彦四郎の中国生活

中国滞在記

天空の城六選―竹田・越前大野・備中松山・津和野・赤木・郡上八幡―竹田城址は日本のマチュピチュ

2020-08-28 04:15:04 | 滞在記

 『天空の城を行く―これだけは見ておきたい日本の山城50』(平凡社新書)2015年 著者:小和田泰経 という新書本を最近買って読んでみた。私も山城(やまじろ)を中心に これまでに少なくとも500以上の城には行ってはいるかと思う。この本の50の山城のうち37の山城には行っているので、なかなか厳選された50の山城だなあと感心した。

 この本の序文(はじめに)の一節に次のような文章がある。「山間にある城で、天然の堀となっている川が流れていれば、気象条件によっては、雲海が発生することになる。平城(ひらじろ)が天空の城になることはあり得ないが、平山城(ひらやまじろ)・山城であれば天空の城になりうる。竹田城に勝るとも劣らない天空の城は数多い。福井県の越前大野城、岡山県の備中高松城、島根県の津和野城などは、雲海に浮かぶ幻想的な光景を見ることができる。雲海が発生しなくても、麓から仰ぎ見る姿に圧倒される城もある。本書では、そんな天空の城50城を選んで紹介したい。」と書かれている。

 さまざまなインターネット記事や書籍などを読んだり、実際に行ってみて、私が今のところ知る限り雲海や川霧によって「天空の城」の光景が見られる山城や平山城は17城である。そんなに多くはないというより、城の石垣や曲輪など、城跡が霧や雲海とともに見られる「天空の城」はとても少ないのである。

 日本に約3万はあると言われる城のほとんどは山城だが、そのほとんどは長い間 人が入ったことがなく樹木に覆われて獣道があるだけのところがほとんどだ。石垣がある山城もそう多くはない。20年以上も人が入っていない山城域に行くと不気味さも感じたりする。鹿や猪やサルにも出会う。近くには天然の堀ともなる川がある場合が多いので、霧や雲海に山城が隠れている山が包まれる城はとても多いだろうが‥‥。

 その中で「雲海・朝霧に包まれたり浮かび上がる天空の城」のベスト六選は、いろいろな山城・平山城ファンなどの意見をもとにしても、これから紹介する城址・城郭。①竹田城(兵庫県朝来市和田山町竹田)、②備中松山城(岡山県高梁市)、③越前大野城(福井県大野市)、④津和野城(島根県津和野町)、⑤赤木城(三重県熊野市紀和町)、⑥郡上八幡城(岐阜県郡上市八幡町)。

 まず一つ目の兵庫県にある竹田城は、この六つのなかでも群を抜いて素晴らしい天空の城だ。10年ほど前の晩秋の11月下旬のある日、前日に気象状況なども調べて雲海が出そうだということで、早起きして午前2時半頃に京都の自宅を車で出発して竹田城に向かったことがあった。高速道路を利用してひたすら走り、午前5時前には雲海に浮かぶ竹田城がよく見える場所に到着したら、たくさんの人がすでにカメラを城址に向けていた。城ブームが日本で始まったころである。その後も含めて、7〜8回は竹田城に行っただろうか。まあ、見事という言葉以外になかなか形容できない城址だ。

 日本のマチュピチュとも言われる山城で、標高は約350m、麓からの比高は約250mある。麓には円山川が流れる。山上の城址には多くの曲輪が配置され、建物数も相当多い、大規模な山城だ。特に晩秋の11月中旬から12月上旬にかけて雲海に浮かぶ石垣の山容が神秘的でもある。まさに「日本のマチュピチュ」という呼び名にも相応しい感のある山城だと思う。

 前号のブログで「丸山千枚田」も「日本のマチュピチュ」とも呼ばれると記した。マチュピチュは「住居・神殿」のエリアと「段々畑」のエリアがあるが、丸山千枚田は「段々畑」(農業区)エリア、竹田城は「住居・神殿」(居住区)エリアがそれぞれ「日本のマチュピチュ」とイメージされるのかと思う。ちなみに「天空都市、空中都市・マチュピチュ」の標高は2280m、麓の村や川からの比高は400mほどもある。谷底の川から発生する朝霧や雲海に包まれることもある世界で最も有名な「天空の都市」「天空の城」だ。

 この竹田城もまた、世界に誇れる「天空の城」とも思える。(※比高が300m以上の山城に登るのはけっこうきつい。400mを超す山城に登ったことも何度もあるが、かなりきつい。マチュピチュは比高400mあり、さらに急こう配の絶壁のような稜線の上にある場所なので、山道を歩いて登るのは当時、相当にきつかったのではないかと思う。) ちなみに、竹田城がつくられた時代とインカ帝国の都市・マチュピチュがつくられた時代はほぼ同じだ。

 二つ目の備中松山城。日本の城郭・現存十二天守閣の一つが残る。麓には備中高梁の城下町があり武家屋敷群などもある。城下には高梁川が流れ、雲海が城下町を包み、山上の本丸天守閣などが雲の上に出現する。本丸の天守閣と雲海が望める光景を見るためには、本丸曲輪からさらに遠く高い所にある奥の曲輪(奥の城)に続く城道(山道)を歩いて登らなければならない。備中松山城の標高は約490m、麓からの比高は約400m。マチュピチュの比高とほぼ同じ。

