がじゅまるの樹の下で。

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チャンミーグヮーと、武士マチムラ

2020年10月05日 | ・和心な本、琉球な本

 

『チャンミーグヮー』(今野敏著)
『武士マチムラ』(今野敏著)
を読了しました。

 

今野さんの小説を読むのは
これで3月、4冊目。

1冊目が『武士猿』
2冊目が『義珍の拳』

 

どれも沖縄の空手家を題材にした小説で
時代も王国末期~近代と
時代がかぶっていたりするので、

お互いがどの小説にもかかわっていたり
共通の登場人物やエピソードがあったりと
色々とリンクしているので
空手小説シリーズとして読む楽しみもありました。

チャンミーグヮーは喜屋武朝徳(きゃんちょうとく)
武士マチムラは松茂良興作(まつもらこうさく)
が主人公。

 

薩摩の支配、王国の衰退、滅亡、
沖縄人の中で反大和派(頑固党)と親大和派で対立し、
社会が大きく変わっていったこの時代、
沖縄を代表する空手家たちがどう生きたのか、
「手(ティー)」をどのように守り、伝えていったのか。

それぞれの生き方を通して知ることができます。

 

チャンミーグヮーこと、喜屋武朝徳は
”大和に琉球を売った”者(維新慶賀使節団の一員)の子であることの葛藤や、
明治に東京で過ごしたというのが興味深かったです。

また、妻・カマーが屋良伝道家の娘というのも「へー!」ってなりました。
(屋良の伝道家(林堂家)といえば、阿麻和利の母と伝わる家です→ 

カマーを脇に抱えて逃げる(駆け落ち)シーンは、
鬼大城のこれを思い出してしまいました(笑)

若いころの「やらかし」エピソードもあったりと
晩年の写真からは想像つかない
なかなかの人間味を感じました。

 

泊手(泊の手)の中興の祖である
武士マチムラこと、松茂良興作は
優等生で義侠心が高くて絵にかいたような真面目な人
という印象。

薩摩支配への葛藤はあるものの
世代わりなどの歴史の荒波に翻弄される
というようなドラマは少なめで、
わりと淡々と順調に…の印象だったかな?

 

「自分を守るというのは、身を守るという意味だけではない。
信念を守るという意味もある。
信じる者が損なわれたとき、それはもう自分ではなくなる。
沖縄人は、かつて薩摩に支配され、そしてついに御主加那志もいなくなった。
それでも、信じるものを失わなければ、沖縄人でいられる。
恐ろしいのは、信じるものを奪われることだ。
それを守るために、ワッターは手をやるのだと思う」
(『武士マチムラ』松茂良興作)

 

「強くなれば、誰も戦いを挑んではこなくなるでしょう。
うんと稽古をして、生涯一度も手を使わなければ、
それが武士の本題だと思います」
(『武士マチムラ』喜屋武朝徳)

 

個人的には、今野さんの小説は
自身が空手家であるということもあり、
型や実践ついての描写や極意が結構でてくるので、
空手をやっている人にとっては
きっともっと「読める」んだろうなーと思いました。

私はその点、さっぱりなので
その人となりや、人生描写の方にどうしても寄ります。

そうすると、
これまで読んだ4冊のうちだと、
『武士猿』の本部朝基や
『義珍の拳』の船越義珍のほうが
波乱万丈なドラマが印象的かな。

 

とりあえず、
沖縄空手会館(→ )の展示を
今一度鑑賞したくなります。

前よりは、もっと頭に入ってくるはず!

 

+

 

まったくもって蛇足ですが、
刀剣乱舞のキャラクター「治金丸」君が発表された時、
特技が「手(テイ)」ってなってたんだけど、
テイってなんだよ、テイって。
あれからちゃんと「ティー」に修正されただろうか…。


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