自然とデザイン

自然と人との関係なくして生命なく、人と人との関係なくして幸福もない。この自然と人為の関係をデザインとして考えたい。

他者のために生きる~合理的で自己中心的な「利他主義」 ② ジャック・アタリの物語(政治と経済の原点)

2020-05-05 12:23:11 | 自然と人為
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 前回のユヴァル・ノア・ハラリの話は、「言葉から物語(虚構)を生むことにより、人類は生物の覇者となった」ことを教えてくれた。科学や数学は意味も表現も厳密であるが、「物語」は意図的なウソだけでなく、事実を説明しているつもりでも、その表現や解釈に曖昧さは避けられない。世間や世界を考えるとき、「物語」の曖昧さを前提に置いて考えると、事実がより鮮明に見えてくる。初回にユヴァル・ノア・ハラリの話を持ってきたのは、人類は「物語」により社会をつくっている原点から考えたかったからである。

 一方、『他者のために生きる~合理的で自己中心的な「利他主義」』は前回のタイトルにも引用したが、ジャック・アタリは、「協力は競争よりも価値があり、人類は一つであることを理解すべきであり、利他主義という理想への転換こそが、人類のサバイバルのカギである」としている。

 このジャック・アタリの考え方は、「物語」として「政治と経済」を考える原点を与えてくれる。そこで、番組を以下の4本の動画に分割して、ジャック・アタリの物語を考えて見たい。
動画が見れない場合はこちらをどうぞ!

1.アタリが見た日本の40年間(動画)
 若い頃(1975年?)教授として来日し、東京大学で講義して以来、フランスの大統領特別顧問として外交のために年に3~4回来日したことがある知日派であるジャック・アタリは日本をどう見ていたのか。40年前の日本は世界一だと言われ、超大国としてアメリカに代わるのではないかとさえ囁かれる存在だった。テクノロジーの面において世界のリーダーだという感覚もあった。また、今日見られる少子高齢化も、40年前にはまだ始まっていなかった。しかし、その後、日本社会は良くない方向に変化した。どの国がより将来世代を守れるかという国家の将来性の指標で比較すると、日本は残念ながら常に最下位かブービー賞か最後から4位のなかのどこかで、5年前からその位置だと言う。
 参考:OECDは「より良い暮らし指標(Better Life Index: BLI)」について公表していたが、「幸福度」を世界指標にと日本がOECDに提案(2010.5.28)し、2012年をメドに計測方法検討とされている。「幸福度の深刻な亀裂が明るみに-OECDの新データより」 や、「日本の幸福度」という報告もあるので、ジャック・アタリが示した指標はOECD版「幸福度指標」のことかもしれないが、順位等についてはまだ確認できていない。
 なお、「世界経済フォーラム」は、日本が社会的流動性ランキングで世界61位と報告し、『男女平等度ランキング2018』も発表(2018.12.18)している。また、国連版の「世界幸福度報告書」(2018)もあるが、いずれも日本の将来性の評価は低い。


 ジャック・アタリは「日本は社会的流動性が低い国」だと言い、将来性のある国にするには積極的な家族政策が必要だとしている。また、巨額債務と低金利は長期的には破滅をもたらすとも言う。
 持続的成長と成長の限界―必要なのは「成長」ではなく「発展」である。しかし、2013年発表の「日本再興戦略」で明示されたアベノミクスは、大胆な金融政策、機動的な財政政策、民間投資を喚起する成長戦略の「三本の矢」を経済成長の目標とした。
 家族政策(国民)を大切にしないで、大企業や株を楽しむ富豪を大切にしたのでは、日本の将来の幸福はない。経済的にも「破局の日本か」とか「金融経済評論家が警告『202X 金融資産消滅』」という指摘もある。
 「戦後最高の宰相」が池田隼人だとすると、日本沈没に向かわせているのが安倍晋三だと言えよう。
 参考:人権よりも投資、現実を見ない安倍政権 2020.5.2
    
2.政府による経済の補完ケインズ理論,危険な純粋「物語」(動画)
 今、国家予算をベースとしたケインズ政策よりも金融政策の役悪が大きくなっているという人がいる。しかし、利益を追求して暴走する資本主義は、雇用や住宅や家族政策等「市場の不完全性」を補うために政府支出による介入が必要としたのがケインズ理論である。「国民を大切にする政府」なき「市場経済の理論」は不完全だ。日本、アメリカ、イギリス、ヨーロッパ、中国の中央銀行の同盟は一種の影の世界政府だが、貨幣の流通をコントロールするだけで、政策は各国の政府の責任であり、政治の責任だ。
 参考:バーナード・マドフの6兆円詐欺事件の真相
    金貸しと銀行家と通貨発行権の歴史
     ~アメリカ、日本、イギリスの中央銀行 2018.2.10

