彦四郎の中国生活

中国滞在記

東京五輪中止となれば、「22年北京冬季五輪」は人類がコロナ克服と中国政府アピール大会になるが❶

2021-01-18 08:47:48 | 滞在記

 開催予定の7月まであと7カ月後に迫った「2021東京オリンピック」。昨年11月にはIOCのバッハ会長が来日し、「東京五輪は人間がウイルスを打ち負かした証拠になる」と、開催に向けて表明していた。新型コロナウイルスの感染拡大・世界的パンデミックも2021年の3月頃には開発されたコロナワクチンが普及し始め、感染を抑制し始めるとの観測もみられていた時期だった。

 が、しかし、10月~11月頃には一息ついていた世界のパンデミックは、2020年の11月下旬ころから再び猛威をふるい始め、1日に何万人もの感染拡大、再びのロックダウンを余儀なくされている国もめずらしくない。とりわけ、感染力が高くなっている変異種コロナの出現は世界の人々を脅えさせてもいる。

 オリンピック開催予定の日本もしかり。昨年の春以降2度目の緊急事態宣言がすでに11都府県に出されたが、感染抑制の見通しがもちにくくなってきている現状がある。1月中には1日1万人の新規感染者増もありうるかもしれない。変異種の出現により開発されているワクチンの有効性にも不安が持たれ始めている。

 東京五輪のメイン会場となる新国立競技場も完成しこけら落としのスポーツイベントも観客を制限して開催された。なかなか素晴らしい競技場だ。

 世界のメディアが東京五輪・パラリンピックの今夏開催に関する日本の世論調査の結果を大きく報じた。共同通信社が1月9日・10日に全国電話調査した結果では、「中止すべきだ」の35.3%と「再延期すべきだ」の44.8%を併せると、今夏開催への反対意見は80.1%。昨年12月の前回調査の同61.2%から激増した。今夏開催すべきだは16%にすぎなかった。この調査結果をどう受け止めるべきなのだろうか?おそらくだが、この80.1%の意見の人々は、「もし可能ならば開催できたら嬉しいが‥しかし、このコロナ禍の現状では‥」という前置きの気持ちはあるのではと推測する。

 昨年の12月下旬頃、自民党の二階幹事長は五輪開催に強い意欲を示し、「開催しないお考えを聞いてみたいぐらいだ」と国民を見下すように言い放ち、森喜朗五輪組織委員会会長は1月12日、「不安?まったくありません。日程・会場は全て決まっていますから淡々と予定通りすすめていくだけです。再延期は絶対不可能だと考えています」と改めて意欲を示していたが‥。そして、菅首相は年頭に「五輪は必ずやり切る」と断言していた。

 菅首相の淡々訥々(たんたんとつとつ)と語る断言もあまり説得力もなく国民の心にまったく届いていない空疎感があるが、極めつけにまずいのは二階幹事長の世間離れしているというか、国民の気持ちにまったく寄り添わず、配慮していないというか、そんな国政最大実力者の何様?政治姿勢だった。森氏の言葉も国民意識とかなり離れている感があるが‥。二階・菅が日本政界のトップという現状には強い限界を感じる。平時ならそれでも務まるが‥‥。

 今週発売の週刊ポストは、この五輪開催問題の特集記事を掲載していた。「二階は"開催しないお考えを聞きたいくらいだ"と宣(のたま)うが、国民が知りたいのは"その逆"だ―」「"それでも東京五輪やれる"という人に、その"根拠"を聞いてみた」との見出し記事。ウイルス専門家の京都大学ウイルス・再生科学研究所准教授の宮沢孝幸氏は、五輪開催に反対する声が多いのは、コロナ感染のさらなる拡大を懸念するからだろうと前置きしながら、「東京五輪中止はナンセンス」と断言し、その根拠をインタビューで述べている。記事を読み、それなりの説得力をもっていた。感染症を専門とする愛知医科大学の後藤礼司氏は、開催の意志はあるのに準備を尽くしていない政権への批判が五輪反対論につながっていますと前置きし、「感染リスクの徹底管理で開催は可能」と主張している。

 第一生命経済研究所首席エコノミストの永濱利廣氏や自民党都連最高顧問顧問の深谷隆司氏、元NHKアナウンサーの刈屋富士夫氏らがそれぞれの立場から、「この夏の五輪開催実現」への見解と根拠を示している。この夏の開催中止決定の場合は、さまざまな面で日本が、日本人が失うものの大きさは これまたはかりしれないものはあるだろう。「喪失感」である。「大事なのは開催するためにどうやってコロナを抑え込むか、全身全霊をかけて取り組む姿勢を世界に見せることです」との深谷氏の言葉も印象的な記事だった。

 また、東京五輪・パラリンピックで東京・晴海の選手村村長に就任した川渕三郎氏(元日本サッカー協会会長)は、昨年12月、共同通信のインタービューで、新型コロナウイルスは厳しい感染状況が続くが、大会で徹底した感染対策が成功すれば、日本から世界に先例を示すことができると強調。未曾有のコロナ禍に対し、逆転の発想で「五倫を開催する価値は上がった。絶対に開催した方がいい」と訴え、「ものすごい大仕事だ。うまく成功したら、世界中でコロナを克服した最初の大規模イベントになる」と語った。