 三つ目の「越前大野城」。大野の城下町の中にある城山に築かれた平山城だ。大野の町には九頭竜川が流れる。四方を山々に囲まれる盆地全体を覆うように霧や雲海が発生する。盆地の西側にある美濃街道(越前一乗谷に通じる)の峠道の途中に城下町を見下ろす展望がひらけたところから、天守閣のある「天空の越前大野城」を見ることができる。季節はやはり晩秋か。

 城下町の北西方向にある白山山系の冠雪を背景とした天空の城を臨むことができる。越前大野城の標高は約250m。比高は約80mとけっこう低い平山城だ。雲海に浮かぶ島のような光景だ。

 四つ目は、島根県津和野町にある「津和野城」。津和野の町を訪れる観光客はけっこう多いが、この城址に来る人はまれだ。私は昨年の夏に初めて津和野を訪れて城址に行ってみたが、まあ 連続する石垣群と曲輪群がとても素晴らしいの一言につきる山城址だった。城跡から眼下に津和野の城下町が一望できる。周囲を山々に囲まれた細長い城下町を津和野川が流れていて天然の堀となっている。麓の森鴎外の旧宅から城を仰ぎ見ると石垣が見える。

 津和野城址の標高は約370m、比高は約210mとけっこう高い。雲海や霧が城下町全体をすっぽりと覆い、城址が雲の上に見える光景は竹田城の弟のようだ。

   五つ目は岐阜県の郡上八幡にある「郡上八幡城」。郡上八幡の城下町には長良川が流れる。そしてこの川に流れ込む支流も城址の下の谷間を流れる。郡上八幡城の天守閣は、日本では木造で再建されたものとしては最も古い復元天守。(1933年に再建)  霧に浮かび上がる本丸曲輪と天守の光景が近年の「天空の城」ブームで注目を浴びている。山々と雲海の中の天空の城は、郡上八幡から岐阜市に抜ける間道である国道256号線の堀越峠付近から見ることが可能だ。本丸曲輪の標高は約350m、比高は約150m。

  そして六つ目が前々号のブログで書いた三重県熊野市紀和町の「赤木城」。標高約230m。比高は約30mととても低い。

 攻城団という人たちが出しているブログ記事で、「天空の城」という特集記事がある。その文章の一節は「天空の城ブームの火付け役となった竹田城をはじめ、日本全国には雲海に浮かんだ幻想的な光景が見られるお城がたくさんあります。備中松山城は雲海に浮かぶ現存天守として有名ですが、現存天守であり国宝でもある犬山城も条件が揃えば雲海を見ることができます。また霧や雲海は山間部に発生することが多いので、岐阜県には郡上八幡城、岩村城、苗木城、岐阜城と4つの天空の城が存在しています。」

 「季節や気象条件が限られているため年に数回しか発生しない城も多く、なかなか見ることができませんが、何度か訪問してみてください。そして幸運にも雲海に遭遇した際はぜひ写真におさめてシェアしてくださいね。」と書かれていた。

◆「天空の城」17のうち、「天空の城ベスト六選」の他の11城は以下の通り。

🔴黒井城(兵庫県丹波市春日町黒井)標高350m・比高240m   🔴利神城(兵庫県佐用町平福)  標高370m・比高220m、別名は雲突城   🔴岩村城(岐阜県恵那市岩村町)標高720m・比高150m   🔴苗木城(岐阜県中津川市苗木町)標高430m・比高170m   🔴岐阜城(岐阜県岐阜市)標高340m・比高320m   🔴犬山城(愛知県犬山市犬山町)標高80m・比高40m、別名は白帝城   🔴高取城(奈良県高取町)標高580m・比高390m   🔴鬼ノ城(岡山県総社市奥坂)標高400m・比高は―?土塁や石垣などで山の周囲約3kmを囲み、城域は約30haと広大。比高はまちまちだが、最も高いところだと石垣から眼下の麓まで200mほどはある。 🔴霧山城(三重県津市多気町)標高560m・比高240m   🔴月山富田城(島根県安来市広瀬町富田)標高200m・比高160m    🔴岡城(大分県竹田市竹田町)標高330m・比高100m

※「日本三大山城」とはも岩村城・高取城・備中松山城のこと。いずれの城も標高は約500m~約700mのところにある。岩村城は石垣や曲輪が多く配置されている山城で、竹田城と並び「日本のマチュピチュ」とも称される。また、高取城は、高い山の樹海の中に突然に多くの石垣群や曲輪群が連続して出現する。まるで、カンボジアのアンコールワット遺跡群がジャングルの中で、1850年代にたまたまフランス人によって再発見された当時のことを彷彿させる山城だ。突然に城域の石垣が森の中から現れるさまが。

◆上記の「攻城団」の記事への投稿者の投稿より―「攻城団」が指定している16の「天空の城」を訪問すると、丸い缶バッチがもらえるようだ。以下、投稿の一部。

○「天空の城16」はほぼ山城なのですが、天守閣があったり、日本の100名城に選定されている城は道が整備されています。黒井城と利神城はトレッキングできる足元の方が無難です。 ○2017/10/08に利神城登城で16城完了です。利神城は入山禁止なのに完了で良いのかな?  ○最後に赤木城でバッチを獲得することができました。個人的には赤木城はとっても好きなタイプのお城だったので、すごく嬉しいです。 ○越前大野城で完。ただ、このうち、雲海を見たことのあるお城は4つしかありません。雲海込みで16城を制覇できる気がしないです‥‥。


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