がじゅまるの樹の下で。

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『ヒストリア』で感じる、現代史のリアル

2018年02月06日 | ・和心な本、琉球な本


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池上永一さんの『ヒストリア』(角川書店)を読了しました。

 

年末に半分読んで、

その後いったん別の本数冊に流れて(汗)

そしてつい先日、残りの半分を一気読みしました。

 

 

物語は沖縄戦から始まります。

そこでマブイを落としてしまった主人公の女の子、
知花煉(れん)

そして戦後のコザ、

そしてボリビアへの移民。

そしてペルーなども含めた南米の歴史・文化・政治、
当時の米ソ冷戦やキューバ危機などの世界史を絡めた
壮大な物語でした。

 

感想を一言で言うと、

 

『痛い』

 

「現代」という時代を扱っている分
とてもリアルで、痛いのです。

それを考えると
琉球史って、やっぱりある意味ファンタジーなんだな
っていうのをすごく感じます。

例えば、
尚巴志の北山戦のシーンと、
沖縄戦のシーンでは
感じる生死や痛みのリアル感が全然違うもの。

だからやはり
ファンタジー・物語だと単に割り切れない
時代が近い『ヒストリア』の世界はどうしても痛みが伴うのです。

 

特に最後の最後は惨憺たる気持ちになりました…。
(そして現在(リアル)の沖縄に落とされるっていうね…)

 

 

でも、暗くてリアルでシリアスで
真面目でしんどいだけの物語かというと、
そういうわけではなくて。

 

やはり池上小説らしく、

主人公はやっぱり破天荒だし、
チェ・ゲバラと恋に落ちるというぶっとび設定もでてくるし、
サブキャラたちは魅力的だし、
上がっては下がるジェットコースターの物語展開は
『テンペスト』並みか、それ以上か…。

 

特に主人公とマブイがどんどん交差していくところは
すごく巧みで、すごく小説らしく、唸りました。

リアルゆえの痛みを感じながらも
どんどん読み進めていけたのは
やはり池上小説の妙・面白さゆえかなと思います。

そういえば今回は異常変態キャラがいなかったのも良かったな(笑)

 

『ヒストリア』の間に読んだ『走れ思徳』と比較するのもなんですが、

どちらも世界史という題材を扱いながら、
小説として面白く読み進められたか、否かは、
ちゃんと主人公たちがその歴史の流れの中に入って行って
魅力的な物語を展開できていたかどうかの差、ですねぇ。

登場人物たちの魅力、
物語展開の面白さ、
展開のリズム、
やはり、さすが池上小説は違うなと感じた次第です。

 

 

ところで、この本の表紙はチェ・ゲバラの肖像になっていますが
個人的には、彼はそんなに…でした。

 

確かに物語で必要なキャラではあったし
ぶっとび設定も作れたけれども、


表紙が彼の肖像であることで
意外性があって興味もひいたので
決して必要なかったとは言わないけれども、

 

…思ってたよりも(表紙にソロで出るほどの)
インパクトや魅力はなかったかなーと思いました。

(単にこういう人は好みではないというのもあるかも?(笑))


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