 そんな「五輪開催の是非」が間近に迫りつつある中、河野太郎行革担当相が海外メディア主催の会合で語った発言が海外で話題になっている。河野氏は東京五輪について、「行われない可能性も含めて先行き不透明だ」としつつ、「開催に最善を尽くす」という考えを示したと国内では報じられているが、何の変哲もないこの発言。日本ではあまり注目されていないようだが、「目のつけどころ」が違う海外メディアは放っておかなかった。

 (オリンピック開催の判断は)「どちらに転ぶかわからない」と日本の大臣。(ロイター通信) と発言の前半が切り取られたフォーカス記事となった。「日本の大臣が、オリンピック開催に疑問をなげかけている」との記事内容で全世界に広まった。日本政府の閣僚発言として、時期的にも ちょっと気をつけて発言しなければならないのだが、「河野がやらかしてしまった」感はゆがめない。河野氏にはちよっと気の毒だが、次期首相候補としてはかなり何かが決定的に足りない人物だという感は、この半年間の彼の言動をみていて思ったりもする。とりわけ韓国ではこのフォーカス記事が「それ、みたことか!日本!」と連日大きく取り上げられていた。

 米国の有力紙NYタイムズは1月15日、今夏の東京五輪について第二次世界大戦後、初めて中止に追い込まれる可能性を報じた。新型コロナウイルスの世界的な感染拡大により「計画が日に日に不確実性を増している」「IOCの間では安全な大会を開催するのが不可能かもしれないと認め始めている」と指摘した。

 東京五輪開催を疑問視する声が海外でも目立ち始めたが、その疑問視の要因が少し変わってきているようだ。これまでは世界的なコロナの感染拡大や競技選考会の遅れなどが要因だったが、「そもそも日本は大丈夫なのか?」と疑問視する声が大きくなっていることだ。

 その一つ目の要因は、日本国内での緊急事態宣言の再発令。これまで、欧米諸国と比較して「比較的感染が抑えられている」と見られていた日本だが、「東京でのコロナの急増で、開催への疑念が増している」「緊急事態宣言対象エリアは徐々に拡大されて、日本の人口の半分以上が対象になっている」など。二つ目の要因は「世論調査」。この世論調査の結果について、「日本の国民は五輪に冷めている」と報じている。

  Yahoo!Japanのインターネットアンケート調査(1月17日時点―約21万人あまりが投票)でも、①「中止になるだろう」が86.6%となっている。②「再び延期になるだろう」7.7%、③「開催すると思う」5.0%、④「分からない」0.7%。アンケートの設問が国民の意識を深く反映していないのは問題だ。だが、このような国民意識のままでいいのだろうか?  何かが現在の日本人の意識に欠落してしまっているように思える。

  ジャーナリストの江川紹子氏が、「どうしても五輪開催なら、パリ・ロス後の2032年が現実的」と1月11日のツィツターに新規投稿していた。彼女の考えも大事なことを置き忘れているように思える。それは何なのか。

 昨年の11月にコロナ禍下で初めて日本国内(東京)で行われた国際大会「国際親善大会」(国際体操連盟主催)。アメリカ・ロシア・中国、そして日本の体操選手が参加した。この大会で総合優勝をした内村航平は、閉会セレモニーでスピーチした。東京五輪と言えば、国民の関心は「開催か中止か」だが、その議論の中で置き去りにされた大事なことを訴えたのが、内村のスピーチだった。

 「国民の皆さんが(一部ニュースによると)五輪は(開催)できないんじゃないかという気持ちが80%を超えている、というのは、少し残念に思っています。『できない』じゃなくて『どうやったらできるのか』をみんなで考えて、どうにかできるように、そういう方向に考えてほしいと思います。非常に大変なことであるというのは承知の上で言っていますが、国民の皆さんとアスリートが、同じ気持ちでないと、大会はできないのかなあと思う。どうにかできる、なんとかできる(という)やり方は必ずあると思うので、どうか『できない』と思わないでほしいと思います。」

 "五輪開催諦めないで 心打つ内村航平の言葉 「できない」ではなく「やる」方法の模索"をという彼の国民へのメッセージを日本人は受け止める必要が今あるのではないかと 私は強く思う。「今年夏の東京五輪、ぜひ、開催の努力を国民一丸となって」できないものだろうか。

 東京五輪中止となったら、「人類がコロナウイルスに打ち勝った(我が国を先頭に)」と、「2022年北京冬季五輪」(あと1年後の2月)で高らかに宣言するのは、中国共産党総書記・中国国家主席の習近平氏となる。歴史のなんたる皮肉・パロディーか。

   1月17日、加藤官房長官が、「開催に向け、感染対策もふくめて 準備にとりくんでいる」と記者会見で報告と報道されていた。

 「ガンバレ! 日本」だ。

 

 

 

 

 

 

 


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