてほしい」と強く訴えました。
つまり、そのためには「国が動く」ことが必要で、「各都道府県にお任せして、『休業お願いします』、
『できれば検査もしてください』ではもう無理だ。 肝はここである「いますぐに国会を召集して、特
措法の法改正の検討していただきたい。私は今が感染拡大の最後のチャンスだと思っている」と語気を
強めて訴えました(注3)。
ここにも私は尾崎氏の「魂の叫び」を感じました。
尾崎氏はまた、政府の Go To キャンペーンに対して公然と「Not Go To キャンペーン」を
訴えてもいました。これが、常識ある日本人の感覚でしょう。
ちなみにこの会見を見た医師の多くは尾崎氏の発言に賛同していたようです。
では、このような「国難」ともいえる状況に対して、政府、とりわけ国家のリーダーである安倍首相は、
どのように対応してきたのか、そして、これからどのように対応しようとしているのでしょうか?
どこの国を見ても、大統領や首相が前面に出て、議会や記者会見の場で政府の基本的な考え方や方策につい
て説明しています。
しかし日本では、6月17日の通常国会閉会後、国会を閉じてしまっているので、尾崎会長が言うように、
法律改正の審議も決議もできません。
さらに安倍首相はこの1か月間、一度も記者会見を開いていません。おそらく、記者会見で厳しい質問を受
けるのを怖がっているのでしょうが、そんなことならリーダーの座を降りていただき、新たな体制の下でこ
の難局に立ち向かう方が国民のためです。
最初の感染の波が起こって以降、政府がやったことと言えば、使い物にならないアベノマスク(ちなみに、
最近はさすがに、正常な大きさのマスクに変えていますが)に500億円以上も使ったこと、全国民に1人
10万円の定額給付金をばらまいたこと、そして、突如の「GoTo キャンにペーン」の前倒しくらいです。
政府を代表して、西村康稔経済再生担当相は、口を開けば「感染症対策を徹底しつつ、経済を回す」ことを
強調します。すなわち、これが “With Corona”というわけです。
しかし、Go To キャンペーンを前倒しして7月22日からの四連休から始めるように急遽変更したこ
とに、さまざまなアンケート調査の結果をみると、6割から7割の人は、感染が急速にまん延しつつある今、
始めることには反対でした。
私も同感です。というのも、キャンペーンを積極的に進め、どんどん旅行に行ってくださいと、政府が人の移
動にアクセルを踏めば必ず感染は拡大し、結局は旅行者が減り、観光業界も干上がってしまうことが十分予想
されるからです。
しかも、旅行に出かける人も、地方に行って、どことなく後ろめたさを感じているようで、多少、国からの補
助がでたとしても、思い切り、楽しむ気分にはならないでしょう。
私が見過ごすことができないのは、この事業に関して国交省のある幹部が、国交省幹部は「正直、多少の感染
者が出ることは想定内」だと語ったことです。
彼の本音がついで出てしまったのでしょう。官僚は国民をこのように見ているのだ、ということが良く分かりま
した。
政府は「経済を回す」ことには熱心ですが、それでは他方の感染症の制圧にたいしては何ら手を打っていません。
今年の春にこのキャンペーンの実施を閣議決定した時には、コロナ感染が収束し、国民が安心して旅行に出かけ
られるようになったら、という条件つきで、しかもその開始は8月1日でした。
しかも今回、7月の4連休に間に合わせてGoToトラベル事業を前倒し(但し東京発着の旅は除外)した結果、
事業開始後の連休中に人の移動と感染者は確実に増えました。しかし菅官房長官は、「重症者は少ない」とした
うえで、事業の除外地域を広げる考えはない、と明言しています。
ここまでみてくると、With Corona という耳障りの良い言葉の本体は「経済を回す」ことだったということが分か
ります。
この事業で、一時旅行者が増えても、もともと設定されていた、8月以降の需要を「先食い」しているだけで、純
粋に旅行者が増えることになるのか大いに疑問です。
西村氏は旅行と「Go To イート」という飲食店支援など、「経済を回す」アクセルを思い切り踏む一方で、感染の
拡大に警戒感をあらわにしながら、企業に、在宅勤務率を7割目いっぱいに増やすこと、時差出勤の維持、大人数
での会食や飲食の自粛など企業に対策の一層の強化を求めます。その一方で、政権幹部の麻生氏は都内のホテルで
16日に、派閥のパーティーを開いています(『東京新聞』2020年7月28日)。
在宅勤務についていえば、現在、いわゆる「テレワーク」(在宅勤務)が認められる人は働く人の何割くらいいる
と考えているのでしょうか。
恐らく大企業の事務部門やIT企業などは、ある程度在宅勤務が可能かもしれません。しかし、中小企業、物品販
売業、飲食・宿泊を中心とするサービス業の大部分、営業関係の仕事、製造業、交通・運輸や清掃に携わる人たち
は、在宅勤務はできません。
いずれにしても、アクセルを吹かすことには積極的ですが、ブレーキとして国はお金を出すことなく、企業と個人へ
の「要請」だけです。これでコロナの感染が抑止できたら奇蹟です。
ところで、国としてどのように感染を抑止するかを検討する機関として、政府の有識者分科会があります。
7月31日に開かれた会合で尾身茂会長は感染状況を四段階に分け、レベルに応じて必要な対策を講じるという大枠
を示すにとどまり、具体的な指標も方策も示しませんでした。
児玉名誉教授や尾崎東京医師会会長のような専門家が現実を直視するように訴えているのに、なぜ政権の面々は危機
的な状況を認めようとしないのでしょうか。
政治ジャーナリストの鈴木哲夫氏は、「頭にあるのは経済対策だけ。第二波の到来を認めてしまうと経済の話をストッ
プさせ、外出自粛や休業補償などを考えなければいけなくなる。それを避けたいから現実を直視しない」とコメントし
ています(『東京新聞』2020年7月22日)。これでは全く本末転倒です。
リーダーが国会を開かず逃げ回っている現在の日本は、国家の体を成していません。
今のところ、感染が収束にむかう要素はなにもない状態ですから、感染は長期にわたって拡大してゆくでしょう。
コロナ対応は私たち国民一人一人に丸投げされ、その結果は自己責任という状況で、感染に脅えつつ、しばらくは現政権
の下で「コロナの時代」を生きてゆかなければならないことを思うと暗澹たる思いです。
(注1)FNNニュース(2020年7月16日午後8:43)。映像はhttps://www.fnn.jp/articles/-/63758
(注2)TBS Nステ (2020年7月28日 15:48)https://news.tbs.co.jp/newseye/tbs_newseye4039348.htm
(注3)尾崎会長の怒りの会見は、ノーカットで見ることができます。https://www.youtube.com/watch?v=uisuAyrY67g&feature=youtu.be
また記事としては『医療維新』(2020年7月30日) https://www.m3.com/open/iryoIshin/article/804643/?category=report
を参照。」
(注4)https://news.livedoor.com/article/detail/18574145/
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地下生活者たちの痕跡1 セミが這い出た後の穴。どれほどの年月、地下で暮らしていたのか? 地下生活者たちの痕跡2 アリの出入り口。この中でどんな生活をしているのか?