彦四郎の中国生活

中国滞在記

私の生活には "なくてはならなくなった" 「シェア自転車」だが、最大手だった「ofo」は破産寸前とも

2019-05-28 14:01:13 | 滞在記

  2016年の春ごろから 2年間あまりで、中国国内において「紙に水が浸みこむ」ように あっという間に爆発的に広まった「シェア自転車(レンタル自転車)」。2018年の春には70数社のレンタル自転車会社にまで膨れ上がった。これらの中で、最大手が「モバイル」社、次に続くのが「ofo」社、そして3位が「Bleugogo」社。あまりに業界が膨張しすぎて、「需要と供給のバランス」が完全に破綻し、供給超々超過多となったのが2018年春ごろだった。そして、競争による淘汰が進み、2018年末には あっという間に30社ほどに減少した。

 1年前には、福州市内でも交差点を渡った歩道のところにはずらりと無秩序にこの自転車が置かれていて、歩道に簡単に行けないくらいくらい邪魔にもなっていた。つまり、横断歩道を渡っても歩道にずらっと自転車が置かれているので、すぐ歩道に行けない。そこに信号無視の電動バイクがビュンビュンと川の流れのように殺到してくるのだからかなり危険な状況であった。2018年には業界3位の「Bleugogo」社は倒産した。そして今、業界2位の「ofo」社も倒産寸前となっているようだ。そして私も、今の「ofo」の会社の営業状況に困っている者の一人だ。

 2018年の6月に私は初めてスマートフォン式の携帯電話を、学生たちに協力してもらい一緒に販売店に行って「WUAWEI」社のものを買った。もうG4のスマホ携帯電話がなければ中国での生活はできないと思ったからだ。店での支払いから何から何までスマホ携帯のアプリでの支払いが必須な国になっていた。

 大学内の食堂や売店もバス(現金も使用できるが、使う人はまれ)も、そしてシェア自転車の利用もスマホアプリが必要となった。広大な大学構内でのシェア自転車の普及によって、学内での移動に利用していた「小白(シャオバイ)」と呼ばれていた小さな車も、利用者が減っていた。満席になるまで発車しないので、20分間くらい車の中で出発を待つのもざらだった。だから学内に溢れている便利な「シェア自転車」を利用して、教室棟から歩けば20分は  ゆうにかかるバス停のある北門や南門までの移動に利用したかったからだ。授業が終わってバス停まで疲れた体を 凄い湿気と暑さの中をとぼとぼ歩くのは もう辛かった。

 G4のスマホ携帯電話を買って、ようやく「シェア自転車」を利用できるようになった。このレンタル自転車は30分間以内の利用であれば1元(16円)と安く、どこに乗り捨ててもよかった。爆発的に中国全土に普及するわけだ。授業が終わって、バス停まで行くのも とても便利になった。スマホのアプリの「支付宝(シーフーバオ)」[アリババ社:中国最大のIT関連会社、馬雲が創立]を開くと、この会社と提携しているシェア自転車会社の数社の画面が出て来る。

 例えば「ofo」を利用しようとする場合、いくつか画面をクリックすると、自転車がどのあたりにあるかが付近の地図に表示される。自転車のバーコードにスマホの読み取りバード画面をかざすと、鍵を解除するための自転車ごとに違った4桁の数字が出て来るので、自転車についている数字のそれを押せば解除される。利用した後は、鍵をかければ自動的に料金の支払いも完了する。

 何社もあるシェア自転車で、最も利用登録がしやすいのが「ofo」だったので、日常的に利用できるように「利用登録料金」を支払って利用を始めた。もう、私の生活になくてはならないシェア自転車となっていった。ところが、利用し始めて半年がたち、冬休みで日本に1か月半ほど帰国した。そして2月22日に再び中国に戻り、大学構内に行ったら、あれほど溢れていた「シェア自転車」が全体的に激減していた。中でも最も多かった「ofo」の自転車は見つけるのが難しいほどになっていた。他社の自転ばかりが置かれているばかりだった。他の会社のシェア自転車の利用登録は私だけでは難しかったので、しばらくは困ったままで、バス停まで また歩かざるを得なかった。

