がじゅまるの樹の下で。

*琉球歴女による、琉球の歴史文化を楽しむブログ*

当サイトの掲載写真・イラスト等の無断転載/無断使用を禁じます

『新装改定版 琉球戦国列伝』発売!

2022年03月07日 | ・和心な本、琉球な本

Twitterではすでに発表していたのですが、
お知らせです。

 

 

本日、

『新装改訂版 琉球戦国列伝』
が発売になりました!!

 

本日県内書店配本、順次店頭販売(店舗によって多少時差があると思います)
Amazonや楽天などへは、もう少し後になるようです。

どこの本屋さんでで買えますか!?って結構きかれるけど、
沖縄県内の主要本屋(TSUTAYA含む)なら大抵取り扱っています。
沖縄本(郷土本)コーナーに行ってみてね!


追記:
Amazon掲載されました!
https://amzn.to/37I8tV0

楽天ブックス、hontoなど主要書籍通販サイトも対応済み。

 

 

(旧)琉球戦国列伝が発売されてちょうど10年


この10年の間に蓄積された最新の研究成果なども踏まえて
古琉球史 最新バージョン
新装改訂版として出版することとなりました!

 

本の内容・構成は基本同じですが、
上里さんのコラムを複数追加!


そして全イラストが今回の改訂版に合わせた描きおろしです。

使いまわしのイラストはちびキャラも含めてゼロ。

新キャラ2名を含む63キャラ、74体を
完全リニューアルしております。

新キャラ、さーて誰でしょう!?
(始めてキャラ化した人と、お馴染みのアノ人ですよ)

 

前回のイラストでは敢えて「盛った」り、
ちょっと無理めなフィクション設定があったり、
阿麻和利も組踊衣装で描いたりしていましたが、
(もちろんそれには断り書きをいれていましたが)

今回は服飾やアイテムに関しては可能な限り「当時の姿」を追及。
(顔つきや体格はさすがに想像ですけどね)

シンプルだからと装飾を盛ったりせず、
”舞台衣装”である組踊衣装も一掃!

実際の発掘出土物も前回以上に盛り込んでいます♪

前作がフィクションビジュアル満載の琉球歴女の琉球戦国キャラクター図鑑だったので
我ながら極端だなぁと思います(^^;)

 

最新の研究成果を元にを踏まえた結果、
キャラクターが旧作と180度変わった人物もいるんですよ(ふふふ)。

 

なので、旧作を持っている人も持っていない人も
どちらも楽しめる1冊だと思います♪

 

 

そして、もう一つの目玉は
15世紀の首里城イメージ図を掲載!

志魯・布里の乱後に建てられたとされている
首里城正殿イメージ図をプロローグに使っています。

首里城正殿がずっと同じ姿ではなかったことが
お分かりいただけるかなと思います。

 

 

ただ、この首里城イメージ図、
本では演出のための画像加工がされており
解説も少ししかありません。

 

そ・こ・で、お知らせPart2!

 

何がどう違うのか、その解説を付けた元図(画像加工前)と、
上里さんの15世紀首里城(城郭)概念図をセットにした
「15世紀首里城イメージ図(解説付き)」シートが
予約特典としてもらえます!

 

え?発売になったからもう遅いのでは?

と思われた方、ご安心下さい。

 

予約特典がもらえるのは2022. 3/11申し込み分まで有効

ただし、
ボーダーインクのサイトから申し込んだ方に限ります
(書店ではできませんよ~)

送料無料です。

支払いが郵便振り込み(後払い)のみなので
少しお手間を取らせますが、
「15世紀首里城解説図がほしい!」
という方はこの機会をお見逃しなく!

特典期間は終了しました

 

 

ボーダーインクからの購入リンクは
https://bit.ly/3pqFYkC

こちらからページプレビューや前書き、
目次などもチェックできます。

 

Amazon派の方はこちらから
https://amzn.to/37I8tV0

 

『新装改訂版 琉球戦国列伝』

A5判 オールカラー120ページ
定価1870円(本体1700円+税)
上里隆史[著・監修] 和々 [イラスト]

 

 

よろしくお願いします

 

 

なお、今回は本の「紙」を変えているので
印刷の発色がより原画に近くなりました!

ページ数は旧作と同じですが、
少し薄くなっているのは紙のせい。
量は変わらず、よりコンパクトになっていますよ~。


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漫画「琉球のユウナ」の、歴史人物相関図

2021年04月14日 | ・和心な本、琉球な本


「琉球のユウナ⑥」(響ワタル著/白泉社)
を読みました。

 

物語の大きな転換があったりして

これ、どうやってまとまっていくの!?

と想像がつきません(^^;)

 

ともあれ、物語収束の気配は全くなく、
まだまだこれから、という感じなので楽しみです。

 

とりあえず、
宮古組が出てきたのは最終決戦あたりで
千代金丸(第一尚氏)VS治金丸(第二尚氏)
という構図にもっていくためなのか!?
と思ったりして。

(でも歴史では治金丸が尚真に献上されたのは1522年で
尚真57歳の時なのだけど)

 

それにしても毎巻そうなんですが、
この人もでてきた!?
この人も出てきた!!!
という感じで6巻も琉球史の新キャラもりだくさん!

これ、琉球史に馴染みのない読者さんは
整理できているのかしら…?

 

というわけで、

「琉球のユウナ」にこれまで出てきた
実際の琉球史上の人物を
相関図にまとめてみました。
((尚真の母・オギヤカは…もしかしたらマンガでは名前は出してなかったかな?
人物の見落としがあったらご容赦を)


↑クリックで拡大

 

マンガ上の相関図ではなく
あくまで琉球史の中の相関図です。


でもマンガの中でも
琉球史上の関係はしっかり踏襲されているので、

この図に入っていない人物を
加えたり、置き換えたりすれば
そのまま「琉球のユウナ」のキャラクター相関図になると思います。

 

つまり、
この図に出てこない人物は
マンガのフィクションキャラ
ということになります。

・ユウナ
・夜斗
・サニ
・真鶴 など。

ティダは「尚徳の子」部分に置き換え。

幸地里之子大良金は…
フィクションだと思うのだけれど…
実は元があるのか…不明。


尚真の下に灰色文字にした人物は
マンガにはキャラクターとして出てこないのですが、
4巻5巻にエッセンスは入っていたのでオマケで掲載。

尚真の孫(尚清の長女)が上級神女「阿応理屋恵」の初代。
(参/沖縄大百科事典・女官御双紙)

