稲村亭日乗

京都の渓流を中心にルアーでトラウトを釣り歩いています

映画「キューポラのある街」 今なお・・・

2019年12月02日 | 日々
 BSで「キューポラのある街」(1962年)。

 確か中学時代だったか、原作を読んだ記憶がある。

 埼玉の鋳物工場が立ち並ぶ川口市を舞台にした家族の物語だ。

 一家の娘、主人公のジュン(吉永小百合)の家族は
頑固な鋳物職人の父のもと、貧しく子だくさん。

 父は解雇の憂き目にあうが、
労働組合からの支援にはそれを拒むという職人気質。

     

 父の解雇のあと、生活はますます苦しく、母は家計のため酌婦となり、
ジュンは高校進学さえ迷ってしまうというありさま。

 それでも非行、堕落などへの誘惑、
それらを乗り越えながらジュンや弟たちが前向きに歩んでいく。

 一方、この作品で貫かれているもうひとつの柱は、
ジュンたちと在日朝鮮人との交わりだ。

 おそらく貧しさが両者にその接点を自然に生み出したのだろう。

 友人の北朝鮮への帰還。

 見送りのシーンは、あの時代のことでもあり、
希望をもって描かれているといってよい。

     
     ( 駅前での見送り風景 )

 そう思えば、労働組合の役割について触れたシーンなど、
この作品は行く先の体制変革を志向しているのでは?という予感さえする。

 が、今となっては北朝鮮への帰国運動も社会主義も、その後の時代の歩みは
それらをすべて色あせさせてしまったというのが現実だ。

 ただそのこととは別に、この作品を貫く、貧しくはあっても
自分の夢を懸命に追い求める生き方への称賛、その輝きは今もって失われていない。

     

 映画のなかで合唱される「悲しいときには見つめてみよう・・・」
の歌はなつかしく、またジュンたちの心をよく表している。

 秀作だ。
コメント
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