    
 ジャック・アタリは「物語は純粋であってほしい」と言うとき、それは実は「未来より過去がいい」ということを意味していると言う。未来は不確定だが、歴史は多様な複雑な事実の「物語」を語る。「純粋な物語」は、純粋であるほど複雑な事実を削り、ある考えに偏る。極右派と極左派は純粋さを求めている点では同じだが、純粋な過激派が手を組んだら新たな全体主義政治を生んで危険だ。将来において純粋(過激)な宗教とエコロジストがつながる危険性を心配している。現実に存在する民主主義社会では、妥協することにより、多くの人々が満足できる解決策を見いだしている。理念だけの理想より現実的な平衡感覚が必要。市場原理に示されるユートピア(理論)も純粋なものだが、それはありえない。だからこそ政府は市場原理で動く経済に対して、雇用や住宅や家族政策等を配慮した政策を取らねばならない。

3.利己的利他主義:アダム・スミス
 私たちは自らの主張と対立する意見に出会ったときバランスがとれるのか?という問いに対してジャック・アタリはアダム・スミスを引用して説明する。人間は「利己的でありながら利他的にもなれる。」ジャック・アタリはこれを「利己的な利他主義」または「合理的な利他主義」と呼んでいる。


 アダム・スミスは「国富論」で資本主義に関して定義し、「道徳感情論」で利他主義の理論について書いている。「国富論」は有名だが、「道徳感情論」の内容については詳しくは知らなかった。しかし、「道徳感情論」は「国富論」の17年前に書かれ、「国富論」の土台になっている。

 ジャック・アタリは「社会的流動性」が重要であることについて「コメディー映画のグルーチョ・マルクスの興味い言葉『なぜ僕が将来世代のことを気にかけなきゃいけないんだ。彼らは僕のために何もしてくれないのに』を紹介し、年老いたとき若い人がいないのは悪夢だ」とし、将来世代の人数が少ないのが日本にとっては問題だとしている。まだ生まれていない世代の幸せが、私たちのためになる。社会的流動性が高ければ、まだ生まれていない世代が幸せになれる。気候、民主主義、女性の自由等も将来性の指標になる。
 参考:社会的流動性ランキングで世界61位(世界経済フォーラム)
    グルーチョ・マルクスの映画作品
    グルーチョ・マルクス名言まとめ


 資本主義は短期志向で、現在の利益を求めて、将来の利益のことは構いません。民主主義も同じで、票や人気を求めるばかりで、長期的な視点がかけている。今後50年が勝負の時だ。長期的に将来性のあるポジティブ資本主義およびポジティブ民主主義を我々が築けなければ全体主義が台頭する。全体主義体制は将来世代のためになるフリができるから危険だ。最適な資本主義の形態は家族経営だ。今日のオーナーが会社を孫につがせるべく将来世代のことを考えるから。民主主義に関して言えば非常に難しい。どうすれば議会がまだ生まれていない有権者のために動くようにできるだろう。議会はまだ生まれていない有権者のために動くようにできるのでしょう?ジャック・アタリは「影の議会」を作ることを提案して、ヨーロッパのいくつかの街で試してみた。これは、まだ生まれていない有権者、つまり将来世代の利益を代弁する議会を仮定し、既に成立した法律が将来世代にとって本当に良いのかという視点を与えた。自分のしていることが将来世代のためになるか否かという視点だ。我々が子供のことを考えるとき、子供の幸せになるかを考えるのと同じで、今の政治が人類全体のためになるのか、子供の幸せと同様に考えなくてはならない。

4.競争(経済)で平和(政治)を守ることはできるか?

 今はグローバル資本主義やグローバル市場が存在するために、グローバル企業が必要だという明確な見解もある。政府は小さく弱くなり、政府が発行する通貨ではなく市場の通貨が使われるようになるという見方もあり、その実験が試みられている。だがジャック・アタリは政府発行ではない通貨の世界統一が実現するとは思わないと言う。世界には2つのトレンド間での戦いがある。一つのトレンドはグローバリゼーションで、GAFA中国版GAFA、ヨーロッパ版GAFAにつながるもので、世界統一通貨や一つの世界統一言語が生まれるというものだが、ジャック・アタリはそう思わない。真逆になるもう一つのトレンドもある。自動翻訳関連の新たなテクノロジーにより、いくつもの言語を話すことも容易になる。本当に危険なのはグローバル化による一意化ではなく、世界のマイクロ・バルカ二ゼーションだ。バルカ二ゼーション(バルカン化)は保護主義の出現によって始まった現象だが、世界が分断され、新たなナショナリズムが台頭するのは非常に危険だ。
 GAFAによる支配のリスクを誇張すべきではない。一方、人類が作るグローバルな法規が必要。しかしそれを作るのはとても難しい。大抵、法規は独裁者か侵略者が定めるもので、全人類のための新たな共通の法規をボトムアップでつくるのは非常に困難だ。
 しかし、予測不能な未来を恐れれば必ず失敗する。自己暗示のようなもので、未来を恐れれば良くない未来が訪れる。「我々は一人だ。」アメリカが敵から日本を守るために米軍を送ることなどない。そういう確実な枠組みの中に、予測不能なことを置いて進めばよい。

