tetujin's blog

映画の「ネタバレの場合があります。健康のため、読み過ぎにご注意ください。」

あの子を探して(一个都不能少)

2006-10-19 20:07:54 | cinema

中国では、教育重視の政策が行われているにも拘らず、年間1千万人の子供が貧しさから退学し、都会への出稼ぎで一日「2元」の収入を得て病弱な寡婦の母親を助けるような現実があるとこの映画は言う。コーラの値段が3元と言うから、小学校低学年の子供が一日働いてジュース代にもならない。

今でこそ、経済大国として大きな顔をしている日本であるが、実はその昔、高度成長時代に差し掛かる初期の頃はこの映画と似たような状況だった。三種の神器とされた冷蔵庫、電気洗濯機、電気真空掃除機があこがれの文化生活の象徴であったのは、つい一世代、50年前のことである。茶の間にはラジオが鎮座していた時代。テレビが無かった時代は、典型的なスローライフであり、人と人とのふれあいが生活の中心にあった時代と言える。

主人公の少女ミンジは、お決まりの質素な中国服のいでたちで、荷物は肩に担いだふろしきが一個くらいのもの。ほっぺたは赤く、目は一重で口をとんがらせて、いつもふてくされたような顔で、お世辞にもキレイとは言えない。彼女がぶすっとしているのは、代用教員を1ヶ月間頼まれ、幼い子供から自分と大して変わらない年齢の子供まで、総勢28人もの子供たちの先生にならなければならないからである。家庭の事情で都会へ出稼ぎに行く生徒がいる中、生徒の数が1人でも減らなければボーナスが出ると言う。彼女の表情は、子供たちを前に何をすればいいのか途方に暮れていたのか、あるいは、生活の苦しさがもたらすのかもしれない。

そんな彼女が、日々生徒と触れ合って、いなくなった生徒を探しに行った街で苦難の数々に出会ったりしていくうちに、成長していき別人のように優しくなってくる。そしてとどめはテレビカメラの前で流す涙。自分も街で一文無しの上に、3日も探し続けて苦労をすることによって、迷子のホエクーの気持ちを推し量ることができるようになり、彼のことを本気で心配して涙を流す。ミンジはこの時たまらなく「きれい」に見える。この物語は、世間知らずの幼い教師の成長の物語であり、その教師が自らの成長の中で生意気な生徒と心を結びつけていく物語である。

フィナーレで、ホエクーは皆にとって大事な大事なチョークで「魏老師」と書く。
彼なりの恩返しのつもり。ミンジは色とりどりの文字で埋まっていく黒板を優しい目で見守っている。

ちなみに英語のタイトルは "not one less"。 一人も減ってないぞって意味です。・・・こうしてこの映画の細部を思い出だすと、涙がまたこみ上げてくる。

                         

♪東京のまちはオリンピックひかえ
まるで絵のように時が過ぎた
私は9つ 覚えているのは
まだ 未来が霧の中♪ by ユーミン


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