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不遇なヤンチュアノサウルス


YouTubeには、Jurassic World Evolution というゲームの、メトリアカントサウルスのCG動画が上がっている。当然ながらほぼシンラプトルであるが、なかなか良いものである。そのコメント欄に、英国の恐竜なので感慨深い、という声があった。なるほどやはり、バリオニクスやメトリアカントサウルスが登場するのは、イギリスの恐竜ファンを意識したものなのだろう。

私は中国人ではないが、なんとなく「シンラプトル科」がアジアで独自に進化した固有のグループだった方が良かった。イギリスのメトリアカントサウルスさえいなければ、「シンラプトル科」のままであった。もちろん古生物地理学上、メトリアカントサウルス類が広くユーラシアに分布していたことは意義のある発見である。
 メトリアカントサウルスは断片的な化石であるが、歴史的に早く記載された方が優先権がある。それはわかる。アベリサウルスよりもカルノタウルスの方が完全であるが、アベリサウルス科になったわけである。

しかし、それならばシンラプトル科の樹立の時点で、なぜ「ヤンチュアノサウルス科」にならなかったのだろうか。ヤンチュアノサウルスは1978年と1983年で、シンラプトルの1993(1994) 年よりも先に記載されている。そして、Currie and Zhao は最初からシンラプトル科にヤンチュアノサウルスが含まれるといっている。それなら普通は、「ヤンチュアノサウルス科」になるはずである。
 確かにCurrie and Zhaoのシンラプトルの詳細な記載は、この時代の恐竜研究の1つの金字塔のような仕事のようだ。それに比べるとヤンチュアノサウルスの記載は、他の種類との比較が不十分で、標徴形質も不完全なものかもしれない。当時としても正式な記載とはみなされなかったのだろうか?しかし1978年は短報であるが、1983年は正式な記載論文の形をとって出版されているように見える。個々の骨について、簡潔かもしれないが一応は記載している。なぜこれが無視されなければならなかったのか。欧米の研究者には読めない中国語の論文だったからか?

ともあれシンラプトルやヤンチュアノサウルスなどはシンラプトル科になり、主として中国の恐竜として長年認識されてきた。それが今度は、断片的なメトリアカントサウルスに科の名称を奪われた形になってしまった。中国の恐竜ファンは残念ではないのだろうか。

これまたどうでもいいことだが、ヤンチュアノサウルスは昔サファリ社のフィギュアとして商品化されたことがある。しかしそのポーズが、なぜかお辞儀をするように頭を下げた「反省」姿勢だった。もっと普通のポーズにすれば売れたのではないだろうか。私は、閉館間近のユネスコ村恐竜探検館に行った時、このヤンチュアノサウルスが大量に在庫処分されていたのを見て、心を痛めたことがある。
 博物館や恐竜展のショップで販売されているカロラータのジュラ紀恐竜セットでも、どうもアロサウルスが主役で、ヤンチュアノサウルスは力が入っていないような気がする。何かと不遇な恐竜ではないか。
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