彦四郎の中国生活

中国滞在記

100年前の1920年代は「20世紀の民主主義の台頭」を位置づけた—100年後の2021年、今 "分水嶺"に

2021-01-24 06:28:20 | 滞在記

 2021年1月1日元旦号「産経新聞」のトップ一面記事は「民主主義が消えてゆく―中国型の権威主義で猛威」という見出し記事だった。「2021年の幕が開けた。コロナ禍で加速した世界の軋みに対峙して21世紀の形を決める分岐点となる。100年前、第一次世界大戦後の1920年代は、米国の興隆や大恐慌、ソ連成立など20世紀の姿を決定づけた。

 今の私たちはどんな世紀を築いていくのか。その根幹として譲れない自由と民主主義の価値を、露骨さを増した中国型の権威主義、強権的な振る舞いが脅かす。その最前線のインド太平洋で"米国一強"は揺らいでいる。日本は、自ら先頭に立って価値を守る行動と覚悟が問われている。」と前文に記し、記事は続く。

 記事によれば、①「新型コロナ禍で民主主義・人権状況が悪化した国・地域」の数は80。②「民主主義的な国・地域の数が減少し、"非民主"が過半数に」―(2010年「民主国98」、2019年「民主国87」vs「非民主国92」)と示されていた。

 ―「民主主義」が後退してきている要因とは何なのか―私なりに考えるには

◆主としてアメリカや欧米諸国によって民主主義は理想的な制度として多くの国で認識されるようになり、アメリカを中心とする各国が2000年代初頭まで振興を続けた結果、世界の主流となった。(特に1991年のソ連邦崩壊、ベルリンの壁崩壊からの2010年頃までの15年間は)  しかし、アメリカは世界各国への民主主義の振興から手を引き始める。(※前政権のブッシュ政権への反動もあり、2009年1月~2017年1月までのオバマ政権は手を引き始めた。) 

 これととも中国の台頭やIT技術革新での金融資本主義の隆盛、格差の拡大、ポピュリズムの台頭などが加わり、世界的に民主主義国の数やスコア(民主主義指標)は減少し、2006年をピークとして民主主義の後退が始まってきた。資本主義が充分に発達し、金融資本主義へと移行し、民主主義に悪影響を与え始めたことが要因として最も大きいかも知れない。コロナ禍によってさらに後退は加速している。

◆2020年10月に刊行された『民主主義とは何か』(宇野重視、講談社新書)では、序で民主主義の危機として、「ポピュリズムの台頭」、「独裁的指導者の増加」、「第四次産業革命とも呼ばれる技術革新」、「コロナ危機」などが挙げられている。また、さまざまな書籍やレポートでは、はっきりと中国(場合によってはロシア)を名指しし、その台頭が民主主義を脅かしているという論法も多い。私が特に「民主主義」の衰退の要因として思えることは①「資本主義」のゆきづまりだ。特にITの発達により、資本主義は2000年代より完全にグローバリズム「金融資本主義」に変化し所得格差が大きくなりすぎ、中流階級が減少。日本においても、2000年代に入って、小泉・竹中の政策により「非正規労働者」を法的にも拡充した。

 グローバリズム金融資本主義における5%の富める者が、世界の富みの50%を占めるという社会現実が先進資本主義国でもポピュリズムを生んでいる。また、発展途上国に生産拠点を移動する「国内産業の空洞化」が先進資本主義国のポピュリズム隆盛に拍車をかけ、アメリカではトランプ大統領が2016年に誕生。国内の人々の民主主義分断を引き起こしてもきた。

 もう一つは②非民主主義国・全体主義政治体制「中国の台頭」だ。中国が ロシアやイランとともに非民主の政治体制の世界への拡散を経済政策とともに牽引(けんいん)している。特に国土面積や軍事的には中国とロシアは大国だ。ロシアはまがりなりにも「民主主義」の条件の根幹でもある「選挙制度」はあるにはあるのだが、なぜ「非民主国」の巨頭の一つになっているのか。20年間あまり続いているプーチン政権。このロシアでのプーチン政権のゆくえが、この「民主主義」の世界的危機を乗り越える一つ一里塚ともなっていくだろうが、プーチン大統領も20年間も政権を維持しているだけにしたたかだ。

 また、5%の者が50%の富みを独占するという「金融資本主義」の克服をどう進めていく道筋があるのかということもまた、最も重要なことだ。2006年を始まりとして、2020年、21年は世界の歴史の決定的な転換点・分水嶺にまでなってきている。現在人口75億人の世界の歴史はどう流れていくのかの。

 

 

 

 

 

 

 

 

 


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