尚真の3男・韶威が(第二)今帰仁看守になり、
以後代々続いていきます。

 

なお、白澤は中国の霊獣で(17Cに描かれた自了の絵画が有名)、
マンガでは擬人化。

 

また、宮古組についてですが

マンガでは
・真濃秦天
・乙美我
という漢字表記でしたが

ワタシが調べた中ではこの表記は見かけなかったので
図では
真濃茶天太
宇津免嘉
にしています。

 

ちなみに、玄雅と真濃茶天太は双子らしいですよ。
(玄雅が長男)

 

仲宗根豊見親はもちろん知っていましたが
八重山との関係や治金丸など、
対外的なエピソードの中での知識がメインだったので
ユウナ6巻を見て、
改めて宮古島内の歴史や各人物を調べるきかっけになりました。

やはり、フィクションからきっかけをもらって
更に調べて深読みするのは…楽しいですね♪

 

皆さんにもその楽しさや発見を味わってほしい!

今回作った図がその助けになりますように。

 


過去巻レビューなど

1巻 2巻 3巻 4巻 5巻


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「仲座久雄展」、一緒に読みたい2冊

2021年03月09日 | ・和心な本、琉球な本

前回の続き)

 

ここからは『仲座久雄展』番外編。

展示会で直接紹介されているわけではないけど、
展示会に関連して、ぜひオススメしたい2冊の本をご紹介します!

 

 

 

 

実は、私が仲座久雄の名前を知ったのは
『太陽を染める城』
(国梓としひで著/沖縄建設新聞)
を読んだ時。

仲座の影響とススメを受けて
同じ建築の道に進んだ甥(新垣良考氏)が
あの平成の首里城復元に携わることになるのです。

 

「首里城…」
良考は社長の話を聞きながらも震えがとまらなかった。
(このような機会はめったにあるわけではない。
自分に声がかかるなんて、名誉なことだ)
良考の心は焔で熱くなった。
亡き叔父の仲座久雄の顔が脳裏に浮かんだ。
その顔は満面に笑みをたたえていた。 

(久雄おじさんの夢を引き継ぐことができる……
これが自分の最後の仕事になるかもしれない)

『太陽を染める城』(P41)

 

仲座久雄→新垣良考、
このつながりに、ドラマを感じずにはいられません。

 

 

 

 

もう一冊がこちら。

『沖縄島建築 建物と暮らしの記憶と記録』
(普久原充朝監修/岡本尚文写真)


タイトルの通り、沖縄の様々な建築を紹介している一冊。
名建築と評価されているものから、無名の古民家、商店まで。
仲座久雄や花ブロックについても、
もちろん取り上げられています。

この本を読むと、
観光地ではない、普通のマチナカ散歩をしたくなるはず!
そんな当たり前の沖縄の生活風景の中に
「気づき」を与えてくれる一冊。

こちらから本の内容の一部を見れます♪

 

 

 

 

仲座久雄展会場は図書館が併設されている
護佐丸歴史資料図書館なので、
展示会後に図書館に寄ってみるのも良いですね(*'ω'*)
(沖縄本関係は2階フロア)


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源為朝~尚巴志まで、『新編 琉球三国志(上下)』

2021年02月14日 | ・和心な本、琉球な本

『新編 琉球三国志(上下)』
与並岳生 著/新星出版

 

12月に購入していた2冊ですが、
読み始めは年末年始、途中中断しつつ
やっとこさ先日読了しました。

 

与並さんの琉球史題材の小説は割と読んでいる方で
与並さんならではの作風も把握済み。

うんちくが多いものの、
各人物たちの描写、思惑、動機、関係性などの解釈が
「なるほど!」と思わされたりしちゃうのです。
(それを私は「与並節」と呼んでいます)

 

今回の小説は源為朝から尚巴志が没するまでの
琉球史の流れを小説仕立てにしたもの。

与並さん独特の歴史・史料解説は
時々言い切ってしまっている所もあるので
まるでこれが真実かのように思ってしまいがちですが、
あくまで小説(創作)であるということを念頭に置いて、
史料解釈は一つの材料・考えにとどめておくということはお忘れなく。
(与並さんに限らずどの歴史小説にも言えることですが)

そもそも天孫氏→利勇や、源為朝来琉は伝説の枠を超えていません。
でもああも詳しく、しかも裏付けのように断言気味で歴史的解説が入ると
つい歴史的真実のように思っちゃいますね。

もちろんこれは小説におけるリアリティ演出としての面もあるので
読む側の姿勢・意識の問題なのですが。

 

為朝・舜天~英祖~察度間の各王たち、
これまで比較的あまり小説仕立てで描かれてこなかった人たちが
読めたのはなかなか貴重でした。

やはり、創作と言えども小説仕立てだと
その人物が生身の人間として生き生きととらえられますからね。

 

でも、個人的には今回はあまり
膝を打つような与並節は感じなかったかな…?

 

個人的には下巻の他魯毎、攀安知の初登場シーンで

 

(王に推された)他魯毎はまだ17、8。
紅顔の美少年だった。

 

攀安知は背が高く、色白で、整った顔立ちの、貴公子然とした風貌で
若い頃は城中の女たちの胸をときめかせていたそうだが、
妃を置いてからは品行も正しく、妃との仲は人もうらやむほどに睦まじかった。

 

ってあったのを読んだ時、
これまでとは一味違った他魯毎像、攀安知像が見れるか!?
来い!与並節!!!
と期待していたのですが…

 

他魯毎は結局これまでのイメージ通り暗愚の王として自滅し、
攀安知はたいしたセリフも主体性もなく(本部がメインで裏切りもなし)、
影がうっすいままで終わったのには不服でした…。

(なお、統一順は北山→南山)

 

むぅ……。

 

 

策士の一面はありつつも基本優等生な尚巴志が、
淫逆無道では「全くない」北山(むしろ中山にビビッて遠慮している)を、
話し合いで平和裏に統合する道もありながら
なぜその方向に行かなかったのかもイマイチ腑に落ちない。

武力にモノを言わせたいギラギラした
尚巴志像というのならわかるけど、
そうでもないから余計に。

結局攀安知の妃と子供はどうなったのかもわからないし…。

 

期待しちゃってた分、
正直、肩透かしを食らった印象は否めませんでした。

 

 

『琉球三国志』といえば、
加藤真司著(1995)の『琉球三国志』ですが、
尚巴志時代の部分は、
ワタシはこちらのほうに軍配をあげたいですね。
(人物がみんな泥臭い。でも他魯毎はなかなかかっこいいのよ~)

 

機会があれば読み比べてみるのもおすすめします♪
ワタシもこれを機会に久々に再読しようかな?


