彦四郎の中国生活

中国滞在記

人生賭け約1030万人が「高考」に挑む❸―宿泊ホテル・魔のエレベーターの不運―死ねば存分に眠れる

2019-06-17 10:09:58 | 滞在記

 ◆前号のブログで、「"高考"の総合得点の満点は780点である。」と記しましたが、「満点は750点」の間違いでした。訂正いたします。また、「科挙」の廃止は1910年ではなく1905年の間違いでした。ちなみに、「高考」の得点歴代1位は2004年に記録された749点。得点者は王端鵬という人で、清華大学に進学した。現在は「中国科学院」の研究員で、高分子化学を研究している。年収は30万元(約500万円)で、かなりの高給取り。(※日本では年収2000万円に相当)

 ◆"現代の科挙"「高考」―中国では随王朝の587年から清王朝の1905年まで1300年間にわたって「科挙」と呼ばれる官僚登用試験が3年に1度行われた。北京で行われた最終試験に合格できるのは30人ほど。倍率は3000倍くらいだったと記録に残っている。翻って今。「現代の科挙」は、世界最難関の大学入試とも呼ばれる「高考」。日本の大学入試センターの試験出願数が今年、約58万人だったのに対し、今年の「高考」は約1030万人。中国の人口が日本の約11倍である点を考慮しても、日本の18倍の受験者数は凄ましい数になる。

 入学難易度を「全国の受験者数÷当該大学の新入生数」で単純計算すると、東京大学はだいたい220人に1人だが、北京大学は6000人に1人。狭き門どころではない。しかも高考は一発勝負ゆえ、「滑り止めを数校受ける」といった選択肢はないのだ。

◆中国の子供は小学校に入学したその日から否応なく、11年後の高考に向けた勉強の日々が始まる。小1から容赦のない宿題漬けで、高考の必修重点科目である国語・数学・英語偏重の詰め込み教育が続く。

◆学校や塾、受験関連サイトでは―

「不要学不死、就往死里学(勉強のしすぎで死ぬことはない、死ぬほど勉強せよ)」「生時何必久睡、死後自会長眠(寝るヒマなどまったく不要だ、誰もが死後は存分に眠れるのだから)」

「累死你一個、幸福你一家(君一人が死ぬほど努力すれば、君の一家全員が幸せになれる)」「提高一分、幹棹千人(点数を1点多く獲得するたびに、ライバル1000人を打ち負かせられるのだ)」

 ‥‥といった とても過激なスローガンが、受験生たちを鼓舞している。こんな社会でもあるので、家庭での「手伝い」「仕事」などを子供にも分担させるようなことはとても少ないのが中国の現在の風潮といえるかもしれない。私も驚いたことだが、「中国の大学生は、女子大学生もだが、今までに料理を作った経験がほとんどない」という学生が圧倒的に多いのには驚かされた。大学に入学しても、「寮では料理用火気厳禁」なので料理はできないし、食堂や大学近くの屋台や店で、食事をする生活だ。

 今年の「高考」に関しての出来事が この1週間さまざま中国国内では報道されていた。例えば、次のような出来事も。

 山東省の済寧市の男子受験生が6人が運悪くエレベーターに閉じ込められ、試験に間に合わなかった悲劇が報じられていた。それによると、不運の6人は、試験会場から800mほど離れたチェーン系ホテルに宿泊していた。試験2日目の6月8日、午前中の試験科目を終えて、昼休みをとるためにホテルに戻った。午後3時から始まる英語の試験に臨むため、午後2時15分にホテルの部屋を出た。だが不運にも、エレベーターが急に故障し、カンズメにされてしまう。

 エレベーター内の緊急用ボタンを押しホテルに救援を要請。ホテル側は「修理工を呼びますから待っていてください」と返答。2時20分ころ「高考に間に合わない!助けてくれ!」と自撮りした動画を母校のNSNグループに投稿、それを見た担任教師は驚愕し警察とともにホテルに向かった。2時27分、閉じ込められた受験生の一人が公安警察に救援を要請。13分後の2時40分に警察と消防応急大隊(レスキュー隊)到着。2時45分に救出。バトカーに分乗した6人は、2時50分前に試験会場の門に到着した。

 しかし、試験開始15分前までの2時45分までに入場しなければならない規定があるため、彼らは結局、試験は受けられなかった。翌日、6人は家族と共に、当地の教育局に出向き、再試験を要請するが、「いかなる特例も認められず‥‥」と対応した役人は申し訳なさそうに繰り返すばかりだった。憤懣やるかたない6人と家族は、レスキュー隊を早急に呼ばなかったホテル側に対して、慰謝料と1年間の浪人期間中の補償として、一人20万元(約350万円)を要求。これに対してホテル側は1人2万元(約35万円を提示。話し合いは続いているようだ。

 ホテル側の対応や地元教育局の対応などに、インターネットでは批判の意見が出始めていた。

 


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