人生の目的は音楽だ!toraのブログ

クラシック・コンサートを聴いた感想、映画を観た感想、お薦め本等について毎日、その翌日朝に書き綴っています。

シェーンベルクの交響詩「ペレアスとメリザンド」を聴く~東京交響楽団第597回定期演奏会

2012年02月26日 07時04分35秒 | 日記

26日(日)。昨夕、サントリーホールで東京交響楽団第597回定期演奏会を聴いてきましたプログラムは①モーツアルト「ヴァイオリン協奏曲第5番K.219」、②シェーンベルクの交響詩「ペレアスとメリザンド」です。指揮は常任指揮者ユベール・スダ―ン、独奏は韓国の女性ヴァイオリニスト、パク・へユンです

当初、1曲目のモーツアルトのヴァイオリン協奏曲は「第3番」と発表されていたのですが、東響からハガキが届き「ソリストの強い希望により第5番に変更することになった」とのことです。歓迎です

パク・へユンは1992年ソウル生まれ。2009年第58回ミュンヘン国際音楽コンクールで史上最年少で優勝した実力派です

スダーンはタクトを使わず、両手で指揮をします スダーンの合図でモーツアルトの「ヴァイオリン協奏曲第5番K.219”トルコ風”」の第1楽章が始まります。スダーンがモーツアルトを演奏するテンポはいつも最適です ザルツブルク・モーツアルテウム管弦楽団の音楽監督を務めていたことと無縁ではないでしょう

パク・へユンはオレンジがかった赤いドレスで登場 以前見たときより痩せた印象を受けましたが、気のせいかもしれません モーツアルトはヴァイオリン協奏曲を5曲書きましたが、第1番は1773年、第2番~第5番は1775年に、いずれも故郷のザルツブルクで集中的に作曲しました ピアノ協奏曲を生涯にわたって万遍なく作曲したのと対照的です。第5番が「トルコ風」と呼ばれるのは、第3楽章の中間部に現われるトルコ行進曲風の音楽によります

パクは、流れるようなテンポでモーツアルトの旋律を奏で、アレグロに突入します。その変容が鮮やかです 彼女の素晴らしさが表出したのは第2楽章「アダージョ」でしょう。スダーンのバックに支えられながら、ゆったりと丁寧に音楽を奏でます そして、第3楽章「ロンド」では歌うような旋律を優雅に奏で、フィナーレを迎えます

アンコールに、バッハの無伴奏ヴァイオリン・ソナタ第3番から「ラルゴ」を繊細な弓使いによって演奏しました

さて、休憩後にはオーケストラが一気に100人規模に拡大して舞台が狭く見えます びっくりするのはホルンが9人もいるのです。これ程の規模のオーケストラが本当に必要なのか 疑問に思います。シェーンベルクの交響詩「ペレアスとメリザンド」の演奏が始まります。

「ペレアスとメリザンド」は、ベルギーの作家モーリス・メーテルランクの戯曲に基づいて作曲されました この作品を基にフォーレが1901年に、ドビュッシーが1902年に、シベリウスが1905年に作曲しました。シェーンベルクは1903年です。彼はR.シュトラウスに勧められて「ペレアスとメリザンド」を題材にオペラを書こうとしましたが、ドビュッシーがすでに同名のオペラを書いて成功していたことから、交響詩にしたようです シェーンベルクがこの曲を作曲した1903年というのは、R.シュトラウスが「サロメ」を作曲、マーラーが第6交響曲に着手したころに当たります

この曲は単一楽章ですが、全体は第1部から第4部までの4つの部分からなっています。とは言うものの切れ目なく演奏されるので、プログラムの解説を予め読んでいても、いったいどの部を演奏しているのか、よくわかりません 気が付いたらフィナーレを迎えていました。

全体的な曲想は、R.シュトラウスのようなところもあり、ワーグナーのようなところもありで、一言でいえば、これまで聴いてきたシェーンベルクの曲の中で、最もシェーンベルクらしくない音楽でした。無調音楽でないところが一番の救いでした

東京交響楽団のシェーンベルクには定評があります。それは聴いていてよく分かります しかし、私にとっては、それ以前に、シェーンベルクの音楽そのものが身近に感じることができないのです 今回の「ペレアスとメリザンド」はまだメロディーがあり、理解しやすかったのですが、無調音楽になると、もうお手あげです

ブラボーと拍手が続く中、4回目のカーテンコールで席を立ちましたが、会場入り口の掲示板の「本日のアンコール曲」に、パク・へユンのバッハとともに、オーケストラのアンコール曲としてシェーンベルクの「ノットゥルの~ハープと弦楽のための」が書かれていました。そういえばコンマスの譜面台に小さな楽譜が重ねられていたな、と思い出しました  聴きそこなったわけですが、シェーンベルクだからいいか、と自分に言い聞かせて会場を後にしました

 

                

   (プログラムの表紙はシェーンベルクが描いた「Gertrud  Sshoenberg」)

 

  閑話休題  

 

「ペレアスとメリザンド」といえばドビュッシーのオペラ「ペレアスとメリザンド」に思い出があります もうン十年も前のことです。小学~中学時代の同級生にY君がいて、彼には2つ年上の姉Mさんがいました。埼玉県の女子高では進学校と言われたK女子高を出て、現役でM音楽大学に合格し、声楽を専攻した才女でした 卒業後は藤原歌劇団に入りソプラノの研さんを積みました そのころ私は社会人に成りたてのころで、クラシック音楽を聴き始めてからまだ数年しか経っていない時期でした

その頃のことです。藤原歌劇団だったか、二期会だったか忘れましたが、ドビュッシーの「ペレアスとメリザンド」を上演するので一緒に観に行きませんか、とMさんから誘われたのです 2人で東京文化会館に観に行きましたが、なにしろオペラなんてろくに観たこともないので、ただ、話し言葉で歌われるような美しいメロディーに耳を傾けているだけでした 帰り道、お互いに感想を言い合ったのだと思いますが、何を話したのかまったく覚えていません。一つ覚えているのは彼女に「結婚についてどう思いますか?」と聞かれたことです。その当時は年上の女性にはちょっと抵抗があったので「まだ、とても考えられない」とでも答えたに違いありません

その後、何度か彼女が合唱で出演する藤原歌劇団のオペラ公演やジョイント・リサイタルなどに誘われて聴きに行きました それから数年後、1通の招待状が届きました。「結婚することになりました」とありました。宗教曲を歌うサークルで知り合った人と結婚することになったというお知らせでした。結婚式に招待されたので出席しましたが、音楽で知り合った者同士、とても幸せそうで、本当に良かったと思いました。今ごろどうしているでしょうか・・・・・ドビュッシーのオペラ「ペレアスとメリザンド」の文字に接するたびにMさんのことを思い出します

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