がじゅまるの樹の下で。

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武士猿

2010年06月27日 | ・和心な本、琉球な本


舞台は、廃藩置県後の沖縄。
琉球王族の三男坊・本部朝基は、王家の武術「御殿手」を習う兄に勝つため、
琉球伝統の「手」の修行を始める。
路上で実践の修行を重ねるうち、
沖縄の人々が抱える劣等感に気づいた朝基。
本土で「手」の強さを証明し、沖縄人に誇りを取り戻すことはできるのか……!?

沖縄から大阪、東京へ。
沖縄武士の誇りを懸けた戦いが今、始まる―――。




という帯文と、表紙のデザインに惹かれて何気なく買った一冊。

昨日一日で読んでしまいました。

本部朝基(もとぶちょうき)は実在した沖縄の唐手(=空手)家。
伝説的な強さを誇る、格闘技ファン、空手ファンなら誰もが知っている人だとか。

船越義珍(ふなこしぎちん)なら本土に空手を広めた人、ということで
琉球史の勉強に出てくるので知っていましたが、本部朝基という人は始めて知りました。


話は本部朝基の17歳~62歳ごろまでを描いた伝記のようなもの。

様々な流派の「手(=空手)」の使い手、
棒使い、
示現流の薩摩の元武士、
女武士、
相撲取り、
柔道家、
ボクサー
など、様々な人たちとの戦いを通じて、

「手」とは、
「沖縄武士」とは、
「沖縄人の誇り」とは、
などを描いています。

話としては、ものすごい事件やドラマがあるわけではなく、
割とたんたんと過ぎていくのですが、
でも印象的な文章がいくつかありました。




「手が高尚である必要などない。強ければいいんだ。
『敵に討たせず、敵討たず』などと気取っているから、
結局は薩摩に攻め込まれ、支配されてしまったのだ。」

朝基は、そう憲通に反論した。

「それは違う。薩摩の支配は世の流れだ。
沖縄から外に出てみて、それがよく分かった。
強ければいい、とお前は言ったが、
負けることを恐れて、手を野蛮で見苦しいものに変えてしまったら、
それこそが沖縄人の負けなんだ。」



「沖縄武士の誇りを取り戻したい。そう思っているのです。
沖縄の手は、誰にも負けない。
そういう自信を、沖縄の武士たちにもう一度持ってほしい。」



作者は北海道出身で自身も空手有段者の今野敏さん。
推理小説家で数々の賞も受賞されているので
その方面で知っている方も多いのでは。

興味のある方は。
是非ご一読を。


「武士猿(ブサーザールー)」
今野 敏 著
集英社


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