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現代社会・現代人に問う、『海神の島』

2020年11月08日 | ・和心な本、琉球な本

『海神(わだつみ)の島』
(池上永一著/中央公論新社)

 

「テンペスト」でおなじみの(再放送終了!)
池上さんの新作。

読了してしばらくたつのですが、
少し振り返ってみようと思います。

 

時代は現代。
主人公は沖縄生まれの三姉妹。

銀座の高級クラブのママ・汀(なぎさ)
若き水中考古学者・泉
地下アイドル・澪。

5億円相当の軍用地主であるオバアの遺言により、
相続の条件である「海神の秘宝」の謎を巡って
3姉妹は相続争いを繰り広げる。

舞台は東京、沖縄、福岡、日本各地。
さらにアメリカや中国、台湾など、
現代の基地問題、領有問題などもからんで
複雑に、しかしハチャメチャに(池上作品ですから!)
展開される物語。

 

そして、作中から感じる
これまでの池上作品のエッセンス。

(”北崎倫子”はもちろんのこと)
戦争(『ヒストリア』)に、
場天ノロの勾玉(『テンペスト』)に、
古代人(『黙示録』)。

こういうのは同一作者の本を読み続ける醍醐味でもありますね。
(テンペスト以前の本は読めてないけど、きっとあるに違いない)

 

それぞれ強烈すぎる個性を持つ3姉妹。
彼女らを取り巻く、また人間味豊かなキャラクターたち。

相変わらずの池上ワールドなので、
所々「うわぁ…(引)」となりつつも、
お宝探しの過程で出てくる
歴史学・考古学エッセンス、
水中考古のシーンには
わくわくドキドキして、
「ヒストリア」よりも没頭できました。
(過去に県博で開催された「水中文化遺産」展
印象に残っている展示会の一つ!)

 

基地に関するくだりは、
一部「う~ん?」と感じる点もありましたが
最後まで読んで、なるほど言いたいことは分かった、と。

現代の諸問題における池上さんの主張、
メッセージが込められるなと感じました。

 

 

「私はアイデンティティに縛られて客観的視点を失うのが嫌なのよ。
物事を認識するときは、必ず複数の視点からアプローチするべきでしょ。
それが論理や化学というものよ。」
(P394 )

 

 

この本が出てすぐの頃、
新聞で池上さんのロングインタビュー記事が載っていたのですが
その記事も読んでみたくなりました(有料記事だったので未読)。

それを読めば、池上さんがこの作品に込めた
意図や思いがもっとわかるかもしれません。

今度図書館で探してみよう。


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琉球王国衰亡記

2020年10月10日 | ・和心な本、琉球な本

『琉球王国衰亡記』
(嶋津与志/岩波書店/1992)

肝高の阿麻和利の脚本を手掛けた
嶋津与志さんの小説です。

時代は19世紀の王朝末期。

主人公は板良敷(牧志)朝忠。

 

先の空手小説2冊とも時代がかぶったりと、
最近は何かと古琉球よりは王朝末期から近代初期です。

そして『テンペスト』と同時代。
祝☆再放送!
孫寧温は部分的に朝忠をモデルにしてもいますしね。

時代背景や出来事は知っていたので
読みやすかったです。

 

この小説で特に興味深かった点は大きく2つ。

一点目は、
来琉する欧米諸国の人々や薩摩の斉彬などとのあれこれが、
人と人との関わりとしてちゃんと書かれていたこと。
(ペリーとのあれこれは思ってたより少なかったけど)

…小説なら当たり前じゃん?
って思う人もいるかもしれないけど、
琉球史系の小説はそれが弱いものも結構あって…
「出来事」だけが淡々と述べられているとか。

何度か書いてるけど、
やはり「セリフ」(心の声含む)があると
その人物がより人間らしく捉えられる。

その人が何をどう語るかで
その人となりが表現できるからかもしれない。

対話だと、関係性の表現にもなるし。

 

2点目は、そんな登場人物たちに
あまり「美化」を感じなかったこと。
朝忠もベッテルハイムもペリーも斉彬も
…そして琉球王国そのものも。

美化というか、その人の良さをPRするような表現というのかな、
印象付けるような文章構成というのかな。

もちろん、歴史的にもすごい人たちなのは変わりないのだけど、
それがスーパーヒーローのようなものではなく、
良きも悪きも人間というか。

業績はすごい。
でも人となりまで過大評価はしない、
という感じ。

 

主人公の朝忠も結構とがっていて、

「世の人は我を何とも言わば言え 我なす事は我のみぞ知る」

…って、これは竜馬の句ですが、
こんな感じの人でした。

家庭もあまり顧みないとかね。

 

琉球王国そのものにいたっても
タイトルの「衰亡記」からも分かるように
滅びゆく王国の悲哀のような、
旧体制の皮肉のようなものも込められていました。

 

例えば『青い目が見た大琉球』(ニライ社)など
当時の琉球についての欧米人の記述を読むと、
ほめたたえている記述と、
これはひどいものだとしている記述と、
両方見れるんだけど、
「これはひどいもんだ」という側の記述を
結構表に出してきているような感じかな?

あくまで私個人の印象ですが。

 

でも、それがかえってリアルに感じられます。

琉球エクセレント!
琉球バンザイ\(^o^)/

一辺倒のはずないし、ね。

 

そういう意味でも、
同時代の『テンペスト』と比べると
読了感はだいぶ変わります。

『テンペスト』はいわばファンタジーだし、
美化描写がすごいからね。
でもその描写の鮮やかさが池上小説の魅力であり、
文章から豊かなイメージを引き出すという小説の醍醐味があり、
琉球に興味や誇りがわいてくるような熱い読了感を与えてくれるのです。

 

両方読むとより楽しめると思います。


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チャンミーグヮーと、武士マチムラ

2020年10月05日 | ・和心な本、琉球な本

 

『チャンミーグヮー』(今野敏著)
『武士マチムラ』(今野敏著)
を読了しました。

 

今野さんの小説を読むのは
これで3月、4冊目。

1冊目が『武士猿』
2冊目が『義珍の拳』

 

