京都 百万遍知恩寺で古本まつり。
天気もいいので出かけてみた。
いまどき古本人気はどうなのだろう?
と思ったが、会場は結構な人出。
年配者が多いのではと想像したが、若いカップルなど年齢層はさまざまだ。
が、あまり読みたくなる本もなく、
買い求めたのは「フロイスの日本覚書」、一冊だけ。
帰りに水口(仮名)さんが営む小さな喫茶店を訪ねた。
もう5年、いやそれ以上立ち寄っていなかった店だ。
水口さんとは仕事で知り合っての長い付き合い。
店に行けばお互いの仕事の話や音楽の話など、はずんだものだった。
さて、店に入ると客は誰もいない。
「いやあ、水口さん、久しぶり。お元気そうで」
「はい、いらっしゃい」
が、水口さん、表情も声もいまひとつ。
コーヒーをたてながら、水口さんがぼくに尋ねてきた。
「あのう・・・お名前は?」
「神田ですよ、〇〇の」
「ああそうでしたか、神田さんでしたか」
「で、どういう関係のおつきあいでしたかいな?」
このときぼくはすっかり忘れられていることに気がついた。
ところで、水口さんは以前、足の関節が痛んで困るとぼくに話していた。
ぼくは早めの受診、必要なら手術をと勧めていた。
ずっと気になっていたので、改めてそのことを尋ねると
「手術は済みました。今は痛くもかゆくもありません」
「それはよかった、ところで水口さん、
手術されたのは両足ですか、それとも片足ですか?」
水口さん、しばらく考えて
「さあ、どっちやったか、もう忘れました」
このときぼくには事情がのみこめた。
コーヒーを飲み終え、店を辞した。
水口さんは、ぼくがかつていつもワクワクしながら
訪ねていったあの人ではもうなくなっていたのだ。
なにかやりきれない気持ちだった。
天気もいいので出かけてみた。
いまどき古本人気はどうなのだろう?
と思ったが、会場は結構な人出。
年配者が多いのではと想像したが、若いカップルなど年齢層はさまざまだ。
が、あまり読みたくなる本もなく、
買い求めたのは「フロイスの日本覚書」、一冊だけ。
帰りに水口(仮名)さんが営む小さな喫茶店を訪ねた。
もう5年、いやそれ以上立ち寄っていなかった店だ。
水口さんとは仕事で知り合っての長い付き合い。
店に行けばお互いの仕事の話や音楽の話など、はずんだものだった。
さて、店に入ると客は誰もいない。
「いやあ、水口さん、久しぶり。お元気そうで」
「はい、いらっしゃい」
が、水口さん、表情も声もいまひとつ。
コーヒーをたてながら、水口さんがぼくに尋ねてきた。
「あのう・・・お名前は?」
「神田ですよ、〇〇の」
「ああそうでしたか、神田さんでしたか」
「で、どういう関係のおつきあいでしたかいな?」
このときぼくはすっかり忘れられていることに気がついた。
ところで、水口さんは以前、足の関節が痛んで困るとぼくに話していた。
ぼくは早めの受診、必要なら手術をと勧めていた。
ずっと気になっていたので、改めてそのことを尋ねると
「手術は済みました。今は痛くもかゆくもありません」
「それはよかった、ところで水口さん、
手術されたのは両足ですか、それとも片足ですか?」
水口さん、しばらく考えて
「さあ、どっちやったか、もう忘れました」
このときぼくには事情がのみこめた。
コーヒーを飲み終え、店を辞した。
水口さんは、ぼくがかつていつもワクワクしながら
訪ねていったあの人ではもうなくなっていたのだ。
なにかやりきれない気持ちだった。