自然とデザイン

自然と人との関係なくして生命なく、人と人との関係なくして幸福もない。この自然と人為の関係をデザインとして考えたい。

世界市民とナショナリズム(愛国心)

2019-07-27 14:23:00 | 自然と人為

 歴史秘話ヒストリア『五・一五事件 チャップリン暗殺計画』(2)は、いろんなことを教えてくれる。まず「話せばわかる」(動画)と青年将校たちを官邸の応接室に案内して暗殺された憲政の神様・犬養毅(動画)(2)のことを少し調べてみた。「元老・西園寺公望は犬養が満州事変を中華民国との話し合いで解決したいとの意欲を持つことを評価して、昭和天皇に野党・政友会総裁の犬養を(首相に)推薦した。このとき、犬養は数え年で77歳。犬養は組閣の大命が下るとただちに衆議院解散・総選挙(動画)(2)を断行し、政友会の議席を大きく伸ばし、国民の支持を取りつけたうえで、高橋是清を蔵相に起用して経済不況の打開に取り組んだ。高橋は金輸出再禁止と兌換停止を断行、同時に積極財政へと転換を図った。これにより日本経済は世界恐慌から最速で脱出した。」しかし、軍部主導の満州国の承認に消極的であった犬養は暗殺され、高橋是清も軍事予算の縮小を図って軍部の恨みを買い、二・二六事件において暗殺された。軍部の日本を守るという愛国心が、戦争への道を歩ませ、国を破滅させることになる。
 参考:上海事変と5.15事件〜憲政の常道、放棄のワケ

 犬養首相が暗殺された日は、チャップリン(2)と犬養首相との会見が予定されていたという。チャップリンはサイレント映画だが音楽付きのサウンド版として公開された『街の灯(City Lights)』の完成を記念して、世界一周旅行をしてチャーチル、アインシュタイン(2)、ガンジーと交流して、初来日したばかりであった。チャップリンは片腕として最も信頼した高野虎市の出身地、日本を愛し、来日を熱望した。
 チャップリンとはどんな人物?チャップリンは過去の人ではない。今も我々と生き、笑いと悲しみと未来への希望を与えてくれている。私の好きなチャップリン『独裁者』のラストの演説場面、その他のチャップリンの作品の一部やチャップリンと高野虎市の関係についても少し調べておこう。
 参考:独裁者100年 —チャップリン ことばにならないことばを紡ぐ
      近代資本主義や全体主義を鋭く批判したチャップリン
     20年越し チャップリンに、アメリカ映画界からの事実上の謝罪
     80年の時を超えて、チャップリンが現代の労働者へ贈る皮肉と癒し

     チャップリン名言集 〜人生は喜劇〜
     音声で聴く「チャップリンの名言」20話
     街の灯/愛のテーマ(2)(3)(4)
     ライムライト / テリーのテーマ
     チャップリンの「キッド」と「スマイル」を歌うマイケル

     A Film Johnnie (1914年)
     The Tramp (1915年)
     The vagabundo 1916年
     チャップリン「午前一時」(1916年)①
     リンク 1917年
     犬の生活(1918年)
     チャップリン特集
     黄金狂時代 1925年
     サーカス 1928年
     チャップリン『モダン・タイムズ』1936年(ベストシーン)

     チャップリンがもっとも愛した「日本人秘書」の波乱の人生
     【驚愕】チャップリン暗殺計画と彼が信頼した日本人、高野虎市エピソード
     『チャップリンの影~日本人秘書・高野虎市~』感想
     高野虎市さんを追って①
     チャップリンの秘書は日本人だった」
     チャップリン暗殺計画!それを救った日本人秘書、高野虎市(動画)
     チャップリン暗殺未遂(動画)
     チャップリンとは何者なのか!?五・一五事件暗殺計画!(動画)


 戦争は社会の常識を破壊する。世界市民を自称するチャップリンは『愛国心はかつて世界に存在した最大の狂気だ。』と国の支配者として人種差別で世界的規模の大量殺人をしたヒトラーを痛烈に批判している。このことは、『チャップリンとヒトラー』で鋭く指摘され、チャップリンの演説『独裁者』は、文章化して紹介されている。そのチャップリンがアメリカ国家から仕事を奪われ、共産主義者として国外追放された。戦後に名誉回復されたが、愛国心は狂気の戦争のエネルギー源となり、国民の良心さえも破壊することを忘れてはなるまい。
 「美しい国、日本」を私は愛している。しかし、その日本を守るためとして憲法を改悪して、「戦争放棄した日本」を戦争ができる国にしようとしている。しかも、首相が先頭に立って!まるでヒットラーだ!ヒットラーも過去の人ではない。今も政治は国民に微笑みながら、国民を支配しようとしている。

 チャップリンの『独裁者』の最後の演説に耳を傾けよう。
 「申し訳ないが、私は皇帝などなりたくない。それは私には関わりのないことだ。誰も支配も征服もしたくない。できることなら皆を助けたい、ユダヤ人も、ユダヤ人以外も、黒人も、白人も。私たちは皆、助け合いたいのだ。人間とはそういうものなんだ。私たちは皆、他人の不幸ではなく、お互いの幸福と寄り添って生きたいのだ。私たちは憎み合ったり、見下し合ったりなどしたくないのだ。この世界には、全人類が暮らせるだけの場所があり、大地は豊かで、皆に恵みを与えてくれる。人生の生き方は自由で美しい。しかし、私たちは生き方を見失ってしまったのだ。欲が人の魂を毒し、憎しみと共に世界を閉鎖し、不幸、惨劇へと私たちを行進させた。・・・」この演説を最後までじっくり噛みしめて欲しい。「日本を愛する」ことは「日本を守る」ことに直接は繋がらない。「日本を守る」という美しいささやきが、如何に偏狭な狂気の戦争に繋がるかを、チャップリンの『独裁者』の演説は教えてくれる。

 愛国心に関する名言集(2)(3)(4)は数多く紹介されている。世間を騒がせた森友学園問題を、「国有地払い下げ問題」(動画)に矮小化してはいけない。森友学園の教育を支持した「日本維新の会」は大阪のみならず、東京にまで支持者を広げている。また、森友学園問題は安倍政権とNHKの癒着(2)を明らかにしたが、最近、メディアと政権の癒着(2)(3)(4)が、国民の政治への判断を歪めている。教育勅語等の愛国心を子供に熱心に教える森友学園(2)と、それを熱烈に支持した首相や国会議員こそが問題にされるべきことを忘れてはなるまい。

初稿 2019.7.27 更新 2019.7.28


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