どれも沖縄の空手家を題材にした小説で
時代も王国末期~近代と
時代がかぶっていたりするので、

お互いがどの小説にもかかわっていたり
共通の登場人物やエピソードがあったりと
色々とリンクしているので
空手小説シリーズとして読む楽しみもありました。

チャンミーグヮーは喜屋武朝徳(きゃんちょうとく)
武士マチムラは松茂良興作(まつもらこうさく)
が主人公。

 

薩摩の支配、王国の衰退、滅亡、
沖縄人の中で反大和派(頑固党)と親大和派で対立し、
社会が大きく変わっていったこの時代、
沖縄を代表する空手家たちがどう生きたのか、
「手(ティー)」をどのように守り、伝えていったのか。

それぞれの生き方を通して知ることができます。

 

チャンミーグヮーこと、喜屋武朝徳は
”大和に琉球を売った”者(維新慶賀使節団の一員)の子であることの葛藤や、
明治に東京で過ごしたというのが興味深かったです。

また、妻・カマーが屋良伝道家の娘というのも「へー!」ってなりました。
(屋良の伝道家(林堂家)といえば、阿麻和利の母と伝わる家です→ 

カマーを脇に抱えて逃げる(駆け落ち)シーンは、
鬼大城のこれを思い出してしまいました(笑)

若いころの「やらかし」エピソードもあったりと
晩年の写真からは想像つかない
なかなかの人間味を感じました。

 

泊手(泊の手)の中興の祖である
武士マチムラこと、松茂良興作は
優等生で義侠心が高くて絵にかいたような真面目な人
という印象。

薩摩支配への葛藤はあるものの
世代わりなどの歴史の荒波に翻弄される
というようなドラマは少なめで、
わりと淡々と順調に…の印象だったかな?

 

「自分を守るというのは、身を守るという意味だけではない。
信念を守るという意味もある。
信じる者が損なわれたとき、それはもう自分ではなくなる。
沖縄人は、かつて薩摩に支配され、そしてついに御主加那志もいなくなった。
それでも、信じるものを失わなければ、沖縄人でいられる。
恐ろしいのは、信じるものを奪われることだ。
それを守るために、ワッターは手をやるのだと思う」
(『武士マチムラ』松茂良興作)

 

「強くなれば、誰も戦いを挑んではこなくなるでしょう。
うんと稽古をして、生涯一度も手を使わなければ、
それが武士の本題だと思います」
(『武士マチムラ』喜屋武朝徳)

 

個人的には、今野さんの小説は
自身が空手家であるということもあり、
型や実践ついての描写や極意が結構でてくるので、
空手をやっている人にとっては
きっともっと「読める」んだろうなーと思いました。

私はその点、さっぱりなので
その人となりや、人生描写の方にどうしても寄ります。

そうすると、
これまで読んだ4冊のうちだと、
『武士猿』の本部朝基や
『義珍の拳』の船越義珍のほうが
波乱万丈なドラマが印象的かな。

 

とりあえず、
沖縄空手会館(→ )の展示を
今一度鑑賞したくなります。

前よりは、もっと頭に入ってくるはず!

 

+

 

まったくもって蛇足ですが、
刀剣乱舞のキャラクター「治金丸」君が発表された時、
特技が「手(テイ)」ってなってたんだけど、
テイってなんだよ、テイって。
あれからちゃんと「ティー」に修正されただろうか…。


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漫画「琉球のユウナ」5巻

2020年09月12日 | ・和心な本、琉球な本

琉球のユウナ⑤」(響ワタル著/白泉社)
(↑タイトルクリックでamazonにジャンプ)

 

先週発売になった琉球のユウナ5巻。

kindleで購入。

4巻のレビュー記事が去年の12月7日だから、
9か月で5巻が出たということか。

「早い!」
というのが雑誌で一切読んでいない
私の印象です。

 

4巻の一言感想は

「あらぁ、ユウナちゃん、たくましくなって…(ほろり)」

でしたが、

 

前半は4巻に引き続きたくましく、
後半は少女漫画味たっぷり♡の5巻です。

 

新キャラ大良金の存在が面白かったです。

彼や幸地里之子にモデルはいるのか
気になりました。

尚真の異母兄弟ならわんさかいるはずだし(笑)
(アカインコが3巻からさっぱりなのがさみし~)

 

さて、

4巻同様、5巻に出てきた歴史的エッセンスを
ピックアップして過去記事にリンクさせたいと思います。

マンガから歴史や史跡に興味を持ってくれた人の
参考になれば幸いです。

これまでの巻のレビューはこちらから

1巻 2巻 3巻 4巻

 

 

◆寒緋桜
今回の舞台でもある今帰仁グスクは
現在、寒緋桜の名所でもあります→  
見ごろは1月下頃~2月初旬。
寒緋桜は北から南へと咲いていきます。

 

◆今帰仁グスク図
香川元太郎氏の16世紀後半の推定復元図が元。
もちろん旧道もばっちり!
(大隅の洞窟入口は隠してあるのだと推定(笑))
外郭の16世紀頃と推定されている建物群
そのまま踏襲じゃなくても良かったかも?
(なお、北山時代は正殿の向きや規模などは変わります)

 

◆尚泰久
尚徳の父。
第一尚氏6代国王。
ティダから言えば祖父にあたります。

いずれ白澤と尚泰久のエピソードも描かれるのかしら…。
(興味津々)

 

◆北山看守
4巻レビューでも書きましたので割愛。
第二看守の始まりについて
真加戸とセリフにさらっと入れたのはさすが……
(こういうのがくすぐるんですよね~♪)

 

◆クリス
サニが使ってた短刀。
クリスは東南アジア経由の刀なので
サニに持たせたのもさもありなん。
円覚寺から出土しています。

 

 

◆本部おおやくもい
「本部の裏切りを見抜いたのは褒めてやる」
にやりとなりますよねー。
おおやくもいの名前選定の際に
敢えて「本部」を選んだ、
と思えてくる…けどどうかな…?
(リンク選びが難しかったので、↓とまとめます)

 

◆今帰仁グスクの志慶真門
先の本部の裏切りとリンクして
志慶真門からの突入。
尚巴志VS北山の戦いを知ってる人は
もうわかるよね。
敵を正門側に引き付けておいて
裏門から攻め入る。
尚巴志(第一尚氏)がした戦術を
第二尚氏がそのままなぞるとは…(笑)

