トンネルの向こう側

暗いトンネルを彷徨い続けた結婚生活に終止符を打って8年。自由人兄ちゃんと天真爛漫あーちゃんとの暮らしを綴る日記

怒りの問題 2

2006-08-06 13:34:23 | 共依存症
息子が3才を過ぎた頃
いつもの様に夫のお弁当を作っていると夫が横でガサガサとゴミを集め始めた

いつもはゴミの日や廃品回収すら見向きもしない夫がせかせかと集めていた
これは夫の合図だった
こういう事を進んでやる時は大抵お金の要求だった

「ゴミ集めたよー」と明るく言う夫
「あー。ありがとね」

「あのさー。この前○○さんの送別会で会費と贈り物のお金請求されちゃって
立て替えたから貰っても良いかな」探るような夫の目つきが嫌だった

「○○さんて誰?」
「違う部署なんだけどさ」
「いつも他の部署の人の送別会でないじゃない」

「今回は特別!結婚式もでて貰ってるんだよー」と甘えるように言う
私の中の女の子がゆっくりと起き上がる

・・・嘘言ってんじゃねーよ!・・・

「ふーん。いくら?」
「送別会で5千円。贈り物で3千円。その後2次会も誘われてるから1万位欲しいんだけど」

「この前ボーナスでてお小遣い多めにあげたじゃない。もうないの?」
夫の顔が見る見る不機嫌そうに歪む
「何だよ!信用してないんだな。じゃあイラねーよ」とゴミを持って
玄関を出ようとする

私の中で凄く動揺する
もし本当に会社の人の送別会だったら・・・
もし此処でお金を渡さなかったらまた借金するかもしれない
他で借りられるなら1万位今渡したほうが良いんじゃないか

夫の軽蔑したような目も痛かった
暗にいつまでも過去に拘っている嫌な女だと語っているような気がした

「分かった。そんなに怒らなくても良いじゃない。先月会社の穴埋めに多めに出したからちょっと生活が辛いんだ・・・」と無理に笑顔で取り繕った

「なんだー。ごめんねー。本当にいいの?大丈夫?」急に機嫌を直して夫が
お金をすばやくお財布にしまった

「ちっこ。疲れてるんじゃないの?今日は昼寝でもしたら?」と猫なで声をだして
私の機嫌を諮るようにキスを求めてきた
いつもそう。自分の嘘がばれたかどうかを試すために要求するのだ

私は黙って受け入れた
心の女の子は

・・・その汚いうそばっかりつく口でキスなんかするな!!気持ち悪いんだよ!
死ね。お前なんか死ねば良いんだ!そんな分かりきった嘘なんかつきやがって
馬鹿にするな!!・・・
ナイフをブンブンと振り回しながら叫んでいた

夫がゴミを持って出て行った
私はしばらくドアを見つめながら女の子の怒りを聞いていた

不意に唇をごしごしと袖で拭いた
一度噴出すと止まらなかった
ゴシゴシ!ゴシゴシ!唇が赤くはれ上がるほど強く拭いた

部屋へ戻ると息子がのんびりと朝ごはんを食べていた
その小さな背中を見て
「なにグズグズ食べてんだよ!!早くしろ!!」と怒鳴った

息子はビクッとして振り返った
自分で言った言葉に驚きながらも止められなかった
慌ててご飯に手を伸ばした息子が味噌汁をこぼした

「だから!良く見なさいって言ってんでしょ!!何やってんのさ!どうすんのさ!!シミになるでしょ!?」
こうなると自分で自分をコントロールできなくなる
あの頃はいつもこうだった

夫の借金はなくなったように見えたけれど請求書が来なくなっただけで
夫が家からいろいろ理由をつけてお金を持ち出す事は変わらなかった

私はお金を渡さないとまた借金されるんじゃないかという恐怖から
嘘と分かっていてもお金を渡した
生活は苦しく、その癖私が暗い顔をしていると夫は財布のお金を投げつけた

いつも息子が泣き出すまで怒るのを止められなかった
息子が泣き出すと嫌悪感でいっぱいになった
「ごめんね。ごめんね」と謝ると息子は目に涙をためながらも
「うん。うん。」と頷いて私の涙を拭いた

心から泣いてなどいなかった
悲しみの感情を息子に押し付けただけだった

息子を抱いて、自分の悲しみに酔い、心の中のギシギシという音に耳を済ませて一日を過ごしていた

私は自分の怒りに責任が取れなかった
夫を責めることで夫がまた借金を繰り返すかもしれないという責任を取るのが恐かったのだ

だから息子に怒りをぶつけた
味噌汁をこぼしたと言う正当な理由をつけて・・・
この怒りは息子が悪い事をしたという事から始まっているから私が許すと言う
行為で責任が取れた

そして息子は私の悲しみを引き受けることで許しを乞うた

八つ当たりというにはあまりに残酷だった
息子に罪の意識を背負わせ私は都合の良い怒りを息子にぶつけ続けたのだった

息子が壊れるその日まで・・・
(つづく)





最新の画像もっと見る

コメントを投稿