参考:
BATHとは中国版GAFA
中国「BATH」は「GAFA」の模倣にあらず
EUのGDPR、「GAFA」に対抗 一般データ保護規則(GDPR)
 「EU市民のデータは米国企業のものではなく個人のもの」
「GAFAやめました」若者が離れ始めた根本理由
 米中の大手IT(情報技術)企業を略してGAFA(アルファベット傘下のグーグル、アマゾン・ドット・コム、フェイスブック、アップル)とBATH(百度=バイドゥ、アリババ集団、騰訊控股=テンセント、華為技術=ファーウェイ)という。

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 20世紀は競争が戦争を生み、戦争が科学を発達させた時代であった。しかし、今に至っても人間を大切にする普遍の枠組みすら作らない人類は、コロナウイルスによって大混乱に陥っている。
 国民を大切にしない安倍首相は、予測できない未来のために国を守ると称してアメリカよりF35戦闘機を購入し、防衛費を増大させて、世界の目標であるべき「戦争放棄」の憲法を変えようとしている。軍隊は仮想敵国に対しては殺人・破壊の脅威となる。そんな愚かな行為よりも、世界緊急救助隊として世界に喜ばれ、敬意をもって見られる組織にすべきだ。
 コロナウイルス対策についても、医療施設、医療機械の充実、PCR検査、抗体検査の拡大等、科学的に必要とされる枠組みを早期に充実させ、経済活動の停滞に対しては、早急に中小企業・個人事業を対象とした支援費の無償給与すべきだ。1人当たり10万円給与のバラマキ政治をするなら、大学生以下の若い世代に奨学金を供給すべきだ。学問はエリートのためにあるのではない。全ての人が知的生活を送れるように、社会的流動性を高めるために大学まで義務教育とし、経費は国が保障すべきだ。
 参考:藤井 聡「『医療崩壊』と『社会崩壊』を同時に導こうとしている『政府』」 2020.5.3
 突出する軍事費 : 安倍内閣、8年連続で記録的な金額に上る防衛予算案を承認
 日本の防衛費推移をグラフ化してみる(最新) 2020.5.4


 なお、安倍晋三首相は4日の記者会見で、新型コロナウイルスの候補薬である抗インフルエンザ薬「アビガン」について、「月内の薬事承認を目指したい」と表明した。会見で首相は、アビガンに関し「70万人分の備蓄がある。さらに200万人分まで生産を進めていただくようお願いをしている」と述べ、供給態勢を拡充させる意向を強調した。米国で開発された抗ウイルス薬「レムデシビル」とともに手続きを急ぎ、治療に役立てたい考え(米政府、新型ウイルスにエボラ治療薬レムデシビルの緊急使用を許可)だが、日本で生産され、中国などで効果が認められている「アビガン」を何故早く利用しなかったのか?「アビガン」承認という容易な対策さえも、政府の政策に科学的根拠と決断が認められない。

 ここに戦争と科学の関係の裏にある、政府の政策決定について示した貴重な映像を紹介したい。

 NHK 映像の世紀プレミアム
 第2集「戦争 科学者たちの罪と勇気」(動画)
 ケネディ暗殺 40年目の真実
 NHKがばらしたケネディ暗殺の真相!等 1:59:00~2:07:46

 なお、NHK番組の「未解決事件 JFK暗殺」は貴重な情報だが、前・後編の2本は長いので、再放送を下記のようにお知らせしておいた。
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 是非、再放送をご覧ください!

 本日、5月3日 15時30分~17時45分 未解決事件 JFK暗殺
平和を求めたケネディー大統領が暗殺された。
これは個人の犯罪ではない。
トランプ大統領は事件を捜査した機密文書の公開を撤廃。
国の名のもとに起こされる戦争! その裏側を教えてくれる。

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 ケネディ暗殺は一人の犯行ではなく、政府と密接な関係にあるCIAが絡んでいる。アメリカが国家機密としている機密の一部をNHKは明らかにした。政府機関が大統領暗殺に関与し、しかも事実は国家機密とされ未だに明らかにされていない。外交と戦争に関する国に闇の部分があることを知るべきだ。 

「欲望の資本主義2020スピンオフ」
①「スティグリッツ大いに語る」
②「ジャック・アタリ大いに語る」
③「ニーアル・ファーガソン大いに語る」


初稿 2020.5.5 将来世代の幸福を祈りつつ! 更新 2020.5.7

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