 大学構内の南門近くのバス停付近には、黄色い「ofo」などの自転車が歩道に山のように積まれていた。シェア自転車の墓場とも呼ばれる光景だ。

 2018年の春頃から、中国全土においてこの墓場が大規模に あらゆる都市に出現しはじめてニュースでも報じられていた。シェア自転車会社によって、自転車の色が違うので、上空からの写真では「色とりどりの花畑」のようになっている四川省重慶市の映像もあった。

 無造作に乗り捨てられ、どぶや藪の中などに倒されて放置されている自転車もよく見られる。「これって犯罪やん」と思うが、市内でも大学構内でも、鍵がこわされ、新たに「自己用」のカギが付けられ、私用とされている「シェア自転車」もよく見られれる。どこにでも乗り捨てられるという便利さはすごいアイデアだが、「公共性・社会的マナー」(民度)がまだまだ弱い中国社会では、このような状況は予想もされていたことかとは思う。

 2010年の上海万博の頃から、中国政府は国際社会が提唱する「低炭素社会の実現」に背を押される形で、「公共自転車」普及の取り組みを始めた。北京や上海などの都市の「実験地区」で2012年頃から「実験」が始められた。それは、日本でも今までにあった「決められた場所に自転車を置く」という形式だった。しかし、その後の中国のシェア自転車の形式は、いままでの世界のどこにもないものだった。それは、2013年頃から急速にというか爆発的に普及したスマホでの決済利用者が中国全土に広がったことによるものだった。

 そのスマホ決済のシステムを利用し(連携し)、レンタル自転車の新しい方法を開発し、「ofo」を創設したのが、当時 北京大学の学生だった「戴威」氏と「薛県」氏。二人は時代の寵児となった。現代中国の新発明ともいわれた新システムだった。その後「ofo」は、2017年末には世界200か国に事業展開を宣言し、日本では札幌市や和歌山市でこの事業が試験的に開始し始められた。しかし、その後1年ぐらいで、撤退することとなった。 

 2018年末ころから、これらのシェア自転車業界は全体的に過当競争や利益の面での採算が難しくなり始め、倒産する会社がさらに増えてきた。業界最大手の一つ「ofo」もその一つだった。2018年の11月に「ofoはもう危ない」という風評が流れ始めた。利用者の登録料取り戻しが殺到し始めたことなどが報じられた。インターネットでの2019年4月上旬記事には、「今日有関ofo破産的声明新聞 厳重失実。ofo目前営業一切正常、‥‥」(※今日、ofoが破産するというニュースは真実ではない。我が社は 正常に営業されています。)とのofo社の声明文が掲載されていた。

 現在、創業者の二人は、中国の「債務者ブラックリスト」に掲載されている。中国では「ブラックリスト掲載者」は100人に1人いるとと言われている。これに掲載されると、罰則として、「飛行機や新幹線など」の購入ができなくなる。

 私はこの4月、学生に手伝ってもらって「他の社」の自転車の利用ができるように新たに登録したので、その社のものも使えるようになった。しかし、閩江大学構内で現在、8割近くを占めている会社の自転車は使用できない。外国人の登録がかなり難しいからだ。(可能なことは可能なようなのだが)   1.5割が4月上旬に新しく登録した会社の自転車。0.5割がofoの自転車。つまり、近くに20台があれば、そのうち未登録で利用できない自転車が16台、利用できるものが4台。債務をかかえ倒産もささやかれるofoの自転車は、中国政府から「新たな新車の導入」を1年前から禁じられているので、ようやく見つけても半分は壊れていて利用できないものが多い。だから、再び学生に手伝ってもらい、8割を占めている自転車シェア会社の登録をなんとかする必要に迫られてもいる。

 中国社会、及び中国人は、起業するにしても開業・開店をするにしても とても早く判断して実行するという特徴がある。「まずは、向後の憂いはあまり考えずにやってみよう!」精神が旺盛だ。年間に1000万件が新しく起業し、3年以内にその半数が廃業にいたるといわれる中国社会。大学生の就職も、入社後3年以内に辞めて他の企業・会社に転職する割合は5割を超える。私の暮らすアパート周辺の店でもも3年以内に半数以上が廃業し、新しい店ができるということの繰り返しだ。しかし、この精神は、一概に「おそまつ」とは言い難い。ある意味、「活力にあふれている」とも言えるからだ。いずれにしても現代中国社会の変動は社会の隅々までスピードが速い。

 

 

 

 


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