因果応報。

なーんてね。


ところで、
ユウナでは今帰仁グスクや北山が
第二尚氏への反乱分子の潜伏エリアになってましたが
元々は北山を滅ぼした第一尚氏への
反乱分子が多かったといいます。
滅ぼされた側なので、そりゃそうですよね。

なので正直私は
「北山で無念の死を遂げた者の魂」には
マンガには出てこない第一尚氏に滅ぼされた旧北山のことに
意識が行ってしまった…(笑)

ともあれ、
北山滅亡のあれこれについては
きっと題材(ヒント)にはしているんだろうな。


なのでそのあたりの北山の歴史も知ると
さらに面白いですよ♪

さて、どの過去記事をリンクすればよいのやら…
とりあえずこれを→ 

 

 

大隅の洞窟
あれですね。

 

 

◆今帰仁クボウ御嶽
今帰仁グスクそばの山にある御嶽。
辺戸の安須森ほどではないけど
登った時は怖かった…(高所恐怖症)
 

 

 

◆御開門
焼失するまでは首里城奉神門前で毎朝やっていましたが
今はどうなんだろう…?
日常的にはやってないかな?

 

 

◆首里城正月儀式
実際の再現儀式の様子がこちらになります。
子之方御拝→ 
朝之御拝→ 
大通りの儀→ 

 

 

今回も首里城の場面がたくさん出てきましたが、
今(※)みたいな首里城ではなくて
今の首里城のビジュアルにしたのは敢えてだと思っていますが
本当に尚真時代の、古琉球時代(かつ志魯・布里の乱後の再建された)の首里城の姿
描かれているのも見てみたいな~と思ったりもしました。

もちろん、充分な資料がないので推定になるけれども。

推定でもいいから、
響先生の画力をもって、今(※)とは違う首里城で、
ユウナたちが生き生きと動く様子も一度見てみたいものです。



(※)
平成復元の首里城は、1709年に焼失し、
1712~1715年に再建された首里城の姿を対象にしています。


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沖縄イメージの誕生

2020年08月31日 | ・和心な本、琉球な本


※この記事は今年の初めごろに下書きしたまま放置していたものを
追記・再編集したものです

 

『オキナワイメージの誕生
青い海のカルチュラル・スタディーズ』

多田治著(東洋経済新報社/2004)

 

以前も記事にしたことがあるこちらの本。

気になりつつも、
図書館に蔵書がなかったり
あってもずっと貸し出し中だったりで
なかなか読めずにいたのですが、
この度ようやく借りることができ、読了しました。

現在では沖縄人、観光客、ともに当たり前になっている
沖縄といえば、青い空、青い海、白い砂浜!
という「リゾートオキナワ」が、

復帰後に行われた海洋博をきっかけに
「意図的に」「作られていった」ということ。

 

復帰後の生まれで、
沖縄=リゾートというイメージが
定着しきった時代に育った私にとっては
海洋博については漠然と聞いてはいたものの、
その背景や経緯は初めて知ることばかりで
何かと驚きを覚える1冊でした。

 

・海洋博は戦後沖縄経済の「起爆剤」になるはずが、
 「自爆材」になった側面もある

・海洋博反対の地元世論も強かった

・沖縄戦や米軍基地については(ほぼ)隠され
 オキナワパラレルワールドとして演出された

・「沖縄館」で打ち出した「沖縄らしさ」、
 そして沖縄の自己定義、アイデンティティとは

・海洋博後の沖縄キャンペーン「沖縄を売る」

など。

 

電通(そう!あの大手広告会社です)が制作した
沖縄プロモーション構想は、
観光業者や本土の人向けだけではなく、
それよりも「先に」沖縄県民についての働きかけがあった
というのが興味深い。

県民向けに「沖縄の歴史と文化」を押し出し、
沖縄の心を再認識させ、
県民が(沖縄に)誇りを持てるようにする。

そうすれば観光客を温かく迎える効果を生むだろう、と。

 

沖縄の人はあたたかいとか、親切とか、やさしいとか、
得てしてそう表現されたりアピールされたりしがちだけど、
(ちなみに私は「沖縄の人は」と限定して
必ずしもそうだとは思っていない)

当時、観光客に対する理解が低く、
サービスや親切さに欠けていた沖縄人に対しての
教育やアプローチも相当あったようです。

今本土の人が感じている「沖縄県民像」も、
観光立県沖縄の理想的なモデル像として提示され
作られていった(影響を及ぼしていった)、
という面もあるのかもしれません。

 

いわば「メンソーレ」運動。

ちょっと話はずれますが、

先日、ある人から「メンソーレ」という言葉は昔から
日常的に使われていたうちなーぐちではなく、
(※なかった、という意味ではない)
観光立県オキナワになってから、
ウェルカムに対応する言葉として
ことさらに持ち上げらるようになったのでは、
という考えを聞いて
このことにも通じるな、と思いました。

 

 

ショクバで古本の整理を手伝っている時、
このような冊子が出てきました。

 

 

海洋博だより6号。

半年後に開催が迫った
1975年1月の発行です。

 

最後のページにはこんな文言が。

 

 

海洋博県民運動の実践目標

・海洋博への参加意識をたかめよう
・沖縄を美しく清潔にしよう
・観客を温かく迎えよう

このようなスローガンが出されるということは、
「現在それが十分ではない」
ということ。

県民への啓発運動がなされていたことを裏付ける
1ページです。

 

 

去年放送された特番「沖縄MASAIC」でも
#残したい沖縄
が、圧倒的に「(青い)海」でしたが、

沖縄といえば海という価値観も
ごくごく最近のことなんだな、と思い知りました。

 

そして、
平成の首里城復元と、大河ドラマ『琉球の風』、
それに連動した琉球王国時代のアピール、
王国時代の歴史や文化に関連した
観光素材の開発・活用へと続きます。

 

これらの流れを振り返ってみて感じるのは、
観光客が求める沖縄イメージと、
沖縄県民が誇りだと思う(※「現実」ではなく)沖縄イメージ。
意外とそこにギャップはあまり無いような気がします。

文化人や研究者や学者ではなく、
ごくごく普通の一般沖縄県民(私も含め)がもつ
アイデンティティにもつながるこれらの歴史・文化的“価値感”は、
得てして外部からの意図的な働きかけによって
差別化・特殊化・明確化(という言葉でいいのかな?)され、
一般沖縄県民に影響を与えていったのでは……

