杉さんとの出会い
ずいぶん前のことだ。
バス釣りを始めて、ぼくもだんだん釣れるようになってきた頃。
ある日、漁港で釣りまくっている人を見かけた。
ミノーで釣っているようだ。
それを見てぼくもミノーで釣り始めた。
釣れる。
けれども、その人には遠く及ばない。
何が違うのだろう?と思ったがよくわからない。
尋ねてみようか?と迷ったが切り出せず、そのままになった。
ところが、その後再びその人に遭遇。
相変わらずミノーでたくさん釣っている。
ぼくは意を決してお願いした。
「よく釣れますね、どうやって釣っておられるんですか? 教えてください」と。
氏はこころよく話してくれた。
ミノーの動かし方の緩急、一時停止、
各ミノーの個性の把握と使い分け・・・話は多岐にわたった。
ぼくは「はあー、なるほど、なるほど」と感心するばかり。
このときに受けた教えは、その後のぼくの釣りに大きく影響した。
が、このとき同時にぼくは思った。
ルアーの技というものは、我流のままでは気づけないことがいっぱいある。
また、人を真似るだけではその勘所がなかなか会得しにくい。
そこで、気恥ずかしさやプライド、そんなものは捨て去って、
正面から「教えてください」とお願いすることが大切ではないかと。
以後、ぼくは釣り場でよく釣っている人を見つけると、
できるかぎり教えを乞うことに決めた。
このときミノーを教えてくれた人は「杉さん」といい、以後仲良しとなった。
さらにトップ・ウォーターで
ある年の5月の連休、ぼくはバス釣りに出かけた。
小さな漁港に着くと、人、人、人。
竿を出す場所もないほどの混雑ぶり。
「これはダメかもしれない」と思いつつ、ぼくも割り込み。
が、案の定、まったく反応がない。
ねばっていると、そこにあの杉さんが現れた。
ぼくに「どうですか?」と尋ねる。
「はあ、さっぱりです、なにしろこのとおり釣り人がいっぱいで。
誰も釣れていません、ひとつやってみてください」と答えた。
「はい、やってみますワ」
けれども、ぼくは内心、いくら達人の杉さんでもこの状況では?とあきらめ気味だった。
ところが、ほどなく杉さんの「ヨッシャア、のった」という声。
こうしてバスが杉さんの手元に。
「ホンマかいな?」とぼくにはおどろきだった。
さらに杉さんは、すぐに二匹目!
たちまち人だかり。
ぼくはここでも杉さんに「教えてください、どんなルアーを?」と尋ねた。
それはトップ・ウォーターで「レッドペッパー」というルアーだった。
御存じの方も多いと思うが、一般的なトップが水面に平行に浮かぶのに対し、
それは垂直に浮かぶ型で、当時のぼくには初めて目にするものだった。
さらに、どんな風に使えばいいのか?尋ねた。
杉さんは「バスのいそうなところに投げ、着水後にチョコンと引きます。
ただし、着水後、少し待つこと、そうしなければ・・・」と縷々説明。
そのほか、細かなことをいろいろ教えてもらった。
ぼくはそのルアーを早速買い求め、後日同じ場所で試してみた。
遠くへ第一投。
着水のしぶきが上がる。
息をこらしてしばし待つ。
チョコン。
その瞬間、水面が盛り上がり、ルアーが白い水しぶきに包まれた。
ぼくは思い切り合わせ、リールを巻いた。
竿先から重みが伝わってくる!
うれしいレッドペッパーでの初モノだった。
このとき、教えを乞うことの大切さを改めて実感した次第だ。
日々名言を胸に
作家の吉川英治さんだったか、
「会う人、出会うもの、みなわが師」と言われたそうだ。
ぼくは釣りを通じてそれを名言だと受け止めてきた。
バス釣りでぼくに技を教えてくれた多くの人。
バス釣りをやめてからは会わなくなってしまったけれど、みんないい歳になったろう。
ありがとう。みんな元気で!
