12日(日).昨日は午前10時から新宿ピカデリーでMETライブビューイング「エンチャンテッド・アイランド」(上演時間3時間44分)を観て,一旦家に帰ってから,夕方渋谷に出かけました(※この報告は後日あらためて) 午後5時半ごろ渋谷駅に着いたのですが,駅前の交差点は人だらけ.しかも10代,20代の若者だらけ.ボサッとしていると信号が赤になってしまいます 対向面からも人が押し寄せてくるのでなかなか前に進みません.「良い子は早く家に帰って寝ましょう!」と心の中で叫びました 声に出すと,いきなり包丁で刺されたりしますので 恐い世の中になりましたね.
午後6時からNHKホールでNHK交響楽団第1721回定期演奏会を聴きました 指揮は1965年パリ生まれのベルトラン・ド・ビリー.N響とは初共演とのことです プログラムは①ドビュッシー「牧神の午後への前奏曲」,②プロコフィエフ「ヴァイオリン協奏曲第1番」,③シューベルト「交響曲第8番”ザ・グレート”」の3曲です.これはプロコフィエフのヴァイオリン協奏曲が聴きたい一心でチケットを買いました
自席は1階C11列33番,後方のセンターやや右の通路側です.NHKらしく,舞台左袖にテレビカメラがスタンバイしています いずれNHKで放送するのでしょう.オーケストラのメンバーが登場します.弦楽器だけを見てみると70人強のメンバーのうち女性は11人だけ.在京のオーケストラの弦楽器は女性の比率が高いのですが,N響と読響はまだまだ女性が少ないようです
コンマスの堀正文が登場します.・・・・・ 誰も拍手で迎えません.他のオケなら「コンマス登場で拍手」,これ常識です.しかし,N響は違うようです.N響の定期会員は冷たくない
指揮者ビリーが登場し,1曲目の「牧神の午後への前奏曲」がフルートの”夢を見ているような”旋律で奏でられます 今年生誕150年を迎えるドビュッシーの世界に入っていきます.まずは小手調べ
ヴァイオリンのソリスト=イザベル・ファウストが,黒を基調とした衣装に赤,黄,グレーのパッチワーク模様の半纏のようなコスチュームを羽織って登場します ビリーのタクトのもと,ファウストは大きく動くことなく,最小限の動きでプロコフィエフを奏でます どちらかといえば,”動”よりも”静”といった印象を受けます.彼女の使用するヴァイオリンは,その名も「スリーピング・ビューティー」(1704年製ストラディヴァリウス)とのこと.なるほどです ”静”とはいえ,決めるべきところはしっかり決めます (後でファウストはアンコールにバッハを演奏しましたが,これも見事に”静”でした).
演奏後,待ってました,とばかりに1階左サイド後方席で複数の拍手が起こりました 誰も追随しないので一旦止め,他の人が拍手したのを見て再度拍手をしていました どうもN響の客はせっかちな人が多いようです.
休憩時間に,眠気覚ましを兼ねてロビーでホット・コーヒーを飲みましたが,紙コップのコーヒーが何と400円です絶対高い そんな商売していると客足が遠のくぞ 2度と飲むもんか ほら,ひとり客が減った
指揮者ビリーの本領が発揮されたのは休憩後のシューベルト「交響曲第8番”ザ・グレート”」でした パリ生まれの彼の指揮はひと言でいえば”華麗”です とくに左手の動きが雄弁です.これは女性で言えば,トスカニーニ国際指揮者コンクールの準優勝者・三ツ橋敬子が最も近いスタイルだと思います もっともビリーの方が指揮の大先輩ですから,三ツ橋がビリーにスタイルが似ていると言うべきかも知れません.また,彼独自の特徴としては両手で円を描くような指揮ぶりです
ビリーの音楽の作り方をひと言でいえば「筋肉質の引き締まった演奏」とでも言えるでしょう並みの指揮者がシューベルトを演奏すると,同じメロディーが繰り返されるので,ダレてしまうのですが,ビリーはそういうことはありません.引き締まった演奏で緊張感が持続します
N響はほぼ1年ぶりに聴きましたが,客層が若干若返ったように感じました.かつては,ロビーに出ると「ここは老人ホームか」と思うほど高齢者ばかりでしたが,この日は年齢を問わず様々な人がたむろしていました.いいことです
最後に最近のN響定期会員の傾向をまとめてみたいと思います.
1.コンサートマスターが登場しても拍手で迎えない
2.演奏後の拍手のタイミングが早すぎる人が目立つ
3.会員の平均年齢が若返ったようだ
定期会員になろうとは思いませんが,機会があったらまたN響を聴いてみたいと思います