なんてことを思わされます。


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『沖縄の戦後を歩く そして、地域の未来を考える』

2020年06月01日 | ・和心な本、琉球な本

 

最近購入した本の紹介です。

 

『沖縄の戦後を歩く そして地域の未来を考える』
(編集/NPO法人 沖縄ある記 発行/沖縄しまたて協会 2020)

1800円+税

『しまたてぃ』連載の25編に加え、
地域マップや関連コラム、
貴重な未公開写真、
沖縄の戦後史年表を収録

 

A4サイズ172ページの、
読み応えばっちりの1冊です。

お馴染みのあの大通りや風景を、
親世代は懐かしさをもって、
若い世代は新鮮さをもって、
楽しむことができます。

 

 

字(アザ)巡りマップのあるPART2が特にお気に入り。

読谷の喜納番所(観光案内所)で見た喜納集落マップ。
配布物は出払っていてもう手に入らなかったので
パネル展示されていたものを
反射に四苦八苦しながら写真に撮って、
プリントアウトしたものを見ながら
喜納歩きをしたのは去年のこと。

その地図が載っている!!

個人的にはこれが購入の1番の決め手。

喜納歩き、まだブログ記事にはしてないので、
これを気にまとめてみようかな。

 

同じように21の集落マップが掲載されているので
これを片手に集落ぶら散歩、したいです。


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漫画「琉球のユウナ」4巻

2019年12月07日 | ・和心な本、琉球な本

琉球のユウナ➃」(響ワタル著/白泉社)
(↑タイトルクリックでamazonにジャンプ)

 

先週発売になりました。

沖縄の店頭にもそろそろ並ぶ頃でしょうか?

 

ワタシは3巻からはkindleで購入しています。

発売日に、即ダウンロードしてすぐに読めることと、
巻数が増えてもかさばらないのがkindleマンガのメリット。

でも見開きページの迫力が落ちるのはデメリットかなぁ

 

 

さて、雑誌では一切読んでいないので
コミックが初見の感想としては、

 

あらぁ、ユウナちゃん、たくましくなって…


です。

 

かっこいいユウナが見れた4巻でした♪

成長著しいですね(体格的にも?w)♡

 

 

感想はこの一言くらいにしといて、
今回は4巻に出てきた琉球史エッセンスをピックアップして
過去記事にリンクしてみました。

歴史エンタメから、「次」(実際の歴史や史跡)へ!
というのがワタシのスタンスでもあるので、

マンガから「次」にもう一歩踏み込みたい人の
参考になれば嬉しいです♪

 

なお、過去3巻のレビューはこちらから。
1巻 2巻 3巻

 

 

+ + +

 

 

火矢のこん棒使用
…これ、ホントは確実に死ぬからね…。

 

三平の大あむしられ
三平の大あむしられの一人、
真壁大あむしられの住居跡(殿内)は
玉陵や首里高校のすぐ近くにあります。

首里大あむしられの殿内は赤田にあり
(わらべうたでもお馴染みの”赤田首里殿内”)
ここは過去記事はないんだけど、
首里のおおあむしられが司る「安谷川御嶽」はこの時の記事に。

 

◆ハブ除けのまじないと札
以前取り上げた
『沖縄のまじない』に詳しく載っています

 

ノロの任命
国家公務員であるノロは王府から辞令書をもらって就任しました。
辞令書はひらがなで書かれており、
首里之印が押されていましした。
(マンガにもワンカット出てましたね☆)

 

クンダグスク

 

ハベル(蝶)

 

辺戸の安須森
観光気分で気軽に行けるところではないので、
気軽に安須森感を味わいたい方は
隣の観光地「大石林山」をおすすめします。

 

辺戸の若水
首里城の年始行事に使う「若水」を辺戸の大川から汲む。
毎年12月に行われていたのですが…
今年は…できないね…(´;ω;`)

 

◆今帰仁の阿応理屋恵



今帰仁ハンタ道のそばに、
(今帰仁)阿応理屋恵ノロ火の神の祠↑があります。
ここは阿応理屋恵の住居地跡でもあります。

なお、阿応理屋恵の勾玉は残っていて
今帰仁村歴史文化センターに展示されています。
多くの勾玉が連なった重厚な首飾りは必見です!

ただ、ここでいう今帰仁阿応理屋恵
第二看守(下記参照)一族からの出です。

 

 

◆北山看守

北山王を滅ぼしたあとの、今帰仁地域の監視役。

北山看守には第一尚氏期の第一看守と
第二尚氏期の第二看守があります(メインはここ)。

第二看守は尚真の三男(尚韶威)を初代に代々続き、
その一族の墓も残っています(→ )。

第一看守は尚巴志の次男(尚忠)が初代であることはわかっていますが
(尚忠の前に護佐丸というのは伝承、かつ暫定的なものだったかと)、
尚忠が王位についた後、誰に継がれたのかは
はっきりは分かっていないそうです。


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『琉宮城の姫君』でたどる宜野湾・総喜呂原

2019年12月01日 | ・和心な本、琉球な本

先日、松本清張賞受賞者で
沖縄の歴史を取り入れた小説を書かれている
滝沢志郎さんと川越宗一さんを迎えての
トークショーがありました。

川越さんの『天地に燦たり』は
過去にレビュー記事も書いているのですが
滝沢さんのはまだだったので、
今日はこちらについて。

といっても、
松本清張賞受賞作で鹿鳴館を舞台にしている『明治乙女物語』ではなく、
滝沢さんの最新作で近代沖縄を舞台にした小説
『琉宮城の姫君』のほうを。

 

 

 

雑誌「小説すばる」10月号に掲載された読み切り中編小説です。
(今はもう店頭にはもうないので、気になった方は図書館で☆)

 

主人公は、
沖縄に図画教師として赴任してきた吉永光太郎。
教え子の高良倫子の家に伝わる”宝”さがしを、
同僚の女教師・渡名喜千代と供に手伝うことになり…

という物語。

 

物語の舞台は大正時代の沖縄ですが
”宝”のルーツは王国時代にさかのぼり、

大正時代の風景と、
王国時代の歴史的背景とがミックスされた
ちょっと新鮮な世界観。

 

小説や漫画や舞台など、
創作物を通して歴史にふれると
その時代や人をより身近に感じることができるため、

まだまだ層が薄い「近代沖縄」(王国解体後から沖縄戦までの時代)を舞台にした
創作物がでないかな~と願っていたので、

『琉宮城の姫君』は
まさにドンピシャ!待ってました!!の作品でした。

(トークショーでも滝沢さんがふれていた、
琉球沖縄の歴史は、王国時代からいきなり沖縄戦に飛んでいる、という話、納得)


物語に描かれた大正時代の沖縄の風景や人々の営み、
”宝”にまつわる王国時代の話や、
まさに”宝”のことなど、
取り上げたい部分は色々あるのですが、

 

今回私が気になったのは、

 

”宝”さがしの舞台となった


「宜野湾・総喜呂原」について。

 

これって、今のどこだろう??

