tetujin's blog

映画の「ネタバレの場合があります。健康のため、読み過ぎにご注意ください。」

ホテルビーナス

2007-12-16 18:54:19 | cinema

KOKIAが歌うDESPERADOは何度聴いても飽きることがなく、ロードショーの劇場では誰一人席を立つことなく聴きいっていたのを覚えている。帰宅して、さっそく、サントラCDをネット経由で注文したっけ。加羽沢美濃のピアノを中心に心地よい音楽が詰まっていて、しっとりとしたジャズピアノアルバムのようだった。なかでも、ピアノの弾き語りによる「夜空ノムコウ」。これが心にしみた。通勤の時はモバイルプレーヤーでいつもこのサントラ盤の曲を聞いていた。

感じるままにビートを刻むタップダンス。恋人を亡くし生きる気力を失って3年前にホテルに来て以来、カフェのウエイター兼ホテルの世話係をしている“チョナン"が時おり見せる。リズムタップは、アフリカからアメリカに連れてこられた黒人が奴隷船の甲板で足を踏みならしたことがルーツといわれる。
無口な少女・サイとチョナンが誰もいないホテルの屋上で洗濯物を干しているときに、踏み台からトンと降りたサイに、チョナンがタタンとタップで返す。映画の随所で、シーンが変るのにあわせてstep - slide- heel - heelとかのタップ音が聞こえる。その音が、 チョナンの奥底に隠れていた激情を伝える。言葉よりももっと伝わる何かがタップダンスの音にはある。生きているからこそのビート。グルーヴした音が心をゆさぶる。

生きる意味を見失い宙ぶらりんのまま生きている。しかし、どうせ、いろいろあるのなら、前を向いて走り出すしかない。
生きる意味を見失ったのなら、また自分の力で探すしかない。
とある最果ての街に、「カフェ・ビーナス」という名前の店。メニューは「ビーナス・ブレンド」のコーヒーだけ。
過去を背負って、その過去から逃げて来た人間ばかりが集まる。誰もがお互いに踏み込まれたくない闇を心に抱きながら、でもしっかりお互いを心に留めて暮らしていく。こんなカフェのあるホテルの住人になってみたい。この映画は、いつまでもぼくの放浪癖をくすぐり続けている。


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