ずいぶん前のことだ。
バス釣りを始めて、ぼくもだんだん釣れるようになってきた頃。
ある日、漁港で釣りまくっている人を見かけた。
ミノーで釣っているようだ。
それを見てぼくもミノーで釣り始めた。
釣れる。
けれども、その人には遠く及ばない。
何が違うのだろう?と思ったがよくわからない。
尋ねてみようか?と迷ったが切り出せず、そのままになった。
ところが、その後再びその人に遭遇。
相変わらずミノーでたくさん釣っている。
ぼくは意を決してお願いした。
「よく釣れますね、どうやって釣っておられるんですか? 教えてください」と。
氏はこころよく話してくれた。
ミノーの動かし方の緩急、一時停止、
各ミノーの個性の把握と使い分け・・・話は多岐にわたった。
ぼくは「はあー、なるほど、なるほど」と感心するばかり。
このときに受けた教えは、その後のぼくの釣りに大きく影響した。
が、このとき同時にぼくは思った。
ルアーの技というものは、我流のままでは気づけないことがいっぱいある。
また、人を真似るだけではその勘所がなかなか会得しにくい。
そこで、気恥ずかしさやプライド、そんなものは捨て去って、
正面から「教えてください」とお願いすることが大切ではないかと。
以後、ぼくは釣り場でよく釣っている人を見つけると、
できるかぎり教えを乞うことに決めた。
このときミノーを教えてくれた人は「杉さん」といい、以後仲良しとなった。
さらにトップ・ウォーターで
ある年の5月の連休、ぼくはバス釣りに出かけた。
小さな漁港に着くと、人、人、人。
竿を出す場所もないほどの混雑ぶり。
「これはダメかもしれない」と思いつつ、ぼくも割り込み。
が、案の定、まったく反応がない。
ねばっていると、そこにあの杉さんが現れた。
ぼくに「どうですか?」と尋ねる。
「はあ、さっぱりです、なにしろこのとおり釣り人がいっぱいで。
誰も釣れていません、ひとつやってみてください」と答えた。
「はい、やってみますワ」
けれども、ぼくは内心、いくら達人の杉さんでもこの状況では?とあきらめ気味だった。
ところが、ほどなく杉さんの「ヨッシャア、のった」という声。
こうしてバスが杉さんの手元に。
「ホンマかいな?」とぼくにはおどろきだった。
さらに杉さんは、すぐに二匹目!
たちまち人だかり。
ぼくはここでも杉さんに「教えてください、どんなルアーを?」と尋ねた。
それはトップ・ウォーターで「レッドペッパー」というルアーだった。
御存じの方も多いと思うが、一般的なトップが水面に平行に浮かぶのに対し、
それは垂直に浮かぶ型で、当時のぼくには初めて目にするものだった。
さらに、どんな風に使えばいいのか?尋ねた。
杉さんは「バスのいそうなところに投げ、着水後にチョコンと引きます。
ただし、着水後、少し待つこと、そうしなければ・・・」と縷々説明。
そのほか、細かなことをいろいろ教えてもらった。
ぼくはそのルアーを早速買い求め、後日同じ場所で試してみた。
遠くへ第一投。
着水のしぶきが上がる。
息をこらしてしばし待つ。
チョコン。
その瞬間、水面が盛り上がり、ルアーが白い水しぶきに包まれた。
ぼくは思い切り合わせ、リールを巻いた。
竿先から重みが伝わってくる!
うれしいレッドペッパーでの初モノだった。
このとき、教えを乞うことの大切さを改めて実感した次第だ。
日々名言を胸に
作家の吉川英治さんだったか、
「会う人、出会うもの、みなわが師」と言われたそうだ。
ぼくは釣りを通じてそれを名言だと受け止めてきた。
バス釣りでぼくに技を教えてくれた多くの人。
バス釣りをやめてからは会わなくなってしまったけれど、みんないい歳になったろう。
ありがとう。みんな元気で!