もしかして、基地内??

 

と思い立ちまして…

 

 

久々に宜野湾市立博物館にGO!

 

 

もともと見る予定だった企画展を見て、
一昨年リニューアルされた常設展を見学していると…

 

 

…はっ!!!!

 

 

「う そけろ原」の印部石の写真がある!!

※撮影許可はもらいましたが、展示物そのものなので大きく掲載するのは控えます。
しっかり見たい方はぜひ宜野湾市立博物館へ★

 

え、これって創作じゃなくて、マジであったんだ!!

 

う~~~ん
こういうのに出会った時って
シビレますよね~~~

 

 

総喜呂原については
学芸員さんに尋ねてみると、
現在の「赤道」エリアだということが判明。

 

今は住宅街だけど…
印部石、あるのか!?

 

そうこうしながら、
得たキーワードを元にググったりしてると…

 

普天間飛行場から印部石 宜野湾市教委
(沖縄タイムス2014.9)


…!!!

 

やっぱり基地内だ!!



宜野湾市立博物館でいただいた文化財マップで
赤道シキロー」の場所を確認し、

 

 

行ってきたの図。

 

フェンスの向こうが普天間基地。

地形図をみると写真右手側のほうが低くになっているよう。

 

なるほど、ここが……。

 

主人公らが普天満宮から宜野湾並松街道を通って
ここ「赤道シキロー」までやってきた、
その道のりに思いを馳せる…。

 

妄想トリップが得意な福耳さん(琉球歴女の会幹部)とは違って
光太郎たちの声は聞こえなかったけど…(笑)

 

 

…となると、

そこから南西200メートルほど離れた場所…

 

 

写真でいうと太陽の下の丘あたりか?
(写真、逆光ですみません

 

文化財マップでは
「赤道渡呂寒原屋取古集落」
となっていました。

 

 

というわけで、

小説を通して、新たな史跡を知ることができ、
総喜呂原(赤道)も私にとって特別な場所となりました。

こういう体験がもっとしたい。

 

トークショーでの滝沢さん談によると
今後も「小説すばる」で近代沖縄の話を書いていくようなので、
とっても楽しみです

 

 

ところで、
今回お世話になった宜野湾市立博物館では
現在、企画展『変わりゆく街並み~西普天間の移り変わり~』を開催中!

 

 

普天満宮の裏側、
普天間基地内の「西普天間」エリアの発掘成果について。

 

基地内の文化財とか、基地で消えた集落とか、
そういうのに興味があります。

去年RBC SF・ファンタジー大賞を受賞した
「タクシーの花子さん」の大工廻(だくじゃく)もそうだし…。

 

土日限定で、
「フトゥキャアブ」や「イシジャー」のVRも体験できます。

 

常設展もおすすめ。

「う そけろ原」の印部石写真だけでなく、
宜野湾並松街道の様子(写真、地図、模型)など、
『琉宮城の姫君』の一端に触れることができますよ。

 

入場無料です♪


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思五郎が行く、再チャレンジで読了

2019年07月21日 | ・和心な本、琉球な本

 

 

『思五郎が行く(上下)』
(与並岳生著/新星出版)

小説『百十踏揚』を書いた世並岳生さんの、
玉城朝薫を題材にした小説です。

 

この本を最初に手に取ったのは
実は9年前。

読み始めたはいいものの、
その時のワタシにはなかなか入りづらく、上巻の前半で挫折。

 

あれから時が経ち、
近世の知識も入って来たし、
組踊300周年のこの機会に
もう一度チャレンジしてみるのもいいかも?
と、図書館で手にしました。

9年前、自分で購入して持っていたものの、
挫折によりいつだったか断捨離してしまい、
もう手元になかったのです。

しかし…やはり琉球史モノは断捨離するべきじゃなかった~(後悔)。

小説としてもさることながら、
与並さんの小説はうんちくが豊富で
(これが時にはつまずきにもなるのですが…(苦笑))
歴史ネタの宝庫、とも言えるのですよね…。

どこまでまた買い直したいですね…。

 

 

さて、この小説は組踊を創ったことで有名な
玉城朝薫が生まれてから死ぬまでを描いた物語。

その過程で、組踊や江戸上りのことはもちろん、
同時代の偉人たち、
尚敬、蔡温、程順則、平敷屋朝敏も登場。
そして薩摩や江戸の大和の著名人や、徐葆光などの清国人も。

今回無事に読了できたのは
主に「現代版組踊 琉球伝信録」をきっかけに、
その時代やできごとをあらたか知っていたから
と言うのも大きいかも。

そうそう、同時代が舞台の小説『黙示録』(池上永一著)も5月に再読してたしね。

 

読む側のワタシに知識のベースができていた。

それがなかったから、
9年前はついて行けなかったのかも

 

今回この『思五郎が行く』を読んでの1番の収穫は
「踊奉行ではない玉城朝薫」が大いに知れたこと。

朝薫と言えば組踊、組踊と言えば朝薫。
「劇聖」とあがめられる琉球の偉大な芸術家。

今日、朝薫はそういう枠でしか語られないし、
そのイメージしかなかったのですが、

彼が踊奉行だったのは人生の中の一時期にすぎず、
むしろそれ以外の役職についていた時期の方が多いこと。

彼は確かに芸能の才能に秀でた芸術家であったけれども、
王府のいち役人、しかも今の大臣にあたる官僚でもあった、ということ。

那覇港の、海中に堆積していた泥をさらうという
一大土木工事の監督責任者でもあったってのはびっくり。

その土木工事の存在自体は知ってただけに、
それが朝薫と繋がってたとは思ってなかったよ。

朝薫の才能・活躍の幅を知り、
目からウロコでした。

 

