20日(月).昨日,東京文化会館で二期会オペラ,ヴェルディの「ナブッコ」を観ました このオペラはイタリア・パルマ王立劇場との提携公演で,ダブルキャストになっています.この日はナブッコに上江隼人,イズマエーレに松村英行,ザッカーリアにジョン・ハオ,アビガイッレに板波利加,フェネーナに中島郁子,アンナに江口順子,ほかです.演出は指揮者クラウディオ・アバドの子息ダニエレ・アバド,オーケストラはイタリアの若きホープ,アンドレア・バッティストーニ指揮東京フィルです
この公演は3日間のうち最終日です.自席は1階12列25番,前方右サイドの通路側です.会場は後ろ側に空き席が目立ちます.
会場が暗くなり,指揮者アンドレア・バッティストーニの登場です.1987年ヴェローナ生まれで,7歳からチェロを学び,後に作曲と指揮を学んだとのこと.チェロ→指揮者はイタリアの大指揮者アルトゥーロ・トスカニーニと同じコース.「トスカニーニの再来」と呼ばれる所以です 昨年1月からパルマ歌劇場首席客演指揮者を務めています.彼のタクトで序曲が始まります
彼の指揮は,振りが大きくダイナミックです.身体全体を使って全力でヴェルディに対峙します.楽員には分かりやすい指揮なのではないかと思います.若くして落ち着いた指揮をする指揮者もいますが,彼のように若さをぶつけて思い切り指揮する方が観ていて気持ちが良いです この公演でファンが増えたのではないでしょうか
物語はバビロン王ナブッコと2人の娘フェネーナとアビガイッレを主人公とする権力闘争と愛を巡る愛憎劇ですが,何と言っても,このオペラが有名なのは第3部で歌われる「行け,わが想いよ,黄金の翼に乗って」の合唱です イタリアでは第2の国家と言われている愛唱曲です.オーケストラの前奏に導かれてコーラスが舞台中央に集まり,ゆっくり感動的に歌い始めます.聴いていて背筋が寒くなりました.何とすばらしい音楽をヴェルディは書いたのか 終わると満場の拍手です.なかなか鳴り止みません やっと静まると,真っ暗だった会場にうっすらと照明がともり,コーラスが舞台いっぱいに広がって,バッティストーニの指揮で再び前奏が始まりました.そして「行け,わが想いよ,黄金の翼に乗って」が再度歌われました.これはダニエル・アバドの演出によるものでしょう.粋な演出です
ナブッコ役の上江隼人は第1場あたりでは声量不足を感じましたが,後半に行くにしたがって調子が出てきました.最も声が通って存在感があったのはアビガイッレ役の板波利加です.堂々たるドラマチック・ソプラノを聴かせてくれました.
この日の公演で一番光っていたのは指揮者アンドレア・バッティストーニです.聴衆の拍手の大きさが人気のバロメーターになりますが,あきらかに歌手陣を食っていました.なかなかの好青年だと思います.是非,別のオペラを聴いてみたいと思います
この公演で一つ注文を付けるとすれば,男性コーラスの衣装です.黒のスーツに格子の入ったベージュのショールを肩にかけていましたが,カーテンか毛布を肩にかけているような感じを受けました 問題は”予算”かな・・・と思いますが,むしろショールはハショルが良かったかも知れません
ナブッコは初めて観るオペラでしたが,”ニュー・ヒーロー”コンダクターのお陰で十分楽しむことができました