彦四郎の中国生活

中国滞在記

中国における「宗祠(しゅうし):宗族」―金正男暗殺事件の報道―

2017-02-20 10:00:03 | 滞在記

 2月16日(木)、早朝の7時ころアパートの下から煙が立ち上ってきた。バンバンという餅つきのような音も聞こえてくる。なんだろう?と窓を開けて下を見ると、下にある「趙氏宗祠」で料理の準備を始めたところだった。

 中国における「宗祠(しゅうし)」とは、同じ祖先をもつ(父系)同族集団が祖先を祀る「祠(ほこら)」がある所である。同族集団の「姓」は同じ。「宗族」とも呼ばれる。その歴史は古い。1950年代の初めから1970年代末までは、毛沢東を首班とする中国共産党政権下のもと、「宗族」は批判・解体の対象となった。しかし、1980年代後半以降、「宗族」が復活してきたと言われている。私のアパートの下にある「趙氏宗祠」でも、毎月のように宗族たちが集まって食事・宴席をしている。今朝20日(月)も、早朝から 食事の準備(雨の中、大きなテントを張って) が始まっていた。午前8時頃、戦闘が始まったのかと思わされる、ものすごく激しい爆竹の音が鳴り始めた。

 1月30日の春節期間のインターネット記事。浙江省のある村での「宗族」が集まった記事。この宗族の祠は「柱状節理」の中にあるようだ。500人が集まったと書かれている。みんなが集まれば、1000人あまりの宗族メンバーがこの宗族にはあるようだ。この一族もそうだが、若い人もよく参加するようだ。例えば、就職や資金や生活の相互援助など 社会生活全般にわたって、「社会や国は信用できない、一族・家族・友達・義兄弟が相互扶助をして支え合い生きるのが---」という中国伝統の人々の考えは根強いものがある中国社会。

 この「宗族と宗祠」は、中国の華中や華南に多いようだ。特に、広東省や福建省などの華南地方が多い。世界各地に広がる「華僑系中国人」のルーツも この「宗族」にある。

 2月13日(月)の夜にマレーシァの首都クアラルンプールの国際空港で起きた「金正男氏暗殺事件」。たった5秒あまりでの猛毒ガス犯行時間。金正男氏の長男をはじめとする家族は保護されたようだが。あらためて、北朝鮮の「金王朝支配」の実態に戦慄を覚える。

      ―正男氏報道「トップに置かず見出しは1行」 中国政府が規制―

 事件が起きた翌日14日の朝、日本のテレビを受信すると、この事件が大きく報道されていた。しかし、中国のインターネットなどを見ても この事件記事を見つけることができなかった。大学に行くためのバスの中のテレビのニュース番組でもこの報道を見ることはなかった。なぜだろう。報道規制をしているようだと思った。

 この事件について、中国政府は即刻に報道規制を当初したようだ。15日、中国の新聞やインターネット諸機関に対して通知を出したが、その内容は、①国営メディアの記事を転載すること。②情報源はマレーシアの報道を引用すること。③ネットではトップに置かず、見出しは1行。上から10行目以降に置くこと。―などと細かく規制された。過去のニュースと結びつけた推測や現地からの生中継も禁じられ、コメント欄も閉鎖を命じられたという。

 核やミサイルの問題で中国国内でも北朝鮮への批判的な見方が強まっているが、外交政策を担う指導部に批判が向かわないように国内世論を考慮しているとみられる。

      ―当局の「沈黙」を異例の批判=金正男氏殺害の対応で論評―中国国営紙―

 中国共産党機関紙・人民日報系の「環球時報」17日、北朝鮮の金正男氏殺害に関連し、中国当局のメディア対応を批判する論評を掲載した。韓国の報道の論調が国際的な影響を持つ中で、中国当局は「敏感な問題」に適切な説明をせず、「事なかれ主義」的だと指摘。「何の情報も発信せず、沈黙する傍観者」になっている。沈黙を保つことで当局者は「責任を負うリスクを下げている。こうした状況は中国の利益を損なう」と批判した。国営紙が当局の報道対応を非難するのは異例だ。

      ―中国外務省の事件に関する会見発表―「金正男確认身死中方回应对中朝关影响」―

 中国外交部の報道官が会見をした記事。「金正男氏の死亡を確認した。中国と北朝鮮との関係への影響について対応中だ」というような意味になるのだろうか。とても短いコメントだが、今においても中国メディア(テレビ・新聞・インターネットなど)は、この事件に関する報道は控えている様子がみられる。

 

 

 


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