人物描写としては、
朝薫は多くの人に愛された、優しくて努力家で誠実な人。

蔡温は琉球のためにと振るうその才能と実行力が頼もしいながらも、
その強引さがなかなかのワンマンぶり。
見方によっては策士っぽかったり。

でも蔡温VS朝敏(平敷屋・友寄事件)に関しても
どっちが善(是)か悪(非)かとかではなく、
どちらにもそれぞれの正義や言い分があり、
そしてどちらにも至らない部分、欠点がある。

尚敬王然り。

当時の琉球をとりまく環境、状況、矛盾点、
その上にそれぞれの理想や信念や思惑が絡み合ってて、
理解が深めることができました。

 

現代版組踊 琉球伝信録とかも、
まさにこの話でもあるから
演者さん、関係者さんでまだ読んでない方は
是非読んでみて!
役作りの参考になるかも☆

 


朝薫の墓

 

「手水の縁」のこととかもね。

これは同じ与並さんの代表作、「百十踏揚」に出てくる
「護佐丸と阿麻和利の関係」にあたる部分だと思いますね。

 

もちろんこれは小説なので、
書かれていることすべてが"正しい"わけではなく、
作者の憶測や想像、脚色などもあるのでしょうが、
(朝薫の奥さん、ンタルのこととか、
朝薫の最期とか、そのあたりのこととかキニナル…)
与並さんはそのあたりの史実とフィクションの入れ方がすごく巧妙で、
しかもリアリティがあるから、
どこまでが史実でどこからが脚色なのか、気づかないくらい。

その点、今度はこの小説をベースに、
歴史的な事実を調べて行こう。


「次」につながる、そんな指針をくれた小説でした。


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義珍の拳

2019年05月17日 | ・和心な本、琉球な本

 

先日、図書館の文庫コーナーで目に留まった一冊、
『義珍の拳』。

作者は今野敏。

以前読んだ『武士猿』と同じ作者です。

 

表紙からわかるように、空手を題材にした小説で、
主人公は船越(冨名腰)義珍。

船越義珍は、
就職試験(一般教養(沖縄))の受験勉強で、
"空手を本土に広めた人"
として琉球史にハマる前から名前は知っていました。

でもそれ以上の知識はありませんでした。

 

そんなワタシにとって、この小説は、
とても勉強になる1冊でした。

 

王国時代、秘儀として秘密裏に伝承されてきた唐手(とぅーでぃー)を
沖縄で、そして本土で、公に、一般に広めていくことに尽力した義珍。

本土で、沖縄のカラテが高く評価されることの喜び。

と同時に生じる「カラテの本質」が薄れていく危機感や葛藤、
「君子の武道」であるはずのカラテが
実践や勝負に価値を置く「スポーツ」として広がっていく失望感。

廃藩置県、太平洋戦争、戦後と
時代の移り変わりとと共に、
カラテに生涯をささげた義珍の一生が描かれています。

空手の歴史、
名だたる先人たち、
同時代に活躍した空手家たち、
空手の精神や本質にも触れることができます。

 

 

「空手に先手なし」

 

沖縄空手会館の展示室入口のパネル、
中央に大きく書かれているのが
義珍のこの言葉です。

この本を読んだ今、
改めてここを訪れたくなりました。

(空手会館初訪問の時の過去記事 

 

 

実はYouTubeに義珍の動画がちょいちょいあるんですよね…。

ちょっと貼っておきます。

Gichin Funakoshi - 1924 Vintage Footage


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漫画「琉球のユウナ」3巻

2019年04月09日 | ・和心な本、琉球な本

「琉球のユウナ③」(響ワタル著/白泉社)
(↑画像クリックでamazonにジャンプ)

 

引き続き、雑誌では一切読んでいないので、

えっ、もう!?

という印象。

まだ先、と思っていたので
嬉しい誤算。

 

琉球のユウナ関連過去記事→ 1巻 2巻

 

 

今回も楽しく読ませてもらいました

 

3巻で新しく出てきた琉球史ポイントは、

琉球七御嶽

 

それから新キャラ

居仁

赤犬子。

 

 

居仁はぶっ飛びましたなぁ…。

少女漫画的恋愛展開としても
いつか出てくるだろうとは思ってたけど
このようなキャラだとは
1ミリも思ってなかったので
さすがに度肝抜かれましたわ

なお、ここでの居仁のルビは「いに」
ワタシは最初に触れた知識の影響で「きょじん」派です。
(※「巨人」とイントネーションは違いますー)

 

父・尚宣威の事とか
息子の尚維衡(→首里追放)、
そして玉陵の碑(→息子共々玉陵に入る資格者から除外されている)
ことを思うと
居仁そのものも、どうしても薄幸の儚い女性なイメージがあったのですが、

いやはや……

 

ちなみに☆

尚真は14歳で冊封を受けており、
その時に「王妃」への下賜物が記録されていることから
14歳ではすでに居仁と結婚していた、ということになります。

でも、もしそれが冊封の時点では「形」だけだったとしたら…
それはそれで面白いですね。

尚真と居仁、
マンガで描かれた設定も
そういった作者の裏設定が垣間見えるような気がしました。

 

そういえばワタシ、
居仁はきちんとは描いたことないかも?

華后さん(→尚真の側室で尚清王の母)は何度かあるけど。

(華后さんも今後出てくるのかな(笑)
ややこしくなりそうだから出ないかな)

 

 

赤犬子もいいキャラでした。

確かに彼にまつわる伝承などを読んでると
優等生というよりも、
頑固というか短気と言うか、
癖がある感じなんだよなぁ(笑)

「楽師」としてはもちろん、
不思議な力を持っているという面を前面に。

何かその出生・ルーツに秘密がありそうですね。

トーン貼りの肌は褐色イメージなのかな?

「赤」なだけに。

とかね。

 

 

個人的には
少年尚真と尚徳王長男とのエピソードが
気に入りました。

 

そうそう、
金丸が王になる前の尚真(やオギヤカ)の
暮らしや生き方(→ )を想像するとね、
また面白いのですよね…。

 

そして、
その後の結末が描かれるのが、また憎い…

 

 

というわけで、
作者が史実を踏まえた上で
出来事や人物をどう創作・アレンジしているのか、

今回も元ネタなどを予想・想像しつつ
マニアックに楽しませてもらいました☆

 

4巻も楽しみです。

 

「琉球のユウナ」から
琉球史に興味持ってくれる女子が増えたらいいなぁ~。

そんな意味も込めて、
単なるレビューというよりは、
ベースとなる歴史・史跡もふわ…っと紹介しつつ…の記事でしたっ。


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